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久方ぶりの一日街旅行
〜猊座の日記帳より
――ねーねー、良いでしょー、ユリウス! だから麗花(れいか)に代ってってば! みあおだったらどうにかできるからさ! ね、お願い!
諭し続けて、早五分。電話の向こうで適当な相槌を打つ一人の神父の事を思いながら、少女は――海原(うなばら) みあおは、苛立たしさを積もらせていた。
流石になかなか、承諾してはくれない。
でもみあおは、麗花と一緒に遊びに行きたいんだから!
肩まで伸びる綺麗な銀髪が、その動きにあわせて激しく揺れる。
「ねーってばぁ! あ、良いよ! 代ってくれないんだったらこれから教会行くね! 麗花を直接説得しに――」
〈いえ、そりゃあ確かに……でも二人きりだと危ないじゃないですか、みあおさ――っ?!〉
と。
電話の向こうから、ユリウスがみあおの名前を呼んだその刹那、
〈もしもしっ?! みあおちゃんなのっ?!〉
――麗花だ。
「そうだよっ! 麗花、お久しぶり〜! 元気してたっ?」
〈元気も何も、わぁ、わざわざ電話してくれるだなんて本当に嬉しいですっ! 全く、猊下も何で電話代ってくれないのかしら……で、何か用事でもあるんですか? 遊びに来るのでしたらクッキーでも焼いておくけれど――〉
一気にまくし立てた麗花の声音に、みあおは一つ大きく頷くと、早速考えていた趣旨を手短に話して聞かせる。
曰く、一緒に出かけたい。デートしよう! 曰く、麗花のコトは、ちゃあんとみあおが守ってあげるから――!
最近では力が押さえ込まれているとはいえ、電話の向こうのシスターは霊媒体質であった。それが故に、普段はあまり外には出て歩かない――らしい。
らしいのだが、
〈え、でも……、〉
「お金はみあおが出すからさ! ねぇ、良いでしょっ?」
〈そんな、悪いもの……お金まで出してもらうだなんて、〉
「大丈夫だって! 気にしないで、ね? それに、いーくらユリウスだっていったってさ、放っておいても、さすがに拾い食いなんかしないって! 安心して留守番させてさ!」
〈ひ、ひろ――〉
電話の向こうから声が聞こえて来たような気がしたが、それはあえて、
……みあお、何も聞いてないもーん。
「ねぇ麗花、良いでしょ? みあおがちゃんと守るからっ!」
〈え……でも、〉
「もうっ!」
しかし、なおも戸惑う麗花へと、みあおはふぅ、とわざと大きく溜息をつき、そうだ、と言わんばかりに銀の瞳を大きく瞳を見開いた。
そうして大声で、言い放つ。
「たまにはユリウス一人で留守番させないと! いい加減、独り立ちできなくなっちゃうよ!」
大切なバイト代から、新しい服を買ってくれたり。可愛いお土産を、買って来てくれたり。
そんな姉と街に出かけた際に、みあおがぽろり、と口にした言葉があった。
『ねえ、お姉さん。みあおさー、麗花とも遊んでみたいんだよねぇ……』
その言葉に、姉は暫く悩んだその後で、今日のために――と、みあおにお金を出してくれたのだ。
あたしも星月(ほしづく)さんにはお世話になっているから、と、そのお礼で……という意味合いもあったらしいのだが。
「麗花ってさ〜、」
そうして、出かける事に決まっていた、その日の朝。
みあおが教会に行くなり出迎えたのは、いつものシスター服ではなく、落ち着いた色調のセーターとロングスカートを身に纏っていた麗花であった。
――へぇ、おっしゃれぇ。
「最近好きな人でもできたの? もしかして」
みあおの訪問に気がついたのか、玄関先まで出てきたユリウスに適当な朝の挨拶を返したその後、みあおは思わず、腰を折って視線の高さを合わせてくれていた麗花へと、そんな事を問うていた。
途端、
「なっ――ち、違いますっ! そんな、」
「だって随分と可愛い服、着てるから」
そんなの、持ってたんだ。
言わんばかりに頭の後ろで手を組み、
