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『 Chess Game : Code α 』
夜空へと――――高く、低く。
響くのは、謳。
女は、長い髪をかきあげるようにしながら、ゆるりと腕をあげた。
紅い唇から、音がこぼれる。
音をたてないまま、革のブーツでステップを踏み。
とろけるような微笑を浮かべ。
地上25メートルのビルの屋上で。幅5センチの柵の上で。女は踊る。
微笑を浮かべたまま、軽やかに。
――――謳いましょう。踊りましょう。新たなる死者のために。
あの愛らしい死体のために――――祝福を。
紅い口唇が、青い桔梗に口付けるのを、東の空から月が見下ろしていた。
■ ■ ■
目を開ければ、見慣れないものが見えた。
ただ白い平面――それは天井。
別に珍しくはない。珍しくはないが――見覚えはない。そんな、天井。
(……つまり、)
外泊したんだな、と、時哉は結論づける。
昨日の晩は叔父から譲りうけた店を臨時休業にして、19歳の若者らしい付き合いに参加した。いわゆる年度末の飲み会で、未成年の飲酒という――まあ、瑣末な問題はあるものの、それは珍しくもない。
問題は、この見覚えのない天井だった。
二日酔いの痛みに眉をしかめる。
昨晩はあびるほど酒を飲んでいたから、そのせいで記憶が飛んでいるのかもしれない――というか、飛んでいる。
そして、考えたくはないが、隣に人の寝ている気配がした。
時哉は、深々と溜息をついて、そっとベッドの中を移動した。良い気はしない。まずいことになったと、そればかりが頭をめぐる。
あえて、ベッドに横たわる人影から目をそらしつつ、ゆっくりとベッドから出た。
ドアの外で、走り来る人の足音がした。その音から人数を予想する。おそらくは、4人か5人。
時哉は、もういちど、深々と――もう、それ以外は他に何もやることがなく、溜息をついた。
口元がなまぬるい笑みにゆがむ。
激しい音をたてて開かれるドア。
なだれこむ紺色の制服。
どれもが、安っぽいドラマのようだ。現実とは、案外そういうものかもしれない。
「壁に両手をついて大人しくしろ」
逆らう理由はなかった。逆らって痛い思いをする気はない。だが、視界の中にまともに手をつけような壁は見当たらなく、仕方がないので少し歩いてバスルームを囲むガラスに両手をつけた――が。
そのガラスに映った背後の光景に、ぎょっとして時哉は振り返る。
「あぁ!?」
抵抗するものと勘違いした警官に殴られ、気を失う寸前。
視界に映ったのは、ベッドに横たわる、四十絡みの男の姿だった。
■ □ ■
電話の向こうで、男は深々と溜息をついたようだった。溜息をつきたいのはこっちだってのと、時哉は心中で呟く。
「……まあ、人の趣味にとやかくは言わんが」
「今回に限り、とやかく言ってくれ」
時哉は嘆息まじりに、男――草間武彦に向かって続ける。
「俺には断じて男趣味は無い。自分と同じ構造の体をなでまわしてどこが楽しい」
目が覚めたとき、隣にあるのが死体だということは、すぐに気付いた。
傍にいるのに体温がない。寝息が聞こえない。あるのは、無機物めいた存在感だけ。
その事実から、横にあるのが死体だと推測するのは難しくない。予定外だったのは、それが四十男だったということくらいだ。
「だが、おかしいな」
草間は黒電話の受話器を肩にはさんで、新聞を眺めた。2日前の記事だ。
今では珍しくもなくなった官公署の不省疑惑が紙面を独占しているせいか、大きく取り上げられてはいないが、左隅にラブホテルで発見された男性の変死体の記事が掲載されている。未成年だからか時哉の名前は記載されていない。ただ、『同室に宿泊していたA少年(19)を重要参考人として現在取り調べを行っており……』と、印刷されていた。
「おまえの言うとおりなら、通報したのは誰なんだ?」
当然だが時哉本人ではなく、ラブホテルの従業員でもなかったらしい。
通報は女性の声だったというが、それ以上はまだわかっていない。少なくとも、警察の公式発表では、そうなっている。
「だから、その通報者を調べてくれって言ってるんだ」
「誰に」
「あんたに。草間武彦に。草間興信所でもいいぜ」
「おまえなあ。一度くらい電話帳めくってみたことないのか。どこの探偵事務所にも『刑事事件はお断り』って書いてあるだろう」
「あんたんとこ書いてねーよ。電話番号しか」
「……電話帳にスペースとるのは無料じゃないんだ」
沈んだ草間の声に、時哉が囁く。
「貧乏は敵だな。……ところで、先月の光熱費。意外と馬鹿にならないよなあ、光熱費」
口に出されたのは具体的な報酬額。さらに草間は沈黙した。
