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<東京怪談・PCゲームノベル>


オールアバウト・ジャーマン・マイスタークラス

【k-0】

 喫茶店<時空の狭間>。
 朝も早くからその空間に於いて繰り広げられる破壊音と罵声の攻防は、──既にここ最近、日常茶飯事であるとは云え──通常の世界から隔離された、どこか時間の流れの妙な異次元であるからこそ、生活騒音として訴えられる事も無く放置されているようなものである。
 今もまた、──発端は何だっただろう。恐らく、どうでも良い些細なことだったのだが、床には既に様々な雑多な物が散乱し、罵声は未だに飛び交っていた。
「一回死んで来い、捨てた女にでも刺されろ、」
 ──こちらは居候の高校生、現在春休み中の声。これは大分喉が枯れて呼吸まで苦しそうだったが、対する主の声は余裕であった。
「バーカ、♪ちょ〜う〜ちょ〜、ちょ〜う〜ちょ〜、が何偉そうな事云ってんだ。女の間飛び回って休ませて貰うしか脳が無ェ癖によ」
「音程が滅茶苦茶だ、太巻。あんた音感最悪だぜ。純正律を3hz外れたら俺は音楽と認めない。……つーかどういう意味だ、潰されても死なない蜚が!」
「まんまだろうが。冬になったら死んで春になったら途端に元気付きやがって。その間、何してたかと思えば女から食事の世話までされてたんだろ、お前ェなんざ毒蛾にも値しねェ、人畜無害な蝶々で充分だ。……ア、それとも何か? 本当に花の蜜でも吸わせて貰ったか?」
「はァ!?」
「良い目見せて貰ったのか、っつうんだよ。まさか、付き合ってる女と2ヶ月も同じ建物で寝起きして何も無かったってこた無ェだろう」
「手前ェと一緒にすんじゃ無ェッ!!」
 磔也が咄嗟に掴んで投げ付けたのは、未だ封を切っていないワインのボトルだ。ひょい、と軽く首を傾いだ太巻が避けたその飛行物体は、その時丁度入口の扉を押して入って来た人物の目の前で──見えない壁に遮られて、ガラス片と赤い葡萄酒の中身を派手に飛び散らせた。

「……、」
 ──ケーナズ・ルクセンブルクは、入った途端に以前、自らが実家から持ち出して店主に送った最上級のハウスワインがクラッカー宜しく弾け飛んでの丁寧な歓迎の様に、眼鏡の奥の目を細めて口唇に笑みを浮かべた。

──これは良い。

 彼のこよなく愛するワインを、ここまで乱暴に扱われればいっそ壮観だ。──母としても、遠慮無く厳しい躾が出来るだろう。

【1】

「オゥ、お前か」
「やあ。相変わらずだな、君達親子は」
 悪友とは親しい挨拶を交わし、何やら肩で息をしている不良学生、結城・磔也へは大人の余裕を向ける。
「親子じゃ無ェ!」
 ──と喚く磔也は放っておいて、ケーナズはドア越しに誰かを招き入れた。
「良いぞ、収まった」
「……矢っ張りやってたのね」
 苦笑しながら入って来たのはウィン・ルクセンブルク、──以前、何の心構えも無しに同じような現場へ足を踏み入れてしまい、すんでの所でその美しい顔に熱したフライパンを受ける目に遭い掛けた女性である。
 そうした経験があるので、今回はこの喫茶店へは通い慣れた兄へ先に入って貰った訳だった。
「──お、どうしたよ。今日はお揃いで」
 ケーナズへ質問を向けたのは太巻の方だった。磔也はと云えば、既に都合が悪いと悟ったか素早く出口へ向かい掛けている。──その背中を鋭く見咎めたウィンは、その場に留まったまま明るい声を掛けた。
「未だ居るわよ。──磔也、」
「──え?」
「あなたへのお客様が」
「……、」
 ──不良学生の脱出は叶わなかった。既に通行が出来るだろうと予測していた喫茶店の出入り口には、未だ一人の人影があって彼の通過を阻んでいたのである。
「……、」
 逆光に目を細めて彼が見上げたその人物は、すらりとした長身の女性らしかった。──咄嗟に、彼は背筋に冷たい物を感じて後ずさった。
 その女性はそんな小心者に構わず真直ぐ店内へと入って来る。──長い艶やかな銀髪、婉然とした笑みを浮かべた、然し冷たさを含んだアイスブルーの瞳、──誰かと同じ……。
「随分と賑やかだこと」
 笑顔のまま店内を見回した彼女は、太巻が目に入った所であら、と声を上げた。

──良い男。

 ──彼女の異変に気付いたらしいウィンが慌てて女性に取り縋った。その間、磔也は既にケーナズが首根っ子を掴んで取り押さえている。
「今日は磔也を迎えに来たのでしょう?」
「──分かっているわよ、」

