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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


あやかしバー
■ACT 0 物語の発端は……
 様々な都市伝説が寄せられる「ゴーストネットOFF」。
そこにこんな投稿が寄せられた。

はじめまして。ryuといいます。
私が学校で聞いた噂話の真相を確かめてもらいたくて今回投稿いたしました。
噂話というのは私の家の近くにある駅にはずいぶん昔に閉鎖された路線があるのですが、その路線が
真夜中を過ぎると時刻表にない電車が走り、その電車の行く先にはみた事もない町があるのだ、というものなのです。
その町の駅前には一軒のバーがあり、そこには今まで見た事もない、そして飲んだ事もないカクテルがあるんだ、ということなんだそうです。
ただ、そのカクテルを飲むともう、二度と元の世界には帰れないのだそうです。

実際、同じ講座の友達の友達がその真相を確かめに真夜中に出かけたきり、 もう数日間戻って来ていないと言っていました。

もしかしたらもっと別の事情なのかもしれません、あるいは冗談か何かなのかもしれません。
……でも、昨日、私の友達もその子から電話がかかってきて呼ばれた、と言って出かけたきり帰ってきません。
携帯に電話をかけてもつながらず、まさか……と不安で仕方ありません。

どなたか、この噂の真相を知りませんでしょうか?
あるいは、誰か、実際に確かめて帰ってきた人はいませんでしょうか?
どなたか、教えてください。

■ACT 1 幻のカクテル
 セレスティ・カーニンガムがその情報を見つけたのは、自宅でインターネットをしていた時だった。
「幻のカクテル、ですか……。都市伝説に似たものがあったでしょうか……?」
 お酒には目がないセレスティ。それは一度その目にし、口にしてみなくてはと思った。
 とはいっても、本当に根も葉もない都市伝説なのかもしれない。念のためセレスティはインターネット上から同じような話の噂や情報を集めることにした。そして、その投稿者であるryuにより詳しい情報を教えてもらえるようメールを打った。
 
 その半日後。夕方あたりのことだった。
持っている携帯にパソコンのメールサーバーに何か、メールがついたと言う連絡メール。一緒に添付されているメール本文のさわりを見ると、どうやらryuからの返事だったようだ。
「ちょっと確認してみたいですね……」
そういえば、この近くにはryuが投稿していたホームページ<ゴーストネットOFF>の管理人が出入りしているというインターネットカフェがあったはずだ。
 もし、その管理人に会えればもう少し詳しい情報を得られるかもしれない。そう思い、彼はとあるインターネットカフェに入ることにした。
店内に入り、パソコンのうちの1台を借りて早速メールボックスを開く。
その情報に一通り目を通してから例の都市伝説にまつわる情報をまとめたFTPサーバーに保管する。
 その時、隣から流れてきた話に彼は興味をひかれた。どうやら同じバーの話をしているようだ。そして、話は実際に現地に行ってみよう、ということになっているらしい。
 それは好都合、セレスティはそう思い、声をかけた。
「あの、それでしたら今しがた、ryuさんからお話を伺いましたよ? ああ、突然話に割り込んでしまってすみません。私はセレスティ。セレスティ・カーニンガム。いえ、お酒がとても好きでして……。こちらでお酒にまつわる話がある、と聞きつけてこうしてお邪魔した次第なのですが……」
 隣で話をしていたのは男女の2人組だった。先ほど集めておいた情報を2人に見せる。
「まるで、こっちから一方通行の通路か何かみたいだよね」
こっちも自己紹介しないと、と青年は自分の名を名乗る。
名前は柚品・弧月。この店には偶然立ち寄ったのだそうだ。
 すると、少女から少し驚いたような声が上がる。
「まぁ、妹からお名前は伺った事があります。海原・みそのと申します」
「海原……。ああ、こっちこそよくお世話に……」
みそのの妹と弧月は顔見知りらしい。彼は納得したような声で答えた。
「お互い自己紹介も終えた事ですし、早速その町に行ってみましょうか?」
セレスティはにっこりと微笑んだ。

■ACT 2 不思議列車の行き先は……
 3人は<ゴーストネット>を出ると、依頼者の言っていた駅へと向かった。
 途中、「多少なりとも大人に見える姿の方がいいでしょう」と希望するみそののために、彼女の家に立ち寄ってから現地へ向かう。
「0号改札は……」
黒の、マーメイドラインのカクテルドレスに身を包んだみそのはあたりを見回す。
「ああ、あそこ……かな?」
自販機の脇。隠れるように小さな改札口がある。どうやら、それが噂の改札のようだ。
「行きましょうか……」
 改札を抜け、待つことしばし。闇の向こうから現れたのは1両のみの編成の、やや、古い型と思われる電車。
 3人は目の前に止まった、その電車に乗り込んだ。