時哉の仕事はやさしくないが、金払いはいい。身元がしっかりしている分、踏み倒される心配や減額される心配も無い。経費も領収書をそろえて提出すれば、報酬に上乗せされるはずだ。
考えて、考えて――事務所の経費も考慮に入れ――妥協案を下す。
「……水道代も含めろ」
情けないとは思いながら、草間は応じた。
時哉とは以前にも取引がある。怪奇探偵とまで言われる草間だが、性格は怪奇ではない。身元のしっかりしている確実な酬額を得られる依頼を逃す理由はなかった。
「オッケイ。じゃ、よろしく。通報者がわかったら連絡してくれ」
了承をとりつげると、用件は済んだとばかりに時哉は電話を切ろうとした。
「待て。探すのは通報者だけでいいのか。犯人はどうする気だ」
その気になれば、時哉は自分で人材が集められるはず。それを草間は知っている。
情報屋兼仲介業を、高校2年の若さで継ぐことになった少年。
いかにも教師の好みそうな優等生じみた表の顔と、人当たりの良さを上回る、欺瞞と利己的な傍観主義。時哉は、2年前に初めて会ったときから、そういう少年――今は青年と呼ぶべきかもしれないが――だった。
「おまえは自分から動いて解決するタイプじゃないが、他人任せも好まないだろう? それを、どうして俺によこす?」
「だからさ……」
「何をしたい。何を見たい?」
「―― そういうことを、いっぺんに聞くなって」
苦笑して、時哉は答える。
探すのは通報者だけで構わない。なぜなら、犯人と通報者の間には何らかの関係があると想像をつけているから。
「ついでに店の外で警察が張っててさ。ちょっとまずいだろ、じたばたすると」
犯人じゃないのに犯人と間違われかねない。だから、今回は外注することにしたんだ。
くつくつと笑う時哉は、心から楽しそうだった。
「あ、そういや連続殺人らしいぜ、この事件。俺が2日にして早々に解放されたのも、そのせいだろうな」
フィリップ・マーロウを目指してみろよ。
そう告げて切れた電話の受話器を、苦々しく思いながら草間は眺めていた。
■ □ ■
頭上に広がる空は、春めいた青。
もう、高く薄い冬の青色は見当たらない。
海原・みあお(うなばら・―)は、歌を口ずさみながら歩きなれた道を向かった。
背中の赤いランドセルが可愛いが――残念ながら、向かう先は学校ではない。
(こんな楽しそうなの、みあおぬきなんて許せないもんっ)
許せないというわりには、楽しそうなみあおである。
それもそのはず。
道端に満開の桜。足元に黄色いたんぽぽ。白いちょうちょがひらひらと飛べば、うきうきした気分になって当然。
そんなわけで、みあおはとっても楽しく、足取りも軽く草間興信所に向かったのである。
まさか、ときおり歌を口ずさみながら、ちょっとスキップしてみたりして歩く少女が、これから学校をサボって少女探偵業に精をだしにいくとは、通りすがった見回りの警察官でさえ気付かなかったので。
結果的に、みあおは誰にも邪魔されることなく、草間興信所の前に立つことになった。
―― そのころ。
一方の、草間興信所では。
窓際の椅子にどっかと座って、草間があくびを噛み殺していた。
あたたかな陽射しと麗らかな春の気配は、否応なく眠気をさそう。
春眠、暁を憶えず。
もう一度、布団にもぐりこみたいくらいだとぼやきうつ、椅子に深く背を預けると、ギィギィと嫌な音がした。
その音に気付いているのかいないのか――気付かないふりをしているというのが本音だろうが――窓の外を眺めながら、煙草をふかす草間の姿にシュライン・エマが、妹のように可愛がっている草間零と、顔を見あわせて小さく笑う。
「眠そうですね、兄さん」
「仕事はたまってるんだけどね。寝かせてあげましょうか」
惚れた男の寝顔は、存外にかわいい。
鬚のそりのこしがあったり、ぼけっと口をあけている様子でさえも。
(――惚れた弱みかしらね)
ふふふっと笑ったシュラインは、ふと顔をあげ―― あらあらと小さく呟いた。
ドアの外に立った少女の足音と、歌声に気がついて。
「居眠りタイムは終わりみたいよ、零ちゃん」
「そうなんですか?」
シュラインの言葉に零が首をかしげた、ちょうど、そのとき。
和やかな草間興信所の朝は、ドアが勢いよく開く音とともに派手な音をたてて崩れた。
いや、崩れたというよりも壊された。
「草間ぁ〜、噂で聞いたんだけどホモだったってほんとぉ!?」
事務所のドアを開けるなり大声でのたまったのは――もう予想がつくだろう。
学校をサボって草間興信所に『遊びに』 きた、みあおである。現在は諸事情により小学生。赤いランドセルのわきに、手作りの笛袋がぶらさがっているところを見ると、今日は音楽でもあったのか。
にこにこにっこりと立っているみあおに、零が紅茶の準備を始める。