──仕方無いわね、また今度。

「……、」
 魅力的なその女性の笑みに、太巻も何か含む所のある笑いを口唇の端に浮かべて応えた。
「では、そういう事で。磔也は回収させて貰うぞ、太巻」
「オウ、御苦労さん☆」
 ──ゴミの回収!? と独り混乱を来す磔也の意思は御構い無しで、(彼にも詳しい事情など分かっていないだろうが、それはそれで)太巻はうむ、と大きく頷いた。
「何なんだよ、一体俺が何を、──」
 あらあら、何云ってるの、とウィンは明るく笑った。
「あなたが云ったのじゃない。向こうから来るなら応じるって。──本当に来てくれたわよ、……母が」
「──!?」

──この際、太巻から蝶々呼ばわりされている磔也に取っての虫籠は、ケーナズの紺青の4WD車アウディA8だった。

【2】

「……ドイツ、」

 古城ホテル東京営業所のロビーで、ケーナズの監視があるので逃げ出す事も出来ないままウィン・ルクセンブルクを前にそう呟いた磔也の表情は愕然として顔色が蒼白だった。ウィンの傍らには、どちらかと云えばより一層苦手な兄の方に似た(……の前に、どう見ても40代を越えているとは見えない事が問題の)彼女たちの母親の笑顔。完璧な四面楚歌である。
「そうよ、前に約束したじゃない。私の実家へ連れて行ってあげるって。ドイツ南西部なのだけど、バーデン・ヴュルテンベルク州、大体の場所は分かるでしょう? 磔也、今まで日本どころか東京に籠り切りだった訳じゃない。きっと、新鮮だと思うわ。旅行って、楽しいものよ」
 ──普通ならばドイツ、と聞けば無邪気に喜んで良い所だろう。だが、この際の磔也は云い逃れられなければ死刑宣告も同然のような顔色をしていた。
「行きたくない」
 先ずは素直に拒絶してみるつもりらしい。が、ウィンは鷹揚な笑顔でさっくりとそれを退けた。
「遠慮しなくて良いわ、あなたの性格は分かっているもの。もう、素直じゃないんだから☆」
「違う、俺、東京の外は──、」
「克服したんでしょう? この間は横浜へデートしたんですってね」
「……、」
 舌打ちした磔也を背を屈めて覗き込み、微笑み掛けると彼は更に顔を伏せて視線を逸らす。──本当、子供みたい。……駄目だわ、つい甘やかしたくなってしまう。
 矢張り、ここは強引にでも実家へ送り込んで「母達」に厳しくして貰わないと、とウィンは自戒を込めて気を取り直した。
「ねぇ、実家には私の義母も居るの。名前くらいは聞いた事があるでしょう? 彼女がね、あなたのピアノにとても興味を示しているのよ。忍さんは古典派が専門でしょう。義母なら、ロマン派も得意だわ。春期の限定マスタークラスを受講する気で行けば良いじゃない。音楽の勉強だと思って」
「パスポートが無い」
 ──どうだ。ようやく、磔也は余裕を挽回してニヤリ、とウィンを見上げた(本当に見上げた)。パスポートの取得には時間が掛かる。例えば太巻ならば偽造パスポートでも物の数分で発行してくれそうだが、まさかドイツ貴族の末裔たるルクセンブルクが偽造パスポートで不法出国しろとは云えまい。
 然し、ウィンは流石に上手だった。莞爾と明るい笑みを浮かべ、「大丈夫よ」と云う。
「……は?」
 ──大丈夫……、……一体、何が大丈夫なんだ、と磔也は既に混乱でまともな思考をキープ出来なかった。
「そろそろかしらね」
 ウィンは時計を見遣り、次いでその視線をホテルのエントランスへ向けてそんな言葉を独白した。
 吊られて視線を向けた磔也の視界に、丁度ホテルの前で停車した一台のロードバイクが映った。──降りてきたのは、当然……。

