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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


Border Ether & Deep Ether 〜Imagination Terrorism 【現実世界篇】〜

Opening
【現実世界】
各地で行われている、同人イベント、RPGコンベンション会場が瞬く間に消える事件が発生。会場内にいた人物は行方不明。
状況が怪奇現象に類似することからIO2が動く。
同時に、各地のホビーショップが何者かによって爆発される。全員死亡。これには怨霊器が使われた痕跡がある。
「霊格チェック…これは想像者と同じだ」
と、IO2鑑識から連絡がはいる。
目撃情報も、想像者らしい人物が店に入っていくことも確認された。
「今までおとなしかったのに?」
ヴィルトカッツェはNINJAに着替え、現実世界のテロリストの捜索を開始。本物なのか確認しなくてはならない。
「ところで?影斬は?」
彼女はパートナーの女性に呼びかける。
「彼は想像者の異界に向かったわよ?今回は別行動のようね」
「理由を訊きに行ったのかな?」
「B区に霊反応よ!急ぎましょう」
ヴィルトカッツェは急いで、そのテロリストと対峙するべく向かった。

―信じられない。
ヴィルトカッツェは思った。
パートナーの女性、渡辺美佐が彼女にこう伝えた。
「警視庁と、宮小路家の御曹司、それと萌ちゃんのお友達、エルハンドさんの知人が加勢しに加勢してくれるわ…。萌ちゃんが想像者の事を信じているなら…説得優先にしましょう。私は萌ちゃんを信じるわ」
「ありがとう美佐さん」
「そうだ、シルバールークD改に新しい弾薬と萌ちゃん用の武器があるのよ」
「え?」
「影斬がエルハンドさんと共に異界に行くときに、残していったの…。また、こう言ってたわ『俺の力を少し託す。佐山のことちゃんと説明できなくてゴメン』って」
美佐ヴィルトカッツェに剣を渡す。見た目はダガー。青い宝石が鍔に2つ埋め込まれている
…?なんだろう?
「ありがとう」
「行きましょう」

―忌むべきは我が力
―誰も認めることなし
―故に牢に閉じこめられる


Mission 1
警視庁の葉月は班総出でB区のイベント開場などを停止するよう求め、囮イベントを開催することに成功した。其処から1km先に美佐のシルバーホークが待機している。
「何とか間に合いました」
「ありがとう。流石、地域を把握している警視庁、助かりました」
ヴィルトカッツェと美佐は葉月に礼をいう。他の者達は、他の地区の巡回に当たっているらしい。殆どの加勢者は霊気を自分で「感じ取れる」。此が一般人と能力者の決定的な違いだった。
「萌様」
ミスリルゴーレムの鹿沼デルフェスが早足でやってきた。
「デルフェスさん」
ヴィルトカッツェは嬉しそうにデルフェスに駆け寄った。美佐は少しデルフェスを睨む。
「影斬様からお聞きしてまして…」
「ありがとう。また世話になります」
想像者の異界で何があったかは美佐も聞いてはいるが、これほど仲が良いのはしゃくに障るらしい。
「いまは仕事中です。出来れば…コードネームで」
「美佐さん、いつも言っている事が逆です」
美佐の言葉に対しヴィルトカッツェに間髪入れず突っこまれる。
葉月は、首を傾げるばかり。
「萌ちゃん不良になっちゃった〜」
悄気る美佐だが、心の中では諦めていなかった。
シルバーホークから通信が入る。
「ハイ此方、仮イベント開場待機班です」
[もしもし、宮小路皇騎です。B区全体の封鎖、終了しました。犯人特定を絞り込めます]
「ありがとうございます。では、現場の方に合流を」
といって、通信を切った。
「大きな陰陽師一族も応援してくれるというのは助かるわ」
かなりの規模の作戦となるだろう。

