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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『 Chess Game : Code α 』



 夜空へと――――高く、低く。

 響くのは、謳。
 女は、長い髪をかきあげるようにしながら、ゆるりと腕をあげた。
 紅い唇から、音がこぼれる。
 音をたてないまま、革のブーツでステップを踏み。
 とろけるような微笑を浮かべ。
 地上25メートルのビルの屋上で。幅5センチの柵の上で。女は踊る。
 微笑を浮かべたまま、軽やかに。

 ――――謳いましょう。踊りましょう。新たなる死者のために。
 あの愛らしい死体のために――――祝福を。

 紅い口唇が、青い桔梗に口付けるのを、東の空から月が見下ろしていた。



     ■  ■  ■


 目を開ければ、見慣れないものが見えた。
 ただ白い平面――それは天井。
 別に珍しくはない。珍しくはないが――見覚えはない。そんな、天井。
(……つまり、)
 外泊したんだな、と、時哉は結論づける。
 昨日の晩は叔父から譲りうけた店を臨時休業にして、19歳の若者らしい付き合いに参加した。いわゆる年度末の飲み会で、未成年の飲酒という――まあ、瑣末な問題はあるものの、それは珍しくもない。
 問題は、この見覚えのない天井だった。
 二日酔いの痛みに眉をしかめる。
 昨晩はあびるほど酒を飲んでいたから、そのせいで記憶が飛んでいるのかもしれない――というか、飛んでいる。
 そして、考えたくはないが、隣に人の寝ている気配がした。
 時哉は、深々と溜息をついて、そっとベッドの中を移動した。良い気はしない。まずいことになったと、そればかりが頭をめぐる。
 あえて、ベッドに横たわる人影から目をそらしつつ、ゆっくりとベッドから出た。
 ドアの外で、走り来る人の足音がした。その音から人数を予想する。おそらくは、4人か5人。
 時哉は、もういちど、深々と――もう、それ以外は他に何もやることがなく、溜息をついた。
 口元がなまぬるい笑みにゆがむ。
 激しい音をたてて開かれるドア。
 なだれこむ紺色の制服。
 どれもが、安っぽいドラマのようだ。現実とは、案外そういうものかもしれない。
「壁に両手をついて大人しくしろ」
 逆らう理由はなかった。逆らって痛い思いをする気はない。だが、視界の中にまともに手をつけような壁は見当たらなく、仕方がないので少し歩いてバスルームを囲むガラスに両手をつけた――が。
 そのガラスに映った背後の光景に、ぎょっとして時哉は振り返る。
「あぁ!?」
 抵抗するものと勘違いした警官に殴られ、気を失う寸前。
 視界に映ったのは、ベッドに横たわる、四十絡みの男の姿だった。


     ■  □  ■


 電話の向こうで、男は深々と溜息をついたようだった。溜息をつきたいのはこっちだってのと、時哉は心中で呟く。
「……まあ、人の趣味にとやかくは言わんが」
「今回に限り、とやかく言ってくれ」
 時哉は嘆息まじりに、男――草間武彦に向かって続ける。
「俺には断じて男趣味は無い。自分と同じ構造の体をなでまわしてどこが楽しい」
 目が覚めたとき、隣にあるのが死体だということは、すぐに気付いた。
 傍にいるのに体温がない。寝息が聞こえない。あるのは、無機物めいた存在感だけ。
 その事実から、横にあるのが死体だと推測するのは難しくない。予定外だったのは、それが四十男だったということくらいだ。
「だが、おかしいな」
 草間は黒電話の受話器を肩にはさんで、新聞を眺めた。2日前の記事だ。
 今では珍しくもなくなった官公署の不省疑惑が紙面を独占しているせいか、大きく取り上げられてはいないが、左隅にラブホテルで発見された男性の変死体の記事が掲載されている。未成年だからか時哉の名前は記載されていない。ただ、『同室に宿泊していたA少年(19)を重要参考人として現在取り調べを行っており……』と、印刷されていた。
「おまえの言うとおりなら、通報したのは誰なんだ?」
 当然だが時哉本人ではなく、ラブホテルの従業員でもなかったらしい。
 通報は女性の声だったというが、それ以上はまだわかっていない。少なくとも、警察の公式発表では、そうなっている。
「だから、その通報者を調べてくれって言ってるんだ」
「誰に」
「あんたに。草間武彦に。草間興信所でもいいぜ」
「おまえなあ。一度くらい電話帳めくってみたことないのか。どこの探偵事務所にも『刑事事件はお断り』って書いてあるだろう」
「あんたんとこ書いてねーよ。電話番号しか」
「……電話帳にスペースとるのは無料じゃないんだ」
 沈んだ草間の声に、時哉が囁く。
「貧乏は敵だな。……ところで、先月の光熱費。意外と馬鹿にならないよなあ、光熱費」
 口に出されたのは具体的な報酬額。さらに草間は沈黙した。
 時哉の仕事はやさしくないが、金払いはいい。身元がしっかりしている分、踏み倒される心配や減額される心配も無い。経費も領収書をそろえて提出すれば、報酬に上乗せされるはずだ。 
 考えて、考えて――事務所の経費も考慮に入れ――妥協案を下す。
「……水道代も含めろ」
 情けないとは思いながら、草間は応じた。
 時哉とは以前にも取引がある。怪奇探偵とまで言われる草間だが、性格は怪奇ではない。身元のしっかりしている確実な酬額を得られる依頼を逃す理由はなかった。
「オッケイ。じゃ、よろしく。通報者がわかったら連絡してくれ」
 了承をとりつげると、用件は済んだとばかりに時哉は電話を切ろうとした。
「待て。探すのは通報者だけでいいのか。犯人はどうする気だ」
 その気になれば、時哉は自分で人材が集められるはず。それを草間は知っている。
 情報屋兼仲介業を、高校2年の若さで継ぐことになった少年。
 いかにも教師の好みそうな優等生じみた表の顔と、人当たりの良さを上回る、欺瞞と利己的な傍観主義。時哉は、2年前に初めて会ったときから、そういう少年――今は青年と呼ぶべきかもしれないが――だった。
「おまえは自分から動いて解決するタイプじゃないが、他人任せも好まないだろう? それを、どうして俺によこす?」
「だからさ……」
「何をしたい。何を見たい?」
「―― そういうことを、いっぺんに聞くなって」
 苦笑して、時哉は答える。
 探すのは通報者だけで構わない。なぜなら、犯人と通報者の間には何らかの関係があると想像をつけているから。
「ついでに店の外で警察が張っててさ。ちょっとまずいだろ、じたばたすると」
 犯人じゃないのに犯人と間違われかねない。だから、今回は外注することにしたんだ。
 くつくつと笑う時哉は、心から楽しそうだった。
「あ、そういや連続殺人らしいぜ、この事件。俺が2日にして早々に解放されたのも、そのせいだろうな」
 フィリップ・マーロウを目指してみろよ。
 そう告げて切れた電話の受話器を、苦々しく思いながら草間は眺めていた。