「はい、パスポートとビザ」
「……、」
 入り口で鉢合わせたケーナズにつん、と冷たい身振りを示すのも忘れず、軽やかな足取りで入って来たレイは珍しく上機嫌で弟に向かい合い、どう見ても偽造では無さそうなパスポートを差し出した。
「……あ、矢っ張りこれはウィンさんに預かって貰うかな。もー、仕方無いわねぇ、パスポートの管理まで人に任せなきゃいけないなんて、ほーんと幼稚園児レベル」
 そして、すい、とパスポートを引っ込めてウィンにパスする。
「ごめんねー、ウィンさん、任せて良い?」
「勿論よ、責任持ってお預かりするわ」
「──ちょっと待て!」
 俺がいつパスポートを取得した、有り得無ェ、覚えてないぞ、と磔也は必死で姉に追い縋った。
「このガキ。未成年」
 そしてぴん、と磔也の額を──咄嗟に彼が身を引いたので前髪を擦ったに留まったが──を弾く。
「あんたねえ、未成年のパスポートなんか保護者がどうにでも出来るのよ。因みに、パパは大賛成みたい」
「巫山戯んじゃ無ェッ、レイ、お前が行けよ!」
「ん──? ドイツは行きたいけど今回のはあんたじゃ無きゃ意味無いし。それに、ドイツだったらパパが何時でも連れて行ってくれるって。それに、春休みは私ウィンさん達と一緒に福島のスパリゾートに行くの。だから駄目だわ。良いじゃない、あんたドイツよ。羨しいけど私は福島で我慢してあげるから、精々大人しく云うこと聞いて連れて行って頂きなさい、」
「……冗談じゃ無ェ、俺の意思は!?」
「あんたの意思でしょうが。ピアノ続けるって宣言したの、誰。放っとくとあんた、春休みなんかデートにかまけて練習しやしないから、駄目」
「やるよ! つーか、何でそこで──、」
「はいはいはい、ストップ! ともかく時間切れよ、飛行機は3時ですって。はい、あんたの着替えは持って来てあげたから、大人しくこれ持って付いて行きなさい」
「厭だ」
「──仕方ないわね、」
 そこで、レイは珍しく彼女のライバルであるケーナズに目配せした。
「私は荷物を車に積むから、あなたはそいつをお願い」
「了解した」
 元々、妹のアイデアに便乗する心積もりでいたケーナズはこの際、レイの指図だろうが快く請け合って磔也の頼りない身体をひょい、と抱え上げた。ぁああっ、と上ずった悲鳴が上品なホテル内部の静寂を乱す。
「駄々を捏ねるんじゃ無い。──そうだな、大人しく良い子にしていれば、現地でとびきり可愛いテディベアを買ってやるから、我慢しろ」
「要らね────!」

【3】

 ウィンは、手にした4枚の航空券と電光表示板を見比べていた。
 その後ろでは未だ、ケーナズとの間にレイが持って来たスポーツバッグを間に置いた磔也が何とか逃れられないかと頑張っていた。彼女は、そんな2人の『子供』の様子を目を細めて見守っている。
「いい加減にしないか、自分の荷物くらい自分で持て」
「持つよ。……持つから、帰らせてくれ」
「往生際の悪い」
 ──往生、……往生が大前提の旅行と云うのも、何か。
「……太巻の所に帰りたい」
「……、」
 ──ちらり、と(思いきり)見上げたドイツ人青年は、──まあ、駄目で元々だったが──まさかその程度の訴えで情に絆される筈も無かった。
「そうか。……全く、パパにべったりな事だな。太巻もこれでは息抜きも出来まい。尚更だ、春休みくらい、奴に楽をさせてやれ」
 どうせ、元々自分は妹の計画に便乗しただけだ。何とでも云える。
 不意に、2人が境界線のように間に挟んでいたスポーツバッグがひょい、と軽く持ち上げられた。ウィンだ。
「そろそろ、手続きが始まるようだわ」
 ウィンとケーナズは、実家へ一泊するだけだ。故に荷物は、機内へ持ち込める程度に収まっている。預けるとすれば磔也と、母親の荷物だけだ。
「私が行って来てあげるから、あなたはそこでお兄様とお喋りしてて良いわよ☆」
「厭だって云ってんじゃないか、本気で洒落になって無ェよ、……宿題とか、」
「あら。春休みには宿題は無いのじゃない?」
「……、」
「『成績はそこそこ良いらしいから、春休みにはピアノに重点を置くのは多いに賛成、あなた方の義母になら安心して任せられる』って、忍さんのお墨付きよ」
「……、(そんなお墨付き要らない)」
「磔也、──いい加減に観念しない? あんまりうろうろしていると、迷子センターに連れて行かれちゃうわよ」
 明るい声を残し、ウィンは荷物預かり専用のカウンターへと向かった。──ヒールの踵が小気味良い音を立てる、軽快な足取りで。
 磔也はようやく観念した、というよりは既に疲れ切ったらしい。
 ドイツも厭というよりは怖いが、迷子の子供と間違えられてアナウンスで「フランクフルト行きのXX-XX便へ御搭乗予定のルクセンブルク様」を呼び出されてケーナズに無理矢理職員向けて頭を下げさせられ、「妹の義弟が迷惑を掛けて」と詫びられるのも恐らく彼の自尊心には耐えられない。
 ケーナズと母親はそんな、これからファーストクラスでの空の旅を楽しむとはとても見えない高校生はそっち退けで彼等の「義母」や透の事をにこやかに雑談していた。
 ややしてそこへ戻って来たウィンは、「搭乗手続きが始まるわよー☆」と最期の号令を掛けた。

「あ」
 今から各自へチケットを渡そうと、封筒に一纏めになった中身を覗いていたウィンの手元から、連番になった2枚のチケットがと掠め取られた。
「これは私と磔也の分だ。異論は無いだろう?」
 ひらひら、とそれを弄びながら微笑しているのはケーナズだ。──構わないけれど、とウィンは肩を竦めた。
「機内では手加減してあげてね、飛行機なんて初めてなのだから」
 ──甘い、と分かっていてもついつい、不安な声で忠告してしまう。分かっているさ、と兄の声は全く愉快そうだ。
「だからこそ、私が面倒を見てやろうと云うのさ」
 そして、だからあまり機内でこちらの様子にまで気を遣うんじゃ無いぞ、と付け加える。
「万一気分でも悪くなったら、今の奴には女性から介抱されるなんて不本意だろうからな」

