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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


雛奉れ!

------<オープニング>--------------------------------------
○あらすじになってないあらすじ。
葉華が「ひな祭り」を勘違いして連れてきたヒヨコ達が脱走!
頑張って、面白おかしく捕まえろ!!(待てコラ)
…ついでに、葉華にひな祭りを教えてやって下さいな(何)

●店舗にて。
「ん〜…いい苗が見つかるといいなぁ♪」
農業を営んでいる田中・稔は、畑に植えるための苗を探しに、草間や他の人に聞いた店―プラントショップ『まきえ』―に赴いていた。
「あ、ここね」
ようやく見つけた店の看板に顔を輝かせ、意気揚揚と扉に手をかける稔。
そして、ガチャリと扉を開け―――すぐに閉めた。
「あぁっ!見捨てないで下さーいッ!!」
中から聡の悲痛な声が聞こえてきて、仕方なくもう一度ほんの少しだけ隙間を空けて中を覗く。
―――ヒヨコと葛藤する山川親子。
…どうしよう。色んな意味で。
「…でも…」
ピヨピヨ鳴きながら走り回るヒヨコ。―――可愛い…。
「お願いしますっ!ヒヨコを捕まえるの手伝ってくださいーっ!!」
「はいはい、喜んでー♪」
必死にヒヨコをダンボールの中に詰めながら叫ぶ聡に、稔はうきうきと手伝う為に一歩踏み出した。
「あ、そうそう。あとで畑に植える苗買わせて下さいね?」
「あ、はい。解りました…」
にっこり笑ってヒヨコを捕まえる稔に、ヒヨコの入ったダンボールにガムテープで封をしつつ、まきえが答える。
―――そんなこんなで。
暫くの間、捕まえても捕まえても次から次へと増えていく奇怪なヒヨコに、山川親子と稔は慌てるハメになったのだった。

――― 一時間後。
「…や、やっと落ち着ける…」
「疲れたー…」
「えっと…お客様、急な申し出にも関わらず、お手伝いして下さって有難う御座いました…」
「あ、いえいえ。どういたしまして」
一息つきましょう、と差し出されたお茶を飲みながら、稔はにこりと笑いかける。
「ヨコヨコちゃんってば見た目は可愛いのに結構すばしっこいんですね。
 しかも数が多くてすっごく大変」
「…えぇ、本当に。
 最初はあんなにいなかった筈なんですけどね…」
苦笑しながら言う稔に、疲れたように肩を落とす聡。
話を聞いてみると、どうやら作業をし始めた時は十匹にも満たなかった筈なのに、作業をしているうちに次から次へと増えていったらしい。
「後でお礼をしないと…」
「え?いや、別にいらないですよ」
「でも…」
お礼をしたいと食い下がるまきえと聡に苦笑しつつ、稔は妥協案を持ちかけた。
「じゃあ、後でヨコヨコちゃんを何匹か貰っていいですか?」
「「え?」」
「私小動物大好きなんです」
だから、それがお礼ってことで、とにっこり笑う稔に、まきえと聡は苦笑しつつ頷くのだった。

それからちょっとした後、崎、ボブ、来城・圭織、桜木・愛華、西ノ浜・菜杖が店舗にヒヨコを届けにきた。
そして、一旦休憩も兼ねて全員でダンボールの仕分けをし直した後、今度は普通の温室へ行くという話を聞き。
なんだか面白そうだから、と言う事で普通の温室へ一緒に行く事にした。
ボブと崎は店舗の手伝いに残ると言う事で、店舗で別れることになったが。

