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成仏していないおばあさんを探せっ!!
●オープニング
「ボクのおばあさんがまだ、いる気がするんです」
私立神聖都学園の豪奢な校舎の中では少し浮いてる怪奇探検クラブの粗末な部室の扉を久しぶりに叩いたのは、いかにもボクこうゆう怖いのダメなんです〜っていう風情の坊ちゃん、世間知らずっぽい小柄な男の子だった。
その部室を一応預かる一人であるSHIZUKUは、そんな彼を上から下までキラキラと嬉しそうに眺めた。
「え、え、それでっ!!」
嬉しさで声まで上擦っている。その可愛らしい目に真剣に見つめられて、その男の子がさっと赤くなる。
「あの、ですから、死んだはずのおばあさんがまだいる気がして……」
「それは、どうしてそう思うんですか?」
このままSHIZUKUに任せていてもラチが明かないと思い、ヒミコはそう冷静に質問する。
男子生徒は更に真っ赤になり、俯きながら応えた。
「あの、だって……夜脱ぎっぱなしにしておいたはずのパジャマが元のタンスに入っていたり……突然やかんが沸いたり……夜中に琴の音が聞こえてきたり……」
「姿はっ姿はっ見たことないのっ!?」
SHIZUKUの興奮はもう最高潮だ。ヒミコもドキドキしてきた。
「姿までは……でも、ウチは動物なんて飼ってないのに……」
「コレは事件ねっ」
SHIZUKUは目をキラキラと輝かせた。
部員たちに目配せした。
1
「ということで、霊媒体質だと有名な不動君に降霊をお願いしたいんだけど♪」
同級生のSHIZUKUが大きな瞳をキラキラとさせてお願いのポーズをしてきた。今は、放課後の教室だ。男子生徒の依頼より丸一日経っている。ざわざわとした雑音とせわしないこの後の予定を相談するクラスメイトたちの囁き声で、教室はカオスに満ちている。
不動・修羅は、そんな中、片眉を上げた。
「まあ、SHIZUKUの頼みなら、仕方ないが……。今日なのか?」
「そう、今日♪善は急げと言うでしょ?もし予定ないなら部室にその男の子スタンバってるから、お願いしたいんだけど♪」
「わかった」
不動・修羅は颯爽と鞄を背に乗せた。随分と小さいSHIZUKUを置いて部室に歩き出す。
「あ、もう、待ってよ〜」
SHIZUKUはその背中を追いかけ、パタパタと走り寄った。
2
整然とした白い校内に突如として現れる古い木のドア。ギイーッという今にも悲鳴をあげそうな音を軋ませて開けると、そこにはまた、打ち捨てられたようなテーブルが幾つかと椅子が並んでいる。「怪奇探検クラブ」としての雰囲気を出すため、SHUZUKUが特注した品々だ。その間を縫って先に待機していたヒミコと男子生徒がSHIZUKUの登場に目を輝かせた。連れてきた不動にも期待の光が集まる。
不動は、ゆっくりと目を伏せ、息を少しだけ吐いた。
「いいか。今からばあさんの霊を呼び出すが、ばあさんに世話になったんだったら、礼ぐらい言ってやれよ。それと、ばあさんがちゃんと成仏できるように心配しなくてもしっかりやると約束してやれ」
そう言って固く目を閉じた。きょとんとする男子生徒とヒミコにSHIZUKUが耳打ちする。「あのね、不動君ってね、あたしのクラスメイトなんだけど、霊媒体質でね、色んな霊を自分の身体に降ろすことが出来るの。だから、今回、おばあさんの霊を不動君に降ろしてもらって話をさせてもらおうってことで頼んできたの。だから、あんた、よろしくね♪」SHIZUKUは、そう言って男子生徒の肩を力強く叩いた。まだ目を白黒させている男子生徒の目の前で不動の腰が曲がっていく。瞳の色は年老い、両手両足はブルブルと震え出す。そして男子生徒に目が合うと、本当に嬉しそうにニッコリと笑った。
「ほら、頑張って♪」
SHIZUKUが男子生徒の背を押す。男子生徒は、所在無く目を彷徨わせている。不動の手が伸びた。ビクリと後ずさる彼の髪に少しだけ触れて、愛しそうに撫でた。男子生徒の緊張が解けていく。口から言葉が零れ出た。
「おばあ……ちゃん?」
不動はにっこりと笑った。優しい笑み。男子生徒の目から涙が落ちる。
「おばあちゃん、おばあちゃんっ!!」
不動の胸に縋り付き泣いた。
3
男子生徒が泣き疲れて離れると、不動はゆっくりと紡ぎ始めた。
「本当に、大きくなったね……。昔は、この半分くらいだったのに。もう立派なおにいちゃんだね」
男子生徒は無言で首を何度も横に振る。不動は微笑む。その髪を梳くように撫でて男子生徒に目を合わせる。男子生徒はその肩を強く握り締めた。
「イヤだよ、おばあちゃん。近くにいるなら、ずっといてよ。今みたいに話しかけてよ。寂しいよ」
「……優」
優は、駄々をこねる子どもみたいに首を意味なくまた振った。不動はその背を優しく叩いてやる。
「優。ヒトは皆、死ぬものよ。でも、悲しまないで。おばあちゃんの心は、いつもお前の近くにある。お前が忘れない限り、ずっとある。大丈夫だよ」
「優君……」
ヒミコが優の肩を叩いた。
「言いにくいんだけど、このおばあさんの成仏を妨げているのは優君な気がする。私は、SHIZUKUからちょっと聞いただけだけど、成仏してない霊って凄く苦しいんだって。だから……」
優は目を伏せた。目の上には優しい笑みを浮かべる父より母より好きだった祖母がいる。SHIZUKUに目を合わすと、彼女はガンバっと言うように両手の拳を固く握った。優は笑う。
「……わかったよ。ボクもまた後で行くことになる場所だもんね。先に行って待っててよ。ボクもすぐに行くから」
「……」
不動の体が淡く光る。発光する原体から白く不定形な霞のようなものが飛び出る。それは一瞬、老女の形をしたかと思うと、霧散した。
不動の目が再び開く。もう彼の輝きだった。
4
「ありがとうございました」
優が深々と頭を下げた。不動はその表情を見て、ニッと笑み、その肩を力強く二、三回叩いた。
「ま、本当なら金を取るところだが、ばあさんに免じてタダにしといてやるよ。その代わり、ばあさんに心配かけるようなことしたら承知しねえからな」
「はいっ!!」
意気揚々と出て行くその背中。それを見送ってSHIZUKUに笑みを送った。SHIZUKUも笑む。
「いいトコあるじゃん」
「まあな」
空は今日も快晴だ。いい日になりそうだ。
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【2592/不動・修羅/男性/17歳/神聖都学園高等部2年生】
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■ ライター通信 ■
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ご発注、ありがとうございました。
いかがでしたでしょうか?
少しでも楽しんでいただけたでしょうか。
今回はコンパクトに纏めてみました。
不動君は、プロフィールを拝見してクールでカッコよい感じがいたしましたので、余計なことはあまり言わず最後にビシッと決めていただきました。
ご感想等、ありましたら寄せていただけると嬉しいです。
もしよろしければ、またのご発注をお待ちしております。
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