 ──手続きが始まった。

【k-4】

「磔也」
 ちょっとこっちを向け、と云いながら有無を云わせずに腕を掴み、ケーナズは彼の服の中へ素早く手を差し入れた。──磔也が硬直する事約3秒、ケーナズが手を抜いた時には、周囲の目に触れないような持ち方でバタフライナイフが収まっていた。
「矢張りな。……こんな物を持ってゲートを通ってみろ、金属探知機が鳴りっ放しだ」
 ──チ、と磔也が舌打ちする。ケーナズは眉を軽く潜めた。
「分かっているのか、恥をかくのは君なんだぞ」
「感謝してます」
 因みに棒読みで。
 ──全く、彼の性格がそのまま現れたような軽率な言葉だ。刃物の持ち込みに限った事では無い。そんな事は今まで経験が無かったと思えば小さな失態で済むが、問題は、磔也のそうした物事全般に対する投げ槍な態度だ。何にしても。──世間を舐め切っている。人生を甘く見て掛かって、それでどうにでもなると思っているのだ。
 年末にはウィンも同じ事を考えたようだが、そうした甘えが許されるのはせいぜい幼稚園児までだ。磔也もどうやら精神年齢はその辺りだろうが、なまじ知識や身体が大人としても通じる年齢に達しているのが悪い。
 
──残念だったな。私は甘やかさないぞ。

 それに、母もだ。

 ──倖か不倖か、磔也は高所恐怖の気は無いらしかった。一度観念してしまえば、後は(無論ケーナズの監視からは逃れられないと分かっているからだろうが)割合大人しく促されるままに付いて来た。飛行機に対する知識が皆無という訳でも無いし、まさかシートベルトの着用を厭がる程の駄々っ子でも無い。
「先に」
 と、ケーナズは磔也を敢えて窓際の席へ座らせた。くるり、と振り返った彼はケーナズの、何かを企んでいる事は明白な笑顔を見て顔色を不安そうに曇らせた。
「どうした? 飛行機は初めてだろう。折角だから外の景色を満喫すると良い」
「……、」
 絶対、何かある。必死で彼の意図を探ろうと押し黙っている磔也を眺めているのは楽しい。──本当に、子供の癖に。ケーナズは殊更真面目な表情で注意を促した。
「早くしろ、後が迷惑する」
「……、」
 ようやく、訝りつつ磔也が窓際に収まった所でケーナズはにやり、と満面の笑みを浮かべた。
 彼は、その隣の通路側へ座る。──長身のケーナズがそちらを塞いでしまえば、彼は気軽には席を立てないし通路を挟んだ席の──母はともかく、ウィンからの視界からも遮断される。
「……、」
 実際に着席してから、磔也は何となくその事に気付いたらしい。逃げ道が無い、という事実は彼に漠然とした不安を与えたようだ。──別に、飛行機の機内では騒ぎはしないし何をする気も無いが、そうして妙に素直な反応を示すだろうという予測が的中した事には満足だった。
 離陸を告げるアナウンスが入った。
「少し揺れる、経験が無い君には少し怖いかも知れないが、大丈夫だな?」
 態と優しい言葉を掛けてやる。──無理矢理乗せたのは誰だよ、と磔也は低声で毒づいた。
「ウィンだな」
 そこはさらりと。
「……あんたなぁ、」
「然し、君が云ったんだぞ。『用があるならそっちから来い』と。だから来てくれた訳だ」
 ──実際の所、母の来日の理由はウィンと透の婚約に能っての様々な手続きの為だが。立場さえ弁えない彼にはこれくらいの牽制を与えても悪くは無い。
「何にせよ、君はもう少し自分で自分の言動に責任を持たなければ駄目だな。先ずはそこからだ」
「……、」
 いつになく、──普段、太巻の店で会う時と違って第三者の存在が無く素面の所為だ、無表情のまま磔也の目には堪えたような陰が差した。
「──責任ってさ、……どうやれば取れるんだろう」
「それを自分で考えるから、責任なんだ」
「……どうやっても取り返しが付かなさそうだったら?」
「真剣に考えていない証拠だな。良いか、責任と云うのは、何か一つの事をその場でやれば全てが帳消しになる訳じゃないぞ。その事を忘れず、一生覚え続けている事が責任なんだ。ポーズだけの謝罪など、何の意味も持たない」
「……難しいな」
 ぼんやり、窓の外を眺めながら呟いた磔也を、ケーナズは軽く片方の眉を持ち上げて意外な気持ちで見詰めた。
「そうだな」
 ──本当に、子供だ、とケーナズは思う。
 それだけに全く思慮が浅いが、無邪気な所もある。今までは父からも、更に彼の渡仏した後保護者代わりだったと聞いた彼の後輩からも何も咎められず甘やかされて来たのだろうが、──今の内なら、と思う。
 ウィンから結城忍の人と成りや、6年前に15歳と11歳の姉弟を、いくら面倒を見てくれる後輩が居るとは云え2人きりで日本へ残して単身フランスへ転勤してしまった事などを聴いているので、彼にも父親の自覚が不十分であった事は否定出来ない。が、磔也にはシビア過ぎる程の対応で丁度良い位だ。
 少しでも環境に甘える隙を与えれば、彼はどこまでも責任を放棄して他人の所為にする。生きる、という事を舐めて掛かって痛い目を見るのは自分自身だ、という事が未だ分かっていないらしい。年末にあれだけの騒動を経験しながら、だ。──それはつまり、実戦から「勉強する」と云う事が出来ない事になる。
 そうであれば、逐一「教育」してやらねばなるまい。──面倒だが。
 自分だって、彼女──母──の厳格過ぎる躾で、未だ彼と同じ程の年齢の頃に自力で心の闇を自制する事を覚えたのだ。経験があるだけにそれがどれだけ楽な事では無いかは分かっているが、──先ずは手近な問題から。
「取り敢えず」
 と、ケーナズは未だ窓の外の良く晴れた空を眺めていた磔也の鼻先にある物を突き付けた。
「──あ、」
 煙草、──彼の吸うマルボロだ。いつの間に、──さっきだ、ナイフを取り上げられた時。
 唖然としている未成年喫煙者を前に余裕のある笑みを浮かべ、ケーナズは片手で煙草をぐしゃり、と握り潰した。
「薬屋としては、君には先ず煙草と、ドラッグの安易な横流しは止めて貰おう。母にも煙草の事は伝えてあるからな。私が帰ったといって、ドイツでは煙草は吸えない物と思え」
「……うぜェ、」
「2週間も禁煙出来れば、煙草なんて簡単に止められるさ」
 意気揚々と、ケーナズは磔也の髪をくしゃくしゃと掻き回した。