●普通の温室にて。
愛華の能力を頼りに葉華と希望の足取りを追い、ようやく追いついたときには…2人とも、酷く疲れていた。
「…2人とも、大丈夫?」
「とりあえず」
「それなりには」
「…微妙な返答ね」
愛華の問いかけに地面に仰向けになりながら遠い目で答える2人に、圭織は思わず苦笑を浮かべる。
「一体どうしてそんなこのになったの?ヨーくんにノッちゃん」
「…ヨーくん…」
「…ノッちゃん…」
2人とも稔に告げられたアダ名に微妙な顔をしつつも、仕方なく起き上がる。
「一体どうしたんですか?」
不思議そうにしゃがみ込みながら問いかけた菜杖に、葉華と希望は顔を見合わせ、頭を掻きながらへらりと笑う。
「いや、それが、さ…」
「何とか大半のヒヨコを捕まえたのはよかったんだけど…」
「え?でも2人とも一匹も持ってないじゃない?」
2人の言葉に不思議そうに声を上げた圭織に、希望はチッチッチ、と指を振る。
「俺は空間を自由に使えるから、捕まえたのは片っ端から店舗に投げてんだよ」
―――それってすごい迷惑なんじゃあ…。
どうりで店舗でまきえと聡が走り回ってた訳だ。
「…で、どうしたの?」
「……それがさぁ…残ったのがまた随分厄介で……」
「「「「厄介?」」」」
不思議そうに首を傾げる4人に、希望と葉華が渋い顔をする。
「…物凄くすばしっこくて…」
「凶暴性抜群」
「だからって下手に攻撃したら可哀相だし…」
「武器使うわけにもいかねーし、って手加減してたんだけど…」
「そしたら…反撃に合って逃げられた」
とほほ、と2人揃ってつつかれたらしく赤くなっている手を振る2人に、全員は思わず額に汗が伝う。
…この2人がかなりてこずるようなヒヨコって…結構ヤバイ。
「ま、まぁ、たかがヒヨコじゃない!どうってことないわよ!!」
一番早く気を取り直し、拳を握るのは圭織。まぁ、やはり女性は強い、と言う事で。
「あう…そうだといいんですけど…」
「ぼ、僕、戦うのは苦手なんで、皆さん頑張って下さいね!」
嫌な予感がする、と顔を青くする愛華に、早々に戦線離脱する菜杖。
「んー…残ったヨコヨコちゃんって、そんなに手強いんだ?」
そして、なんとなく興味津々な様子の稔。
まさに三者…いや、四者四様である。
「まぁ…とにかく、応援も来た事だし、捜索再開すっか」
よいしょ、とジジくさく腰をあげる希望と葉華に思わず笑いながら、一行はヒヨコ探しを再会するのだった。

愛華と葉華のナビによって暫く歩いていた一行。
「そういえば、葉華は結局ホントのひな祭りってどんなのかわかったの?」
「ううん、全然。
 希望も楽しむだけで教えてくれねぇし」
「だって俺が教えたら面白くねーじゃん」
愛華の答えに首を振りながら希望を睨みつける葉華と、その視線をさらっとかわして笑う希望。
「ふーん…」
「じゃあ、私が教えてあげるわv」
「え!?ホントか!?」
にっこりと笑いながら、圭織が葉華に声をかける。
ぱぁっと顔を輝かせた葉華に、圭織がもちろん、と頷いて話し出した。
「あのね、ひな祭りって言うのは」
「言うのは?」
じっくり溜めてから、圭織はぐっと拳を握り、叫んだ。
「…食べ物食べまくってお菓子もらいまくる日よ!!」
「へぇ、そうなのか!」
…それ、ハロウィンとかとちょっち混ざってるような気が…。
それを聞いて、菜杖が面白そうだと話に混ざる。
「そうですよー。
 ひな祭りって言うのは本当はお菓子をいっぱい貰うための行事で、雛人形の中に隠してあるお菓子を取り出して食べるんです」
うわぁ、またもや嘘満載。
「へぇ…そんな面白い行事だったのか!」
葉華はすっかり騙され、圭織と菜杖が言う「ひな祭り」にすっかり心奪われている。
「あ…よ、葉華…それは嘘なんだけど…!
 …あ、あうぅ…希望さぁん…」
困ったようにおろおろと葉華達を見ていた愛華が横を歩いていた希望を見ると。
「…っくくく…!」
…希望が一行から顔を逸らし、口元と腹を押さえながらそれはもう楽しそうに声を抑えて笑っていた。
「……」
「…諦めた方がいいわよ?」
真っ白になった愛華の肩にぽむ、と手を置きながら稔が告げた言葉に、愛華はがっくりと肩を落とすのだった。
その後、愛華が葉華に正しいひな祭りの内容を教えようと頑張ったのは…言うまでもない。

「あ、いた!あそこですよ!!」
暫く歩いていると、菜杖が先を指差して嬉しそうに叫んだ。
全員がつられて見てみると、確かにヒヨコらしき黄色い毛玉が固まって転がっている。
「ふふ…見つけたわよぉっ!」
「とりあえず残りはあの四匹で間違いないから、なんとかして1人か2人で一匹捕まえてくれよ?」
慌てて走り寄りながら、全員が希望の言葉に頷く。
そうして散った5人は、それぞれ捕まえに走った。

