コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


ザ☆ねくすと・GENERATION

◆OPENING:

”草間興信所…そこは最後のフロンティア。
これは草間興信所特別調査員が現代の調査員のもとに21世紀において任務を続行し、
未知の世界を探索して新しい生命と人類未踏の世界を勇敢に調査した物語である…”

「なんてオープニングでいかがでしょう?」
「…って、ほとんどパクリじゃねえか」
 いまどき、トレーナーの長袖部分を肩からかけで胸元で結び、
いかにも!な服装をした小太りの中年男性を目の前に、草間武彦はきっぱりと告げた。
この男、九林・権蔵(くりん・ごんぞう)。自称”人気プロデューサー”らしいのだが…
草間興信所のPRのCMやビデオを作らないか?と持ちかけて来たのだ。
そりゃあ確かにCMやプロモーションビデオがあれば仕事も増えるだろうし、
そうなると収入も増えて、興信所の設備を整える事も出来るだろうし、
滞納してる未払いの給料だってきっちり払えるようにはなるだそう。
しかし。安く出来ない事は百も承知である。迷わず断る気満々の草間だったのだが…
「大丈夫!うちのPRも兼ねてですから!製作料金は無料!!」
「え?無料?」
「ええ!その代わり、ちょっと協力していただきたい事があるんですよ…
ビデオに出演してもらう方々を…草間さん側で用意していただきたいんですよね」
「出演者を用意すれば無料?本当だな?後で出せとか言わないんだな?」
「もちろん!契約書にその旨しっかりありますから」
 封筒を差し出しながら、プロデューサーはにこにこと微笑む。
ざっと目を通してみても…確かに、悪い条件ではない。それが逆に疑わしい気もするのだが…
「ビデオに出演してくださる皆さんには、
こちらで普段どういった活躍をされているかを語っていただく事と、
草間さんや興信所への率直な意見をインタビュー形式で語っていただこうかと思います」
 インタビュアーは、九林専属の自称”人気女子アナ”の、路三猶・蘭(ろみゆ・らん)。
なかなかどうして胡散臭いと思いつつも…草間は無料と宣伝効果の収入増の言葉にくらみ、
思い当たる限りの者へと電話をかけ始めたのだった。



「はぁい、草間さん♪こんな早い時間からあたしを呼んでくれるなんて…嬉しいわ」
 露出度の極めて高い私服を着て、藤咲・愛は興信所を訪れた。
ちょうどその前にやってきていた誰かと話を済ませたところだったのだろう。
全員が立ち上がってドアの近くにいたらしく、愛の姿を見るなり…
見知らぬ男が驚きの表情を浮かべて、思いっきり後方へと飛び退いたのだった。
「なぁに?失礼しちゃうわね?」
「よく来てくれたな…この人が電話で話したプロデューサーの…」
「クリンゴンさんだっけ?」
「く、九林・権蔵です…!」
「どっちでもいいわそんな事…それより、あたしはこういう者です…よろしくね」
 愛は胸元から勤め先の名刺を取り出すと妖艶な笑みを浮かべて九林の目を見つめた。
彼女のこの視線で見つめられると、だいたいの男は腰砕けになること請け合いである。
例にもれず、九林も熱に浮かされたような表情でぽ〜っと愛を見つめ…
「あの!話を進めましょう!」
 咳払いと同時に、大き目の声で強く言った路三猶・蘭の言葉に九林は我に返った。
「は、すみません…ええっと…藤咲さん…DRAGO…え?DRAGOですか?!」
 愛から受け取った名刺に目を通していた九林は、なにやら驚いた声をあげて愛を見た。
「あら?ご存知?」
「え、ええ…まあ…」
 愛は首を傾げて九林の顔を覗き込む。
自分を指名してくれる固定客なら顔はバッチリ覚えているのだが、
それ以外のお客になると把握する事は少し難しい。愛の記憶にある限りでは見覚えのない顔だった。
おそらくは、別の店員のお客なのだろうが…店のNo1の顔くらい覚えて欲しいわね…と、
愛は少し不本意に思ってみたりするのだった。


◆MISSION:

 一時間後、武彦にほぼ緊急でかき集められた面々が集まっていた。
撮影場所は興信所のすぐ近くにあるレンタルスタジオだったのだが…なんともボロ臭い。
いや、興信所もそれなりにボロいので文句はいえないのだが、
どうにもそのスタジオのクオリティを見ただけで、なんとも一気に胡散臭さ倍増な勢いだった。
「え〜!皆さんそれでは順番にインタビュー開始しますのでー!」
 ここぞとばかりに、自称女子アナの路三猶・蘭が声を張り上げて場を仕切る。
撮影の行程は、とりあえず用意された椅子に順番に関係者が座ってインタビューを受け、
最後に武彦からのメッセージが入る…という事になっていた。
「まず最初に〜…藤咲・愛(ふじさき・あい)さん!」
「はぁ〜い!一番手があたし?」
 最初に呼ばれた、愛が立ち上がってにこにこと椅子に座る。
その様子を、その他の面々がじっと見つめるという…なんとも少し小っ恥ずかしい状態だったのだが、
愛はあまり気にしていない様子で見つめる面々に手を振っていた。
「それでは…まず、普段どのような仕事をしていらっしゃるかお答え願えますか?」
「そうね、あたしのお仕事は…言わば、仕置人かしら?生身の人間、幽霊問わずお仕置きが必要な場合は出向いてるわ♪
生身の人間の場合だとその後うちの店のお客さんになってくれたりもするから…あたしとしても有難いわねv」
「お仕置きですかぁ…では次に、草間興信所と所長の武彦氏についてお願いします」
「草間興信所ね…好きよ。だって怪奇物の依頼をマトモに扱ってあげてるところなんてココぐらいじゃない?
きっと幽霊さん達も喜んでると思うわ♪草間さんについては…見てて飽きないわよね…だから、好きよ…」
 艶かかな笑みを浮かべて、愛はカメラに妖しげな視線を送る。
思わずそのままカメラを回しつづけてしまいそうになる九林だったが、なんとか思い止まってテープを止めた。
「ありがとうございます。では次に綺羅・アレフ(きら・あれふ)さん!お願いします」
 蘭のテンション高い案内に反し、アレフは静かな動きで立ち上がると…ゆったりとした仕種で椅子に座る。
そして、じっと蘭の方だけを見つめて…。
「あ、あの…カメラ見てくださいね…あっちです、あっち…えっと…」
「普段私は人待ちをしている。本当は寝て待っている筈だったのだが、
起こされてしまったので起きて待っている…長くなるならまた眠るであろうが…」
 アレフは蘭が問うよりも先に話し始める。蘭は苦笑いを浮かべたままでマイクを向け、
「寝て…ですか?どれくらい?えっと…あの、他には?」
「記憶にある範囲で1000年くらいだろうか…他に?そうだな…解りやすい言葉で言うなら当主か監視者だな」
「…そ、そうですか…なんだかよくわかりませんが…では次に草間興信所と…」
「草間は興信所もそこにいる本人も…厄介な様々なモノに好かれやすいタイプのようだな。
お陰でそこに出入りしている我が同居人は話題に事欠かぬ…そして結局私が動くことになるのだ」
 聞いている事から、どこかズレた答えで返すアレフ。
とりあえず蘭は首を傾げながらもなんとかインタビューを終えて。
「では次に相生・葵(そうじょう・あおい)さん!」
「こんにちわ…皆さん。初めまして…そして、これからも宜しくお願いしますね」
 葵はその場にいる女性陣ににこやかに笑みを向けながら挨拶をすると、静かに椅子に座った。
心なしか、インタビュアーの蘭が嬉しそうに声を弾ませている様子で。
「あの…では…早速!」