「お姉さんから服、借りて来たんだけど……まぁ、それなら良さそうだね!」
みあおの姉の姉は、通常では考えられないような量の服を持ち合わせていた。それこそ、普通の服から――人間が、一生の中で着るはずがなさそうなものまで。
考えるみあおのその手前で、麗花は俯き気味に、手元の鞄を握り締めると、
「……その、もらい物なんです」
「もらいものぉ?」
みあおは麗花へと訝しむかのような視線をじっと向け、にんまりと人の悪い笑顔を浮かべる。
「誰から? まさかユリウスからじゃないでしょ」
ユリウスになんてそんな頭、無さそうだし。
正面からみあおに追い詰められ、
「当然です! 猊下がそんな気の効いた事を――、」
「気の効いたって、じゃあ、もらって嬉しかったんだ!」
「……と、とにかくっ!」
麗花はこほんっ、と一つ咳払いをすると、
「そんなんじゃあ、ありません……!」
視線を逸らして、否定する。
否定するものの――、
……説得力無いって。
「そっかー、麗花にもいつの間にか彼氏ができてたんだね! みあお知らなかったよ!」
「ちっ、違いますっ! ただちょっと、とある方から頂いただけで……!」
「でもお洒落だよっ、麗花」
しかし、はたっと、
からかわれている事に照れていたのか、はたまたみあおの言うところが本当であったのか――みあおにはどちらかはわからなかったが、真っ赤になって否定する麗花へと、みあおは自分の両の手を打ち、
「ふつーの女の子みたい!」
ぱっと、笑いかける。
麗花はその笑顔に、きょとん、とみあおの表情を覗き込むと、
「……えっと……」
「可愛いって! 本当にかわいいよー、麗花! あー、お姉さんが見たら絶対喜ぶのにな、これ……ねぇユリウス、麗花、可愛いよねぇ!」
「ええ、とってもお可愛らしいかと。まぁ、それでその分性格もお可愛らしくなって下されば――っ!」
しかしみあおは、答えかかったユリウスの足を、麗花からは見えない所でおもいきり踏ん付けてやる。
こんの……!
情緒の欠片も無い。無いにも程がある。
「さ、行こうよ麗花! こーんな駄目男放っておいてさ! 何さユリウス! みあおユリウスのコトなんか知らないからね! 帰りに和菓子買って来てやる。あ、麗花、洋菓子とお金とはきちんと隠した? じゃないと大変な事になるって!」
「ええっ?! それはご勘弁を……是非あまーいショートケーキをですね、」
「知らないっ! 絶対買って来ない! ふんだ! 行くよー、麗花っ!」
自分の考えた事の無かった褒められ方にか、その場で戸惑い気味であった麗花の腕を、ぐっと引く。
そうしてユリウスを振り払うべく、教会の手前の歩道まで駆け出してから、
「朝ごはんも、まだだよね! おいしーお店! きちんとチェックしてきたんだ!」
改めて立ち止まり、鞄の中から都内案内の雑誌を引っ張り出し、ほら、ここここ! と一つの写真に指を指す。
相当読み込まれているらしく、沢山の折り目がつけられたその雑誌。紙面には、赤いサインペンによって、様々な事柄が付け加えられていた。
曰く、パフェが美味しい、チョコレートケーキが自慢のお店、お姉さんのオススメ! 交通の便良し――等々。
「みあおも雑誌見てこのお店に興味があったんだけど、お姉さんに意見聞いたら、オススメだって言うから!」
その、真っ赤なハナマルに旗をたてた印のつけられた場所を麗花に見せつけながら、ね、どう? と小首を傾げて問いかける。
「モーニングセットに、デザートがつくんだって! そのモーニングセットっていうのも、和食とか洋食とか色々あるみたい。で、ね、デザートのアイスクリームがとっても美味しいんだって!」
「アイスクリームですか」
へぇ……と雑誌の中をまじまじと覗き込みながら、麗花が呟く。
でもみあおちゃん、
「本当に色々調べてきたんですね……」
「もっちろん! 折角なんだしさ!」
関心する麗花に、みあおは胸を張ってみせる。
この手の情報の整理は、
もー慣れてるもんねっ!