「うわわわっ!
 どうして僕ばっかり突付くんですかぁっ!?」
「あー…えっと…がんばってー」
一方、菜杖・稔組。
何故か菜杖のみがヒヨコの集中攻撃を食らっていた。
ぱっと見菜杖の方が弱く見えたのかもしれないが、どちらにしても災難である。
稔もどうすればいいか解らないらしく、手を振って応援するだけ。
「そ、そんなぁ!
 助けてくださいよぉっ!!」
「…あー…うん、わかった」
流石に突付かれ続けるその姿を哀れに思ったのか、稔が立ち上がる。
「……」
すぅ、と息を吸い、精神を同調させる。
―――ドウシタノ?
―――ドウシタノ?
此処は植物が多くある地故、地の精霊や木の精霊と言ったものが不思議そうに自分に声をかけてくる。
「…力を、貸してくれる?」
―――モチロン、イイヨ。
その中にいる地の精霊に声をかけ、力を貸してくれるように頼むと、精霊は快く承諾してくれた。
ふわり、と自分の身体の中に精霊が入っていく、不思議な感覚。
精霊の力が、身体に満ちていく。
「――――行くよっ!」
稔が上げた掛け声に合わせて、土が勢いよく盛り上がる。
ズズズ…と重々しい音を立てながら、土は少しずつヒヨコと…菜杖を包囲していく。
「うひゃぁ!?」
「ピヨッ!?」
唐突の事態に驚いて思わず固まった菜杖とヒヨコの間を、盛り上がった土が見事に遮る。
あっと言う間に、ヒヨコを包囲した土の壁は高さを増し、どう頑張っても空を飛べない限りは出れないような土の囲いが出来上がった。
「凄…」
呆然としている菜杖を見ながらふぅ、と安堵の溜息を吐き、稔は精霊に「ありがとう」と礼を言って、身体から解放した。
精霊は『ドウイタシマシテ♪』と御機嫌気味に返事をすると、ふわりと土の中に消えていく。
後に残ったのは、大きな土の囲いと、呆然と座り込む菜杖。それに、満足そうに囲いを眺める稔だけだった。
「…これで、あとでノッちゃんかヨーくんに回収してもらえばオッケーよね♪」
「……は、はぁ……」
笑いながら軽くウィンクした稔に、菜杖は呆然と返事をするのだった。
そんなこんなで。
―――ヒヨコ、回収完了。

丁度全員ほぼ同時に終わったらしく、爽やかな笑顔の希望と、植物の蔓でがんじがらめにしたヒヨコを片手に盛った葉華が一緒に戻ってきた。
反対側からは満足そうな圭織と顔を青くして気絶しているらしいヒヨコを抱えた愛華が小走りでやってくる。
「よし、これで終わりだな」
「うん。他にはいないみたいだし」
「じゃ、一旦店舗に戻りましょ?」
ヒヨコ達は葉華の蔓で一纏めにし、希望に持たせて歩き出す面々の背中に、愛華は慌てて声をかける。
「あっ、あのっ!」
「「「「「「ん?」」」」」」
同時に振り返った面々に、愛華はにっこり笑って声をかける。

「…愛華のおうちでひな祭りパーティー、しませんか?」

その誘いに、その場にいた面々の答えが全員YESだったのは…言うまでも無い。

――――その後。
    シュライン・エマ達がヒヨコの回収と室内の掃除を終わらせ、車でプラントショップへやってきたので、ひな祭りパーティーに(半ば強制的に)誘い、参加させることになるのだった。


