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<東京怪談ノベル(シングル)>


『四人目の神格 ― 禍都比売神 ― 』
 暗い暗い闇。
 意識の深層のその更に奥……
 そこに私はいる。
 忌々しい天の原の老神どもによる罠にかかって。
 遥か遠い過去という時の果て…
 その時代に生きた私。
 私は大いなる禍い。故に封じられた存在。禍いの風。
 時折私は目を覚ます。
 暗い意識の深淵から空を見上げるように外の世界を見る。
 ・・・・・・あいつらが見る外の世界を。
 光溢れる世界。
 人の喜びに満ち溢れた世界。
 多くの子どもの笑みや笑い声に溢れた世界。
 美しき世界。
 
 ああ、それはなんて壊し甲斐のある世界なのだろう?

 考えただけでこの身体のうちがぞくぞくとして鳥肌がたつ。
 私は人の泣き顔が好き。
 私は人の泣き声が好き。
 私は人の絶望が好き。
 私は人の恐怖が好き。
 私は人の不安が好き。
 女の柔肌に爪を立て女が喘ぐ声を聞いて男が欲情するように私はそれらを見て欲情する。そう、私は……

 私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は私は禍いの風。
 
 くすくすくす。
 故にあの老神どもは私を閉じ込めた。
 ねえ、貴女は知っていて?
 貴女が前に見た時の巫女に頼んで過去の天の原に戻ったあの三人が見た過去の三人は本当は老神どもが作り上げ見せた偽りの記憶だと?
 知らなかったでしょう。
 くすくすくす。
 そうよ。そうなの。すべてが偽り。すべてが嘘。三人一緒にいることも。あの忌々しい白狼が常に傍らにいることにも意味はある。だけどそれはあの三人が想っているような生易しくなあなあなそんな綺麗なモノではない。
 忘れたくない過去? 
 大切な想い出という宝?
 あはははははは。
 ばかばかばかばかばか。
 違う違う違う。
 そんなもんじゃないんだよ。
 いいかい、よくお聞き。
 貴女に真実を聞かせてあげる。
 昔話を老婆が孫に語り、
 そしてその孫が老婆となって、
 またその孫に聞いた昔話を語りて、
 そうして物語を伝承していくように、
 貴女も脳みそに蛆が湧くようなそんなどろりとした暗い闇の深淵のそのまた奥の闇のぬめりの物語の語り部としてあげる。
 いいかい? よ〜く、お聞き。
 時の巫女で見たあの過去・・・いや、そもそも時の巫女自体こそが偽り。でっちあげ。私の深層意識からの囁きに目覚め始めていた【破壊の神格の坊や】をもう一度洗脳するためのね。
 そうさ。この女の身体という器…転生という術で繰り返し創り出される器の意味は縛する力を奪わせないためのモノ。
 この器にね、【破壊】と【慈悲】。その二つの対極の神格があるのはそれが封じの核となるから。対極の力をあえて一つの器にいれることで、この私を封じ込めようとする。
 それが私を封じる力。
 そしてあの白狼は護役。
 すべてが私を封じ込める物。
 え、それでは【享楽】は? と。
 【享楽】。【享楽】かい? 【享楽】かね?
 くすくすくすくす。
 なんだい、貴女。気づいてはいないのかい?
 今、貴女に真実を教えてやっているのがその【享楽】さ。
 そう、【享楽の神格】。それが私の偽りの姿。

 風祭まこと・・・それは我が偽りの名であり、そして言霊という我を封印するにあたりての最強の戒め。
 ・・・・【風祭】それは魔の風を鎮めるという戒めの名・・・名前と言う呪。

 貴女はとても綺麗な肌をしているね。
 とても白く柔らかな肌。そして唇も………実に柔らかいね。くすくすくす。前に貴女は【慈悲】に助けられているから、これで2回目のキスかい。くす。そして3回目。って、無感動だね。つまらない。そんなものは男にされ慣れているのかい? それとも女に? まあ、いいさ。これで4回目。くすくすくすくす。
 貴女と唇を重ね合わせたこの私の名前はね、【禍都比売神】。そう、私は【禍都比売神】だよ。良き名だろう?
 真に目覚めた時にはこの風の国の風を乱し、世界全土を破滅と崩壊に導く風の名さ。【九尾の狐】ですらもできなかった事をしようじゃないかい。
 くすくすくすくす。
 貴女、忘れられし古の真名を覚えておいて。
 そして貴女の孫に語り継がせて。この身体と言う器に張り巡らされた戒めによって深き意識の深淵に沈むこの私の名を。
 良いかい? よ〜く聞くんだよ。一回しか言わないからね。

 私は【禍都比売神】。私の偽りの姿の名は【まこと】。しかし本当は【魔乎斗】と書く。魔なる星という意味を持つ名。

 私は大いなる禍いの風。
 この器に封じ込められし【破壊】も【慈悲】も、そして【享楽】も知らぬ老神どもに仕組まれた運命を知る神格。
 くすくすくす。
 どれぐらい、こうして眠っていたんだろうね?
 幾重にも張り巡らされた封印に自由と言う言葉さえ忘れてしまった。だけどまあ、いいさ。今は別にそれが苦痛だとは想わないもの。だから今はまだ眠り続けてあげる。それに貴女、リュートの旋律によって私をほんの少しだけ目覚めさせてくれた貴女に他の三人が知らぬ事や私の名を聞かせる事が出来たのだもの。今はそれでいい。そう、貴女は真実を知っている。そうしてその真実は貴女を発進点として、やがて世界に広がっていく。人の心を恐怖と闇とで汚染しながら。
 くすくすくすくす。
 私は全てを滅する者。
 それ故に封じられ眠りにつく者。
 だけどいつ気が変わるか分からないよ。その時は手加減しないから。
 そう、その時はきっと、貴女も私の敵なのね、リュート弾きのお嬢さん。
 くすくすくすくすくす。

「ええ、そうね。きっと。だからその時まで、おやすみなさい、禍都比売神の魔乎斗さん」


 **ライターより**
 こんにちは、風祭まこと・・・魔乎斗さん。
 当方のNPCのインタビューに答えていただきありがとうございました。
 ライターの草摩一護です。
 ↑という感じで、今回のノベルは魔乎斗さんの語り口調で、当方のNPCがそれを聞くような感じでまとめてみました。
 いかがだったでしょうか?
 それにしても四人目の神格がいたのですね。
 びっくりです。
 プレイングの感じを見させていただいて、これは悪者でやった方が面白いのではと思い、こういう風にさせていただきました。^^
 しかし、今後はどうなるのでしょうか?
 風祭PLさんの方針が楽しみです。

 にしても、本当に面白い設定ですね。
 プレイングを読ませていただいて、おおーっと唸ってしまいました。
 どうやったらこの面白い感じを書き表せるだろうかと悩んだ結果がこの文体です。
 すべて彼女の語り口調で、読者の心がどろりとした暗鬱になるように、そしてそう感じさせるような彼女の言葉づかいやしゃべり方、セリフに気を使って。
 故に今回は本当に余計な物は一切につけずにシンプルでだからこそ、【禍都比売神の魔乎斗】の雰囲気が読み手様の心に植え付けられたのなら、それは書き手の冥利に尽きると想うのです。

 本当に書き手として難しくだからこそ面白い魅力的なプレイングでした。こんな素敵で面白いお話を書かせていただけて本当にありがとうございます。
 ただ心配は風祭PLさまの納得のできる仕上がりになっているかどうかでございます。もしも風祭PLさまに満足していただけていれば幸いです。^^

 それではこれで失礼させていただきますね。
 今回も本当にありがとうございました。
 失礼します。