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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ゴーストネットOFF杯・カラオケ大会

Opening:雫からのメール
あなたは、雫からメールを受け取った。


差出人:雫@管理人 2004.XX.XX
TITLE:ゴーストネットOFF杯・カラオケ大会
は〜い、管理人の雫ですw
みんなとの交流のためにカラオケ大会するので、
参加者募集中でーす。
カラオケBOXは「バンシーパーティ」って所。お茶やお菓子持参OKの所だよ。
(住所と電話番号が書かれている)
また、この場所って噂では、「出る」って!
なので、その幽霊さんと一緒にはしゃぎましょう!


…という、雫らしいオフ会の案内が送られてきた。

しかし、まて?
出るってバンシーですか?
どうなる事やら


1.おおぼけ集合。
雫は参加希望者の返答を待ち、そのあと、待ち合わせ時間と場所を指定して今はカラオケBOXのバンシーパーティの前だ。幹事として雫は30分前に来ている。
「楽しいオフ会になりそう☆」
と、わくわくして待っている雫。
「雫、誘ってくれてありがとう。いっしょに楽しもうぜ」
と、体格の良い男がいる。
「うん!いっしょに楽しもうね!五代さん」
五代真が一番目に返事をだして雫とほぼ同じ時間に来ている。なにやら菓子や飲料以外の大きなバックを持っている。雫は訊いてみたが、
「はは、其れは秘密だ」
と、ニヤリと笑うだけ。まさかマイマイクやら持っているのかと思う雫。
カラオケBOX〈バンシーパーティ〉は他と違ってまるでイギリスから持ち込んだ洋館になっている。通りには此しか目立つ建物しかない。一応ぼちぼちの稼ぎがあるのだが、噂で「出る」と言うことで、近辺の住民はあまり利用しないのだ。それに洋館というのに抵抗感があるらしい。
そして集合時間10分前に残りが集まった
「デルフェスさん、ヴィヴィアンちゃん、ゆゆちゃんこんちは!」
「はいこんにちは、雫様」
「こんにちは雫!あたし以外に日本に来てるってホントなんだぁ?」
「いっしょに楽しもうね〜」
つい最近パソコンの扱いを覚えたという鹿沼デルフェス、そしてバンシーという名前で気になったりした同じくバンシーのヴィヴィアン・マッカラン(衣装はゴスロリファッションに水色に染めた髪)、そして楽しいことに色々突っこみたがる鈴代ゆゆがやってきた。皆、和気藹々と会話する。五代が30分待ちで遅いと文句を言ったが、それは待ちすぎと皆に突っこまれて苦笑するしかなかった。
「あ!イ…じゃなくて舞ちゃん!」
雫は最期の参加者に駆け寄った。
最期に5分前に来たのは雫が一番待っていた人物、イヴ・ソマリアだった。しかしあのアイドルの姿ではなく、調査員としての朝比奈舞として登場だ。
「雫さん誘ってくれてありがとう」
「ううん。来てくれるってとっても嬉しい!」
デルフェスは首を傾げる。
「どこかで見た雰囲気をお持ちですねぇ」
と。
因みに、デルフェスはカラオケのことを「空桶で何かすると」認識違いしていたことは、メールや神聖都学園内で会話した雫と約数名だけの秘密である。なので、彼女は其処に桶を持ってきてないはずだ。

早速中にはいると、受付に小麦色のナマモノがカラオケBOXで良くある制服を着て、
「いらっしゃい」
と、挨拶。
よく見かける馴染みの人物の一部は一歩引いた。舞と雫は別段気にしていない。
「かわうそ?くん何処でもバイトしているんだ」
「あい」
「ここの情報もかわうそ?ちゃんが教えてくれたんだよ!」
「へー」
五代がかわうそ?を眺める。
かわうそ?も眺め返し…
「…」
「…」
何か通じたのか知らないが、固い握手を交わす。
謎だった。理由について2人も謎だった。

「予約、ここに出るバンシーいれて7名ほど、あとでかわうそ?もはいるけど?」
「うん、いいよ〜」
幹事の雫がかわうそ?とてきぱき手続きを済ます。
「え?この動物も歌を唄うのですか?」
デルフェスは驚く。
「上手って噂だよ〜」
「あい」
デルフェスは首を傾げた。