―心弱くなる我を恥じ
―強くならんと念じるも

「ヴィルト!」
晴れているのに傘を二本持ってやってくる少年。御影蓮也だ。
「御影さん」
「ショックだな…想像者がこんなことを…」
「うん…信じられない…話し合えば分かってくれると思っていたのに」
彼女も蓮也も暗い顔だ。
葉月が、一礼し蓮也に向かって尋ねた。
「僕は警視庁超常現象班の葉月政人です。応援の方ですか?」
「はい、御影蓮也と言います。IO2に知人が知らせてくれたので駆けつけてきました」
「想像者…つまり佐山氏について分かる人物なのですね」
「詳しくは分かりません。ヴィルトや影斬の方が詳しいでしょう」
蓮也はNINJAの少女を見て言う。彼女もそうだと頷いた。
「そうですか…ここに集まっている方々はかなり佐山氏の行動に驚いています…動機さえ分かれば」
彼は、駐車場に止めているFZ−01移動トレーラーを眺めた。
IO2にしては消極的な説得という手段…。よほど想像者の事を心配していると考えている。しかし、犯人がどんな理由でも人を巻き込むというのは許されることではないのだ。

―誰も受け入れず
―誰も信じられなくなる

不意にB区全体に力のない声が聞こえた。
「霊反応…信じられない!B区にランクA以上!その数20!」
美佐は急いでシルバーホークに乗り込む。
「想像者が其処まで出来るのか?」
蓮也は驚いた。
[待って下さい、ダミーかもしれません]
皇騎の声がした。
[現在、私と漁火さんで各拠点を調べます。皆さんはそのままで!]
移動力のある葉月だけFZ−01を装着しトップチェイサーに乗り込んで反応地区の調査に当たることを伝えると。
[…分かりました。しかし無茶はしないで下さい。怨霊器を持っている可能性があります]
「心得ています」
葉月はバイクを走らせた。

―想像の力発想の転換
―我の力の世界を作ろう
―すばらしい架空の世界を我は作ることが出来る

Mission 2
皇騎は特製強化服『黄龍』を着込み、各霊気発生拠点を調べる。
「小型の霊気爆弾…」
[此方も…ダミーですね。最もこの霊力であればビル1つは破壊できます]
漁火汀も通信で見つけたようだ。
「怨霊器のランクは規格外…モノによっては核爆弾並ですから、気を付けましょう」
[気になるのは…]
「なんですか?」
[一刻も早く仮のイベント開場に合流すべきかと]
「理由は?」
皇騎は尋ねた
[いままでの事件を推測するに、ゲームで言う『デュエル』をするか『role-playing Game』なのかもしれません]
「…」
確かに其れはあり得る。いままで消失したのはそう言ったイベント、コンベンション。そして怨霊器による爆破テロはその手を扱うホビーショップだ。
「そうですね」
[こちら葉月です。小型の霊気爆弾を発見しました。宮小路さんの言ったことが当たりましたね]
「そうですか。では、此方も部下に任せ、回収と解呪を致します。一度イベント前で合流しましょう」

デルフェスははしたないとはいえ、自転車で合流前に各地のホビーショップ等に聞き込みをしていた。年齢的には大丈夫だが原付免許は持っていないのだ。
その調べた結果。想像者の写真をみせると
「この男です」
と言う返事。
「…信じられません」
呟くデルフェス。
霊視を試みても、どうしても想像者・佐山の霊気を感じるのだ。
「影斬様…真実を異界で見つけて下さい。わたくしはあの方の所為ではないと信じています」
巧妙に、『彼』に扮したものであるならば…実際に実行犯と対峙するしかないのだった。


―想像は我の外から入ってくる


Mission 3
全員が丁度合流したとき、突然、B区は真っ暗になった。
「な?なんだ?」
「囮イベント開場に怨霊器級霊反応…まってその周りに、霊鬼兵50!不明生物5体」
美佐が報告する。
「虚無か!」
「ヤバいわよ、並の数じゃないわ!」
宮小路やIO2が網を張っていてもこれだけの霊気を持つ存在が「現れる」事はおかしい。
「異界からの『転移術』でしょうか?」
汀が呟いた。
「美佐さん、他に何か在りますか?」
蓮也とヴィルトカッツェが美佐に聞く。
「まって…あ、開場中央に強力な霊反応を感知…過去からのデータを照合すると…想像者・佐山よ!」
その返答を聞いた直後、彼を知る人物(ヴィルトカッツェ含む)は駆けだした。
「待って下さい」
葉月もバッテリーを取り替えFZ−01で、皇騎も強化服『黄龍』で走っていく。
汀は、その場で留まる…。いまの自分ではいまの数と戦うことは足手まといと判断したからだ。
「困りましたね…」
彼は鞄の中から、各種ゲームなどを取り出して…自分の予想が当たればいいと思っていた。