「……学校はどうした」
怒鳴りかえす気力もなくなって、がっくりとうなだれた草間は声をしぼりだした。
「さぼりっ」
「胸をはるな」
近頃は探偵かどうかも不明になってきた――どちらかというと、怪奇専門便利屋のような気がしないでもない三十路男は、年寄りじみた溜息。ついでに嘆息。さらには諦観すらただよってくる。
そこへ、みあおが追撃をかける。
「あ、間違えちゃった。ホモから仕事請けたんだっけ?」
さらに草間を脱力させるような言葉の暴力をふるう、天然小悪魔。
なるべくなら無意識の行為と信じたい――無意識だからこそ、手におえないのだが。
「仕事は受けたが、俺はホモじゃない。有志がホモかどうかは……本人に聞け」
草間は、あえて話を時哉本人にふった。
ここであえて時哉の弁護をしてやる義理はない。
「ま、みあおにはどっちでもいいけど!」
――よくない。
思わず、草間とシュラインが心の中で突っ込む。
口に出さなかったのは懸命と言えよう。
「とりあえず、みあおも参加するね!」
断られることは考えてもいない明るさで、みあおが言い切った。
止める間もなく、草間興信所のテーブルの上には、みあおの持参した『探偵ぐっず』が並べられてゆく。
具体的には、おやつとジュース。デジカメに色紙とサインペン。
犯人の記念写真とサインがほしいらしいが――どこの世界に喜んでサインする犯罪者がいるのか。
疑問が頭をよぎらないわけでもないが、自分の殺人を手柄として自慢する輩もいる世の中、そういう変わり者もいるかもしれない。
「こんにちは、みあおさん」
近付いてきた零が、興味深そうにみあおの手元をのぞきこむ。
「みあおねぇ、こういうのってわくわくしちゃう」
「私も……少しだけ、わくわくしてきました」
「ほんと!?」
ここに、みあおと零の少女探偵団が結成完了。
やっと怪奇じゃない依頼が舞い込んだと思った矢先に――この展開。
「大丈夫なのか……」
頭を抑えて草間が呟き。シュラインは支えるように肩に手をおく。
「考えても仕方ないわ。受けたからには調査しましょう」
「みあおもやる!」
「……もう、勝手にしてくれ」
草間は呟いて、のろのろとソファから立ち上がった。
何気に発したそのひとことを、数時間後に後悔するとは、今は知らずに。
草間とシュラインが連れ立って出かけてから1時間。
時計の針は11時をすぎようとしていた。
「はい。みあおさん」
「ありがと、零」
零の差し出した紅茶を、みあおが受け取って机の脇におく。
こんなのって、探偵と秘書さんみたいでいいなぁ〜と、みあおはこっそり御満悦。
「みあおさんは、今日は学校に行かなくていいんですか?」
「うん。こっちのほうがおもしろそうだもん」
少女探偵団は順調に捜査を開始していた――捜査とおしゃべりが2:8の割合で。
「もう少ししたら、私がお昼ごはんを作りますね」
「みあおも手伝うよぉ〜。ちょっと探すのに集中するけど、作るときになったら言ってね!」
「はい」
みあおはパソコンに向かい、マウスに手をかける。
「なかなか見つかんないなぁ〜」
みあおがモニタを睨むのに苦笑して、零は掃除機のスイッチを入れた。ちらりと時計を見る。少し急がなければ、いつもどおり昼前に掃除を終えるのは難しそうだ。
零は、常よりもてきぱきと動いて掃除をしあげてゆく。
ときどき、みあおがマウスをクリックしたり、キーボードを叩く音が聞こえていた。
「……ふぅ」
12時5分前。
どうにか掃除を片付けた零が、だいぶん吸引力の落ちてきた掃除機をしまう。
新しい電話よりも、新しい掃除機がほしいと、心から思う零である。
「あ!」
手を洗い、エプロンを2つ持って戻ってきたところで、みあおが大きい声をあげた。
「みあおさん?」
「それっぽい記事、やっとはっけーん。もうちょっと、くわしく調べてみる!」
目当ての記事を見つけたみあおの目は、きらきらと輝いている。
わくわく。どきどき。いけいけごーごー。
背後にそんな字が浮かんでいるような勢いだ。
「ええと……それなら、お昼ごはんは私がひとりで作りますね」
妙な迫力。零がきょろきょろと周りを見回してから言う。
「ううんっ。みあおも作る〜♪」
みあおは画面をそのままに、椅子からぽんと飛び降りた。
「なかなか見つかんなくて疲れちゃったもん。気分てんかんしなくっちゃ!」
零をまねて腕まくりをして、ぐっと拳をにぎる。
「わかりました。それなら、パソコンの電源落としてください」
くったくのない笑顔。
――なんというか、草間興信所はいつも貧乏なのだった。
昼食の後。みあおは改めて、「それっぽい記事」とその関連記事の検索に入り、情報をひきだした。
この記事に行きつくまでに手間取ったが、検索に必要な単語が特定されてからならば、あとはそう難しくない。
