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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


魔法少女☆ポルテ〜ホイップの巻〜

★おーぷにんぐ!

 魔法少女☆ポルテ。
都内で日曜早朝に大人気放送中の実写アニメらしい。
内容は、魔法の国からやってきた女の子が、普段は普通の女の子として生活しつつ、
魔法の国を滅ぼそうとしている悪の帝国と戦う…というもの。
「ポルテルポルテ・テトラポット!まじかるミルクでクリィミーホイップ!」が変身の呪文。
今回…草間興信所に寄せられた依頼は、
そのポルテが劇中で変身の為に使っている”ポルテ・ステッキ”を探すという事だった。
依頼人は、ポルテを演じている女優の佐倉・翔子(16歳)。
彼女が親戚の子供に見せる為に小道具のステッキを持ち出し、紛失。
なくしたのではなく盗まれた可能性が高いとの翔子の話により、
三人の容疑者が上げられ、そのうち二名までは容疑が晴れた。
今回は残りの一人の調査に向かう事になるのだが…。
「相手は人気女優だからな…」
 草間は、週刊誌の表紙に目を落としながら呟いた。
ポルテの中では敵役を演じている、女優の真知子(20歳)は、
他のドラマではだいたい主役を演じる事の多い、今人気の女優なのだ。
それゆえ、ポルテで悪役を演じている事を疑問視しているファンも多い。
しかし、草間が仕事の資料という事で、ポルテを数話ほど見たのだが…
なかなか敵役としていい演技をしているようだった。
 願わくば、彼女の容疑も晴れ…
依頼人のうっかりミスくらいでひょっこりステッキがカバンの中から出てくれれば…
そんな事を漠然と思いながら、草間は今日も興信所の室内で…事件解決を待つのだった。