霊鬼兵には皇騎や葉月、ヴィルトカッツェが切り捨てていく。蓮也も各所に「概念装備」「概念罠」を書き込み、フォロー。デルフェスは換石の術とヴィルトカッツェの盾となって敵の攻撃を防いでいた。NINJAの少女は彼女が何者か知っている故、そして彼女の意志を尊重する為に、ヒットエンドラン+デルフェスの陰に隠れるのだ。当然デルフェスも少しずつ彼女の動きに会わせ移動する。
問題なのは、正体不明だったモノがこの世界で実在するが『幻想』とされるドラゴンだったことだ。
「5色揃って戦隊モノのつもりか?」
と、誰かが呟く。
『少しの洒落だよ』
ドラゴンから聞き覚えのある声がする。
「想像者さん!」
『仕事が終わるまで、この5体の赤、青、緑、黒、白の竜と戦って貰おう…』
「私たちはあなたと戦う意志など!」
デルフェスが叫んでも竜の叫びにかき消される。
「現地にはいるしかないですね」
皇騎は、静かに呟き…強化服のリミッターを解除した。
竜の吐息で開場は爆音と異様な煙で包まれる。
「シルバールークD改の出動を考えないと行けないのかしら…」
美佐は、汗にまみれた手でレバーを握っていた。

「なんて事だ…」
皇騎の強化服、葉月のFZ−01もかなりの損害を受けている。
「想像の力…がこれほど強力とは。この装甲が無ければ僕は死んでました」
流石に、100年以上も生きているような巨大竜を5匹相手にしているのは一般人には恐ろしいことだ。まず、白と黒は何とか仕留めたが、青は重傷、緑と赤は残っている。
「前に…人の姿で龍の力を使っていた方が…敵で…無くて良かったと思います」
皇騎は、神剣『天蠅斫剣』を杖にして跪いている。葉月のトップチェイサーはもう使い物にならないほど体はしていた。
吹雪と酸、電撃と酸、毒ガスと高熱の炎が皆を苦しめているのだ。肉弾攻撃もバカにならないほどだ。
魔術の類は殆ど効かないので、肉薄するしかない。
何とか、デルフェスと蓮也の防御支援でいままで生き残っていたが、かなり消耗している。
竜は息を大きく吸い込んだ…。ブレスを吐く瞬間だ…。
「危ない!」
デルフェスは叫んで咄嗟に術を発動した。

―怖がらなくて良い…
―あなたは、外の世界を感じたいのね…

[美佐さん!]
「萌ちゃん」
[正体は竜〜ドラゴンだよ!ゲームで良く出る!]
「ドラゴン!?そんな大きな物が『転移』されたの?」
[多分…想像者が『想像して創った』のよ…いまデルフェスさんの陰で通信しているの。皆手が終えないわ!換石の術で皆を石にして貰った…]
「どうするの?」
[砲を撃って!影斬の神格弾を2発!]
「そんな事をしたら!幾ら何でも石になっている皆まで…」
[お願い!]
外で、漁火汀は鞄を持って爆炎を眺めている。
「さて…」
彼は「ワルキューレの騎行」を歌い始めた。
その声と歌が美佐の決心を固めてくれた。
「彼女を信じて撃ちましょう」
ニコリと紳士は言った。
「主砲発射!」
神格弾を込めた主砲が唸る。しかし、着弾地点は燃えさかる気配もない…。
何かを浄化する一筋の光が見えただけだった。