     ■  □  ■



 その男は「美男子」とは言いがたかった。むすっとしていて愛想のかけらもない。清潔とはいえないものの、不潔ではないだけいいだろうというような服装だった。少しよれたワイシャツに、寝癖をなおしただけだろうという髪。
 だが、求めているのは恋人候補でもなければ、結婚相手でもない。
 警察無線を傍受して、情報を最大限にひきだせる人材。望むものはそれだけ。
 目の前の男は、眼福を味わせてはくれなかったが、要求はクリアしていた。それでいい。
 葛生・摩耶(くずう・まや)は、ヘッドホンを耳にあてて、慎重に警察無線をチェックする男をぼんやりと眺める。
(……さすがは彼の用意してくれた人材ね)
 表向きは、はやりのステーションワゴン。
 色は、さわやかなメタリックブルー。
 そして……その中には、無線の機材があふれかえっていた。
 摩耶は最後部の座席に座っているが、6人のりのはずのそれは、機材のせいで、3人のれれば拍手の広さだ。
 車のバッテリーだけでは足りないとみえ、後付のバッテリーが助手席の足元に露出している。
(さすがはさすがだけど、ついてけなーい)
 正直な摩耶の感想である。
 この手の機材の扱いは自分の知るものではないし、下手に手を出しても邪魔になるだけ。
 何より、最初にさわろうとして、無言のまま凄い形相で睨まれた。絶対にさわるなという意思表示らしい。
 そういうことは口で言ってよね。
 組んだ膝の上に頬杖をついて、ぼんやりと空を仰ぎみた。
 春らしい青空。
 ちらりと視界をさえぎって舞っていったのは、桜の花びらか。
 ぽかぽかとした、やわらかい陽射し。
 今日はいい天気ねーと、摩耶は思う。
 でも――。
(なぁ〜んもしないで待ってるって、すっごく、暇)
 はぁ。
 座っていることにも、外を眺めることにも飽きて、溜息をつく。
 男は、事件に関するような事柄を無線の会話から拾うたび、情報をメモした紙をわたしてくる。
 言葉も会話もない。
 しかも、情報はひどく断片的で、全体像が把握できるようなレベルではなかった。
 このときの摩耶は、まったく知らないこととはいえ――警察も全体像どころか関連性すら、まともに把握できてないのだから、無線を傍受して情報が集まるはずもなかったのだが。
 とにかく、暇だ。
 こういう時の暇つぶしにこそ煙草が役立つのだが、ついさっき、暇に耐えかねて煙草をふかそうとしたところ、機械に煙が厳禁だと、非常に怖い目で詰めよられたので、さすがに再チャレンジする気はない。
(機械フェチっていやーん)
 可愛く言ってみても、反応してくれる人もいないので、頭の中でだけ呟いてみせる。
「それにしても、いい天気ねー。コンビニ行ってくるけど、何かいる?」
 せいぜいにこやかに言ってみたところで、男は表情ひとつ動かさない。
 諦めて車を降りようとしたところで、男がぼそりと呟いた。
「…………烏龍茶」
 もすこし早く反応してくんないかなー。
 言うだけ無駄だとは思いながら、表むき笑顔、裏むきで思い切り罵倒しつつ、摩耶は車を降りた。
 そのコンビニの帰り道。
 摩耶は、まっすぐに戻らずに、公園で煙草をふかす。
 幼稚園以下のおこさんたちが騒ぐ公園で、あきらかに自分ひとりが浮いているが。
「構ってられるほど、こっちも余裕ないのよねー」
 ベンチをひとつ占領して、摩耶は、ぼーっと煙をながめた。
「人に遠慮して吸うのって何年ぶりかな〜」
 20歳としては、いささかな問題発言をしつつ、煙を思い切り肺まで吸いこむ。
 ニコチンに、体の内側から犯されるような感覚。
 頭がさえて、気分も落ちつく。
「やめらんないわよねー」
 呟きながら携帯をチェックすると――無線に雑音が入ると言われて、携帯の電源もオフにしていたのだ――着信履歴が残っていた。番号を確認して、摩耶は即座にかけなおす。
「――『田宮』かの?」
 聞こえたのは、しわがれた老人の声。
 だが弱々しさはない。長いこと上に立ってきた者に特有の、強い響きだった。
「別口から面白い話をきいたんじゃが。どうだ? 聞く気はあるかの?」
 摩耶は、うっすらと微笑む。公園の喧騒が急に遠のいた気がした。
 ――本当に喰えない人ね、あなた。私が聞かないなんてあると思う?
「はい、聞きます」
 電話の向こうで、老人が肯く気配がした。