 シュライン・エマと楠木・茉莉奈(くすのきまりな)の二人は、
春海の家を出てから次の調査場所へ徒歩で移動をしていた。
公共交通機関を利用しても良かったのだが、携帯での連絡のやり取りをメインとしている以上、
電車やバスだとマナー違反になってしまう。
それにそんなに距離も無く、健康にもいいから…と言うことで徒歩になった。
「さて、依頼人の翔子さんは学校にいるという事だから…どうやって真知子さんに会おうかしら」
「そうですね…普通に行ってもあわせてくれない気がします」
「まあ…頼れそうな人たちに心当たりがあるから、聞いてみるわ」
 シュラインはそう言って微笑むと、携帯を取り出してそこに登録されている、
”関係者”達の中から、芸能界に通じていそうな者を選択する。
興信所でのつながりだったり個人的なつながりだったりと…そっち方面に知り合いは多かった。
シュラインが電話でやり取りをしていると、不意に前方から一人の少女が駆けて来るのが見えた。
どう見ても自分達を目指しているように見えるその少女に気付き、茉莉奈が足を止める。
つられてシュラインも一旦会話を中断し足を止めると…その少女は息を切らせて走り寄り。
「シュライン姉さん!あの、私にもお手伝いさせてくださいっ!」
 がばっと頭を下げると同時にそう叫んだのだった。
「…恵那ちゃん、どうしてここに?」
 驚いた顔で、シュラインはその少女に声をかける。少女は黒くて長い髪をサラっと揺らして。
「私、ポルテが大好きなんです!だから…番組が作れなくなっちゃうかもしれないって草間さんに聞いて…
じっとしていられなくて…私にも何かできないかなって思ったから…それで…だから…」
 真剣な表情で言葉を紡ぐ恵那。シュラインと茉莉奈は顔を見合わせて。
「武彦さんったら…」
「でも、好きな番組の事で自分が何かしたいと思う気持ち、わかります」
「そうね…それに、恵那ちゃんに手伝ってもらえそうな事もあるし」
「あ、あの…あの…」
「こんにちわ。私、楠木・茉莉奈って言うの。こっちは黒猫のマール。宜しくね」
 マールを腕に抱いてにこっと微笑みながら、茉莉奈は恵那に手を差し出す。
恵那は少し恥ずかしそうにしながらも、どこか嬉しそうにその手を握って。
「私、今川・恵那(いまがわえな)って言います…宜しくお願いします」
 ぺこりと再び頭を下げた。
「挨拶が済んだところでちょっと話があるの。いいかしら?」
 シュラインの声に、二人は顔を其方に向けてほぼ同時に頷く。
それを確認してからシュラインは近くにあるカフェに目を向けた。時間的にも空席が多い。
打ち合わせにはちょうどいいわ…と、三人はそのカフェの奥まった席で話をする事にした。
 カウンターでシュラインはコーヒー、茉莉奈は紅茶、恵那はオレンジジュースを受け取り席に着く。
黒猫のマールはキャリーバッグの中で丸くなっている。
周囲に客や店員の姿がなくなったことを確認して、シュラインは切り出した。
「現時点で疑わしいのはガルボ役の真知子さんという事になっているけれど、確かでは無いわ…
だからこれから、その真知子さんに話を聞きに行ってみようと思うの」
「そうですね…でも…もし真知子さんだとしたらどうしてステッキを盗んだんでしょうか…?」
「わからないわね。可能性はいくつか考えられるけれど…以前から私物を隠す事があったみたいだから、
ただの俳優同士での悪戯という事も有りえるし…悪意があればそれは嫌がらせになるけれど」
「それから、盗んだ事で相手を戒める意味もあるかもしれませんね…」
「そうね…元々、小道具を持ち出したのは翔子さんなわけだから」
 目の前でされるやり取りを聞きながら、恵那はうん、うんと頷く。
自分はあまり難しい事はわからないから…しっかりと聞くことに専念しようと思ったのだ。
「真知子さんには女優としての実績も経験もあるんだから…悪戯や嫌がらせとは思いたくないわね」
「でも芸能界って…なんだか色々と大変みたいですし…」
 茉莉奈が少し寂しそうな表情で呟いた時、シュラインの携帯の着信音が響く。
相手を確認してからシュラインは電話に出た。
それは、先程、連絡を入れてみた業界関係者の知り合いで…。
「そう…それじゃあ今から行ってみるわね?ええ、そうね…ありがとう」
 シュラインはそう言って電話を切ると、茉莉奈と恵那に顔を向けて。
「真知子さんが今、撮影している場所がわかったわ…スタジオの中にも入れるみたい」
「本当ですか?良かったですね!」
「それでね、私は真知子さん本人じゃなくてまわりの人に色々と聞いてみようと思うの、
だから茉莉奈ちゃんと恵那ちゃん…二人で真知子さんに話をそれとなく聞いてみてくれないかしら?」
「私達で、ですか?」
「ええ、ファンの子として会わせて貰うようにしようと思うの。実際恵那ちゃんはポルテのファンだし…」
「はい!私、やってみます!」
 恵那は真剣な顔で、コクッと大きく頷いた。茉莉奈も同じように頷く。
シュラインは二人の返事を聞いて、優しく笑みを浮かべると…「頑張ってね」と声をかけて立ち上がった。


★みっしょん!