 闇の中を走ること約15分。電車は終点にたどり着く。
「……彩色町(あやいろまち)? そんな名前じゃなかったような……」
セレスティが首を傾げた。集めた情報によればそんな名前の駅ではなかったはずだ。
「どうやら、ここがその町に間違いなさそうですね……」
弧月があたりを警戒する。
「……少し、妙な感じの所です……」
あたりの「流れ」の異常をみそのは感じていた。そう、言ってみればここは時間の流れる感じ、空気の感じが少し違うらしい。
いわゆる異世界とか空間の狭間みたいなものかしら? 彼女は言った。
「じゃあ……この近くにそのバーがある、ってことですね……」
ホームから見えるかな? そう思って弧月はあたりを見回す。
すると、闇の中にぽつん、と一軒明かりのついている建物が見えた。
「あれ、ですかね?」
「あれ、でしょうか……」
3人は、その明かりのついている建物へ向かうことにした。

 駅を出て数分とかからずに、3人はその建物の前まで来た。
いぶした銅版に<Voice>という文字。大きなガラス張りの扉の奥はやや暗く、完全には見通せない。
「とりあえず、入ってみましょう」
思い切って、扉を押し開ける。すると……
「いらっしゃいませ。3名様ですか?」
明るい声と共にウエイトレスらしき女性が出てきた。
「ええ、出来ましたら……カウンター席をお願いできますか?」
幻のカクテルを頼むならバーテンダーの動きも見ておきたい、そう思ったセレスティはすかさず言う。
「ええ、大丈夫ですよ。では、こちらへどうぞ」
にこっと微笑んだウエイトレスは3人をカウンター席へと案内する。
「いらっしゃいませ。ご注文がお決まりになりましたらお伺いいたします」
カウンターにあるスツールに腰掛けると、カウンターの奥にいた女性のバーテンダーがおしぼりを渡し、コースターを3人の前に用意する。
「あの、ここに幻のカクテルがある、と聞いたのですが、それが飲みたくて参りましたの」
「幻の……ああ、あのカクテルですね。……そうですね、少々お待ちください」
やや、彼女の表情が変わった気がする。彼女は店の奥に行き、誰かと話をしているようだ。
 そうしてしばらく。奥から出てきたのは、今度は男性のバーテンダーだった。
「お待たせして申し訳ありません。幻のカクテル、ですね」
穏やかな表情で彼は注文を確認する。見たところ20代前半。バーテンダーとしては若そうだ。
「ええ、お願いします」
弧月が答えると彼は奥から細長いタイプのシャンパングラスを出す。
次にお酒を3本。棚から取り出して3人の前に置く。
彼らに向けられたビンのラベルには……
「読めません、ね……」
アルファベットを使ってはいるのだが、どの国の言葉にも当てはまらない。
「あの、これはどこのどういうお酒なんですか?」
セレスティが尋ねる。
「こちらは、北欧で隠し伝えられるお酒でして。『過去』『現在』『未来』という名がついています」
バーテンダーの青年はにこりと微笑んでそう答え、その3本を手に取る。
グラスにマドラーをあて、そろそろと3種のお酒を順に注いでいく。それぞれのお酒は不思議なくらいに綺麗な層に分かれていく。プース・カフェと言われるカクテルの種類だ。
 お酒は含まれる成分の違いで、比重が違う。それを計算して注ぐことで、こうした層構造を作り出す手法だ。
 『過去』は赤、『現在』は青、『未来』は半透明の白らしい。彼は、出来上がったそれをそれぞれの前に置く。
「どうぞ」
「ほぅ……」
セレスティは小さく声を上げる。
「じゃあ、さっそく……」
弧月が、先陣を切って飲もう、とグラスに触れたときだ。
「え……!?」
すぅ、っと過去の層と現在の層が混じりあう。紫と白の層へと変わる。
「私もですわね……」
セレスティとみそののカクテルにも異変があった。
綺麗な層を保っていたそのカクテルは、グラスに触れたとたん3層全てが混ざり合って、淡いすみれ色に変わったのだ。
「……これは?」
3人の驚く様子に、バーテンダーの青年はただ、ニコニコと穏やかな笑みを浮かべるだけ。
「このカクテルは……お客様を反映するんです」
「何かの事情で時間にあまり執着しない方ほど、その層はより混ざり合うんです。そして、混ざり合う度合いが強いほど、そのお酒はおいしくなるんですよ……」
「飲む人で……味はそれぞれ違うと?」
「ええ。グラスに触れるだけでその混ざり具合は変わってしまいます」
だから幻のカクテルなのだろう。
(人の心に感応するカクテル、ですか……)
セレスティはそっと、自分のカクテルを見る。その液体の動きは一体どのような感じなのだろう?

