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<東京怪談ノベル(シングル)>


Graveyard of Legendary Weapons

神聖都学園は2人のドリルガールの戦いによりかなりの損傷を受けたため、一時休校となった。また、周辺地域でも戦いの傷跡が残っており、修復、復旧に忙しい。警察はこの事件の現場検証と目撃者の事情聴取聞き込みに明け暮れていた。しかし、手がかりになる物は一切無い。

銀野らせんは、ある警察らしき人物にドリルガールとして正体がバレてしまった。が、彼はそのことを隠し「今回巻き込まれて気を失っていた犠牲者」と報告しているために、彼女がこれ以降警察に呼ばれることはない。らせんは魔法のドリルが破壊され、部屋に閉じこもってドリル部分が折れた其れを抱えてずっと泣いていた。
「もう、変身できない…いままで、いままで色々な人を助けたいと思って…ひっく」
いまでも、ドリルを抱いて泣いている。
心配している友人が見舞いに来るのだが、会いたくないと拒否している。
「よっぽど、酷い目に遭ったんだ…」
「ゆるせないよね…らせんを…」
「ごめんなさいね、わざわざ来て貰ったのに…」
友達の憤り、家族は心配している。
ある日の夜だった。
「らせん、ご飯此処に置いておくから…」
家族が彼女の部屋の前に夕食(余談だがカレーだ)を置いて、去っていった。
らせんは、食欲もなく、ただドリルを抱いて夜空を見上げている。
魔法のドリルを拾ってからの数々の戦い。謎の怪人や、あるオカルトショップで生命を得て大きくなった「例のアレ」との戦い、また特殊警察と協力し怪人を撃退した事など思い出していた。やはり恥ずかしかったが、自分の行動に後悔はしていなかった。恥ずかしがり屋でも正義感は人一倍強いのだ。
「最初は、戸惑ったっけ…」
ぽつりと独り言。
「どうしてあたしが…って思ったよね…でもやっぱりキミとは縁があったんだ」
ドリルに話しかけるらせん。
「でも、どうしてなの?いきなり、偽物が現れ、いままでの事を…ううっ」
自分でも訴えたかった。しかし絶望と悲しみのあまり言葉に出来ない。
彼女はそのまま、ドリルを抱いたまま泣き疲れ眠ってしまった。


彼女は気が付くと姿はパジャマで荒野に立っていた。空は夕焼けのよう、地平線の先まで様々な兵器の残骸や、英雄が持っていたと云われる伝説の武器が地面に突き刺さっている。遙か過去か現在に存在、さては未来に存在するのであろう、武器が其処にあった(大体が接近戦兵器、人間が扱えるものの大きさの武器だ)。
「ここは一体…?」
らせんはキョロキョロとこの不気味な光景を眺める。
「墓場みたい」
まさしくそうだ。誰が見てもそうと云えるだろう。剣の刃はこぼれているか折れており、銃は錆び付いている。およそ15mの白いロボットらしき物は、首も両腕と右足がない。胴体で其れが何か分かっただけでも凄い。
―らせん…
誰かがらせんを呼んでいる。
「だれ?」
驚くらせん。この荒野でどこから声がするのか分からない。
―らせん…こっち…だ
「誰なの?」
聞き覚えのない声。しかし、気になるので裸足で声が聞こえる方へ歩いていく。
―らせん
―らせん、そのまま真っ直ぐ。
らせんは自分を呼ぶ声にのみ集中し、そのまま進む。武器の破片で足を怪我することもあったが、声に導かれるまま傷を無視して先を歩いた。

その先には―――折れた魔法のドリルが荒野に転がっていた。

先端が折れているため地面に突き刺さることが出来ない。周りにはドリルの破片が散らばっており、内部の掘削部品が露わになっているドリルはあの時の現実がよみがえる。
「…死んでしまったの?」
と、らせんは立ち止まる。
しかし、声は止まらない。
「ま、まさか!」
彼女は駆け寄ってドリルを取ろうとしたが…彼女の周りに白い焔が其れを遮った。
「あつ!」
かなりの高熱の焔。
―来たか、らせん…私を使いし者。
「ドリル?」
壊れた魔法のドリルは浮き上がる。
「見ての通り、この場所は『武器の墓場』。善悪問わず武器のなれの果て…が永遠に眠る場所。私が眠る場所はその境目也」
「境目…人で云えば…三途の川?」
「そうだな、少し異なるが…、所謂【器】の廃棄所だな。伝説の武具は時代と共に姿を変え、力も変わる事があるからな」
ドリルは、浮いたまま色々話しかけている。まるで生き物だ。しかし、いきなり止まってから壊れた先端をらせんに向けて指す。まるで指を指すかのようにだ。
「汝に問う!何故に力を欲するか!」
ドリルは大声で彼女に問いた。
その荒野の武器達はその声で又一層壊れていく。
らせんは白い焔の熱さと、ドリルの気迫に押され気味になる。
「…ためよ」
前に言いたかった言葉が、喉を通り…口に…出された。
らせんは、焔もドリルの威圧もはね除け、決意の目を向けた。
「あたしはただ…自分が今まで教わった正しいと思うことが間違ってない事を証明する為に!…助けを求めてる人達を一人でも助けたい!…ただそれだけよ!」
大声で答えたらせん。
魔法のドリルは、宙で満足そうにくるくる回っている。すると、また先端をさしてドリルはこういった。
「良かろう。汝の言葉しかと受け止めた!汝に再び力を与えよう…そして新たなる力も」
その瞬間、白い爆発が辺りを包む。
『武器の墓場』も周りを囲んだ焔も白い光で見えなくなった。らせんはそのまま白い光に取り込まれ…。







らせんは朝日の白い光で目が覚めた。
「ゆ…夢?」
少し寝ぼけている。其れに少し足が痛い。怪我はないみたいだが、まるで五寸釘を踏んで貫通したかのようにいたかった。
「…おかしな夢だった…何かドリルが喋っていたし…」
手元にある、壊れたドリルを触る。何か変化に気付いて飛び起きた。
「ど、ドリルが直っている!」
昔に、拾った時と同じように魔法のドリルは艶やかな金属色の胴体、そして大破したはずの先端部分もしかり元の姿になっていた。
彼女はドリルを抱きしめて泣いた。
しかし其れは悲しみの涙ではない。再び自分の信条の元に生きていける、又この相棒と共に戦えると言う嬉しさの涙だった。