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<東京怪談・PCゲームノベル>


★思い出はあの頃のまま

思い出はあの頃のまま
色褪せるはなく
幼いオレにとって
あの人は恩人であり
初恋だった


門屋将太郎は、朝起きたとき天井を見上げていた。
懐かしい思い出を夢で見たようだ。
「懐かしいな…」
まだその余韻に浸っている。懐かしさのあまりか涙を流している。
5歳の時、母親に連れられ精神病院に通ったときの、笑顔の印象的な女医、加登脇美雪。
彼にとって、人生を変えてくれた恩人であり、初恋の人だった。


―怖がらなくて良いから。本当のことなのね?
あの初めて聞いた心が落ち着く声。お袋の後ろで隠れて泣いていた。が…全てを受け入れてくれる人と思った。まだ、「心を読む」力が暴走しているのに、彼女はしっかり俺の目を見ていた。
―ボクが言っていることは本当なのね?
頷いた。
―凄いね。ゆっくり落ち着いてお話ししましょう。
笑顔と、彼女の優しさに俺は嬉しさのあまり泣いた。
それから、お袋同伴だったが、カウンセリングは俺と先生だけで話をしていた。それに、徐々に俺は先生に会いたくて通院を楽しみにしていた。お袋にはどう見られていたかは「だんだん明るくなって良かった」や、「あの先生が好きなのね」とか読心能力で分かってしまう。でも安堵しているのは確かだった。最後の事は恥ずかしかったが、やはりこの能力は不便だなと思っていた。目を見たらダイレクトに分かる以上、幾ら子供の時の俺だって邪魔なものだと思うってことだ。
極力、外出するときは人と目を合わせずに先生だけに目を合わせる。
彼女は本音しか「語って」いない。会話と照合してもほぼそのままだ。ただ、計算する所が多いのか、思い描いている考えが数個あるのも分かってしまうが、「今日の夕ご飯どうしよう」とか『ごく一般的な』考えを持っていたのだ。思わず笑ってしまうことがある。心を読んだ事を正直に話しても彼女は褒めて、又話に花が咲くのだ。
しかし、堂々と心でこう思っていたのだ。
―将ちゃん、その能力嫌い?
それだけどうしても嫌いと言ってしまった。
彼女は、困った顔をする。
「じゃ、好きになりましょう」
「え?どうして?」
先生は微笑みながら即答し、俺は戸惑った。
「皆には信じられない能力というのは、実在するというのは将ちゃんが知っているでしょ?でも、其れは〈何かのため〉に役に立つために授かったものよ」
「…そう?」
上目遣いで彼女を見る。彼女は本気だった。
「私は読心能力、ほか念じるだけで魔法みたいな事を出来る人を〈能力者〉と言うの。〈異能者〉とも言う人もいるけど、其れは好きになれないわ。私は、制御できない〈能力者〉の能力制御のお手伝いをしているのよ」
と、加登脇先生は言った。
「…制御できたら?」
おずおず訊く俺。
「将ちゃん自身と、その能力を好きになるわ。また新しい世界が開けるわよ」
「うん!」
その言葉が嬉しくて、頷いたっけ。

まずは、目を閉じて瞑想。
「能力には必ずスイッチがあるの。意識を集中して…深呼吸」
彼女の声が聞こえる。
「心を外から中へ〜、中から外へ〜」
と、呼吸と瞑想のイメージを教えてくれる先生。彼女の暖かい手が添えられているみたいで、更に安心感を覚えた。2〜3歳の時にお袋に何かで褒められ抱き寄せられた時と同じ喜びと安堵感だ。
そして、自分の心を「動かす」ことで、能力の回路が「見えた」。
いまで言う電子機器のプリント基板の様だった。神経や、ある考えに行き立つ事、いま考えて処理している事がずらりと線が並んでいた。
その中で、ずっと赤く光っているものが、「能力」なのだと分かった。
「見つけたかな?」
彼女はそう見えているか分かっているかのように訊いてきた。
「うん」
辿って、その先に何があるか見るようにまた瞑想。
目をつぶっているので、光は一層まぶしくなる。その先に「何か」があった。
「何かあるよ、先生」
「じゃ、また中から外へ〜」
と、深呼吸と瞑想をする。
そして、その日の治療は終わった。
「あれは?」
「其れがスイッチよ。オコタのスイッチと同じね。今日は見つけただけだから今日はゆっくり休んでね」
「はい」
瞑想をするたびに、能力が強くなる。しかし、徐々に目を見てもたまにしか人の心を読むことはなくなっている。たまにかなりの情報を読んでしまうこともあってビックリして泣いたこともあったが、先生に会うことで、落ち着いた。
彼女曰く、まだ完全とは行かないけれど、制御するように身体が動いているとの事だった。
「頑張っているね。この調子よ」
「ありがとう!」
やっぱり、俺は加登脇先生が好きだ。
「あとは、自分で制御出来るよう、ここと自宅で訓練ね」
「はい!」
真剣に自分と向き合い、能力制御訓練を開始する。まずは実戦だ。もちろん、何処に行っても訓練も怠らない。先生から全ての「メニュー」を「読んだ」、其れがかなり記憶に残っている。
小学校に上がったとき、引っかけ問題で人をからかうヤツがいたが、そいつの答えを心で読んでコテンパにしたし、心を読まないよう意識してクラスメートと話をすることに努力した。半々、嘘を「読んだ」。実は俺が好きとかと何かとあったが、学校の先生の授業はこの能力を有効利用してみた。あ、勘違いするな、学校の授業で、先生が誰を当てるかとかを読むだけだ。ま、ちょっとテストの答えとかカンニングしちゃったけどよ。
そのおかげで口喧嘩では無敗になったな。何故か心を読まずとも、相手が何を言おうとしているか行動が分かっていく。多分読心術の副産物なのだと思った。
「門屋を言い負かすことは出来ない」
と、恐れられたこともあったな。