 真知子は今、連続ドラマの撮影で都内のスタジオに居た。
知り合いのコネでシュライン達はその中に入ると、決めていた通り…二手に別れる。
シュラインは新人メイクさんとしてスタジオへ、茉莉奈と恵那はファンの子として真知子のいる楽屋に向かった。
 入り口でドキドキしながらなかなか入れずにいる二人を、
真知子の専属のスタイリストさんが見つけて、笑いながら中に入るように促す。
そしてやっと二人が中に入ると、真知子は椅子に座って雑誌を読んでいるところだった。
 しかし、来客の姿を見ると…優しげに微笑んで立ち上がり。
「いらっしゃい。話は聞いているわ」
 真知子は二人の前にやってきて、手を差し出す。
おずおずとその手を握る恵那の頭をもう一方の手で優しく撫でて。
「あ、あの…私、恵那と言います…私、ポルテが好きで…ガルボも大好きです…」
「あら、ありがとう」
 嬉しそうに微笑むと、真知子は今度は茉莉奈に視線を向ける。
茉莉奈は慌ててぺこりと頭を下げて自己紹介をして。
「恵那ちゃんと茉莉奈ちゃんね?どうぞこっちに来て座ってお茶にでもしましょ」
 真知子は二人の為にとパイプ椅子を引いて、座るように促す。
そして紅茶のパックをティーポットに入れて…自分で二人に紅茶を入れて差し出した。
「あ、ミルクとお砂糖がいるわよね?」
 普段、自分では使わないのだろう。
慌てて立ち上がると、真知子は楽屋に備え付けられている備品の箱をがさがさと探り、
その中から砂糖のスティックとシロップとミルクを数個手にして二人の前に置いた。
「お好きなものをどうぞ?」
「あ、ありがとうございます…!」
 いつもテレビの中で見ている女優さんにあれこれとしてもらい、
茉莉奈も恵那も恐縮してしまって縮こまってしまう。
その緊張を解こうと、真知子はお菓子を差し出しながら二人に微笑んだ。
「茉莉奈ちゃんと恵那ちゃんは姉妹かしら?」
「いえ…恵那ちゃんとはご近所同士なんです」
「あら、そうなの?」
「はい!ポルテが好きで…茉莉奈姉さんと知り合ったんです!」
「なんだか嬉しいなぁ…わたしの出てる作品を好きになってくれて。
でも二人はわたしがポルテじゃないのがちょっと残念かな?」
「そ、そんな事ないです!だって私、ガルボも大好きだから…!」
 笑いながら言った真知子の言葉に、恵那はすぐに否定する。
真知子は少し驚いた顔をして、やんわりと微笑んだ。
「ありがとう…わたしも、もうちょっと若かったらポルテだったかもしれないけど…」
 後半どこか寂しそうに呟き、真知子は視線を少し下に落とした。
少し離れた所にいるスタイリストが心配そうに真知子を見つめている事に茉莉奈は気付いた。
「あの、真知子さんは…」
 恵那が思い切って話を切り出そうとした時、楽屋がノックされる。
真知子が返事をすると、髭をたくわえた男性がひょいと覗き込んで彼女を手招きする。
「ごめんね。監督さんが呼んでるから、すぐ戻るね」
 真知子は二人にそう告げると、携帯電話だけを手にして楽屋から出て行った。
しーんと静まり返る楽屋。
どうしよう…と、顔を見合わせていた茉莉奈と恵那だったが、
スタイリストの女性が近づいてきたかと思うと、先程まで真知子が座っていた椅子に腰を下ろし。
「ポルテで真知子ちゃんは初めて敵の役を演じたのよ」
 昔を懐かしむような表情で、スタイリストはぽつりと呟いた。
「小さい頃から芸能界で頑張って、ここ最近でやっと人気女優って言われるまでになってね…
ずっと主役ばかりだったんだ…だからガルボ役は本当に意外だったなあ…」
「そうなんですか?」
「だって、真知子ちゃんは以前、恵那ちゃんくらいの時に同じような魔法少女を演じた事があったの…
だから今回、魔法少女のお話しがあるって聞いててっきりポルテを真知子ちゃんが演じるかと思ってたら」
「翔子さんだったんですよね?」
 茉莉奈の言葉に、スタイリストは「ええ」と頷き。
「仕方ないのよね…真知子ちゃんはもう二十歳だもの…魔法少女だなんて年齢じゃないから…
でも、真知子ちゃんはポルテを演じてみたかったみたいだけどね」
「そうだったんですか…」
「でもね、だからって真知子ちゃんは誰かのものを隠したり盗んだりはしないわ?
これだけは絶対に言える。私は深く知らないけれど…何かあるみたいなの…そのことについては…」
 スタイリストは小さく頷いて、はっと我に返る。
そして慌てて立ち上がると、やたらと明るく笑いながら。
「ごめんねー!?なに言ってるんだろうね?忘れて、忘れて!!今の話忘れて!!」
 自分でもどうして子供相手にこんな事を言ってしまったのかわからずに首を傾げるスタイリスト。
実は、恵那がテレパスの能力を使ってスタイリストの脳裏に質問を投げかけていたのだ。
スタイリストは無意識にそれを受信して…自分でも気付かないうちに答えていた。
「ちょっと取りに行くものがあるから待っててくれる?真知子ちゃんもすぐ戻ると思うから」
「はい。待ってます」
 まるでその場から逃げるかのようにして、スタイリストは楽屋を出て行く。
それを見送って…二人は互いに顔を向け合い。
「恵那ちゃんはどう思う?真知子さんのこと…」
「私、悪い事をする人には思えないです…」
「うん…そうだよね…私もそう思うんだ」
「真知子さんに、思い切って聞いてみてもいいような気がします。ステッキの事」
「そうだね。きっと私、もし真知子さんが盗んだのなら翔子さんの為だと思うから…」
 互いに思っている事を確認し合い、二人は頷きあった。
すると、まるで会話が終わるのを待っていたかのように真知子が楽屋に戻ってくる。
どこか真剣な二人の表情を、真知子は不思議そうに見つめていたのだが、
すぐに優しげに微笑みを浮かべると、二人の前にゆっくりと腰を下ろした。