みあおは、大手新聞社のニュースサイトから個人のテキストサイトまで回って情報を収集し、必要な情報はプリントアウトして、最初に零に言われたとおり、しっかりとパソコンの電源を落とす。
「準備ばんたん!」
プリントアウトされた情報を改めてチェックすると、みあおは胸をはる。
殺人のあった場所、そのホテルの周辺地図。新聞にはのっていない詳細な警察発表から、次の殺人場所の予想まで。
全部で十数枚になる紙は、ふたつに折ってランドセルにしまいこんだ。
この場に誰か大人がいたなら、みあおの行動を止めたかもしれないが――あいにく、今日の草間興信所は留守番の零と、少女探偵のみあおしかいない。
そして、みあおの行動力は並みの娘よりも強かった。
「零、草間の携帯の番号しらない?」
「これです」
渡された電話番号を見ながら、ここでしか見たことのない黒電話のダイヤルを回す。
手に持った受話器が重い。
4回目のコール途中で、草間が出た。
「草間ぁ? みあおだよぉ」
みあおは、リュックに『探偵ぐっず』をしまいながら言った。
零はガスの元栓を締め、事務所の戸締りをしてまわっている。
「どうしたんだ?」
「ネットで調べた結果を報告しよーと思って。ええと、連続殺人って大げさな発表ってないんだけど、一部のサイトで、『これは連続殺人じゃないか』って騒ぎが持ち上がり始めてるみたいだよ。同じような状況で見つかった人が他にもいるんだって。……草間、聞いてる?」
「聞いてる」
頑張って調べたのに、あまり反応がない。
草間が既に入手済の情報とは知らないみあおは、ちょっとだけ、落胆した。
でも、あまり落ち込んではいられない。大捕物はこれからだ。
「単純に考えたら、あやしい人って依頼者のホモのひとが同伴した人か、被害者ひとの本来のラブホテルの相手かだよね。だったら、ラブホテルの方で目撃者がいるかもしれないし」
みあおは、春めいた色のコートを着てリュックを背負う。
「用意できました」
出かける格好に着替えた零が、みあおの隣に立つ。
「みあお、ちょっと行って聞き込みしてみるねっ」
「大丈夫です、兄さん。私も一緒にいきますから」
――がちゃん。
みあおは、あっさりと受話器を置く。
「行きましょう」
「うんっ。草間よりも早く見つけるぞーっ」
少女探偵団結成から3時間半。
ついに本格活動開始。
……電話の向こうでは、シュラインが草間から携帯を奪いとり、自宅よりも慣れ親しんだ事務所の番号を押して、少女ふたりが連れ立ってホテル街に出かけるのを必死で阻止しようとしていたのだが――。
みあおが普通に切ったつもりの電話は、手を離したときに、ほんのすこし外れていて。
つまり――シュラインが何度かけなおしても、聞こえるのは無情な話中音だけだった。
みあおと零が、1件目の事件があったとされるホテルについたのは、それから30分後。
「何か聞けましたか?」
「ううん。ぜんぜーん。ホテルのひと、なんも会話してないんだもん」
ラブホテルの裏口、昼間でも薄暗い路地で、小鳥の姿から人間の姿に戻ったみあおは、首をふった。
「ここ、最初のほうの事件だからかなぁ。それとも昼間だからかな。お客さんも少なかったみたいだし」
みあおは、首を傾げてひとりごと。
お客さんというのが――ここがラブホテルであることを考えれば、相当にやばい光景が……少なくとも、小学生の見てはいけない光景が繰り広げられてたのではないかと思われるが、みあおは気にしなかった。
そして、零は意味に気付かなかった。
――これも、不幸中の幸いか。
「天井裏とか床下も調べてみたけど……なんもなかったし。このへん公衆電話もないんだねぇ」
みあおがきょろきょろと、周辺を見回す。
携帯電話が普及して以来、公衆電話の設置数は減少傾向にある。おかしくはない。
「はずれかなぁ。次のとこってどこだっけ」
「2件目は向かいのホテルです。3件目は、こっちの紙に……」
ふたり、地図を見下ろして呟く。
「ちょっと遠いね」
「そうですね」
「こないだの……えっと、ホモの依頼者が被害にあったのどこだっけ」
みあおの中では、時哉はホモと決まったらしい。
「確か、それはこの地図に……」
零が出した紙にかかれた地図。
「じゃあ、予定かえて、そっち行こうっ」
「はい」
少女探偵団のホテル街めぐりは、まだ終らない。
夕方5時すぎ。
もう随分と外も暗くなった頃、少女探偵団はファーストフード店にいた。
「失敗つづき〜」
ぐったりと、みあおがテーブルに顔をふせた。
時哉が被害にあったホテルへやってきたみあおは、予想外のものと遭遇したのだ。
それは――警察。
時哉が動かなかった理由も、自身が警察に追われている――とまでは言わないものの、見張られているからだ。