 1時間後、摩耶は露出度の高い服で、ホテル街を歩いていた。
 露出度が高くても、これは普段着だ。高いヒールも、ボディラインを強調するようなコートも、全て自分のもの。
 もっと言えば、講演で煙草をふかしていたときと、格好は何も変わっていない。
『チェスじゃと言うのだよ。誰から聞いた――とは言えんがの』
 老人は話した。
『配置が似とると言ってな。正解かどうかはわからんが、正解だとすれば次の場所の想像がつくぞ』
 そして言われたのが、この場所だ。
 正確には、この通りというべきかもしれない。
 摩耶は顔をあげる。
 右手と左手に並ぶホテル。これまでの殺人と、立地条件は似通っていた。
 今までも、殺人はホテル街で起きていたのだから。
 ここなら、次の殺人もありうるかもしれないと気合を入れたとき――携帯が派手に着信音を鳴らす。
「―― ったく。誰よ、もう」
 どうでもいいなら即切り、などと思いながらも画面を見れば、意外な相手だった。
 シュライン・エマ。今回は別行動、夜になるまで連絡はしないという話になっていたはずの相手だ。
「どーしたの?」
 なんかあったー?
 草間にホテルへ連れ込まれたとか。押し倒されて思わず殴りとばしちゃったとかー。
 なんとなく、その気になって最後までしちゃったとか?
 ま、無理か。あの男にそーんな甲斐性があるとは思えないわね〜。
 そんな軽口をたたくつもりだったが。
「零ちゃんがいなくなった!?」
 摩耶は、思わず手に持っていたセーラムを取り落として叫んだ。
 どうみても不倫カップルか、援助交際かという2人づれが、ぎょっとしたように摩耶を見たが……それどころではない。
 海原・みあお(うなばら・―)と連れ立って、どこかへ出かけたようだという。
「ふたりで通報者だか犯人だかを掴まえに行ったのよ。きっと」
 シュラインの声は、常になく慌てていた。
 そりゃ、あの子供2人がいなくなったら、私だって慌てるわ。
 くらりと眩暈をおぼえたのは、摩耶だけだったろうか。
 零だけなら、道に迷うくらいですむかもしれない。だが、みあおが一緒なら?
(きっと、いまごろ、どっか間違えたところに向かって一直線かなー。断言してもいいけど……)
 シュラインに、これ以上の心配をかけるのは本意ではない。
 ―― そして、摩耶の想像は、実のところ大当たりだった。
 そのころ、みあおと零の少女探偵団は、最初の殺人事件があったホテルへ突撃中だったのだから。
「そっちで掴んだ情報はない?」
「無いこともないけど。あたしが調べたとこでは、チェスなのよねー」
 あたしが調べた、というより、情報提供をうけたのだが、そこまで言う気はない。
「え?」
「ほら、あの将棋みたいなやつ。白黒のマスの。大会かなんかの駒の配置そのままなんだっていう話よ?」
 自分が人の注目を受けてるのに気付き、摩耶は歩き始めた。
「零ちゃんはともかく、おこさま2人じゃ、こないだ事件あったトコには踏み込めないかな。こっちに来てるかも」
「あんたは、どこにいるの?」
 シュラインが即座に聞いてくる。声の調子からして、相当に焦っているらしい。
 摩耶は何か目印になりそうなものを探して――斜向かいにあるホテルの名前を見上げた。
「今は……ホテル・グリンヴィラ―― ってラブホの前」
「そのホテルの場所は!?」
 ……場所?
「ちょい待ちー」
 あそこの駅を降りてから右に曲がって、斜めになった通りを左に曲がって……と、頭の中で考えて行き詰まる。
 現在地がよくわからない。
 ここまで送ってくれたのは、警察無線を傍受していた例の男だ。
 例の、無線機材だらけの車で、ここから200mほどのところで降りたのだのが10分前。
「んー、その携帯って画像受信できるわよね。地図送るわ。もし、零ちゃんたちが来たら引き止めとくから」
「ありがとう」
 ひとこと残して電話は切れた。
「……おこさまたちめ」
 空を見上げる。立ち並ぶホテルの間の空に、夕闇が訪れようとしている――だが。
 摩耶は地上を――暗がりに浮かぶホテル群を見据える。
 ―― この街の1日は、これから始まるのだから。
 