今までにも、旅行や依頼や取材やら、色々な事に関わってきていた。その一つ一つをより楽しむ為に、旅行雑誌の確認やホームページでの情報集めは欠かせないものなのだ。
「それにアイスクリーム、美味しそうよねぇ……」
「でしょっ?! だったら決まり!」
独り言かのような麗花の声音に、早速みあおは雑誌を鞄へとしまい込み、麗花の手を取った。
そうしてそのまま、走り出す。
その際こっそり、麗花を含めた自分の周囲に、自分の青い鳥としての能力を――霊羽を使って結界を張り巡らせ、
「あ、ちょっと、そんなに急がなくても――!」
「だめだめ! 時間だって無いんだから、急がなくちゃ!――今日みあお、麗花のこと、放さないからね!」
慌てて歩調をあわせる麗花に、みあおは不敵に微笑みかけていた。
朝食は、朝から豪勢なグラタンのセットを。紅茶も合わせて飲みながら、会話と共に嗜んで。
そうして、暫く――、
「ウィンドウショッピング?」
食器も下げられ、デザートのアイスクリームが出てきたその頃。みあおからもちかけられていたこれからの予定の話に、麗花はきょとん、と、鸚鵡返しに問い返していた。
……って、――ああ、っと、
「確か商品を見て歩く事、ですよね?」
「そう!」
忘れていたわ……そんな単語。
麗花は中学校を卒業してからというもの、意識してそのような事をやった事も無かったのだから。
「でもそれって、わざわざしに行くもの……なんですか?」
「え、そーだよ。麗花、もしかして、」
知らなかったの?
チョコレートソースのかかったバニラアイスをつつきながら、みあおは麗花の瞳を覗き込む。
麗花はその視線に、紅茶を一口、
「いや、買い物のついでにするものなんだなー、って思っていたんだけど……」
そういうものなのね、と、一言呟きを付け加えた。
「うん、そーだよ。わざわざ見に行くの! ねぇ麗花、みあおはそーいうの、大好きだよ!」
買うために、街に行くのではなく、
――見るために、街に出る。
一見無意味なように感じられるこの行動も、
「お姉さんも、きっとこれは都会の文化だ! って言ってたし。ほら、賑やかな展覧会みたいに!」
……ほら、あのドレス! 可愛いなぁ……ね?
ねぇ、みあおちゃん? と、一緒に出かけるその度に、手を握ってくれる、
だよね、お姉さん!
楽しそうな、あの笑顔。古風なセーラー服姿が、だからこそ逆に、新しい街に鮮やかなみあおの姉のその言葉。
そう言って、ブティックの青いドレスを眺めていた姉の姿と、そこに一緒にいた自分の楽しさとを思い返しながら、
「きっと歩いてれば楽しくなるって! ね?」
麗花にもこういう気持ち、わかってほしいんだけどなぁ。
麗花のデザートから、ちょこん、っと生クリームを拝借する。
「だぁって、あんなの買ってたらお金なんていくらあっても足りないし。こう、服とか見ながら、色々考えるの。あれを着たら楽しいだろうなぁ、とか、お喋りも弾むって!」
みそのお姉さんは、みなもお姉ちゃんを着せ替える方が楽しいみたいだけど!
「でも、確かにそれも面白そうよねぇ……考えてやった事なかったから、」
「絶対、面白いって! それに! カワイイものも一杯あるし!」
「……かわいいもの、ですかっ?」
ほぉら、乗ってきた!
朝からやはりみあおに遠慮していたのか、少々控えめだった麗花の瞳が一瞬、きらりと輝いたような気がした。
――麗花の可愛い物好きは、
実は部屋が、ぬいぐるみだらけであるほど――ユリウスが苦笑するほどの重傷で。
「そう! 大きなネコちゃんのぬいぐるみとか、みあお、この前お姉さんと見たばっかりだし! お姉さんは、クラゲのぬいぐるみが気に入ったみたいだったけど」
「良いですね、それ! 大きいんですか……ふわふわなのっ?」
「そりゃあもう! ふっかふかのふわふわだよ! だから見に行こうよ、麗花! 百聞は一見にしかずってゆーでしょ!」
「……ですね!」
よっし、大成功!
みあおは心の中で、勝利のブイサインを決める。
麗花って、こーいうトコロがまた面白いんだよね!
