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夢喰い
オープニング
投稿者：サラ
題名：友人を助けてください
本文：私はとある中学に通っている御堂サラと申します。
今回この場所に書き込みをさせていただいたのは私の友人を助けて欲しいからです。
私の友人は三日前に倒れて、一度も目を覚ましません。
友人は前から自分の家のパソコンは変だと言っていました。
自分の部屋に誰もいないのに、視線を感じてそのほうに目を向ければ
パソコンがあるというのです。
友人の気のせいかもしれませんが、私はもしかしたら…そのパソコンが原因なのでは、と
思って書き込みをさせていただきました。
どうか、私の友人を助けてください。
これが、ゴーストネットに新しく書き込まれた記事だった。
この書き込みがされる前からパソコンに巣くう魔物の話も出ている。
この書き込みを見たあなたはどう調査する？
視点⇒真名神・慶悟
「魔物の巣くうパソコンか…」
慶悟はゴーストネットの書き込みを見ながら呟く。今の時代、便利な物が増えたが、それに伴って魔物の棲家も増えた気がする。今回の事件がいい例だろう。パソコンという一見魔物とは関係なさそうなものにまで住み着いているのだから。所詮電脳と言えども光と影、即ち陰陽の交錯。内部を構成し世界を構築するプログラムは摂理を動かす呪式に等しい。解決するのに能力の問題はないだろう。
「しかし…これだけではどんな状況なのか全く分からないな…」
書き込みだけではその友人の容態も、問題のパソコンの事も全くと言っていいほど分からない。
「とにかく…メールを送ってみるか」
助けてやるにしてもまずは状況を把握しなければ何もできない。
―真名神・慶悟というものだが、書き込みの事を詳しく聞きたいんで下記の番号に電話してくれ。
それだけの簡単なメールだったが、十分内容は分かるだろう。メールを送った後、パソコンを切り、コーヒーを飲みながら電話がくるのを待つ。過ぎた時間は早いが、待つ時間はとても遅く感じるのは気のせいだろうか？暫くしてから携帯電話のベルが鳴る。かけてきた相手は《公衆電話》となっている。
「もしもし」
「…真名神さんでしょうか？書き込みをした御堂サラというものです。学校のホームルームが長引いてしまって…」
一生懸命謝ってくるサラの声を聞きながら時計に目をやるとメールを送ってからまだ三十分しかたっていない。
「いや、そんな待たされたわけじゃないから…。今どこだ？」
サラに聞くと意識不明になった友人の家の近くだという。慶悟は詳しい場所を聞いて、サラがいる公衆電話のところまで向かう事にした。
わりと近い場所で迷うことなくサラに会う事ができた。
「初めまして、御堂サラ、15歳です」
丁寧に頭を下げてサラが挨拶をしてくる。落ち着いた雰囲気でとても15歳の少女には見えない。…この場合は外見が老けて見えるということではない、と付け足しておこう。
「その友人の家は？」
「あ、優の…優って名前なんです。優の家はそこのカドを曲がってすぐです」
サラは指を指しながらカドを曲がる。そこには普通の一軒屋が建っていた。ただ、普通と違うところは家を取り巻く空気だろうか。この胸をざわつかせる空気に慶悟は思わず震えるのを感じた。
「中に入って問題のパソコンを見てもいいのかな？」
とりあえず立っていても何も始まらないと感じた慶悟は中に入ってもいいのかを聞いてみる。慶悟の問いにサラは「おばさん達には許可を貰ってきましたから」と言って玄関のドアを開ける。
「……っ…！」
中に入って一層濃くなる嫌な空気。サラを見ると平気な顔をしているから、この邪気を感じていないのだろう。ここまで濃い邪気を感じないというのも一つの能力かもしれない、と慶悟は笑みを浮かべて考えていた。
「二階が優の部屋で、パソコンがある部屋です」
先に上がろうとしたサラを止め、慶悟が先に入る。もし彼女にまで何かあったら、と考えたからだ。階段を上ってすぐに部屋の入り口が見えた。
「…さてと…」
慶悟は逐怪破邪の符と鎮奇怪の符を部屋の入り口に貼ってから中に入る。
「あの、これは？」
サラが不思議そうな顔で慶悟に尋ねてきた。