    ■  ■  ■



 ねえ、知っている?
 ――女はね、月の生き物なのよ。

 男の腕に、自分の腕をからめて女は微笑む。
 化粧気の少ない女の、不意をついた蠱惑的な微笑に、男は陶然とした。
 見下ろす白い首筋からたちのぼる、甘い香水。

 今宵は既月。
 細い月は西の地平へ消えてゆこうとしていた。



     ■  ■  ■


「呼んでないわ。私は高いの。あっち行って」
 声をかけてきた男をろくに見もせず、摩耶は邪険に追い払った。もう何人目だかもわからない。
 だが、吊るし3点セットの背広の男が、金を持っているとは思えなかった。
 少なくとも、『プラチナム』の客よりも数段――いや、十数段は確実に落ちる。
 鬱陶しいったらないわ。
 セーラムを口に咥え、フィルタを噛む。
 店の客と比べるのが間違いだということには気付いている、気付かないわけがない。金払いの良い悪いの問題ではなく人間性の問題だ。それは確かに、店にだって性格のろくでもない客はいる。ゼロではない。金がものをいう世界。そこに摩耶はいるのかだから。
 だが、少なくとも最低限、相手にされないとわかった瞬間、「ブス」だの「ババア」だのと罵倒される筋合いは、それだけは絶対にないのだ。まだ20歳の摩耶には。
 きり、と、フィルタを噛む歯に力が入りすぎて、フィルタを包む紙が破れるのがわかった。
「苛ついてるのね」
 くすりと笑い声がした。
 横合いから差し出されたライター。
 紅く塗った指先。中指と薬指には、アートがほどこされている。握るライターは、カルティエのブラック。派手さはないが、センスは抜群にいい。
 摩耶は遠慮せずに火をもらうことにした。
「ありがと。あなたも客待ち?」
「そんなところ。でも、いい客にあたらないわ」
「……ほんとに」
 ホテル街の裏路地。
 何人かの女は、男をひっかけては表通りへと消えてゆく。安い女たちだ。仕草でわかる。その中の数人は、避妊の仕方も知らない素人か高校生だろう。
 どうでもいいことだ。
 この世界に飛び込んだのなら、体を売るリスクは自分で回避しなければ残ってはゆけない。
「いいライターね。似合うわ」
 摩耶の台詞に、女は微笑をこぼしてライターを道の明かりにかざして見せた。
「有難う。ライターは男と女、共通のアクセサリーね。これを見たときの反応で、男の格がわかるわ」
 黒地に金色のラインが入っただけのデザイン。
 素っ気なく見えるかもしれない。けれど、蓋を開け閉めするときの音の反響も、軽すぎず重すぎずの持ちやすさも、確実な一流品だ。だから、摩耶は遠慮せずに火をもらった。
「見る目のない男は反応しない、か。……あなた、こんなところで稼げるの?」
「……どうかしら。まあ、こないだからの事件のせいで手控えられちゃって困るけど」
 今は、あんまり稼げないわね。
 長めの前髪に隠されて、顔はよく見えない。ただ、紅くぬった唇が艶っぽくきらめいた。
「ねぇ、お酒でもどう?」
 さらりと言った女の言葉に、摩耶は首をふる。
「ギムレットには、少し早すぎるわ」
「小説のセリフね」
「そうなの?」
「あら。知らないまま言ったの?」
 女は楽しそうに声をたてて笑った。つられて摩耶も笑う。
「昔の、ハードボイルド小説よ。黴のはえたような」
「……それって、私の苦手分野かも」
 シュラインの話と自分の予想があっていれば、みあおと零がここへくる。
 離れるわけにはいかない。
「なら、『きみの瞳に乾杯』なんてどう?」
「それもいいんだけどねー。約束しちゃってんのよ。めんどーだけど」
 あっはっはーと笑って受け流す。
 自分の話に、即座に洒落たセリフが戻るやりとりは、しばらく続けてもいいと思わせるほどに楽しかったが――今だけは、あまり深く突っ込まれるわけにもいかない。
 仕方がないのよと、肩をすくめて見せると、女が「ふられちゃったわ」などと呟く。
「上客待ちなの?」
「それとは別口。野暮用ってとこね」
「そうなの。でも――だめよ」
 女はゆっくりと首をふった。
「わたし、あなたが好きになったわ」
「あら。ありがと」
「だから、だめなの。これから警察が来るわ。わたしたちみたいの、一発で掴まっちゃう」
 くすりと女が笑った。ぞくりと寒気がする。
 そして唐突に。
 脇腹に灼熱を感じた。
 息が吸えなくなり、数瞬おいて――これは痛みだと気付く。
「可愛いわね。今回が男じゃなかったら、あなたを発見者にしてあげてもよかったのに」
 くすくす。
 女が笑う。
 路上に崩れ落ちた――それも裏路地で崩れ落ちた摩耶のために立ち止まる者はいなかった。
「あ、なた……」
 カルティエを持っていたのは右手。
 気にせずにいた左手に、片手で収まるサイズのピストルと――先端に円筒形のサイレンサー。
 女は、微笑んだ口元を摩耶に見せたまま、二度、引き金をひいた。
「おもしろい体質ね。痛みがないわけではなさそうだけど?」
 貫通するはずの距離で撃ったにもかかわらず、痛みにうめくだけの摩耶を見下ろす。
「つ、ほうしゃ……は、あなた……」
「わたし、派手なのが好きなの。誰にも発見されない死体なんてつまらないと思わない?」
 そして彼女は、バッグから携帯電話を取り出した。
「ゲームは、まだ終らないの」
 摩耶を見下ろしたまま、数字を押す。
 3回。
 ――イチ、イチ、ゼロ。