Mission 4

―すばらしいよキミは…
―その男に惑わされるな

―怖くないわ…一緒に
―挫折を何回も味わってものが人生だ

―――……
―理解しようとしてくれる人がいる…
―ほら、拗ねてないで出てこい…

神格弾は『解の技』が篭もっていたのだ。『解の技』自体に破壊力は全くないのである。彼のコードネームは未来で付けられた。偽りのモノを斬る。本物ではない影を見破り斬る。そこからだと影斬は言っている。幻影であろうと空想具現であろうとお構いなしに見破り斬れるのだ。
「信じてたよ、影斬」
ヴィルトカッツェは呟いた。デルフェスが自分を抱きしめて庇ってくれている。光の中には皆が石から解けた。
「派手だな…」
蓮也は呟く。彼は傘に「核シェルター」と書いたまま石になっていた彼。
「最終手段でした。ここまで想像者が本気ということで出し惜しみできなく」
ヴィルトカッツェは皆に謝る。
「いや、良いですよ。別段開場には竜の攻撃以外被害はない様です。其れに…」
皇騎がゴーグルから何かをチェックしている。
「いまので怨霊器のレベルが格段に下がりましたし、中の人達も安全に退避してます」
「よかった…残りは…」
葉月は強化服のチェックをする。まだハンドガンと特殊警棒は使えるようだ。
「行きましょう」


―光と影があるように、影が暴走したというのは分かった…しかし其れは罪だ。いいか?
―…構わない。

―愚かな…私ならキミのすばらしい…

―俺はお前であってお前でない…
―自分との戦い…だな…

Mission 5
がらんとした開場に1人魔法使い風の男がテーブルを2枚横に付けて椅子に座っていた。テーブルには、ついたてや、地図らしきもの、ミニチュア数個、そして筆記用具に多面体ダイスが無造作に置いている。先ほどの戦闘で、おとり捜査官は退避している。
「負けたよ。しかし本体と俺は別だ…」
彼はダイスを弄びながら、笑っていた。
ダイスの転がる音は、開場に虚しく響き渡る。
ガチャガチャと金属音と共に
「警察だ。おとなしく投降して下さい。」
葉月がハンドガンで男に言った。後ろには皇騎が立っている
「そんなオモチャで俺を倒せない…」
「想像者・佐山宗治。…超常現象テロ行為、殺人で逮捕します」
後ろからヴィルトカッツェとデルフェスがくる。
蓮也は、開場の中央出入り口で見守っていた。
「如何にも佐山宗治だけど…茂枝萌…キミの知っている佐山ではない」
「どういう事?」
「人に表裏があるように…俺自身も表裏があったのだよ…」
話が見えない。
「いまは心の弱いヤツは…からに閉じこもっている」
「まさか?」
蓮也は駆け寄った。
「異界を創ったのは表の人格で…」
「そう、こうしてテロ行為の準備活動していたのは影の人格である俺って事だ。虚無と組んでな。既にこの地域は一寸した異界内と言っても良い」
「…」
「それで、異界を存続させて出入りできるわけだ…」
「そんな…」
蓮也は納得し、デルフェスとヴィルトカッツェは愕然とする。
葉月は超常現象や彼の異界については二の次であり、
「貴方にどんな理由があっても、他人を巻き込むなんて許される筈がありません。巻き込まれた人達にだって未来や可能性があったのに、誰にもそれを奪う資格は無い。」
と言った。
佐山は笑った
「いまは具現化でこの場所にいる…しかし此が暴走したらどうなるか分かる?」
一つの黒い20面ダイスをみせた。
「怨霊器…」
こんな小さなモノが…
皇騎とヴィルトカッツェ、デルフェスは少し退いた。霊格は下がったとしても、この場所を消滅させる威力は残っている。
「俺の言葉一つで、此を爆破できる…影である俺は一旦自分の世界に戻るだけで、全く影響なし…すばらしいテロだろ?想像した架空のモノでの世界の消滅…そして俺の世界の創造構築だ」
「間違っている!自分1人で世界を創るなど!」
葉月は叫んだ。
「他の人々がいて、初めて世界が為すんだ!」
「なら…聞く?キミは「能力者」をどう思っているのだ?超常現象班葉月政人、単なる異端、一般人に害なす害虫しか思っていないだろ?彼らの言葉には耳を貸さず、助けの手も施さない…そうだろ?」
「………それは…」
葉月はなんて言うべきか悩む。殆ど倒していたのは害を為す異形のものだった。こうして術師や能力者と協力していても、自分は普通の人間だという線を引いてしまっている。
「佐山…いい加減にしろ」
後ろで沈黙していた皇騎が言う。
「その怨霊器を引き渡すんだ。会話している時間もお前には無駄だろう?」
「そうだな…宮小路の部下が、被害を最小限にするため封印準備もしているだろう。待機しているあのデカ物が…ここを撃破するだけだ。しかし俺には全く支障はない」
「どう転んでも…お前の勝ち逃げか…」
「そうだな」
会話は平行線に終わろうとしている。
ヴィルトカッツェは、歯を食いしばる…。
影斬が先に異界に行った理由が分かった。しかし何故彼は説明してくれなかったのか。彼は未来から来ている。ならば平行して此の『事実』は知っているはずだ。
では何故?
『俺の力を少し託す。佐山のことちゃんと説明できなくてゴメン』
―あ、そうか…。
時間神でもあるエルハンドの弟子、無限の平行世界を増やすことを防いでいるのだ。
そのために言葉にしないよう…武器という形で残した。
この短剣…影斬の力…すなわち…