「──所で、恋人が出来たそうだが」
 フライトが1時間ほど経過した所で、ケーナズはそれまで何気無く目を落としていた独語新聞から顔を上げた。窓際の彼は、未だぼんやりしている。転寝をしかかっているようでもあった。──そう簡単に寝させはしないぞ。
「女だぞ、……誤解すんなよ、」
 生真面目に別な意味での説明を咄嗟に返した事には笑うしかない。ふふん、と余裕のある笑みをケーナズは浮かべた。
「分かっているさ。──太巻の所で会った娘だろう」
「……、」
 瞬時に眠気も覚めたらしい、磔也は微妙な表情で──多分、ケーナズだけにはバレたくなかっただろう──眉を顰めていた。
「優しそうな娘だったな。──君には丁度良かろう。恐らく、どれだけ甘えても何をしても彼女なら許してくれるのだろうからな」
「──どういう意味だ」
「どうせ、押し倒したの何のと嘯いていたのも彼女だろう? ……そこで愛想も尽かさず、付き合ってくれている訳だ。本当に、苦労の絶えない恋人だろうな、あんな娘には」
「……煩ェな、俺とあいつの問題だろう。放っとけよ」
 ──家出したと云って、結局未だ高校生をやっている訳だ。親に養われる身の上の癖に、こういう時だけ「自分の問題」などとは一丁前の事を嘯く。
「放っておいて、悲惨な事にならなければそれでも良いんだがな」
「……謝ったよ。それから手は出してない」
 ──そういう問題か。結局、本当の問題点を理解していない。具体的な事を、何一つ考えていないのだろう。
 ケーナズは溜息を吐き、伊達眼鏡を軽くずらせて目頭を押さえた。
「……仕方無いな。──本来なら、お前が自分で考えるべき事なんだぞ。然し知識がゼロでは方法すら考えられまい」
「……?」
「私とウィンは一泊して明日にはまた日本へ戻るが、今夜だけは空いているからな。君も、当日から慣れない客間で独りでは寝るに寝られないだろう。時差の経験も無いのだろうしな」
 そこで、ケーナズはぐっと窓際の席へ身を乗り出して磔也の耳許へ顔を近付けた。──長身の彼を相手にしては、磔也は殆ど覆い被さられているようで反抗しようにも身動き一つ取れないらしかった。
「今夜は私の部屋に来い。この際だからな、お前に正しい性教育を施してやろう」
「……はい!?」
 身体を起こし、ケーナズはにやり、と笑った。
「だから、正しい知識を手取り足取り教えてやろうと云うのさ」
「──、……せい……、」