 互いに連絡を取り合い、個々に行動していた者が集合する。
初対面となる天音神・孝と平太と、今川・恵那が簡単に自己紹介を終えると、
真知子のいるスタジオの近くにあるカフェのテラス席でそれぞれの調査の結果を照らし合わせていた。
そこで導き出されたことは…一致していた。
「私はマネージャーさんからヒントを貰って調べてみたんだけど、
私物を隠されたと言う俳優さんの出演作には確かに真知子さんも参加していたけれど…
それ以外にももうひとり共通して出演している人がいたわ」
 シュラインがホットコーヒーを手に言う。
「あの…私と恵那ちゃんで真知子さんと色々話していて思ったんですけど…
真知子さん、ステッキを隠したりしてないと思います…」
「それに…あの…えっと…スタイリストさんが真知子さんのことは誤解だって言ってました」
 茉莉奈と恵那が交互に話す。
そして、最後に孝がまんをじして…といった表情で身を乗り出し。
「単刀直入に俺達の思っていることを言うと…ステッキはおそらく真知子が持ってる」
「そ、そんなこと…!」
 思わず否定しようと声をあげる恵那を、孝は「まあまあ」と微笑んで宥め。
「最後まで聞いてくれよ?真知子が持ってる事は確かだが…
彼女はおそらく元あった場所に返そうとしたんだと思うぜ?多分な…」
「私も同じ意見よ。備品倉庫は普段は鍵がかかっていたり警備員がいるらしいの。
隙を見て返そうと思っていたんでしょうけれど、そんな暇を見つけられなかったんじゃないかしら」
「それじゃあやっぱり真知子さんは盗んだりしてないんですよね…良かった」
 ほっとする恵那だったが、シュラインは少し複雑な笑みを浮かべ。
「確かに真知子さんは盗んだりしていない…けれど…」
 いいにくそうにするシュラインに、恵那は首を傾げて不思議そうな顔をする。
どういう事なのかに気付いた茉莉奈も少し悲しげに眉を寄せて。
「恵那ちゃんはポルテ好きだよね?」
「はい!大好きです!だから、ポルテの為にと思って…」
「じゃあ恵那ちゃん、私と一緒にもう一度真知子さんのところに行ってステッキのことを聞いてみようか?」
「――は、はい…!」
 恵那は少し上ずった声で答えて、立ち上がる。
茉莉奈はシュラインに目で合図を送り、シュラインも黙ったまま頷く。
それを確認してから…茉莉奈と恵那は二人でスタジオの方へと向かって行った。
 スタジオにはすんなり入れ、さらに真知子も快く二人を迎え入れてくれた。
これからのことを考えると、茉莉奈はチリっと心が痛んだのだが…。
「茉莉奈ちゃん、恵那ちゃん」
 真知子は二人を楽屋に入れるなり、真剣な表情で二人に声をかけた。
そして…鞄の中から、ステッキを取り出して見せた。
「それは…ポルテステッキ!!」
「二人とも、これを探してたんでしょう?」
 真知子は微笑みながら、それを二人に差し出した。
ためらいがちに恵那がそれを受け取ると…意外と重く、テレビで見るより大きい気がした。
「あの、真知子さん…どうして…」
「なんとなく、ね。二人の様子とか見てたら…そうなんじゃないかな?って思ったのよ…
年齢的に翔子ちゃんの友達じゃないかなって思って…翔子ちゃんから探すように頼まれた?」