当然のことながら、ホテルにも警察官がはりこんでいた。
そこへ少女がふたり――しかも、ひとりはランドセルを背負って――現れれば、これは警察官として、職務上、見過ごすわけにはいかないわけで。
捕まりたくない2人は、必死で走りまわって逃げ、やっと自由になったところだ。
「むーっ。でも、ここで諦めたくなぁーいっ」
「でも、あそこに戻っても、また警察の方に話しかけられそうですね」
「うぅ〜」
うなったみあおが、はっと顔をあげる。
ランドセルの中をさぐって探し当てたのは、とある個人サイトでやっていた、『次の殺人場所予想』の地図だ。
「こっちならまだ、警察も来てないかもしれないよっ。行こうっ」
葛生・摩耶(くずう・まや)と連絡をとったシュラインが必死で自分たちを探しているとも知らず、店を出たみあおは、零の手をとって、暗くなり始めた道を走り始めた。
「少女探偵ごっこかしら。可愛いのね」
ふたりを見送って、みあおと背中あわせのテーブルに座っていた女が、細い煙草に火をつける。
手の中のライターは、カルティエのブラック。
探している相手が真後ろにいたことは、みあおも零も――最後まで知らないことだった。
■ ■ ■
ねえ、知っている?
――女はね、月の生き物なのよ。
男の腕に、自分の腕をからめて女は微笑む。
化粧気の少ない女の、不意をついた蠱惑的な微笑に、男は陶然とした。
見下ろす白い首筋からたちのぼる、甘い香水。
今宵は既月。
細い月は西の地平へ消えてゆこうとしていた。
■ ■ ■
予想されているいくつかのホテル街をめぐり、その通りに辿りついたとき、既に事件は起こった後だった。
パトカーのサイレンが赤く光っていて、人だかりができている。
「零、行って確かめようっ」
背中のランドセルから色紙とサインペンを取り出し、準備OK。
もちろん手にはデジタルカメラを持っている。
まさか、2人ともホテルの入り口に向かうようなことはしない。裏口の方へと向かおうとしたときだ。
「ああああ! えっと、そこの女の子! 銀髪と黒髪のっ!」
きょとんとみあおが立ち止まる。
声のしたほうを向くと、夏野・影踏(なつの・かげふみ)と志賀・哲生(しが・てつお)――このとき、みあおは2人の名前を知らなかったが――が、ほぼ同時に、そして蒼褪めた顔で叫んだ。
「逃げろ!」
「え?」
「いいから、全力で逃げろ!」
哲生が繰り返し叫んだ瞬間、みあおの前に、女が落ちてきた。
正確にいえば、落ちてくるスピードで路上に着地した。
みあおが、その女の姿を見たのは一瞬。
自分が狙われたことは気付いた。気付いただけだ。行動する時間はない。
女が無造作に構えた銃口は、みあおの心臓を狙っていた。
ぽつんと光る。
レーザーの赤い点。
口紅で彩られた女の唇が、笑みの形につりあがる。
「きゃああああっ」
銃声は悲鳴でかきけされた。
目の前に立った誰かの体が、ぐらっとゆれる。そのまま、頭から倒れてしまいそうで、みあおもは手をのばした。
支えきれずに、その誰かごと路上に座り込んでしまう。
その2人を守るように綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)と夏野・影踏(なつの・かげふみ)が立ちふさがったことに、みあおは気付かなかった。
「タナトス!」
志賀哲生(しが・てつお)の叫びも耳に届かない。
「零ッ!」
みあおの目の前に倒れた誰かへ、かけつけてきた草間が必死に呼びかける。
「武彦さん、揺らさないで!」
「あ、ああ。わかってる……零!?」
シュラインに肩を抱かれながら、草間はそっと誰かを抱き起こした。
「……草間? みあお……みあおはぶじ……」
「ええ、キミは無事。怪我はないわ。安心しなさい」
混乱しているらしいみあおの背を汐耶が支えてくれていた。
焦点の合わない瞳をのぞきこんでくるのが汐耶だということさえ、今はわからない。
髪を撫でる指がやさしくて、少し安心する。
「みあおはぶじ?」
「そう。キミには怪我はないわ」
言い含めるように、汐耶が繰り返した。
「大丈夫。大丈夫だから」
みあおは気付く―― それなら、怪我をしたのは、誰。
零とつないでいた左手が痛い。
きつく握られて、後ろへ強く引っ張られたからだ。悲鳴をあげる前に見えたのは、視界を遮った長い黒髪。広げた手。自分をかばうように。
「零ッ、無事かっ」
草間が叫んでいる。
「みあおはぶじ…………」
だから、怪我をしたのは。
「兄さ、ん……み、あおさんは、無事?」
ゆっくりと話す声に、肺から息がもれる音がひゅうひゅうと混じっていた。
みあおの顔から血の気がひく。
「やだ!」