―の目の前の影を斬ること。

彼女は腰に手を当てる。託された切り札を持つためだ。デルフェスは其れに気付いて前に静かに出る。
葉月と皇騎はその行動を見て…
(話を延ばしましょう…)
(…分かりました)
と、小声で話す。
「では…聞くが…」
皇騎はしゃべり始めた。
「その机の配置は何の意味をもつ?」
「ゲームだよ。会話型RPGさ」
「では、俺たちはそのプレイヤーで有りキャラクターだったわけだな」
「そうだね、公平なマスタリングを求められるが、今回のセッションは違う。既に用意された筋書き通りに事が運ぶものなのさ。多少アドリブが入っても、結果は決まっているシナリオさ」
「…其れはゲームではないぞ」
「そうだよな。キミの行っていることは正しい。俺とて、単に『ゲームを楽しむ』というだけならフェアで行う。此は一寸した飾りだよ、気にしなくて良い」
不敵に笑う想像者・佐山。
蓮也は、この状況をどうすべきか考えていた。どうしても攻撃できない。一言で怨霊器を起動させたら全てが終わりだからだ。

「丁度用意しているなら…一緒に楽しみましょう」
いきなり汀が現れた。皆は目を丸くする。
「なんだって!」
「いえ、先ほどにも言いましたでしょ?ゲームをしたいのではと?」
漁火汀は美佐も連れて来ている。
「私やり方知らないわよ!」
「大丈夫ですよ」
緊迫した状況で其れはないだろうという皆の顔。しかし影だけは大笑いしていた。
「あはは、あははは!傑作だ!」
涙目で笑う影。
「良いだろう、ちゃんと皆を楽しませるシナリオもあるさ!飾りのつもりがここで役に立つとは思ってもなかった」
何故そこで笑えるか皆には分からない。いや、デルフェスや汀にはわかった。
―長いこと人と会話することがなかった。共有する時間がなかった。表も裏も同じように。
長いこと生きてきた者が感じるある種の孤独感だ。
「異存は?」
汀は皆に聞く。
葉月も皇騎も難しい顔をする。
「俺はやっても良いぜ」
蓮也は笑って席に着いた。
「異議はないです。やりましょう」
しかし、ドイツで育ったヴィルトカッツェは週末の休暇はこうしてボードゲームで楽しむものだ。最もそんな余暇があるかというと疑問であるが。
「佐山さん」
「何?」
「ゲームを楽しんだら…その怨霊器を此方に渡して。そして『1人の佐山宗治』として出頭してきて…お願い」
「…」
彼は黙してゲームマスターの席に座る。ヴィルトカッツェはそこで口をつぐむ。
「希望者だけで良いよ。せめて4人は欲しいけどね」
他の者は顔をあわせるが…従った方が良いだろう。