 友達ではないけれど、確かに翔子から頼まれた事に違いはなく、
茉莉奈は黙ったままで頷く。真知子は「やっぱりね」と頷きながら微笑んで。
「ガルボがポルテからステッキを盗めば変身できなくなるから盗んだの…」
「真知子さん…」
「そう。ポルテは正義の味方。悪い事はしていないの」
 ”本当のこと”に気付いている茉莉奈は、真知子のその言葉はどこか切なかった。
どういう事なのかよくわからない恵那はただ首を傾げるしかない。
不思議そうに見上げる恵那にふと真知子が目を向けて。
「そうだ!恵那ちゃん!今ね、端っこの部屋にポルテがいるわよ?ステッキを返してきてくれないかしら?」
「―――え?」
「お願いできる?」
 恵那は戸惑いながら茉莉奈を見上げる。茉莉奈は黙ったまま微笑んで頷いた。
それを見て、恵那はステッキを鞄に入れて楽屋を後にした。
 端っこの部屋には、確かに”佐倉・翔子”の文字。
ドキドキしながら恵那は部屋をノックすると、「はーい」という返事とともにドアが開いた。
「あら?メイクさんじゃないの?……えっと…誰かな?」
 初対面の恵那に、翔子は微笑みながら問い掛ける。
目の前に”ポルテ”がいる驚きと嬉しさに、恵那は言葉が出てこない。
とりあえず翔子は恵那を楽屋に入れて、再び「どうしたの?迷子かな?」と問いかけた。
「あ、あのっ…私、恵那と言います…草間さんのお仕事のお手伝いさせてもらってます…」
 その言葉にはっとして翔子は表情を変える。
そして黙ったままで恵那が差し出した鞄を、静かに受け取った。
中を確認するや否や、ぱっと表情が変わり。
「ありがとう!!見つかったのね!!本当にありがとう!!!どこにあったの?!」
「えっと、あの…その…」
「いいわ…とにかく良かった!すぐにでも返したいところだけど…ここのスタジオじゃないから…」
 翔子はとりあえず、鞄にステッキを入れたままでそれをさらに自分の鞄へ入れようとして、
ふとその手を止めた。そしてじっと、ステッキの入っている鞄を見つめて。
「恵那ちゃんって言ったっけ…」
「は、はい!」
「真知…いえ、ガルボに会った?」
「――はい…!あの、私、ポルテさんもガルボさんも大好きだから!いつも見てますっ!」
 そう、と翔子は小さく呟いて振り返り。
「それじゃあわたしがガルボに会ってもいいよね?」
 恵那はどうして自分にそんな事を聞くのかわからずに首を傾げる。
翔子は微笑んだままで恵那の手を取ると、静かに楽屋を出て鍵をかけた。
そして、真っ直ぐにガルボ…真知子の楽屋に向かう。
するとちょうど真知子が楽屋から出てきたところで、翔子は思わず固まった。
二人の視線が合い、なんとも言えない不思議は空気が流れる。
 しかし、真知子が翔子に微笑みかけてその空気がさっと変わり。
「茉莉奈ちゃんが中で待ってるわ、ありがとう恵那ちゃん」
 真知子は恵那にそう微笑みかけると、翔子に目配せをして歩き始める。
翔子も恵那に「ありがとう」と告げて手を振り真知子のあとを追いかけていった。
離れていて、二人の会話など聞こえてこないはずなのだが…不思議と恵那の頭の中に、
翔子の声が少しだけ聞こえた気がした。
『ありがとう。ごめんなさい』と。