「ええと、そうだね…世の中の”怪奇”をお金という魅力に負けて解決しよう…という仕事をしているんだよ」
「なるほど!では葵さんは草間興信所と草間氏をどう思ってらっしゃいます?」
「そうだね…僕は興信所の事を…零ちゃんを始めとする素敵な女性達に出会える場所だと思っているよ?
草間さんの事は…いや、特には何も思ってないよ…?まあ…しいて言うなら大変だなー…って…
ところで僕の提案だけど、ビデオには興信所で働く素敵な女性達をいっぱい映せばいいと思うね?」
 草間の事はまるで他人事のように言う葵。そして、零や自分の方を見ている女性達に軽く手を振った。
その様子を見ていた武彦はどこか苦笑いを浮かべていた。
「ありがとうございました、葵さん…また後で…」
 蘭はなにやら葵の魅力に完全にやられたようで、お店に行く気満々だった。
「次はシュライン・エマさん!お願いします!」
「宜しくお願いします。仕事の関係上、可能な範囲内でお答えしたいと思います」
 シュラインは丁寧に頭を下げてから椅子に腰を下ろした。
「では早速、普段の興信所でのお仕事は何をなさってますか?」
「仕事の内容は事務を担当しています。ええ、すでに雑務と言ってもいいかもしれませんけど…」
「なるほど…次に、興信所に関して何かお話し願いたいのですが?」
「そうですね。草間興信所は語学堪能な調査員が多く在籍しておりますから海外絡みの依頼も安心してご依頼下さい」
「あの、先ほどから話題に出ている”幽霊”に関する調査に関しては…」
「皆さん個性的な方が多いので冗談が上手いんです」
 シュラインはにっこりと笑顔を浮かべて、怪奇系の話題についてはさらりと流した。
「では最後に…草間氏に関して…」
「…草間さんね…ええ、腕は確かで………イイ方よ…?」
 何かを思い出しているのか、どこか遠い目をした上に視線をそらせながら言うシュライン。
どうやらつい最近の魔法少女の依頼の後から、武彦へのある疑念を抱えたままらしい。
シュラインは武彦とは視線を合わさないまま席を立ち、そそくさと他の面々のいる場所へと戻っていった。
「えっと…では最後に伍宮・春華(いつみや・はるか)さん!」
「って俺?!いや、だからダメだって言ったじゃん…」
 ずっと今までにこにこと楽しげに様子を伺っていただけの春華だったが、
突然、指名されて驚いて立ち上がる。
彼の体質的にカメラに映らないわけで、どうせインタビューを受けても無駄でしかないのだが…。
「全員からお話しを伺いたいのでお願いします〜!」
「いや、だからさ…どうせ無駄だから」
「まあそういわず〜!」
 蘭は春華の腕を掴んで椅子に座らせる。そしてインタビューを開始しようとした…のだが…。
「お、おい!!本当に映ってない…映ってないぞ!!」
 カメラを回していた九林が驚きの声をあげて、カメラのファインダーと、
実際のスタジオの様子を交互に見ながら何度も確認する。
「だからそうだって言ったじゃん…」
「キャー!本当に!?本当に映らないの!?」
 蘭もカメラを覗き込んで、そこにいるはずなのに何も映ってない様子を見て、
恐がっているんだか楽しそうなんだかわからない中途半端な叫び声をあげていた。
「マジだよ!!マジでここ心霊系怪奇系オンパレードだよ!!」
 九林はなんだか興奮した様子で騒いでいた。
それを承知で来てたんじゃないのか…と、その場にいる全員が内心でツッコミを入れる。
「なんだよ!もういいだろ、俺、映る気もないしさー!」
 春華も、やれやれといった表情で肩を竦めて溜め息をついたのだった。


