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<東京怪談・PCゲームノベル>


ドタバタ稽古劇

天薙撫子は、本をとって色々な思い出を浮かべてみた。
すると、彼女はポッと赤面する。其れに呼応するかのように…
はてさて、彼女が赤面する話とは?


彼女は、天空剣の門下生として、長谷神社に通っていた。エルハンドから剣術や魔術を教わるためである。いまではそのエルハンドがいないので必然的に若き師範代織田義昭が稽古を取り仕切ることになる。他の門下生には其れ自体はたいしたこともないし、ごく自然の流れなのだが…。
「少しスルドイ気配がする。気配と言うより殺気、嫉妬の焔…」
義昭が呟く。
そう、長谷神社の巫女であり住人の長谷茜が、ジト目で義昭が撫子に色々教えている度に睨んでいる。当の撫子はこの殺気を感じているのだが、何の事なのか分かっていない様だ。
「何かおかしいですね、師範代」
「え、ええ」
気が付いて気が付かない振りか、義昭に負けず劣らず天然なのか。

ある日のことだ。
いつもの通り、皆が集まり、刀礼を済ましてから、義昭が今回のスケジュールと今後の事を連絡する。その姿は流石若くして師範代になった若者の気合いを感じていた。
「では、いつもの通り、始めに素振り、形から行きましょう」
「はい、師範代」
木刀で素振りを行う。実戦を目的とした武道として位置する天空剣の素振りはまさに敵を斬るためのモノだった。そして、木刀にて形の練習をする。この連続した訓練を身体に覚えさせるのだ。そうすれば、身体が無意識にその斬り方や受け流しの行動をとってくれる。
「撫子さん、やや突きがずれています」
義昭が彼女を指導する。もちろん他の門下生にも指導するのだが。
撫子に声をかけると、茜の殺気が2人に向けられるのだ
―気にしない気にしない…
と、義昭はそのトゲトゲしい殺気に耐えているが。
―誰なのかしら?殺気なんですけど質が異なるような?
撫子さんは相変わらずこの殺気がどこから来ているのか分からない。
そんなこんなで、試斬も無事終了し(やっぱりトゲトゲしい殺気は依然と続く)、一般稽古は終了する普通の門下生は即座に帰宅した。


そして残ったのは義昭と撫子のみである。
「さて、俺たちの稽古は此処からですね」
「はい、義昭くん」
お互い霊気のコントロールから、神格へ覚醒する訓練。
義昭でもこの訓練は必ず行っている。超越する力の制御はやはり難しいのだ。
霊気を最大限に上げた撫子を助ける義昭。
「肩の力を抜いてください」
「はい…」
「霊気で、心の奥にある「神性」の扉を開けるイメージを」
耳元でささやきかけるように義昭は撫子に教えていた。
〜このときには殺気は来ない。殺気を放っている本人は神格の危険性を知っているからだ。どっちかというと、嫉妬してハンカチをくわえて悔しがっているぐらいしかない。〜
「ふぅ…」
覚醒訓練は終わった。本当に汗びっしょりである。義昭も彼女のサポートで汗がにじんでいる。
「流石ですよ、撫子さん」
そして義昭は霊木刀を持って、
「さて、少し休憩してから霊気を木刀に込めて手合わせしましょう」
義昭が言う。
流石師範代、感情の乱れがない。休憩と言いながら精神統一のために瞑想に入った。
「はい、わかりました」
撫子も義昭に倣う。
ピンと張りつめた空気が道場を支配していた。神社全体の気配さえも分かる。
―だいぶ義昭くん変わったなぁ
と、撫子は思った。
初めて出会ったときは、本当に可愛い弟のような気がして、支えてあげたい、守ってあげたいと常日頃から思っていた。しかし、ある一連の騒動やら事件で、彼の精神的成長はすばらしい。平和なときは、相変わらず母性本能をくすぐられる可愛い少年なのだが、いざ戦いや、稽古では人が違っている。
思わず従兄と重ね合わせてしまう撫子は赤面する。
―わたくしったら何を…
この張りつめた道場に少し揺らぎが生じたので、義昭は彼女を見た。しかし彼女を怒るわけでもなく只笑うだけで直ぐに瞑想に戻った。
その笑顔が撫子にとって不意打ちだったりする…。
前に好意を寄せていることを知ってから、自分でも義昭のことをどう思っているか分からないのだ。
―いけない、いけない。
精神を統一し直し、瞑想にはいる撫子だが…
2人ともただならぬ気配で立ち上がる。
「「虚無の境界がまた純真の霊木を狙いに!」」
撫子は神斬を手に取り、義昭は名刀「延周」を手に道場から霊木までかけだした。


今回はかなりの数のようだ。霊鬼兵などもう数えたくない気分にさせる。霊気が強いほど霊木の恩恵を受けやすいのだが、虚無にとってはこの霊木が怨霊器の良き材料になる。どうやって持って行くのかは分からないモノの、指一本触れさせてはならない。
予め、神社全体に防御結界がはっているので、殆どの境界メンバーはその神社結界で弾かれ破壊されているか足止めを食らっている。
裏口から来るのは奉納演舞から何ら変わっていない。この辺り全体が一度精霊浄化されたので、ゾンビ使いは来ていないようだ。
結界の間で義昭と撫子が虚無境界と
「性懲りもなく、霊木を狙うとは…飽きないな」
義昭がため息をつきながら虚無の境界のメンバーに向かって言った。
「その純真さを憎しみで汚せば、一気にこの世界を滅ぼせるのだ」
「世界を滅ぼして何になるのですか。預言というモノは警鐘であり、人々が平和に暮らす為のメッセージです。其れを実行するというのはおかしいことです」
「…うるさい。世界は滅びの道を歩んでいる。其れを人の手で早めても問題ない!」
霊鬼兵が戦闘態勢をとる。
「元から説得することは…無理と分かっていたが、狂信はこまるな」
「ですわね」
2人は抜刀する。
そして戦いの火ぶたが切って落とされた。