「それじゃあ、アイス食べ終わったらウィンドウショッピングだね! あ、でも、その前に。お昼、どこで食べようか?」
思い出し、みあおは再び鞄から雑誌を引っ張り出してくる。
街中に出てしまってから慌しく決めるより、ここで落ち着いて決めた方が後々楽なのは目に見えている。
「ほら、並ぶお店もあるからさ、そうだったら早く行かなきゃまずいでしょ? 昼は混むから!」
生クリームを手にするスプーンの上に乗せた麗花に示されたのは、先ほどとは又違った頁であった。
――しかし麗花は。
しばしその頁に、じっと、見入ってから、
「……駄目……、」
「んんっ?」
すっと片手で、みあおの方へと雑誌を寄せ返した。
「どうしたの、麗花? もしかして中華は駄目? だったら和食が――、」
「違います……」
麗花は心配そうに見つめてくるみあおへと、はたはたと手を振ると、
「その、おなか一杯で――まだ考えたくないかなぁ、とか」
そうして、ウィンドウショッピングを存分に楽しんだ後は、お楽しみの昼食を中華のお店嗜み。
みあおはその際、杏仁豆腐を食べる麗花の姿を携帯電話で激写――麗花にデータを消してぇっ! と懇願されたりと、そのような騒ぎがあったりもしたのだが。
それから、今。
「……任せる、って言われましても……、」
『午後は麗花に、任せるね!』
みあおの言葉に適当な地図で店を探し、ここまで来たのは良いのだが。
……でも、と、
麗花は照れたように頭を掻くと、
「正直、困っちゃうのよねぇ――」
選択数という名の自由が増えれば増えるほど、逆にその選択に困ってしまう。
普段は近場のスーパーか、良くて本屋か雑貨屋にくらいしか行かない麗花にとって、これだけ店の並ぶ街から、好きなものを選び出すという事は至難の業でもあった。
結局は、散々迷った挙句。
「早くー! もうみあおヒマっ!」
「……よねぇ、ですよね、ヒマですよね……でも、」
決まらないんですもの。
棚を見上げながら、苦笑する。
――並びに並ぶ、数々のフルート用の楽譜の方を。
二人がやって来ていたのは、とある小さな楽器店であった。
悩む麗花のその周囲では、沢山の楽器達が硝子ケースの中に並べられて販売されていた。フルートは勿論、サックス、クラリネット、様々な管楽器には、
絶対、ゼロ一個多いって。
みあおが苦笑してしまうほどの値段が取り付けられてある。
これでピアノの一つでも置いてあれば、鍵盤で遊びながら暇つぶしの一つでもできるのだろうが、
「ねー、ヒマー!」
生憎、ここには管楽器しか置いていないらしい――。
「うぅん……ねぇ、みあおちゃんは、バッハとモーツァルトとどっちが良いと思います?」
「知らないっ! みあおはどっちでも良いと思うよ……、あ、これはっ?!」
麗花が悩み始めて、そろそろ十分にはなる。みあおも最初は手元の携帯電話のカメラやデジタルカメラで麗花を撮ったりと、色々楽しんでもいたのだが――、
もう、限界!
みあおは麗花の言葉に、適当な楽譜を手に取ると、はいっ、とそれを手渡した。
麗花は楽譜を受取ると、
「……へぇ、ヘンデルですか。古風なのが好きなんですね」
「うんうん、だから早く下に行こうよ! 絶対それが良いって!」
「ヘンデルも確かに、良いかなぁ……」
勿論みあおは、ヘンデルなど良く知らない。中に書かれている曲についても、何も知らないのだが。
早く決めてよ、麗花。
下の階では、可愛いキャラクターグッズも待っているというのに――。
「でも、」
「ああっ、じゃあこれはっ?!」
「……ワーグナー? あぁ、それも……」
――この後。
この駆け引きは、十分ほど続く事となる。
「卵と、バターと……あ、ありがとう、みあおちゃん! それはそこに入れておいてくれて構わないから……」
そうして。
楽器屋で麗花が楽譜を購入した――その後。
二人は、そのビルの下の階で、愛らしいぬいぐるみや文房具を見つめて騒ぎあい、お揃いのシャープペンシルを購入し合ったりもしていた。
――最初は麗花のあまりの騒ぎっぷりに、流石のみあおも驚いてしまっていたのだが、
麗花って、結構意外なところ、あるからなぁ。
普段は教会のシスターとして、手のかかる枢機卿の代わりにしっかりと務めている麗花も、
やっぱり、普通の女の子なんだって。
改めて、認識してしまう。それが私服を着ていれば、なおの事。
それからは、一緒に記念写真を撮り、プリクラを撮って。
麗花から差し出された手を繋ぎ、みあおから伸ばされた手を繋ぎ、共に笑い合って歩きあい――、
「ええっと、砂糖、よねぇ……」
けれども楽しい時間はあっという間に過ぎ去り、時間はもはや六時頃となっていた。
……そろそろ帰らないと、猊下も心配ですし、と。
もう少し遊ぼうよ! と、みあおも食い下がってみたのだが、どうやらやはり、あの枢機卿の事が相当に気にかかるらしい。それに、みあおちゃんのお母様も心配してると思うし――と結局諭されてしまい、帰りがてらに、教会近くのスーパーまでやって来ていた。
でもまぁ……又遊んでくれるって、約束してくれたし!
