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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


リバース

オープニング

『なっ……』
 今日もいつものように草間興信所で新聞を読んでいた草間武彦は突然驚きの声をあげた。
 その理由はテレビに映っている人物にあった。
 真っ赤な髪、真っ赤なスーツ、そして真っ赤なシルクハット、まるで奇術師のようなその人物は
 何やら怪しげな呪文を唱えている、そして…数分後には死者が生き返っている。

「私はレッドラム。死者を生き返らせることができます。恋しい人、恩人、あなたにも会いたい人はいるでしょう?
もし、死んでいるから、という理由で合えないのならば私があわせてあげましょう」

 一見穏やかな笑みを浮かべているように見えるが、草間武彦に言わせれば不気味だった。
 何も疑う所のない笑み。それこそが不気味だった。

「きゃぁぁぁぁ!」
 外からの悲鳴に草間武彦は慌てて窓から外の様子を見る。そこは…地獄だった。
 生き返った人々と思われる人物は生きている人間を襲っているのだから…。
「こ、こんなのって…」
「願ったのはあなた方人間でしょう?」
 まるで草間武彦の言いたい事を当てたかのようにテレビの中の人物は不気味な笑みを浮かべながら言う。
「‘どんな姿でもいいから生き返って,と願ったのはあなた方ですよ。私は生前と変わらない姿、といった覚えはありませんから」
 まるで屁理屈のようなことを言いながらその人物はゆっくりと宙に浮く。テレビの中でもパニックに陥っているらしく人が次々に襲われている。
「お兄様、これではいずれここも危なくなりますわ」
 零が落ち着いた口調で言う。
「…あぁ、誰かこの問題を解決してくれるものがいないか電話をしてくれるか?」
「分かりました」


視点⇒五代・真

「レッドラム…?」
 草間武彦からの電話で真は異変が起きている事を知った。どこぞの小説にでも出てきそうな名前の、その男は死者を生き返らせ、人を襲わせているらしい。
「そのレッドラムってやつは本当にそんな事ができるのか?」
 真は電話の向こうの草間武彦に問う。その問いには「テレビをつければ分かる」という答えだけが返ってきた。真はワケが分からないまま受話器を肩で固定してテレビのスイッチをいれる。どこの番組も『死者が生き返る!』などという見出しで特番が組まれていた。
『信じたか?』
 草間武彦の問いに答えるまでもない。テレビでは勇敢な記者たちが命がけの報道をしている。
「…すぐに調査する」
 それだけ言うと、真は電話をブツと切る。
 テレビで報道されていたのはありがたい、と真は思う。この異常な状況を早く解決するためにもレッドラムという男を早く見つけねばならない。だが、今回はテレビの記者たちが報道してくれているため、探す手間が省けた。
「…死者を生き返らせるなんて…神を冒涜するような行為をしやがって…」
 ギリ、と真は唇をかみ締める。生と死は神のみが操る事ができる聖なる行為。それをあんなふざけた男が自由にしていはずがない。


「…ここか…」
 真は廃ビルの前に立ち、屋上を見上げる。屋上に一人の人物の影が月に照らされて見える。恐らくあれがレッドラムだろう。
「さてと、行きますか」
 バッと走り出し、報道陣に見つからないように素早く廃ビルの中に入り込む。そして、急ぎ足で階段を上る。エレベーターはあったが、使われなくなって大分たったビルでは機能しているはずもない。真が走るたびに錆びた階段がカンカンと大きく鳴る。数分をかけて上り終えると、錆びついた扉を真は苦もなく乱暴に開ける。
「おや、どちら様でしょう?お招きした覚えはありませんが…、もしかして貴方も誰かを生き返らせて欲しいのですか?」
 レッドラムはゆっくりと真の方を向きながら穏やかな口調で言う。一見物静かな男に見えるが、その目には殺気を感じ、真は咄嗟に身構える。
「お前がレッドラムか!死者を生き返らせるなんて神を冒涜する行為をしやがって!」
「…人の生死を握るのが神だと誰が決めたんです?」
「…屁理屈を…。死んだ人間に会いたいという人間の心を踏みにじりやがって!人の命を何だと思ってやがる!」
 真は叫びながらレッドラムとの距離を徐々に縮めていく。
「…では何です?こんな状況でも会えて良かったという人間がいるのかもしれない、会いたいと願った人間に殺される事を満足している人。貴方はそれらの人々の心を踏みにじるのですか?」
 まるで自分は何も悪いことはしていないと言うレッドラムの態度にカァッと真の頭に血が上るのを自分でも感じられた。
「ふざけるな!人は死ぬ。それは当たり前だ。短い一生だからこそ人間は毎日を一生懸命生きているんだ!」
「…それは貴方の意見でしょう?こちらの方々の話を聞いてやってはいかがです?生き返れて嬉しいと言っていますよ」
 レッドラムがパチンと指を鳴らして現れたのは、生き返らされた人々たち。完全に人の形を残している者、骨だけの外見のもの、外見は様々だったが見ていて哀れだった。涙を流しているものもいた。理性をなくして言葉こそ話せないが、助けてくれと言ってるように真には見えた。
「…満足?この人たちは泣いているんだ。無様な姿で生き返らされて…。お前は俺が倒す!そして…生き返った人達を眠らせる!」
 真は言い終わると同時に右の掌に念を込め、退魔宝刀『泰山』を出現させ、戦闘にいつでも入れるようにしておく。
「……あなたは虫唾が走るくらいの偽善者ですね、見ていて、こう、いらいらしますよ」
 そう言って再度指を鳴らす。今度は鳴らしたと同時に死者が襲いかかってきた。
「やめろ!俺はあんた達と戦いたいわけじゃない!」
 切りつけるわけにもいかず、なぎ払うように腕を大きく振る。だが、キリがない。
「ははっ、ネズミならネズミらし逃げ回るがいい!」
 柵に背中を預けてレッドラムが高らかに笑う。その笑いを聞いて真の中の何かがキレた気がした。
「…ふざけてんじゃねぇぞ!てめぇっ!」
 真は死者を振り払い、ポケットに常備してあるコンビニレシートに念を込め武器にし、投げつけ、牽制する。そして、間髪いれずにレッドラムを斬りつける。さすがに防御が間に合わなかったのか笑った顔のまま消滅していった。レッドラムが消滅すると同時に死者たちもザァッと灰に返っていく。
「…いつか死ぬから今を一生懸命生きるんだろうが…」
 もう聞こえない真のレッドラムに対しての言葉は灰と共に消えた。



 そして、数日後。

「おす、報告にきたぜ」
 大きな傷は負ってはいなかったがしばらく家で休養をとっていた。草間武彦は興信所に入ってきたのが真だと分かるとまた新聞に目をやる。
「この間の事件はてこずったのか?」
 草間武彦が新聞から目を離さずに真に問いかける。
「…んー…。いろんな面でキツかったな。…あいつは…手ごわかったよ」
 そう呟く真の顔は少し悲しそうに見えたのは草間武彦の勘違いではないだろう…。
 願うなら今後、あんな男が現れない事を祈ろう。


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


1335/五代・真/男性/20歳/便利屋


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■         ライター通信          ■
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五代・真様>

お世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は「リバース」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました。
「リバース」はいかがだったでしょうか?
少し暗めの話になっておりますが、少しでも楽しんでいただけたらありがたいです。
それでは、またお会いできる機械がありましたらよろしくお願いします^^

                -瀬皇緋澄