「あぁ、逐怪破邪と鎮奇怪の符の事かい？逐怪破邪は怪異を退けて、鎮奇怪は怪現象を抑え込む力を持っているんだ」
説明が終わると、慶悟はサラに「はがしちゃダメだよ」と言い聞かせる。
「あと、キミは友達の所まで行ってこれを貼ってきてくれるか？」
慶悟がサラに手渡したのは先程部屋に張った符とは別の符。
「…これは？」
サラが受け取った後に慶悟を見上げながら聞く。
「正気鎮心の符と言って正気を取り戻させる符なんだ。魔物を倒した後に自力で意識を取り戻せる手助けをする符、と言ったら簡単かな？」
「…分かりました。くれぐれもお気をつけて」
サラはそれだけ言うと家から出て行く。慶悟が符をサラに手渡したのは優の意識を戻すため、確かにそれは嘘ではない。だが、ここにいるより安全だろうと言う慶悟の考えだ。万が一、サラを人質にでもとられた場合は洒落にならないからだ。
「さて、これか…」
慶悟はパソコンに近づき、とりあえず優とパソコンの因果関係を視てみる事にした。視てみると、このパソコンは優のイトコから譲り受けたものらしい。視た感じでは受け取った時に魔物はいない。恐らく電脳上を彷徨っていた魔物と、このパソコンが偶然にも一致した場所に行ってしまったのだ。そして住処を見つけた魔物は思う存分悪さをできる。一般人はパソコンの魔物など誰も信じないだろうから。
「だが、悪さもここまでだな」
慶悟は召北斗符の符をパソコンに貼り、内部の敵を索敵する。
この符は目的のものを北極星に見立て、その星を追う北斗七星が如く目的の場所に辿り着く為の祈念符だ。
「北斗七星は天の龍であり、北極星は龍玉だと言う。だから常に北斗七星は北極星の周囲を回転する様に巡る…」
暫く探すうちに魔物を発見し、素早く禁呪で【パソコン内に潜む事を禁じ】外に引き摺り出す。こういう人の前に出たがらない魔物は臆病だが、その分悪知恵がある。だから一度逃がすと下手すれば二度と見つけることができない、という事もありうる。
耳をふさぎたくなるような雄叫びにも近い悲鳴をあげて外に引っ張り出されたのはグロテスクな魔物、外見だけで言えばトカゲにも見える。
慶悟は十二方位の震の方位を奉じ雷法を使い、魔物を攻撃する。パソコンの中から出されたせいか少し弱っているようにも見えるが、情けは無用だ。ここで下手な情けをかければ図に乗って余計酷い事をしかねない。
「…パソコンの中に潜むなら潜むでおとなしくしていれば良かったものを」
そう呟いた後、慶悟は破邪誅雷を用いて魔物を倒す。結構あっけなかったななどと呟いた後で家を出るとサラが息を弾ませて立っていた。
「優が、優が目を覚ましたんです！」
はぁ、と息を整えながらも満面の笑みを慶悟に見せて言う。
「良かったな」
サラの頭をポンと撫でてやり、その場を立ち去る。慶悟が振り返ることはなかったが、後ろでサラが大きな声で「ありがとうございました！」と言っている。慶悟は背中を向けたまま手をあげてやる。
―この事件で彼女達二人の友情は一層強くなった事だろうと思いながら、どこに行こうかと考えている慶悟だった。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
0389/真名神・慶悟/男性/20歳/陰陽師
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■ ライター通信 ■
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真名神・慶悟様＞
いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は「夢喰い」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました！
「夢喰い」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったら幸いです＾＾
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします＾＾
-瀬皇緋澄
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