【5】

 ──飛行機がフランクフルト国際空港へ着陸した時、磔也の顔色が蒼白だったのは云うまでも無い。然し、何か揶揄かっているようだとは思ってもまさか斯様な会話があった事までは思い当たらないだろうウィンは、しきりと飛行機酔いを思って心配していた。
 空港には既に銀色のベンツが、彼等を古城ホテルへと導くべく待機していた。その傍らに立つ運転手は未だ30代程の歳若い、典型的なドイツ系の美青年だった。妙にかっちりとした古めかしく端正なその服装から、何か彼がホテル関係の人間だろう事は何となく想像が付いた。
 ケーナズは既に、何故か異様なまでの上機嫌さを見せて先に母を連れてそちらへ歩き出している。

 流石にドイツまで来てしまっては、逃げ出そうにも逃げ込む先が無い。大人しくなった磔也と、ウィン、ケーナズ、そして母親を乗せたベンツは、噂の歳若いハンサムな執事の運転でアウトバーンを飛ばし、古城ホテルへと辿り着いた。
 道中、古い壮麗な城の並ぶ窓からの景色に磔也が呆然と「農村じゃ無ェだろ……これ」と呟いた事にケーナズがにやりと笑みを浮かべた事も、ウィンの疑問の一つとして残った。

【6】

 晩餐の席で、ウィンは磔也を義母に紹介した。明るく、穏やかで優しい義母は磔也を「ようこそ、小さなピアニスト」と歓迎した。磔也には実は世界的なピアニストという事で既に知った人間だ。今の所は大人しくしているつもりか、発音だけは割合流暢なドイツ語で(片言の相手の言語の方が、無愛想さを誤魔化せるという辺りも計算しているかも知れないが)「Guten Abend」、とややぎこちない会釈をした。
 その事も余計に義母は喜んでくれた。ウィンの通訳で二、三言言葉を交わしたが、その時にも義母は「結城忍」の名前は出さず、あくまでウィンとケーナズの「友人(……)」として彼に向き合った。──そこには、同じくピアニストの父を持つコンプレックスやプレッシャーを持つ者としての配慮が行き届いていた。
 年末にウィンが透を伴って帰省した時には、クリスマスという事もあって晩餐じは贅沢なものだった。が、今回は何があるでも無いし、豪勢な食事には付き物の肉料理は磔也も苦手らしい。普段通りの質素な食事に半分程手を付けた所で、磔也はフォークを(食事用のナイフは何故か使えない、と云うことは既に連絡済みで黙認されていた)置いた。
「もう良いの?」
 ウィンの言葉に、母親も残念そうに眉を顰めた。
「遠慮はしないで頂戴ね。わたくし達には、御客様に御馳走するのは喜びなのよ。途中で投げ出されてしまうと、口に合わなかったかしら、と不安なの」
 ──今日の所は、初めてでもあるし、穏やかに。
「本当に駄目なんだ、──不味い訳じゃ無い、……でも、」
 良いわよ、とウィンはさっと彼を遮った。
「ごめんなさい、お母様、ほら、彼、小柄でしょう? それに日本人はあまり食べないもの、シェフにはそう伝えて、今後は量を考えて貰いましょう」
「──ウィン、」
 また甘やかす、とケーナズが眉を顰めた。然し、本人も大分居心地が悪そうであるし、あくまで礼儀を弁えている内は何から何まで強制するのも酷だと思う。
「──Verzeihung、」
 母国語でないだけに謝罪の言葉もさらりと云えるのだろう、小生意気にもそんな言葉を残して席を立とうとした磔也を、ウィンは「ちょっと、」と呼び止めた。
「待っていてくれない? ──食事が終わったら、ピアノ室へ案内するわ。私達は少し食後のワインを楽しむから、その間に指慣らししていれば良いわ。それが終わったら、義母にピアノを聴かせてくれる?」
「……、」
 義母への打診も兼ねたウィンの言葉に、磔也は沈黙を、義母は微笑みと共に「Bitte」と快い返事を返した。
「忙し無くて申し訳無いけど、時間が無いのよ。明日には私とお兄様は日本へ帰らなければならないから。義母は母ほど日本語が堪能では無いし、磔也もある程度はドイツ語が分かるでしょうけど矢っ張り音楽のレッスンともなれば信用出来る通訳が要るでしょう? 明日からの予定は返上出来ないから今日だけだけど、紹介する以上は一回目のレッスンではちゃんと意志の疎通をして欲しいもの」
「ウィン、」
 ケーナズが二度目の釘を刺した。が、今度もウィンは悪戯っぽい笑みでそれを躱した。
「お兄様は飛行機で磔也を取ったでしょう。今からは私と義母が貰うわ」
「……、」

──まあ、良いさ。

 ケーナズは磔也の所在無げな横顔を眺めながら目を細めた。

──今は駄目でも、夜がある。

【k-8】

 ウィンが義母と共に彼を連れて行ってしまったピアノ室の扉がようやく開いた。
 それを待ち構えていたらしく、ウィンが磔也を彼にと宛てた客室へ案内して自分の部屋へ引き揚げてしまうと、直ぐに部屋のドアを叩いた息子を不意に目撃した彼女は、あら、と首を傾いだ。