つぎにゆゆが、かわうそ?の話を聞いて…一言。
「ばんしーって何?」
隣にいた、ヴィヴィアンが暗い影を落とし隅に蹲る。
「え?え?え?」
ゆゆは、いきなりヴィヴィアンが暗くなっている事に驚きを隠せなかった。
「五月ちゃんの保護をあやかし荘でしていたとき、あたしバンシーだと言った覚えあるのだけどぅ〜」
泣けないけど拗ねている。しかし、本当に泣きたかったのか、手にはタマネギが用意されていた。
「え?あう〜」
ゆゆとしては彼女がそれらしいことを言っていたような言ってないような気がして
「ご、ゴメン…あたし、鈴蘭の精で外の世界を良く分からないんだ。教えて欲しいなぁ」
しこたま謝るゆゆ。何とか機嫌を直したヴィヴィアンが、
「じゃ、説明するね。バンシーはアイルランドで有名な幽霊なのぅ。いつも泣いていて、その泣き声を聞いた人は気絶するか下手すると死んじゃう怖い種族です♪」
と説明して気分を良くするヴィヴィアンだと思ったが。
「あたし、実は落ちこぼれで泣けないしぃ〜」
あはははと乾いた笑いでごまかすのであった。
しかし、ゆゆは説明されても
―鈴蘭の精と同じなのよね。
と、いう認識しかなかった。
「上手くすりゃ本場のバンシーを拝めるわけか…」
と五代はぼそりと呟いた。聞こえない様に。
「みなこっちだよ〜!」
と、雫がかわうそ?に連れられ、部屋に案内されるので皆はついていった。


2.J−POPより?
部屋が決まった後、ジュースなど配り、お菓子を並べた。
「ではゴーストネットOFF杯・カラオケ大会始めます!楽しくやりましょう!乾杯!」
「かんぱ〜い」
と、音頭が取られて早速通信カラオケのカタログと睨めっこする人達。
「あ、一寸トイレ、適当にやってくれ」
五代が謎の鞄をもって部屋を出た。
「何しに行ったのだろう?」
皆は不思議に思い首を傾げた。
まずは、雫とヴィヴィアンがJ−POPの有名な曲「アジアの純真」をうたう。ゆゆは順番関係なしにマイクなしで唄っている。
其れが終わったころに、舞が
「やっぱり、日本の心は演歌よね〜」
と、演歌のナンバーを入れていた。
「おまたせ〜」
五代が戻ってきた。姿は着物、つまり自前の鮮やかな紺地に白抜きの波模様の演歌歌手衣装なのだ。しかし、靴がスニーカーというのは頂けない。
「気合い入ってるわ!」
舞は瞳をきらきらさせている。
デルフェスはどういう事か分からなく戸惑っている。
「お、お似合いですわ五代様」
すると、舞の順番が回ってきた。
「あたしの番だ」
「え?舞さん、あんた演歌歌うのか?」
「うん、いつもイメー…いや大好きだからいつも唄うんだ♪」
「いいねぇ俺のレパートリーも演歌だぜ」
「やった〜」
意気投合している2人。
流石に舞は、自分がアイドル歌手のイヴでその姿で演歌唄うとイメージがと会社から言われているのだ。そんなこと口に出しても言えない。いま、この場所で彼女の正体を知っているとしたら、顔文字で感情表現する謎生物と、ヴィヴィアン、雫ぐらいである。あとは、幽霊との対面を待つだけだ。
デルフェスは、ラテン語の歌しか知らないので、歌の音頭をとったり、お茶などを注いだりと裏方に徹し、舞と五代の演歌主体のオフ会になっていく。
ヴィヴィアンとゆゆがJ−POPでデュエットする。ゆゆが半テンポずれるのを知ったヴィヴィアンがこっそり調整してかなり旨く歌えた事に嬉しがるゆゆだった。