●戦い(?)終わって日が暮れて。
「さ、みなさん。いーっぱい、楽しんでってくださいねー♪」
『おーっ!!』
飲み物の入ったコップ片手に音頭(?)を取る愛華に合わせて、愛華の家に来た面々(まきえ・聡・ボブは店の後片付けがある為欠席)が一斉にコップを掲げた。
「それにしても…私たちも参加しちゃっていいのかしら?」
「いいんじゃないか?ヒヨコ騒動の打ち上げみたいなものだって言われたし」
困ったように笑うエマの言葉に甘酒を御銚子から直で飲みながらさらっと返す草間。
「お兄さん、行儀が悪いですよ」
「…チッ」
少し怒ったように言いながら銚子を取り上げる零に舌打ちする草間だったが、零に睨まれて仕方なく諦めて少しずつ飲むことにしたらしい。
それを見て小さく笑ったエマがふと横を見ると、愛華が葉華に話し掛けてる所だった。
「ひなあられに甘酒、ちらし寿司もばっちり用意してあるから、葉華もバンバン食べよーねっ♪」
散らし寿司を盛った皿を渡しながら笑う愛華に、葉華は感心したように頷いた。
「おう!…けど、やっぱり圭織の言った事ってホントだったんだな。
 『食べ物食べまくってお菓子貰いまくる日』ってヤツ」
「え゛…」
「でっしょー?
 ひな祭りってのはこうじゃなくっちゃねー♪」
やや離れた所からご機嫌そうに甘酒を入れた御猪口を傾けながら笑いかける圭織。
「うーんと…合ってるような、合ってないような…」
なんとも言えない、と困ったように笑う愛華達に、エマは近寄って微笑み、話始めた。
「んー…おいし♪」
甘酒を飲みながらひなあられを食べ、稔はご満悦だったが、ふとその耳に気になる話が聞こえてくる。
「当時は貴族の間ではそれぞれ季節の節目の身のけがれを祓う大切な行事だったの。
 人々は野山に言って取ってきた薬草で身体を清めて健康と厄除けを祈ったんですって。
 それが、後に宮中の紙人形遊びの『ひいな遊び』と融合して、自分の災厄を代わりに引き受けさせた紙人形を川に流す『流し雛』に発展したの。
 実際に豪華な雛人形を飾るようになったり、3月3日に行うように定着したのは室町時代以降なんですって。
 それが武家社会へと広がり、さらに裕福な商家や名主の家庭へと広がり、今の雛祭りの原型となっていったのよ」
「へぇ…初めて知った…。
 ひな祭りってそんな理由があったんだ…」
「まぁ、今の桃の節句は厄除けよりも祭りとして騒ぐ方がメインみたいだけどね」
そうして肩を竦めるエマに、葉華はふんふんと頷いた。
その様子を見ながら、
――そういえば、ヨーくんに卵の殻で雛人形を作るの教えてあげようと思ってたんだっけ。
なんて思い出した稔が、ふと思いついたことにぽむ、と手を打つ。
「流し雛かぁ…やってみたいなぁ」
「だったら。流し雛の紙人形の代わりに卵の殻で作ったお雛様、川に流さない?」
葉華の言葉に此れ幸いとひょこりと顔を出し、にこりと笑って見せる。
「へぇ、面白そうだな!」
「あ、愛華も一緒にやってもいい?」
「もちろん。みんなで一緒に作りましょ?
 私も保育園の時に作った事あるんだけど、それが結構楽しくって。
 折角だからヨーくんに教えようと思ってたんだよね♪」
「あ、卵の殻だったらまだ流しの所に捨てたばっかりだから、洗えば使えるよ♪」
「おっし!早速行こうぜ!!」
葉華は素早く立ち上がると、既に作る気満々の面々のいる離れた場所へ向かって走っていく。
稔と愛華もそれに続き、その場にエマ・草間・希望の3人だけを残す。
そして、みんなでわいわいと楽しく卵の殻の雛人形を作ったのだった。

葉華は希望の分も、零はエマと草間の分も作り、結局全員で一緒に流しに行く事なった。
全員はプラントショップへ行く道の途中にある川に卵の殻で作った雛を流した。
頼りなくゆらゆらと左右に揺れながらもきちんと流れていく卵の殻雛を見送りながら、思い思いにそれを見送っていく。
そんな中、ふと横を見ると、まるで何かに祈るようなポーズを取っているエマ・圭織・菜杖。
「…祈っても何も起きないって、言った方がいいのかしら?」
「いいんじゃない?願掛けだったらかける物はなんでもいいんじゃない?」
「……そうね」
にっこりと既に流す気満々の希望の笑みに、稔はあっさりとツッコミするのを諦めるのだった。

その後、再度愛華の家で宴会並みの大騒ぎが繰り広げられたのは…言うまでも無い。


―――ちなみに。
   後日、やってきた希望から、「バイト料」と言う事で5万ほど貰ったが。
   勿論それは、ヒヨコの餌代と畑に使う費用であっさりと消えてしまった。

終。

●●登場人物(この物語に登場した人物の一覧)●●
【0086/シュライン・エマ/女/26歳/翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【2155/桜木・愛華/女/17歳/高校生・ウェイトレス】
【2284/西ノ浜・菜杖/男/18歳/高校生・旅人】
【2313/来城・圭織/女/27歳/弁護士】
【2603/田中・稔/女/28歳/フリーター・巫女・農業】
【NPC/山川・まきえ】
【NPC/山川・聡】
【NPC/葉華】
【NPC/緋睡・希望】
【NPC/草間・武彦】
【NPC/草間・零】

○○ライター通信○○
大変お待たせいたしまして申し訳御座いません(汗)異界第七弾、「雛奉れ!」をお届けします。 …いかがだったでしょうか?
どうぞ、これからも愉快なNPC達のことをよろしくお願いします(ぺこり)

稔様:ご参加、どうも有難う御座いました。そして始めましてです。
   選ばれた場所が1つだったので、他の方より短めになっているので…物足りないかもしれません。
   始めまして様なので、きちんとキャラを掴めてるか心配ですが、楽しく書かせていただきました。
   卵の殻のお雛様は作った後、厄除けの流し雛の紙人形の代わりとして川に流させていただきましたが…よろしかったでしょうか?。

色々と至らないところもあると思いますが、楽しんでいただけたなら幸いです。
他の方のエピソードも見てみると面白いかもしれません。
それでは、またお会いできることを願って。