──ケーナズったら、あんなボウヤが好みだったとは我が息子ながら知らなかったわ。

 半分は冗談だが、勿論。──そしてその冗談気分のまま、更に彼女の口唇に笑みが浮かんだ。

──まあ良いわ。ケーナズももう良い大人なのだし、自分の責任で好きにすれば。

 私の興味はあの子よりも「パパ」の方だし。

「──……何の用、」
「──約束しただろう? 飛行機の中で、私の部屋に来いと。だが、そう云えば『用があるならそっちから来い』、が君のスタンスらしいからな。私もそれに則って自分から来てやった訳だ」
 ──そう云えば、……では無くて、本当は、改めて考えて見るとこの不良少年に自分の弱味──でも無いが、少なくとも揶揄かいの材料にはなり得そうな、彼が少年時代を過ごした時間のままの部屋を見せたくなかった、というのが本音だったが。
 そこまで深読み出来る余裕が今の磔也にある筈も無く、既に顔色を蒼白にした彼は何とか逃げ場を探して視線に落ち着きが無い。入口はケーナズが塞いでいるとして、(得意の)窓から脱出、──も、勝手を知らない慣れない部屋では可能性薄のようだ。
 さあ、と妙に優しい猫撫で声でケーナズは磔也を促した。
「寝なさい」
「──……はい?」
 云うまでも無く、ケーナズの視線が寝台を示しているので磔也は既に膝が崩れかけていた。この際、その寝台がホテルの宿泊客向けの、上質で、ふわふわとした寝心地の良さそうな物であろうが無かろうが、彼にはどの道死刑台へのエレベーターである。
「だから、約束の通りだ。先ずは君はどれだけ正しい知識を持っているかを見せて貰おう」
「……冗談、キツい」
「冗談じゃ無い」
 そこで、ようやくケーナズも遊びは終わりにする事にして俄に厳しい表情を目に宿した。
「冗談、……まさか、彼女との付き合いまで冗談で考えている訳では無いだろうな。では訊くが、彼女を抱きたいと思った事は無いのか? まさか流石の君でも本人の了承無しに無理矢理押し倒すなどと云う事はしないだうが?」
「──当然……、」
 うろうろ、と視線を空に泳がせているのが後ろめたい証拠だ。
「……本当に、良いから、その位自分で考えてる。手は出してないって云ってんだろう。抱きたいと思って悪いか、……当然だろう。でも、あいつだけは傷付けたくないんだ。だから、……いや、それは前の話だって、今はそんな無理矢理とか、──、」
 ──大丈夫だ、と、言葉に詰ってやや脈略の無い彼の声を聴きながらケーナズは確信した。今の内なら、可能性を諭してさえ置けば間違いは犯さないだろう。
 
──結局、恋愛に関しては純情な子供だ。

 そうは思うが、彼は厳しい表情のまま、ケーナズは更に磔也に詰め寄った。
「……もし彼女さえ良いと云えばその時に、妊娠する可能性までちゃんと考えていたか?」
「そう都合良くするか!」
「するんだ、する時は」
 俄に強い声でケーナズは磔也の減らず口を、視線だけで黙らせた。
「気付いた後では遅いんだ。君の事だから、平気で堕ろせとでも云うかも知れないな。彼女が大人しく従ったとして、傷付いた彼女の気持を理解してやる自信はあるか? もし、どうしても産みたいと云われたら? ──愛情の許に計画して生まれたのでは無い子供が、親からどうした扱いを受けるかは分かっている筈だろう」
「黙れ!」
 流石に磔也も、明らかに自分の出生の事を指しているとしか思えない台詞には目の色を変えて大声を上げた。──ケーナズは目を細めた。
 その言葉だけは、状況によっては決して云ってはいけない台詞である事は重々承知している。──それは、彼自身の出生にも云える事だからだ。
 だが、彼にはこれ位云わなければ通用しない。現に、(未遂である事は見抜いていたが)某所で粋がって「女を押し倒した事くらいある」と豪語していた磔也を苦々しい気持ちで眺めていたケーナズとしては、そこは寧ろ傷付くくらいまで教え諭して充分だと信じている。
「自分に甘くて、容姿もきれいな都合の良い女だと思っているならそれは大間違いだ。彼女とはそう親しい訳じゃ無いが、お前の無責任な行動は黙認出来ないからな。本人が許しても、私が許さないぞ。──君、今自分で云ったな? 恋人を気遣う分別があるならば、今からの私の話は大人しく聞けるだろうな?」
「……、」
 ……話って何ですか、その内容に拠ります……、と、ケーナズに詰め寄られた事で再び狼狽え始めた磔也は既に自分の内心の声が何故か敬語に変わっている事さえ気付いていないらしい。
 無論、ここまで来て遊ぶ気はケーナズには無い。今からは、シビアな話をするつもりだった、元々。
「君は、とにかく甘い。全てに対して甘ったれている」
「……何だと、」
「生きるという事を舐めて掛かっているだろう。何かあっても、死んで終いにすればそれで良いとでも思ってるんじゃ無いのか」
「……そうだろう、どうせそんなもんだ」
「ほう」
 ケーナズは目を細め、──あくまで斜に構える気らしい彼の顔を眺めた上で、敢て突き放す事にした。
「君が刹那的な人生を送って破滅しても、私は一向に構わないぞ。……だが、それに他人を巻き込むとなれば話は別だ」
 磔也は視線を逸らそうとする。ここでは、ケーナズは厳しく真直ぐ前を見ろ、と彼の顎に手を掛けて無理矢理にでも自分の視線を合わせた。逃げるな、と。
「君に云いたい事は一つに尽きるな。物事に、現実的な、正しい認識を以て接しろと。好きな娘が出来た、付き合う事になった、だったら、そこからは男と女としての関係が始まる訳だ。その際に、正しい認識を君がどこまで持っているかが疑問だな。女性は、妊娠するんだ。妊娠したら、産むか、堕ろすかのどちらかしか無い。堕ろすには女性に、男には想像も付かないような苦しみを負わせる事になる。産むとすれば、君は父親だ。父親として子供に、本当の愛情を持って教育が出来るか、また相手を配偶者として責任を取れるか。家庭を持つのは、多くの人間がやる事だがその責任は大きいぞ。君のような人生を舐めて掛かっている人間には、先ず無理だろうな。途中で逃げ出して家族を絶望させるのがオチだ」
「云わせて置けば、──」
「但し、一つだけ云って置こう。学習しない人間は、バカだ」
 不意に、ケーナズは軽々と磔也の身体を抱え上げてぽい、と寝台の上へ放り出した。
「──痛……、」
 何するんだよ、とせいぜいの虚勢を張って自分を見上げる彼に、ケーナズは先程よりは一段階、明るい声でにこやかに告げた。
「特別だ。……今夜は学習させてやろう」
「何……、」