 時間は少し遡る。
 綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)は、ふぅっと溜息をついた。
 それというのも、この相手のせいだと思う。
「うーん。死のにおいが近付いてきた……ああ、いい匂いだ……」
 かつかつと、路地にヒールの足音を響かせる汐耶の背後で、志賀・哲生(しが・てつお)がうっとりと呟いた。
 その足元が、ふらふらとしている。
「……何者ですか?」
「や。俺も知らない」
 汐耶にじっと見つめられて、夏野・影踏(なつの・かげふみ)は首をふる。
 まだ僅かな時間しか付き合ってない汐耶よりも、既に数時間も哲生に付き合ってる影踏の被害は甚大だった。
 法医学の基礎から始まって、様々な死体と死にかけの人間の話をえんえんと聞かされるのは、もはや拷問と言ってもいい。いや拷問と言うべきだ。それ以外のなんだと言うのか!
 何かを言い返さなきゃだめだと――まだ何を言い返すか、まったく決まってなかったりしたのだが――影踏は拳をぎゅっと握る。口を開きかけたとき、哲生が急に立ち止まった。
「死体のにおいだ……」
「――死のにおいじゃなくて、『死体のにおい』ですか?」
「ああ。間違いない。行くぞっ」
 言うが早いか、哲生が走りだす。仕方ないとばかりに、汐耶が後を追う。
「うぅあぁっ。ちょっと付き合いよすぎだぞ、俺っ」
 後を追いつつ、影踏がやけくそぎみに叫んだ。

「痛っ、いたたた……」
 ゆっくりと体を動かして、汚い路地に転がった体を起こす。
 暫くの間、意識を失っていたらしい。視線だけを動かしたが、女の姿はどこにもなかった。
 この路地裏に摩耶はひとりきり。
「逃がしちゃったかな――」
 摩耶は知らなかった。
 道を1本へだてた場所にいた哲生たちの存在を。
 哲生が感じ取ったのは、『死体のにおい』。もしも、この場に哲生たちがいたのなら――それは摩耶の死亡をも意味していたということも。
「手荒にやってくれるわね……」
 立ち上がるほどの体力はなく、そのまま、ホテルの外壁に背をもたれて座っていた。
 こういう場所によりかかるのは汚くてあまり好きではないが、どうこう言える立場でもない。
 ややあって、走る足音が聞こえてきた。シュラインと草間。
「はぁい〜」
 そう言って笑うつもりが、咳きこんだ。
 反射的に口元をおおった手には、泥の汚れしかない。
 あの距離で撃たれて、内臓や骨に異常がないことに感謝するべきなのだろう。
「葛生!」
 草間が叫んだ。摩耶の綺麗な肌に――その下に内出血の痣が広がっている。
 近付き――何かを踏みつけて立ち止まった。
 転がる空薬莢。
「すぐに病院へ……」
「いーの。これくらいは、へーきよ。……それより、私を撃ったやつ――女だった」
 通報者は女。自分を撃ったのも女。
 だから早く行って。差し伸べられた草間の腕を軽く叩き、押しやる。
「後で迎えにくるわ。おとなしくしてて!」
「いーってば。あたしはあたしでなんとかやるわ〜」
 走りだした草間とシュラインに、摩耶はひらひらと手をふって笑った。
 その笑みは、痛みで歪んではいたが。
 姿が見えなくなってから、摩耶は自分の体を確かめる。
 右腕は動かない。骨は折れていないようだが、近距離で銃弾をくらった衝撃は強く、いまだ痛みと痺れがひどくて、動かすことさえできない。
 苦労しながら、左手で携帯のメモリに登録されている番号をよびだす。
 何度かコール音を数えて、やっと相手が出た。
 電話ごしでも消せない、既に若くはない声。しわがれた彼の声。
 話しかけようとして、摩耶は痛みに少し咳き込んだ。
「……ごめんなさい。私らしくないミスだわ。でも、きっと楽しい話を聞かせられると思います」
 ふっと顔をあげると、高くそびえるホテルの合間に、小さな空が見える。
 この痛みは、私のもの。
 私が停滞せずに、生きて広い世界を見た証。
「だから、迎えにきてくださらない?」
 ふっと、口元に笑みが浮かぶ。
 電話の向こうの男に話しかける声は、すがすがしいほどに明るかった。