★えんでぃんぐ!

『まじかるミルクで!ホイップ・ホイップ!あなたのハートをゲッツしちゃう!
魔法少女☆ポルテ!来週もお楽しみに!』
 テレビの前で今週の放送を見終わった恵那は、ほーっと息を吐く。
毎週、毎週、じっと真剣すぎるくらいに見入ってしまうのだが、
あの一件以来、以前にも増して放送を見るようになった。
 色々と不安だったけれど、あの事件に参加した事で、
翔子と真知子の二人のことがより一層好きになったのだ。
 なんだか恵那の知らない難しい事がいろいろと他にもあったらしいのだが、
みんな恵那の事を心配して、詳しい話は聞かなかったし、恵那も聞こうとしなかった。
 ただ、ポルテもガルボも本当は仲良くして欲しいと思っていただけだから、
二人が仲良くしているという話を聞いただけで嬉しかった。
 そんな恵那に、嬉しい事が二つあった。
一つはポルテとガルボの両方から、手紙が届いたのだ。
恵那に二人からステッキの事でお礼の言葉が綴られていて、二人並んでいる写真もあった。
誰も知らない、見たことのない写真だ。
大事に大事に恵那はそれを宝箱の中に仕舞った。
二つは…ポルテのお話。
今週のお話で、ずっと敵だったガルボが、実はポルテのお姉さんで記憶を消されて操られていた、
という展開になったのだ。そして来週からは…ガルボがポルテと共に戦う事になる。
 それが嬉しくて嬉しくて…。
「来週も楽しみだなあ…」
 恵那はエンディングを見つめながら、小さく呟いた。
写真の中で仲良く笑っていた二人を、テレビの中で見る時が来るのを心待ちにしながら。





<おわり>


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【1343/今川・恵那(いまがわ・えな)/女性/10歳/小学四年生・特殊テレパス】
【1421/楠木・茉莉奈(くすのき・まりな)/女性/16歳/高校生(魔女っ子)】
【1990/天音神・孝(あまねがみ・こう)/男性/367歳/フリーの運び屋・フリーター・異世界監視員】
NPC
【***/大黒屋・平太(だいこくやひょうた)/男性/18歳/フリーター】

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■         ライター通信          ■
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 この度は、魔法少女☆ポルテ(後編)に参加していただきありがとうございました。
本格派推理系を目指したかったのですが、どうも微妙な展開になってしまいました。
 今回は、ほとんどがそれぞれ個別調査という事で、お話も個別になっております。
微妙にリンクしていたりするので、宜しければ他の方の調査も覗いてみて下さいませ。
 NPCの登場する個所が多かった事が少し反省すべき点かな…と思っておりますが、
とにもかくにも、読んで楽しんでいただけたら幸いです。
 ポルテのお話はまた違った形で展開させてみたいなあと思っておりますので、
もし見かけたら覗いてみてくださると嬉しいです。

また皆様にお会いできるのを楽しみにしております。<(_ _)>


:::::安曇あずみ:::::

>今川・恵那様
 こんにちわ。はじめまして。ライターの安曇あずみと申します。
この度はご参加いただきありがとうございました。
後編のみのご参加だったのですが、恵那様のお陰で後編が綺麗にまとまった気がします。
ポルテの大ファンの女の子と言うのは本当に重要なキャラクターだったので…。
楽しんでいただけたら幸いです。またお会い出来るのを楽しみにしています。


※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>