 力を使って見たそのカクテルは、一見ごく普通のカクテルだった。
 しかし、その中にごくわずかに何か、水とは違う、かといって空気などとも違う何かが混じっているようだった。
 (この「何か」が事件の原因なのでしょうか……?)

「あの……」
思い切ってバーテンダーに尋ねてみる。
「このカクテルを飲むと帰れなくなる……。そんな噂を聞いたのですが」
その言葉を聞き、バーテンダーが表情を曇らせるかと思ったが、その反応はまったく逆だった。
にこりと微笑んで、
「やはり、あなた方はあの『書き込み』をみて来て下さった方ですね?」
「あの、じゃあ、もしかして……」
バーテンダーはこくり、とうなずいた。

■ACT 3 つまりのところ……
「申し訳ありません。実は、先日偶然この町に迷い込まれたお客様がおりまして……。帰り道がわからない、とのことでどなたか一緒に連れ帰っていただける方を探していた次第です」
すると、奥からウエイトレスが1人の女性を連れてくる。
「この人たちが一緒に帰ってくれるの?? 申し訳ないんだけどぉ、帰り道教えてくれない?? 実はさぁ、あたしどこから来たか忘れちゃったんだよねぇ?」
どうも話によれば友人と宴会をして、よくわからないうちに電車に乗ったところまでは覚えているんだという。
「ここに来たときにー、あたしいろいろ悩んでたような気がするんだけど、なんだったのか綺麗さーっぱり忘れちゃったんだよねぇ? そのついでにどこに住んでたかも忘れちゃったんだよ」
あははー、と女性は状況に似合わない明るい声だ。バーテンダーが3人に補足を述べる。
「このお客様、悩みを抱えてらっしゃったみたいで……。帰りたくない、と一晩あのカクテルを飲み明かされた結果、どうも、悩みと共に自分の帰るべき場所も忘れてしまったようなのです……」
このカクテルには、飲む人が考えている嫌なことや辛い事を一つ、忘れさせたり和らげたりする作用があるのだという。しかし、この女性はどうやら制止も聞かずに「度を越えて」飲んでしまったらしい。
3人は困ったな、という顔をしたがとりあえず、武蔵五日市駅まで連れ帰る事を承諾した。

 その後、その女性と共に4人はしばらくお酒を飲み、バーの2階に泊めてもらうことになった。
バーテンダーの話によれば彩色町からの電車は昼の12時、15時、18時、21時のたった4本なのだという。ちなみに言えば逆は0時、3時、6時、9時。
「確かに、こんなに本数が少なければ行ったはいいが帰りの電車がない、ってあわてるかも知れませんね」
弧月は苦笑する。
「でも、カクテルはおいしかったですわ」
みそののいうとおり、その「幻のカクテル」は、いままでに飲んだことがない、柔らかい口当たりのカクテルだった。飲むとほんの少し、心が軽くなる感じもした。それがバーテンダーの言っていた「カクテルの効能」なのだろう。
「でも……、酒は飲んでも飲まれるな、というのをそのまま表したようなカクテルでしたね」
セレスティは少し、苦笑しつつ同行している女性を見た。口当たり良く、飲めば飲むほど心地が良くなるこのカクテル。しかし飲みすぎると大事なことも忘れてしまうのは、少々まずいかもしれない。
 だからこそ、3人は量は程々に抑えたのだった。
「んー……。とりあえず帰ったらー、友達に電話しなきゃー」
当の女性は抱えていたであろう嫌な事を綺麗さっぱり忘れてしまっているせいか、能天気なものである。
「あ、電車来たよー」
すっかり日の昇った正午。線路の向こう側からあの古ぼけた車両が姿を現す。
そして、ごくわずかな乗客を乗せ、再び線路の向こう側へ走り出す。
一晩限りの不思議な旅行はこれにて幕引き、となったわけである……。

END

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1388/海原・みその/女/13/深淵の巫女】
【1582/柚品・弧月/男/22/大学生】
【1883/セレスティ・カーニンガム/男性/725/財閥総帥・占い師・水霊使い】

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■         ライター通信          ■
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はじめまして、この度はご参加頂きまことにありがとうございました。
なんとなく暮らしている脇に何食わぬ顔で存在する異世界。それが今回の舞台となります。
ほんの少しでも、その異世界<彩色町>に触れて頂けるきっかけとなりましたら幸いです。

本日の舞台「異界:東京都西多摩郡彩色町」
http://omc.terranetz.jp/creators_room/room_view.cgi?ROOMID=476