ベーキングパウダーを探す麗花の後姿を追いかけながら、みあおは鞄に揺れる、小さな小鳥のマスコットに向ってえへへと笑いかける。
今日のお礼です、と、
麗花があまりないお小遣いから、みあおにプレゼントしてくれたばかりの青い鳥――お揃いの、マスコット。
と、
不意に、
「……ええっと、それから、小麦粉、かなぁ……みあおちゃん、ご家族の方って、チーズは平気なんですか?」
「平気なんじゃない、かなぁ? でも、何で?」
「いえ、」
麗花は買い物かごの中に小麦粉を二袋入れながら、見上げてくるみあおへと視線を返す。
そうしてゆっくりと、やわらかく頬を綻ばせると、
「今日の、お礼がしたくて――私には料理くらいしかできませんけれど、でも良かったら帰ってから、家族皆でホールケーキでも囲んでくれたらな、って、そう思って」
私が今日楽しませてもらった分、私のケーキなんかで十分にお礼ができる、だなんて思わないけれど。
――でも、
「……ええっ、良いのっ?! 麗花、ケーキ焼いてくれるの?!」
「本当はケーキ屋さんでケーキを買った方が良いのかなぁ、とも思うけれど……」
「そんなコトないって! 麗花、麗花の料理が上手だから、ユリウスもあんなに我侭になってるんだよ、きっと。わぁ、嬉しいなぁ! 麗花のケーキ、お母さんにも食べさせてあげたかったんだ!」
少しでも、喜んでくれたら嬉しいから。
それに、家族の団らんなんて、ちょっぴり懐かしいし……ね。
自分の家族のことを、本当に嬉しそうに、楽しそうに話すみあおのその姿。大好きな人と一緒にいられるその幸せな時間のお手伝いを、
「それにみあおちゃんは、本当にご家族のことが、大好きですものね」
「もっちろん!」
少しだけ、お手伝いさせてほしいものね――。
思いながら、麗花は腰を屈める。
――みあおの頭にそっと、ありがとうの言葉と共にその手を添えながら。
Fine
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I caratteri. 〜登場人物
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<PC>
★ 海原 みあお 〈Miamo Unabara〉
整理番号:1415 性別:女 年齢:13歳
職業:小学生
<NPC>
☆ 星月 麗花 〈Reika Hoshizuku〉
性別:女 年齢:19歳
職業:見習いシスター兼死霊使い(ネクロマンサー)
☆ ユリウス・アレッサンドロ
性別:男 年齢:27歳
職業:枢機卿兼教皇庁公認エクソシスト
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Dalla scrivente. 〜ライター通信
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まずは長々と、本当にお疲れ様でございました。
今晩は、今宵はいかがお過ごしになっていますでしょうか。海月でございます。
今回はご発注を頂きまして、本当にありがとうございました。又、納品の方が相当遅れてしまいまして、大変申し訳無く存じます。
麗花の方のご指名、わざわざ遊びに連れて行って下さるそうで、本当に嬉しかったです。確かにあまり外には出て歩かないものですから……麗花の方も、色々と楽しかったそうです。
さり気なくユリウスがかなり虐められていたような気がしましたが、とても素適過ぎて本気で爆笑してしまいました。確かに放っておいても拾い食いはしないでしょうけれども――きっとみあおちゃん、帰りにはきっちりと和菓子を買って行ったのではないかなぁ、と思います。一応夕食は、教会で麗花がご馳走させていただく形になったのではないかと思いつつ……。
では、短くなりましたが、そろそろこの辺で失礼致します。
様々なご無礼があるかとは思いますが、どうかご容赦下さりますと幸いでございます。今回は本当に、申し訳ございませんでした。重ねてお詫び申し上げます。
何かありましたら、ご遠慮なくテラコン等よりご連絡をよこしてやって下さいませ。
――又どこかでお会いできます事を祈りつつ……。
12 marzo 2004
Lina Umizuki
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