簡単にルール説明した後、ゲームが始まった。RPGは2004年で30周年である。その最長のシステム簡易版を想像者は教えた。時間がどれだけ経ったのか分からない。が…異常な雰囲気の中で楽しくスリリングのあるゲームであった。何時戦う相手を目の前にして、笑っている皆が其処にいた。
不思議な空間だった事は言えよう。
そして、無事事が終え…
「楽しかったよ…約束の怨霊器を渡すよ…」
と黒い20面ダイスを転がした。それは20の目で止まる。
美佐は呪物封印ケースに其れを収め、葉月が手錠をもつ。
「逮捕しても俺は消えるから、止めた方が良い…」
「…しかし其れでは罪が重くなりますよ?」
葉月が問う
「しかし、どのようにしても俺を封印することは出来ない?どうする?」

―そのままとどまれ『影』!

会場内で大きな声が聞こえた。
「な?」
佐山が驚いた。その場の全員も。
「表と影斬か…!っち!!」
佐山は通常の人間とは思えないほどの跳躍をし、全員から間をあける。そのまま姿を消そうとするが
「Border Line封鎖だと!」
焦りの声を上げる。転移できないらしい。その隙を葉月と皇騎、ヴィルトカッツェが動く。
「動くな!」
スタンモードで構える葉月。陰陽術の不動金縛りで捕らえようと試みる皇騎。しかし佐山は念でその術を弾き、そのまま走り逃げようとする。葉月はハンドガンを発砲するが、影は「盾」を作り、弾を弾いた。
そして、佐山の間合いに既に到達しているヴィルトカッツェ…手にはあの短剣…。
「楽しかったよ…」
そのまま彼女は「盾」さえも貫き佐山の腹を刺した。
「影に生きる者は影に消される」
と、彼女は呟いた。
短剣は光を放ち、
「―――――――!」
佐山宗治の『影』を消し去った。
残っているのは…影でない…佐山宗治本人だった…。短剣の傷はない。
「……」
彼は呆然としている。
「佐山さん?」
ヴィルトカッツェが尋ねる。
「…あ、俺…世界に戻ってきたんだ…」
そう言い残し、そのまま彼は気を失った。

Ending
佐山宗治が倒れたと同時刻に各所の消滅現場や爆発現場が姿を現したと言う報告が入った。
「任務は…成功なのかな?」
「そう思った方がいいよ…悲しい結果だけどね…」
蓮也がヴィルトカッツェを励ますかのように言う。
気を失っている佐山を乗せたIO2の救急車。付き添いという形でデルフェスがついていく。
「しかし…彼の言葉…」
葉月は悩んだ。
―「なら…聞く?キミは「能力者」をどう思っているのだ?超常現象班葉月政人、単なる異端、一般人に害なす害虫しか思っていないだろ?彼らの言葉には耳を貸さず、助けの手も施さない…そうだろ?」
この言葉にどう答えるべきか…だった。
「僕はただの人間として皆を守りたい。それだけしかいまは言えない…」
皇騎は今回のデータを本家に転送し、今後の対策を考えた。
「異界の方はどうなんだろう…」

異界の方に入った者達はこの数時間後に戻ってきたという。
想像者の想像した世界に関わる事件は終わった。
あとは、佐山自身が己を克服する治療が待っている。ヴィルトカッツェや彼と親しい人物は見舞いに来るそうだ。そのたびに、彼はとても喜んでいるという。
思い出した様に彼は呟いた。

―もう1人じゃ無いんだ。

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0461 宮小路・皇騎 20 男 大学生(財閥御曹司・陰陽師)】
【1855 葉月・政人 25 男 警視庁対超常現象特殊強化服装着員】
【1998 漁火・汀 285 男 画家、風使い、武芸者】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
Border Ether & Deep Ether 〜Imagination Terrorism 【現実世界篇】〜に参加していただきありがとうございます。
4ヶ月程度のBorder Ether & Deep Etherの、想像者佐山との話はおわりました。
同時進行である【異界篇】ではどのようになっているかご覧頂ければ幸いです。

では、又の機会がありましたらお会いしましょう。

滝照直樹拝