 この日、磔也に宛てがわれた客室の両隣りは空室だった。──が、丁度その頃、階下に当たる客室の宿泊客から件の歳若い執事に、「階上の宿泊客が子供でも連れているのか、ばたばたという物音が煩い」という苦情があったらしい。

【k-9】

「やあ、良く眠れたか?」
「……、」
 白々しく、爽やかな笑顔でそんな事を訪ねるケーナズを睨み付けた磔也の視線は、当然ながらと云うか殺気立っていた。
「お陰様で貧血で死にそうだ。──本当に覚えてろよ。……絶対に、いずれあんたには礼をしてやる」
「それが良い」

──そうだ。……口惜しかったら、もっと強くなれ。自力で這い上がって来い。

 然し、面白いのでそうした本心は口に出さず、ケーナズは磔也の耳許で囁いた。
「良いな? 昨日の事はちゃんと覚えておくんだぞ。……君達の為なのだからな」
「手前ェ!」
 ──さっ、とケーナズは軽く身を引いた。
「元気じゃ無いか。何よりだ。──然し、調子に乗り過ぎるんじゃないぞ。先に教えておいてやろう。昨日は気が付かなかっただろうが、我が家の地下には嘗て本当に使われていた牢獄があるんだ。……無論、今は悪戯の過ぎた子供のお仕置きに使われる程度だがな」
「……え」
「だから、地下牢さ。覚悟しておけ、母は君のような不良少年なら、遠慮無く叩き込んで容赦しないぞ。そうなれば本当に反省するまでは出して貰え無いから、そのつもりでいるように」
「……、」

 そこで、傍目には彼を揶揄かって遊んでいるようにしか見えないだろうケーナズを促すようにウィンがその腕を引いた。
 ──ふら……、と、低血圧の所為かあるいは恐怖感情の所為か、顔色を蒼白にしてよろめいた磔也は義母にでも任せる事にして、ケーナズもそれに従った。

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1481 / ケーナズ・ルクセンブルク / 男 / 25 / 製薬会社研究員(諜報員)】
【1588 / ウィン・ルクセンブルク / 女 / 25 / 万年大学生】

【NPC / 結城・レイ / 女 / 21 / 自称メッセンジャー】
【NPC / 結城・磔也 / 男 / 17 / 不良学生】

【NPC / 渋谷・透 / 男 / 22 / 勤労学生】
【NPC / 太巻・大介 / 男 / 84 / 紹介屋】

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■         ライター通信          ■
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NPC姉弟の天国と地獄が実現してしまいました。
本人は騒々しいですが、WRからはドイツ留学が実現した事に多大な感謝を述べさせて頂きます。
お気遣い頂きましたが、彼にはあれ位云ってやって丁度良い程です、有難うございました。
尚、多少WRが悪乗りしている部分がある事をPL様及び他にも目を通して下さった方に白状しておきます。ごめんなさい(平伏)。
懲りずに……また遊んでやって下さい……。

x_c.