     ■  □  ■


(―― 【禍と幸と揺籠】 ――)
 そんな名前だったなと思い出しながら、草間は煙草のフィルタを噛む。
 幸と禍。禍と幸。
 その単語を、ただの順番の違いと、決め付けられるだろうか。
 開店前の店は薄暗く、ざわめきもなく、ただ静かで。
 人が入れば、それなりに幻想的な雰囲気をかもしだすに違いないオレンジ色の灯りさえ、不気味に人の影をゆらめかせる道具でしかない。
 そのカウンターの中に立つ時哉は、あまりにも違和感がなかった。
 いい気分はしなかった。ここに来ることさえ避けたかった。少なくとも今は。
 噛みすぎた煙草のフィルタが、口の中で散切れる。はかったように目の前に置かれた灰皿へ吐き出して、煙草を揉み消した。乱暴に。
「――犯人が誰なのか、気付いてたんじゃないのか、有志」
 草間は、調査報告書を持って時哉を見る。
 調査を請けおった興信所としての義務感だけで。
「最初から知ってたのか。犯人を」
「まさか」
 信じないとばかりに厳しい目で睨まれて、時哉は天井を仰ぐ。
 口にしているのは、本心から誓って事実なのだが、信じてもらえないのは仕方がない。
「まあ、いちばん楽で昔からある手じゃん。殺した本人が警察に通報するって」
 あれから――零が撃たれた夜から数日がたち、警察の捜査も前よりは進んでいる。
 だが、『進んでいる』と、『捗っている』は、イコールではない。
 通報に使われた携帯電話の番号は判明したが、プリペイド式の携帯電話を手に入れる術はいくらでもあり、入手ルートを特定するのは至難の業だと、馴染みの刑事が教えてくれた。
 所有者の名前はわれたのだが、予想どおりというべきか――実在しない架空の名義だった。
「……有志」
 どうして、それを最初に言ってくれなかったかと詰問しかけて、やめる。
 答えは簡単に想像がついた。
『訊かれなかったから』
 返る反応は、おそらくそんなところだ。
「飲めよ」
 草間の前に、音をたてずに湯気をたてるグラスが置かれる。
 温められた赤ワイン。いや、チェリーの香りが――わずかにするか。
「その顔色で帰らないほうがいいぜ?」
「誰のせいだと思ってる」
「俺は、草間興信所に依頼を出した。あんたは依頼を受けて調べたんだ」
 草間は調査書をカウンターに放り出し、立ち上がった。
 乱暴な動作に倒れた椅子の音が、耳につく。
「飲んでいかないのか?」
「誰がいるか」
 歩幅を大きくして、扉に向かう。振り返ることはおろか、椅子を直しもしなかった。
「―― 志賀は気付いたんだけどな」
 小さく笑いながら椅子をおこす時哉の声を聞いたのは、その本人と、誰もいない店内だけだった。