シュラインと汐耶を押しのけて零の腕を掴んだみあおの手に、血がべたりとまとわりついた。
「大丈夫よ。零ちゃんは大丈夫……」
このくらいの怪我で、彼女は死なない。
それはシュラインも草間もよく知っているのだが―― それでも指先がふるえるのは止められなかった。
―― 零は、眠っている。
―― 草間が、無言でベッド脇に座り続けている。
みあおは、声をかけられずにそれを見ていた。
何を言えばいいのかわからなくて。謝るのではたりない気がして。
口を開きかけては小さく首をふるみあおを見ていたシュラインが、ふわりとみあおの肩を抱いた。
「送ってくわ」
シュラインの声は、いつもにましてやさしい。
しゃがんで、身長の低いみあおに視線を合わせ、にっこりと笑う。
「もう遅いわ。みあおちゃんは家に帰る時間」
「みあお、零の――」
零の傍にいたい。
そう言いかけた言葉は、シュラインに唇を指先でちょんとおさえられて、言えなくなる。
「今日は帰りましょう。みあおちゃんも疲れてるわ。ゆっくり眠って、明日いらっしゃい」
約束よ?
小指を目の前にだされて、みあおはこくりと肯く。自分の指を、シュラインのそれに絡めた。
「指きりげんまん。嘘ついたらハリセンボン、のませちゃうわよ?」
「うん」
いつものみあおらしくもなく、言葉少なげに肯いたみあおに、シュラインが「ふふっ」と笑った。
「針を千本じゃなくて、魚のハリセンボンよ。がんばって飲んでね、みあおちゃん」
「みあお、約束やぶらないもんっ」
「そうかしら」
とぼけた様子で首をかしげたシュラインの服を掴んで、みあおは大声をあげた。
「ぜったい! ハリセンボンとか飲むようなことしないもん!! 」
何事かと振り返った草間に、ウィンクを返し、シュラインはみあおの手をひいて部屋をでる。
「いつものみあおちゃんが戻ってきたみたいね」
「あ……」
「明日、待ってるわ」
うん。絶対に来る。元気たくさん持って。
みあおは、こくりと肯いた。
■ □ ■
(―― 【禍と幸と揺籠】 ――)
そんな名前だったなと思い出しながら、草間は煙草のフィルタを噛む。
幸と禍。禍と幸。
その単語を、ただの順番の違いと、決め付けられるだろうか。
開店前の店は薄暗く、ざわめきもなく、ただ静かで。
人が入れば、それなりに幻想的な雰囲気をかもしだすに違いないオレンジ色の灯りさえ、不気味に人の影をゆらめかせる道具でしかない。
そのカウンターの中に立つ時哉は、あまりにも違和感がなかった。
いい気分はしなかった。ここに来ることさえ避けたかった。少なくとも今は。
噛みすぎた煙草のフィルタが、口の中で散切れる。はかったように目の前に置かれた灰皿へ吐き出して、煙草を揉み消した。乱暴に。
「――犯人が誰なのか、気付いてたんじゃないのか、有志」
草間は、調査報告書を持って時哉を見る。
調査を請けおった興信所としての義務感だけで。
「最初から知ってたのか。犯人を」
「まさか」
信じないとばかりに厳しい目で睨まれて、時哉は天井を仰ぐ。
口にしているのは、本心から誓って事実なのだが、信じてもらえないのは仕方がない。
「まあ、いちばん楽で昔からある手じゃん。殺した本人が警察に通報するって」
あれから――零が撃たれた夜から数日がたち、警察の捜査も前よりは進んでいる。
だが、『進んでいる』と、『捗っている』は、イコールではない。
通報に使われた携帯電話の番号は判明したが、プリペイド式の携帯電話を手に入れる術はいくらでもあり、入手ルートを特定するのは至難の業だと、馴染みの刑事が教えてくれた。
所有者の名前はわれたのだが、予想どおりというべきか――実在しない架空の名義だった。
「……有志」
どうして、それを最初に言ってくれなかったかと詰問しかけて、やめる。
答えは簡単に想像がついた。
『訊かれなかったから』
返る反応は、おそらくそんなところだ。
「飲めよ」
草間の前に、音をたてずに湯気をたてるグラスが置かれる。
温められた赤ワイン。いや、チェリーの香りが――わずかにするか。
「その顔色で帰らないほうがいいぜ?」
「誰のせいだと思ってる」
「俺は、草間興信所に依頼を出した。あんたは依頼を受けて調べたんだ」
草間は調査書をカウンターに放り出し、立ち上がった。
乱暴な動作に倒れた椅子の音が、耳につく。
「飲んでいかないのか?」
「誰がいるか」
歩幅を大きくして、扉に向かう。振り返ることはおろか、椅子を直しもしなかった。
「―― 志賀は気付いたんだけどな」
小さく笑いながら椅子をおこす時哉の声を聞いたのは、その本人と、誰もいない店内だけだった。
苛立った顔は見せたくなかった。
見慣れた事務所のドアの前で、草間は深呼吸をする。
「――ただいま」
いささか、ドアの開け方が乱暴だったかもしれない。