茜は、霊木に向かっていた。義昭や撫子と同じように「虚無の境界」の侵入を知っていたのだ。
霊木に、銀粉を浴びせる。悪からの魔除けの効果を持った粉だ。
「これで良し。霊鬼兵から霊力は吸われないわ」
彼女はそのまま戦っている場所までかけだした。

義昭と撫子の剣捌き、コンビネーションは最高だった。背中を合わせて、霊鬼兵をいとも簡単に切り伏せる。人間に対して、義昭が「封の技」で無力化し、撫子が峰打ちで気絶させた。
しかし多勢に無勢…。周りを囲まれる。
「こんなところで大技は使いたくない…と言うか使えない」
と、義昭は呟く。
此処で天薙の太刀と天魔断絶を使えば…霊木の霊気の相互作用で辺り一面焼け野原になるだろう。剣圧を発散させることが可能なこの奥義の厄介なところだ。どちらかというとこの奥義、神以外では軍や城などを破壊、一掃するものなのだ。他の斬の技を基盤とした大技でも結果は同じである。その中で使い勝手の良いものと言えば…
「撫子さん、四神・青龍で、一掃します…」
剣に龍を呼びだし、力を込めて周りの敵に瞬間的に電撃と風の嵐で撃退する技だ。霊木の相互効果でもあまり被害が出ないように慎重になる義昭。
「わかりました」
撫子は、彼の神格発動の気に耐えるため霊気を最大限に高める。敵も大技を出すことに気付いたため、一斉に襲いかかってくる。撫子の妖斬鋼糸と神格覚醒の突風で敵の進撃を阻んだ。
「好機!四神奥義…」
「あ、きゃぁ」
「え?」
なんと、鋼糸が撫子の足に引っかかり、彼女は義昭に向かって倒れ込んでしまった。
義昭と撫子はお互いの唇を重ね合わせてしまう。因みに、義昭の左手は彼女の胸を触っている。
この状態で、虚無のメンバーも何故か固まった
その理由は…自分達が信奉する「虚無」より恐ろしいほどの殺気を感じたからだ。
このトラブルを「キスの瞬間だけ」見ていたハリセン巫女さんが立っていたのだ。
「よしちゃんのばかぁ!」

―ハリセンの一振り。其の威力、千人の軍を一掃せん。

霊鬼兵は嫉妬の焔で燃え尽きて、術師は彼女の怒濤の霊気に触れて発狂してしまった。
しかも不思議に…焼け野原にならず、義昭の神格発動による乱風結界で義昭と撫子共に無事だった。
ぽけーっと赤面して義昭に覆い被さっている撫子。
「あのー撫子さん…」
「あ、はい」
「の、のいてくれませんか?」
「あ、ご、ごめんなさいっ…」
ぱっと、飛び退く撫子。そして、まだ覚醒したままの義昭。
―暫く覚醒して結界張っていた方が良いや…
と、義昭は考えていた。しかしまだ赤面している。
「でも赤面している余裕なんて無いんだけどなぁ」
「そ、そうですよねえ…わたくしから事情説明しますから」
と、ひそひそと2人で内緒話。
「何、そこでぼけーとしているの?」
ヤキモチ妬きしている茜。
「もう、お似合いのカップルね!IO2には私が連絡するから、仲良くお茶でもしてたら?!」
と、怒鳴って、巫女さんは帰っていった。
2人は、何故?とばかりキョトンとしていたりする。
普通なら、
「義昭くんがハリセンで叩かれ気絶しているはずなのに…」
と、撫子が首を傾げて言った。
否定せず、頷く義昭。
結界を外して、空を見上げる義昭。月は呑気そうにこの事件を眺めていたようだ。


そのあと、てきぱきと茜とIO2が仕事をこなしてくれたので、長谷家の居間でゆっくりお茶を飲む義昭と撫子。茜は何故か来ない。
「うーん気まずい…」
「ですねー」
いや、もう何がなんだかというか、二人っきりでいると、やっぱり落ち着かない。
(嫉妬のハリセンで叩かれて、俺(義昭くん)が身動きできない方がいつものパターンで収まって、落ち着くんだけどなぁ)
と思う義昭と撫子だった。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】

【NPC 織田・義昭 17 神聖都学園高校生・天空剣士師範代】
【NPC 長谷・茜 17 神聖都学園高校生・巫女】


※ライター通信ならぬ、NPC座談会
義昭「何かこんな事あったんだなぁ〜」
茜「ふん…」
義昭「おい、未だ怒っているのか?事故だって事故」
茜「しらないもん。『メイド服がいっぱい…あやかし荘襲撃』でもヘラヘラ(と言うか気絶)しちゃってさ」
義昭「時間軸的にこの事件はそれ以前と思うんだが…」
茜「じゃー過去の事件記録みたら、よしちゃんが撫子さんといちゃいちゃしている事は沢山あるわよ!」(証拠のノベルをたたきつける)
義昭「まー、それは…うん、認める。撫子さん大和撫子で、綺麗で美人だもん…。でもさ…」(そっぽを向く)
茜「そーよねー。こんな跳ねっ返りの幼なじみよりか…ってでもって何?」(何か感づいた)
義昭「逃走…(義昭行動時、通常の3倍で:その場合150倍です)」
茜「にげるなー!最後まで言いなさーい!」

座談会終わり…しかし、この複雑な関係は続くようです。