 瀟洒なつくりだが、薄暗い部屋だった。
 おそらくは、視力の弱った部屋の主のために、わざと薄暗くしてあるのだろう。
「ずいぶんな痣になったようだね」
 露出した摩耶の右腕を見て、老人が痛ましそうに目を細める。
 あの女に近距離で銃弾を受けた痕だ。
 けれど、摩耶を見る老人の目に同情や憐憫の色はない。
 知っているからだ。
 この痛みさえ、摩耶にとってはマイナスではないということを。
「まだ痛いか」
「ええ。でも、それほどでもありません」
 摩耶はにこりと笑う。
「銃で撃たれたとかいう少女は無事かね?」
 そのことについて、まだ摩耶はひとことも口にしていない。
 知っているということは、その情報を手に入れられる人脈を彼が持っているということだ。
「おかげさまで。無事です」
「そうか。それは良かった。おいぼれよりも……娘には未来があるからの」
 老人はゆったりとソファに座りなおし、摩耶の顔をみた。
「朝の新聞かニュースは見たかね? 昨日、殺された男のことが載っておる。確か教会の牧師だったか……」
「一緒にいたのは、もう50代も半ばになるホステスと聞きました」
「そうじゃの」
 肯いた老人は、さっと右手をあげた。
 部屋の隅に立っていた男が、無言のまま近付いてきて、テーブルの上に正方形のチェスボードが置かれた。
 老人は、駒の入った箱をあけて、ひとつの駒を取り出す。
 置かれた駒には、精緻な彫刻がほどこされている。置くときに、やわらかな音がした。
 おそらく、駒は象牙。
「わかるかね?」
 尋ねられて、摩耶は置かれた駒を見直す。
 Bishop。
 僧侶、もしくは司教。
 摩耶の顔色が変わったのに気がついたのか、老人はしわのある手で、駒を順に並べてゆく。
 黒の兵士。白の兵士。黒の王……。
 摩耶は、気にとめていなかったチェスボードの上を、改めて凝視した。
 1件目と2件目の被害者の共通項は男性。3件目の被害者も男性で――確か、職業は――。
「職業は――会社の社長」
 思い返すように言った摩耶の言葉を、老人は聞き逃さなかったようだ。
「……キングだね」
 しわのよった口元が、楽しそうに笑う。
「チェスに興味はあるかね?」
 チェスボードの駒をそのままに、老人が言った。
「いいえ」
「では、知らんだろう。1998年の世界選手権、第4局だ」
 もういちど最初から、ボードの上に白と黒の駒が並べられてゆく。
「勝敗が決したとき、盤上にあった駒は双方合わせて11。最後まで残った駒が動いた順に、駒を置いてみるとこうなる」
 1手目、白の兵士。2手目、黒の兵士。3手目、黒の王。4手目、白の兵士。5手目、白の王。
「殺人事件の5人目の被害者も、会社の社長と新聞に書いておったな」
「昨日の被害者は――」
 牧師。宗教に関係するもの。
 摩耶は、じっと盤面を見つめた。
 最後まで残った駒は11。起こった殺人は昨日を含めて6件。まだ、5件の殺人が起こるはずだ。犯人が――あの女が、この対局を忠実に再現しているのなら。
『ゲームは、まだ終らないの』
 彼女は途中で何かを投げだすタイプではないと、良くも悪くも目的をそのままに実行するタイプだと、摩耶の中の何かが強く訴えてくる。それは、もしくは自分と似たような感情なのかもしれない。
(――わたしは、ここで立ち止まりたくはない――)
 紅い口紅の微笑にばかり目をとらわれていた。
 意識を失いかけた一瞬、携帯電話をとりだすのを路上で身動きも取れずに見上げた。
 110番を押す彼女の視線に、躊躇いはあったろうか。
(いいえ。それは絶対に――)
 ありえないと、摩耶は言い切れる。
 深呼吸をひとつ。
 摩耶は、目の前の老人に改めて視線を合わせた。
 何かを待つ目。自分が味わうことのできない、何かを待ち焦がれている目。
 私と―― そして、きっと彼女も持っている瞳の強さ。
「……では、今回の話を聞かせてもらおう」
「はい。喜んで――」
 摩耶が足を組み替える。
 彼女の仕事は、ここからが本番だった。


     ■  ■  ■



 パステルカラーのパンプスだった。
 唇はピンク。ピアスの耳元に、淡いトルマリン。
 薄いグレイのスーツは、しなやかな女の体の線を強調しつつも、下品ではなかった。
 片方の肩にかけた大きめのバッグが、仕事がえりのOLを思わせる。
 擦れ違いさま、肩のぶつかった男性に微笑みをむけて、女は駅の階段をのぼった。
 8センチのヒールの足元が、音もたてずに歩くことに誰も気付かない。
 帰宅時間にさしかかり、混雑するプラットフォームで、女は下りの電車を待つ。
 さして待つこともなく入ってきた電車の混み具合に疲れたような溜息をひとつおとして、乗りこんでいった。
 そのまま、何事もなく電車は動きだす。
 プラットフォームのゴミ箱に、もう、いらなくなった携帯電話を残して。


 この日――都内のホテル数件において、殺人事件があった。
 通報は、高く澄んだ女の声。
 謳うように、ゲームの終わりを告げた。

「Game Over。もう厭きたわ。時間切れよ」

 ――時計は、18時12分をさしていた。





                                  ― 了 ―



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                        ≪ 草間興信所 依頼報告書より、抜粋 ≫


  依頼人 :
    有志 時哉 (ゆうし ときや)

  依頼時刻 :
    3月21日、午後10時。依頼人より入電。

  依頼内容 :
    依頼人が巻き込まれた殺人事件の通報者について素性を調べてほしいとのこと。
    尚、犯人については調査の必要がないことを確認。


  事件内容 :
    3月16日、午前5時39分。
    所轄警察署に直接、女性の声で「死体を見つけて」との通報が入る。
    この時、女性はホテルの住所・名称・部屋番号も告げている。

    同日、午前5時47分。
    通報を受けた警察は都内某ホテルにて、男性の死体を発見。
    同室に宿泊していた依頼人を重要参考人として任意同行。
    男性の名は川本則夫。満42歳。
    検死によれば、死因は頚動脈に注射された高濃度の農薬による中毒死と判明。
    使用されたと思われる注射器は、同室のゴミ箱より発見された。
    科捜研にて詳しい鑑定を試みるが、指紋、その他の証拠物は発見されず。
    その後の調べにより、川本は名古屋に本社を持つ会社の社長であると確認された。