「おかえりなさい、兄さん」
「草間、おっかえりー!」
興信所に戻ってきた草間を出迎える明るい声。
今は、それが救いのようにも思えた。
「零、起き上がって平気なのか?」
「はい。兄さんに心配かけてごめんなさい」
「いいさ。それから――おまえ、今日はサボりじゃないだろうな」
「違うよぉ。みあお、ちゃんと学校の帰りだもんっ」
「ならいい」
呟くように言った草間は、めずらしくみあおの頭をなでた。
その手が、いつになしか労わるようで、みあおは草間を見上げる。
「草間ぁ?」
「見舞いだろう。ありがとう」
憔悴……とまではわからない。
ただ、草間も疲れてるんだと気がついたみあおは、肯いて零にむきなおる。
少し話をして振り向くと、草間はコーヒーをすすっていた。
背中をまるめてすするところが、おじさんぽいよう、草間ぁ……と、ひそかに思ったことは口に出さない。
その代わりに、元気よく手をあげてみせた。
「みあおも飲むー。砂糖3杯とミルク付き!」
「太るぞ」
「ひっどーいっ。みあおは大丈夫だもんっ。草間こそ、そのうち中年太りするんだから!」
うっ、と草間が言葉につまる。
みあおと零が同時に笑った。草間の隣でシュラインも。
草間ひとりがしかめっつらを作る。
笑ってくれた。よかった。
嬉しくなって、みあおはVサインを作る。
「みあおの勝ち〜」
甘いコーヒーを飲むみあおと零の傍で、季節外れの桔梗の花が春風に揺れていた。
■ ■ ■
パステルカラーのパンプスだった。
唇はピンク。ピアスの耳元に、淡いトルマリン。
薄いグレイのスーツは、しなやかな女の体の線を強調しつつも、下品ではなかった。
片方の肩にかけた大きめのバッグが、仕事がえりのOLを思わせる。
擦れ違いさま、肩のぶつかった男性に微笑みをむけて、女は駅の階段をのぼった。
8センチのヒールの足元が、音もたてずに歩くことに誰も気付かない。
帰宅時間にさしかかり、混雑するプラットフォームで、女は下りの電車を待つ。
さして待つこともなく入ってきた電車の混み具合に疲れたような溜息をひとつおとして、乗りこんでいった。
そのまま、何事もなく電車は動きだす。
プラットフォームのゴミ箱に、もう、いらなくなった携帯電話を残して。
この日――都内のホテル数件において、殺人事件があった。
通報は、高く澄んだ女の声。
謳うように、ゲームの終わりを告げた。
「Game Over。もう厭きたわ。時間切れよ」
――時計は、18時12分をさしていた。
― 了 ―
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≪ 草間興信所 依頼報告書より、抜粋 ≫
依頼人 :
有志 時哉 (ゆうし ときや)
依頼時刻 :
3月21日、午後10時。依頼人より入電。
依頼内容 :
依頼人が巻き込まれた殺人事件の通報者について素性を調べてほしいとのこと。
尚、犯人については調査の必要がないことを確認。
事件内容 :
3月16日、午前5時39分。
所轄警察署に直接、女性の声で「死体を見つけて」との通報が入る。
この時、女性はホテルの住所・名称・部屋番号も告げている。
同日、午前5時47分。
通報を受けた警察は都内某ホテルにて、男性の死体を発見。
同室に宿泊していた依頼人を重要参考人として任意同行。
男性の名は川本則夫。満42歳。
検死によれば、死因は頚動脈に注射された高濃度の農薬による中毒死と判明。
使用されたと思われる注射器は、同室のゴミ箱より発見された。
科捜研にて詳しい鑑定を試みるが、指紋、その他の証拠物は発見されず。
その後の調べにより、川本は名古屋に本社を持つ会社の社長であると確認された。
死亡推定時刻は午前2時〜3時。
重要参考人と目されて取調べを受けていた依頼人だが、その時刻、都内のカラオケスタジオにいたことを、
店舗スタッフを含めた複数の人間が目撃しており、また、同カラオケスタジオから殺害現場のホテルまでは
往復で40分程度かかることから、依頼人は容疑者から除外された。
依頼された通報者の素性について :
警察に残されていたテープから声紋鑑定した結果、間違いなく女性の声と確認。
変声機等を使っていた痕跡は確認できないことから、肉声と思われる。
警察の聞き込みに同行していたシュライン・エマも同一の声と明言している。
また、通報者本人と接触し、携帯から警察に事件を通報する現場にいた葛生摩耶がテープの声を確認した
ところ、声の他、話し方のアクセントや特徴がよく似ているとの判断を得た。
数分後、通報者と思われる女性は、海原みなも、草間零を襲っているが、理由は不明。
銃の種別は特定できなかったが、その場に残された弾丸から28口径の銃と判明。