◆ENDING:

 一週間後。例のプロモーションビデオが完成したと聞いて、
インタビューを受けた面々は草間興信所へと足を運んだ。
「それで…武彦さん…ポルテ…じゃなかった、プロモビデオは…」
「だからそれは誤解なんだっ!…いや、その話はまた後でだ…とりあえずこれを…」
 シュラインに促されて、武彦は予め用意しておいたビデオデッキの再生ボタンを押す。
真っ暗な画面から、カウントダウンが始まり…
流れてきたのは…某海外SFドラマを思いっきりパクったオープニングだった。
「…やっぱり絶対、あの人たち本名じゃない…」
シュラインはぼそりと呟く。某ドラマのファンとして…どうにもそこだけは譲れない点だった。
 ビデオ本編は、と言うと。
「へえ…面白いじゃない?もっと安っぽいかと思ってたわ」
 愛が少し感心した表情で言う。
確かになかなかどうして思っていたよりも面白い作りにはなっている。
しかし…。
「ちょっと…どうして私の顔にモザイクが入っているのかしら…?
しかも何?!声まであの特有の機械で変換した声になってるじゃない!?」
「それが正体を知られない対策だそうですよ?美しい女性の顔を隠すなんて僕には信じられませんが」
 驚きに目を見開くシュラインに、葵が答える。
「…これじゃあまるで私が犯罪者みたいだわ…」
 シュラインはどこか遠い目をして、できるならこのビデオを抹消したい気分になった。
しかもさらにビデオを進めると…インタビューに参加していなかった他の面々の姿や、
いつの間に撮影したのか仕事風景(モザイク入り)が収録されていた…のだが。
「ねえ武彦さん…確実にこの仕上がりじゃあ…普通の仕事の依頼は望めないわね」
「―――それを言うな…しかもな…」
 武彦は目を合わさないようにしながら、事務机の脇に積み重ねてある段ボール箱に近寄り。
「……500本…自分で配布してくれとの事だ…」
 なんとも微妙な笑顔とも苦笑いともつかぬ表情で言った武彦に―――
『―――ええ?!』
 その場にいる全員、もとい、アレフ以外の全員が驚いて声をあげたのだった。
「あたし、てっきり販売や配布までやってくれるのかと思ってたわ〜」
「まあこんな事じゃないだろうかとは思っていたけどね…」
「無料なら僕のお客さんに配ってもいいけれど…有料ならお店の隅に置くだけしかできないよ」
「やっぱり結局なんかどこかでソンするのよねー草間さんって」
「―――つかぬ事を聞くが、何が悪いのだ?」
 そもそもプロモビデオに関して理解していないアレフには、
周りの者が何故に騒いでいるのか理解できないらしく、ビデオ代金を支払おうと金塊を取り出す。
「あ、いや…これは無料配布だから金は…それに金塊は…」
「これでは無理か?ならばツケで頼む…私の同居人に一本いただいて帰ろうと思うのでな」
 アレフはビデオを一本手にすると、立ち上がって一礼する。
そして静かに興信所のドアを開いて去って行った。
「……無料って事なら、あたしの店で配ってあげるわよ?この内容でいいなら…」
 愛が段ボールの箱から何本か取り出しながら言う。
「とりあえず配ればいいんだろ?だったら俺が空からバラバラ〜って配ってやるよ」
 春華もそれに続いて、にこにこと笑いながら段ボールから近くにあった紙袋へ中身を移す。
「じゃあ僕もお店で配布させていただきますね?」
 さらに葵もそれに続き…とりあえずのところ、半分くらい空になった。
「悪いけれど、私はパスね…この内容だと怪奇系の依頼が殺到しちゃいそうだもの」
「あら、エマさん?せっかく作ったんだからいいじゃないの!お仕事無いよりマシでしょ♪」
「まあね…武彦さんがそれでいいならいいんだけど?」
 やれやれ、といった顔でシュラインはふと段ボールの箱の中に入っていた契約書に目を通す。
しっかり武彦のサインまでしてあるその契約書なのだが…
「―――どのみち…配布しないといけないみたいね…」
 そこにかかれている記述に、シュラインは大きな溜め息をついた。
きっちり読んでサインしているハズなのだが、どうしてこうも武彦という男は…
「とりあえず…あっても困るものだから早いところ配布しちゃいましょう」
「了解!!じゃあとりあえず”DRAGO”で50本ね」
「僕は”音葉”で50本配布させていただくよ?」
「んじゃ俺もとりあえず50本ばら撒いてくるよ」
「配布終わったらまた次があるから取りに来てね」
 シュラインは微笑みながら、愛、葵、春華の三人を見送った。
そして、後ろにいる武彦に視線を向けると。
「武彦さん、この契約書のここ…ちゃんと読んだかしら?」
「は?」
 シュラインにある部分を指されて、武彦は我が目を疑う。
そんな記述、読んだ覚えなど無い…と思うのだが…
「まあ、配布完了できれば損害は無いんだから頑張って配布する事ね…
その結果…怪奇系の依頼が増えることも仕方ないことだけど」
 シュラインの言葉も、今の武彦の耳には届いていなかった。
彼の視線は見覚えの無い、いや、あるかもしれないが記憶にない一文に釘付けになっていた。

”2週間以内に配布完了が確認できない場合は、ビデオの製作代金の支払いを申し受けます。
”また、こちらで配布する場合は別途料金いただきますので予めご了承ください。”





【END】

□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

【0086/シュライン・エマ/女性/26歳/翻訳家・幽霊作家+草間興信所事務員】
【0815/綺羅・アレフ(きら・あれふ)/女性/20歳/長生者】
【0830/藤咲・愛(ふじさき・あい)/女性/26歳/歌舞伎町の女王】
【1072/相生・葵(そうじょう・あおい)/男性/22歳/ホスト】
【1892/伍宮・春華(いつみや・はるか)/男性/75歳(外見15歳前後)/中学生】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
 皆様、こんにちわ。
この度は草間興信所のプロモ製作に協力いただきありがとうございました。
今回はなるべく集合型のノベルにしようと思っておりましたので、
ほとんどの部分を共通で執筆させていただきました。
 もう少しドタバタ系にする予定だったのですが、なんだか妙な展開とオチで、
落ち着いてしまったような気もしますが(笑)楽しんでいただけたら幸いです。

>藤咲・愛様
こんにちわ。二度目のご依頼ありがとうございました。
相変わらず藤咲様のキャラクターには個人的にドキドキさせていただいております。
SMクラブの女王様というのが好きなようです。(笑)
今回はインタビューに答えるという単純な話で、あまり活躍という話にはならなかったのですが、
楽しんでいただけていたら幸いです。またお会いできるのを楽しみにしております。

:::::安曇あずみ:::::


※誤字脱字の無いよう細心の注意をしておりますが、もしありましたら申し訳ありません。
※ご意見・ご感想等お待ちしております。<(_ _)>