3.お菓子でひと騒動。
皆は飲んで歌って騒いで楽しむ。
喉が渇けば、腹も減ると言うもの。
皆が持ち込んだ物とは、
・雫は簡単なお菓子詰め合わせ。サンドイッチ。
・五代は酒のつまみにもなるお菓子と酒多数。
・ヴィヴィアン特製スコーン。
・舞の手作りのケーキと店で買ったシュークリーム
・各自が用意したその他飲料。
である。
ヴィヴィアンのスコーンは好評である。やはり手作りで美味しい物はよい。
しかし、舞のケーキはというと、のちにかわうそ?が、
「舞のケーキ食べる」
と、言っていたのでそのぶんを分けている。
「失敗作とか入れてない?」
ヴィヴィアンが舞に耳打ちする。
「や、やだなぁ〜そんなわけ」
乾いた笑いをする舞。表情が少し青ざめている図星だったようだ。
確かに失敗作は入っているが味には問題ないと思っている。しかし、料理の師、かわうそ?が食べるとなると、少し困った舞だった。不安は今のところ杞憂に終わり舞の心配と裏腹にケーキは好評なので一安心である。
ゆゆは固形物が食べられないので、あらかた飲み物に手を付けてしまいにはお酒に手を付けた。
…そして、
「ぷは〜おいしぃ♪」
と、千鳥足でフラフラし始めた。酔っ払っている。
「おいおい、子供が…」
「あたしは植物の精霊だも〜ん」
「そう言う問題じゃないって…ってもう遅いか…」
五代はため息をついた。
ゆゆの本体である鈴蘭が、すこし花がピンクに染まっているのを部屋の主がみて驚いているかもしれない。

そして、かわうそ?が舞のケーキを食べにきた。
ドキドキする舞。
「…こっち」
「え?え?」
連れて行かれる舞。
かわうそ?はご機嫌斜めのようで、
「イヴ…いや舞、修行し直し!」
「うえ〜ん。しおしお〜」
舞はその場で悄気る。僅かなミスも許さなかった料理の師匠だった。


4.出た!
部屋では笑って唄っては幻術をだすゆゆに、五代と舞の演歌の連続。
なんと一曲だけラテン語の歌があったので、デルフェスが喜んで唄ったりもした。

一瞬、霊気を感じる。
雫を除いた全員がその方向を見た。
白い幽霊で泣いている。妖精種独特のとんがった耳をもった美しい女性の幽霊だ。
「……」
なにか呟いている。
そして、その声は大きくなった。
「こんばんは…賑やかですね」
と挨拶したのだ。
「驚かないのですか?」
と、訊いてきた幽霊だが…、
丁度、かわうそ?が色々手料理を持ってやってきたのだ。
「あい、盛り上がる」
謎動物、肝が据わっている?

「さて、幽霊さん、一曲歌って欲しいな」
と、五代がマイクを渡す。
いきなりなことなので、戸惑う幽霊
「わたし、バンシーの中で…特殊な存在なのですが?古代種と…」
「いや構わない。構わない。べつにバンシーだろうが幽霊だろうが、今回のカラオケ大会は思いっきりあんたと楽しく過ごす事にあるんだ。な、瀬名」
「うん!五代さんの言う通り。いっしょに楽しもう」
五代の言葉に同意する雫。元からそう言う目的なのだ。
「ひっく(しゃっくり)おー!」
と、酔っぱらい鈴蘭が叫ぶ。
「実はあたしもバンシーなのぅ!同種族のお友達が欲しかったんだよぅ」
落ちこぼれバンシーも誘う。
すると、そのバンシーは泣いてしまう。
「あ!ど、どうしたの?」
ヴィヴィアンと舞が彼女に駆け寄った。
「こんなに優しくして貰ったのは900年ぶりで…」
「あーなるほどねぇ…」
ヴィヴィアンと舞は納得した。
「済みません、話が見えませんのですが…」
精神的攻撃に耐性があるデルフェスが尋ねた。

バンシーの名前はエーディエルと言う。妖精種から生まれたバンシーだとか。古代種のバンシーは現在のバンシーより強力で敬意と畏怖の対象だったらしい。元はエルフなどの女性がなるものという伝承もある。
かつては、ウェールズの旧家でひっそりと暮らしていたのだが、いつの間にかこの極東の地に移動されたらしい。おそらく、己が棲んでいた一部ごとここまで運ばれたのだろう。
館の主が死亡し、かなりの歳月が経った。彼女は帰り方など知らず、バンシーとして役目を果たす為に活動していたが、結局住民は恐れおののき結局は、カラオケBOX(この家の防音に目を付けた)になったそうだ。いつもなら、死者を告げるだけで滅多に現れないのだが、同じ霊質を持つヴィヴィアンや、懐かしいゴーレムなどに惹かれて出てきたのだ。
彼女たちがいなくても、かわうそ?が無理矢理彼女をだすだろう。