少女2人が襲われる現場にかけつけた、志賀哲生、夏野影踏の両名だが、女性の年齢は20代後半、髪を
長くのばした、売春婦にも見えかねない格好であったと証言している。
志賀哲生が強く主張したところによれば、少なくとも女性は数十名を殺した経験があるはずとのこと。
海原みなも、草間零を襲ったあとの女性の行動については、確認ができていない。
襲われた海原みなもは恐慌状態に陥っており、シュライン・エマも止血に集中していた。
通報者と接触した葛生摩耶は、その際に銃で撃たれており現場を引き上げている。
志賀哲生は、女性と接触した直後から酩酊状態に陥り、3日間、二日酔いの症状が続いた。
血中からアルコールの検出されなかった志賀哲生が酩酊状態に陥った理由は解明できていない。
女性を注視していた綾和泉汐耶、夏野影踏の両名は、女性が水面にでも沈むようにアスファルトの路面へ
沈んで消えたと証言しているが、こちらも他の目撃者はなく確認はとれていない。
尚、女が沈んだとされている場所の地下数メートルに、廃棄された地下道があることが判明。
警察では現在、両名の証言との関連性を調べている。
これらのことから、通報者の女性=犯人である可能性が高いと思われるが、銃を所持していながら、殺害に
銃を使用していない理由は、未だ不明である。
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登場人物 (この物語に登場した人物の一覧)
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生
1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 都立図書館司書
1979 / 葛生・摩耶 / 女 / 20 / 泡姫
2151 / 志賀・哲生 / 男 / 30 / 私立探偵(元・刑事)
2309 / 夏野・影踏 / 男 / 22 / 栄養士
NPC / 有志・時哉 / 男 / 19 / 大学生/【禍と幸の揺籠】の店主
NPC / 桔梗 (仮名) / 女 / 年齢不明 / 職業不明
※ 整理番号順に並んでいます。
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ライターよりのひとこと (ライター通信)
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那季・契と申します。
納品物に一部不完全な部分がありましたので、改めて再納品させていただきます。
起こっている事件自体は、他の方のものと変わっておりません。
全く同じです。
興信所依頼らしく、最後に報告書(らしきもの)も付けさせていただきました。
桔梗の作ろうとしたチェスの版面と殺した順番の理由については、
異界、【禍と幸の揺籠】内において、2・3日中に詳細を掲載させていただきます。
もし宜しければ、御覧になってみてください。
ちなみに、時哉が事件に巻き込まれたのは3月16日。
時哉の依頼を受けて、皆様が行動を起こしていたのは3月22日。
そして、エンディングの事件が起こったのは、3月29日です。
どうして通報が18時12分なのか気になる方は、月齢を調べてみてください。
―― 蛇足ですが、時哉の事件の通報は12時35分でした。
最後に。
私個人の都合が重なったとはいえ、納期から10日以上お待たせする形になってしまいまして、
綾和泉・汐耶さまと夏野・影踏さまには、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。
本当に御参加いただき有難うございました。
---◆ 海原・みあお さま ◆---
みあおさまとは初めまして。御参加ありがとうございました。
多少のリニューアルで、チェスゲームを改めてお届けします。
みあおさまは、今回、唯一とも言える可愛らしい女の子でした。
零ちゃんと組んで動いていただきました。
プレイングについてですが、13歳(外見は小学生)とのことですので、
できあがった文章のようになっています。
さすがに、小学校低学年の女の子では、警察も放っておきません。
通報手段ですが、プリペイド携帯電話でした。
これは、最初から決まっていたことです。
……公衆電話、このごろあまり見かけなくなって困りますね。
できれば記念写真は撮らせてあげたかったのですが、
通報者=犯人の性格上、こちらも無理でした。すみません。
那季 契
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