これは11歳の時。前に「俺が好き」と思ってくれていた女の子が告白して来たときビックリしたが。本当かと心「読もう」と思ってしまったが、何か後ろめたいし、其れはダメだと思った。
目をつぶって
「ゴメン…」
と、謝る。いまの俺といては、この子は不幸になる。まだ能力をコントロール出来ないし、皆は知らない。彼女は泣いた。おたおたする俺は、先生のあの笑みを思い出し、勇気を出して目を開き、彼女に向かって、
「ホントゴメン…でも友達でいようね」
彼女に握手するため手を差し出す。すると彼女は泣きやんでそして、
「門屋くん優しいね」
と、笑って握手してくれた。
その時だ…
―前に見たスイッチがパチとなった気がした。本当にオコタのスイッチみたいに…軽く。全体に能力が満ちあふれる。そして、どう使うのか、何処にどう回路とスイッチがあるのか一瞬にして理解したのだ。―
あとは、オンオフをするだけでこの能力が使えるようになった。家では嬉しさのあまりはしゃぎすぎてお袋や親父に怒られたっけ…。

その事を正直に先生に話した。
先生は、また笑って。
「もう、大丈夫ね。頑張ったね、将ちゃん」
此が、俺が最後に聞いた加登脇先生の言葉だった。
そして、握手してお互い笑って
「ありがとうございました」
俺は、涙をこらえ病院を後にした。



そしていま、井ヶ田総合病院で、同姓同名でしかも姿があの時そっくりな女医さんと話している。機関誌に載っており、気になったので会いに行ったのだ。
「あの門屋心理相談所の、門屋将太郎さん?」
驚いていたがにこやかに笑って加登脇先生。
何故俺のことを知っているのだろう?心を読みたくなった気になったが止めた。
「そんなに有名かな?」
「そうですよ」
と、それから病院内で会話して、驚いたことすら忘れた。


夕日が綺麗だった。
しかし思い出は、色鮮やかに残っている。
一切色褪せず。一語一句忘れることなく。
あの少年時代の加登脇先生との思い出に浸った。


End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1522 門屋・将太郎 28 男 臨床心理士】


【NPC 加登脇・美雪 ? 女 精神科医】

※ライターと加登脇さんの座談会
加登脇「将ちゃん、お久しぶり〜♪先生は元気よ。でも悲しいのは、気がついてくれないことかな。仕方ないわよね、だって能力制御して会話していたものね。えらい、えらい。撫で撫で(ぇ)。あ、そうそう私って特殊な能力だからそんなに依頼などで出ることが出来ないのよね…ライターの発想貧弱なのよ」
滝照「心を読む能力のNPCってネタにしにくいと思ってしまったんよ」
加登脇「でも、ネタを作って依頼作るのがあなたの義務よ♪早く依頼などでかわうそ?ちゃん以上の活躍したいわぁ」
滝照「其れは無理だろう。あのナマモノにかなうかよ…せいぜいハリセン巫女と良い勝負だ」
加登脇「ひどいわぁ…」

小一時間雑談…(ねぎだく頼む人がいるとか、いまのマイブームとか脱線状態)

加登脇「将ちゃん♪今回ありがとう。今度又会えることを願ってるわ。またね」