「可哀想に」
タマネギのエキス目薬で涙を流すヴィヴィ。
「あたし、落ちこぼれだからコミュニティからここまで飛ばされたんだけどぉ…悲しいね」
泣けないから無理に泣くのが意地らしい。
基本的にバンシーを信じる家族はバンシーが家に憑くことを誇りに思う。しかしながら、其れに該当しない極東の地は単なる悪霊として扱われるのだ。
ヴィヴィアンはその行為が出来ない故、極東に留学生として存在している。
「ま、気楽やろうぜ、何か歌えるんだろ?」
五代がエーディエルに又尋ねた。
「ええ、ここのカラオケの曲はどんなものでも歌えますが?それが?」
「じゃー決まり♪デルフェスさん、この人は悪くないから、除霊は止めてね」
「あ、はい分かりました雫様」
「あたしとデュエットしよう〜(ひっく)」
「えーゆゆちゃん、それはあたしからだしぃ」
また騒がしくなるメンバー
舞がエーディエルの肩を軽く叩く。
「楽しみましょう、近くに死を告げる高貴な人などいないのでしょ?」
舞の言葉に彼女は初めて笑った。
「はい」

そして、またカラオケ大会は続くのだった。


Ending
妖精種であり古代種のこのバンシーは、今回のメンバーに色々な事を聞いたので、外の世界に興味を持ち始める。この東京が、かなり霊的地場が強いのだとか、楽しい人がいっぱいなど聞かされると、「良き霊」であるバンシーならばこっそり覗きたくなるものだった。
皮肉な運命でここまで連れてこられた彼女もこの地で、本職をしたいと思っている。
当然、拠点はこのカラオケBOX。たまにヴィヴィアンが誘って遊びに出かけるそうだ。その時にヴィヴィアンの悩み事を聞いてあげたりするエーディエル。
舞と五代は演歌趣味で意気投合し、時間さえあればまたいっしょに唄おうと約束している。
デルフェスや雫もエーディエルと良く交流しているそうだ。昔の話で盛り上がる方はデルフェスなのだが。
ゆゆは飲み過ぎでダウンし、暫く鈴蘭本体で唸っているらしい。雫は義昭に伝え、そこからエルハンドがこっそり見舞いに行ったそうだが…。

さて、もう一つ話がある。
朝比奈舞ことイヴは自宅でナマモノに料理をしごかれている。
「甘い!イヴ、料理の達人になる!」
「其処までレベルあげても〜」
「だめ!人様に出すなら!徹底的に!」
「うえ〜ん、かわうそ?くんの意地悪〜」
よほど、かわうそ?的に気に入らなかったケーキだったのだろう。

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【0428 鈴代・ゆゆ 10 女 鈴蘭の精】
【1355 五代・真 20 男 便利屋】
【1402 ヴィヴィアン・マッカラン 120 女 留学生】
【1548 イヴ・ソマリア(朝比奈舞) 502 女 アイドル歌手兼異世界調査員】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
『ゴーストネットOFF杯・カラオケ大会』に参加していただきありがとうございます。
バンシーが2人出てきました。
今回は、良き種族のバンシーです。良き知らせやアドバイスをする土地に着く存在。実害はないです。しかし、出てくる姿が恐ろしいのでビックリするのは仕方ないです。

それにしても、演歌で意気投合など意外な展開が多くて楽しく書かせていただきました。
でも、鈴代ゆゆさま…ヴィヴィアンさまとは、前回「二人目の座敷童子」でお会いしていたんですけどね…(苦笑)
「ばんしーって何?」
は酷ってものでしょう…。

イヴさま、またナマモノに料理修行頑張って下さいな。
デルフェスさま、いつも裏方などご苦労様です。

では、次の機会が有ればお会いしましょう
滝照直樹拝