    死亡推定時刻は午前2時〜3時。
    重要参考人と目されて取調べを受けていた依頼人だが、その時刻、都内のカラオケスタジオにいたことを、
    店舗スタッフを含めた複数の人間が目撃しており、また、同カラオケスタジオから殺害現場のホテルまでは
    往復で40分程度かかることから、依頼人は容疑者から除外された。


  依頼された通報者の素性について :
    警察に残されていたテープから声紋鑑定した結果、間違いなく女性の声と確認。
    変声機等を使っていた痕跡は確認できないことから、肉声と思われる。
    警察の聞き込みに同行していたシュライン・エマも同一の声と明言している。
    また、通報者本人と接触し、携帯から警察に事件を通報する現場にいた葛生摩耶がテープの声を確認した
    ところ、声の他、話し方のアクセントや特徴がよく似ているとの判断を得た。

    数分後、通報者と思われる女性は、海原みなも、草間零を襲っているが、理由は不明。
    銃の種別は特定できなかったが、その場に残された弾丸から28口径の銃と判明。
    少女2人が襲われる現場にかけつけた、志賀哲生、夏野影踏の両名だが、女性の年齢は20代後半、髪を
    長くのばした、売春婦にも見えかねない格好であったと証言している。
    志賀哲生が強く主張したところによれば、少なくとも女性は数十名を殺した経験があるはずとのこと。

    海原みなも、草間零を襲ったあとの女性の行動については、確認ができていない。

    襲われた海原みなもは恐慌状態に陥っており、シュライン・エマも止血に集中していた。
    通報者と接触した葛生摩耶は、その際に銃で撃たれており現場を引き上げている。
    志賀哲生は、女性と接触した直後から酩酊状態に陥り、3日間、二日酔いの症状が続いた。
    血中からアルコールの検出されなかった志賀哲生が酩酊状態に陥った理由は解明できていない。

    女性を注視していた綾和泉汐耶、夏野影踏の両名は、女性が水面にでも沈むようにアスファルトの路面へ
    沈んで消えたと証言しているが、こちらも他の目撃者はなく確認はとれていない。
    尚、女が沈んだとされている場所の地下数メートルに、廃棄された地下道があることが判明。
    警察では現在、両名の証言との関連性を調べている。


    これらのことから、通報者の女性=犯人である可能性が高いと思われるが、銃を所持していながら、殺害に
    銃を使用していない理由は、未だ不明である。





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     登場人物 (この物語に登場した人物の一覧)
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生
 1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 都立図書館司書
 1979 / 葛生・摩耶  / 女 / 20 / 泡姫
 2151 / 志賀・哲生  / 男 / 30 / 私立探偵(元・刑事)
 2309 / 夏野・影踏  / 男 / 22 / 栄養士

 NPC  / 有志・時哉  / 男 / 19 / 大学生/【禍と幸の揺籠】の店主
 NPC  / 桔梗 (仮名) / 女 / 年齢不明 / 職業不明

 ※ 整理番号順に並んでいます。

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     ライターよりのひとこと   (ライター通信)
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 那季・契と申します。
 納品物に一部不完全な部分がありましたので、改めて再納品させていただきます。

 起こっている事件自体は、他の方のものと変わっておりません。
 全く同じです。
 興信所依頼らしく、最後に報告書(らしきもの)も付けさせていただきました。

 桔梗の作ろうとしたチェスの版面と殺した順番の理由については、
 異界、【禍と幸の揺籠】内において、2・3日中に詳細を掲載させていただきます。
 もし宜しければ、御覧になってみてください。

 ちなみに、時哉が事件に巻き込まれたのは3月16日。
 時哉の依頼を受けて、皆様が行動を起こしていたのは3月22日。
 そして、エンディングの事件が起こったのは、3月29日です。
 どうして通報が18時12分なのか気になる方は、月齢を調べてみてください。
 ―― 蛇足ですが、時哉の事件の通報は12時35分でした。

 最後に。
 私個人の都合が重なったとはいえ、納期から10日以上お待たせする形になってしまいまして、
 綾和泉・汐耶さまと夏野・影踏さまには、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。

 本当に御参加いただき有難うございました。


---◆ 葛生・摩耶 さま ◆---

 初めまして。御参加ありがとうございました。
 遅刻となりましたことをお詫びします。申し訳ありませんでした。
 もしお気に召しましたなら、今後とも宜しく御願い致します。

 職業が泡姫さん。
 意外と、個室付特殊浴場の名前っておもしろいですよね。
 ××観光とか△△協会とか……。
 ちなみに、那季の家からは、徒歩20分ほどで××観光に行けます。

 『プラチナム』という店の名前は、随分と格好いいですね。
 さすがは高級店。
 ストリートガールの現状まで教えていただき、有難うございました。
 いつか、生かすことができればよいのですが。
 通報者=犯人と接触して、途中退場になってしまっている摩耶さまですが、
 シュラインさま、みあおさまとの草間興信所パートとしては、
 1番のキーキャラクターではないかと思います。

 とても個人的なことですが。
 摩耶さまのキャッチフレーズは素敵に格好よくて、どきどきです。





        那季 契