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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『 Chess Game : Code α 』



 夜空へと――――高く、低く。

 響くのは、謳。
 女は、長い髪をかきあげるようにしながら、ゆるりと腕をあげた。
 紅い唇から、音がこぼれる。
 音をたてないまま、革のブーツでステップを踏み。
 とろけるような微笑を浮かべ。
 地上25メートルのビルの屋上で。幅5センチの柵の上で。女は踊る。
 微笑を浮かべたまま、軽やかに。

 ――――謳いましょう。踊りましょう。新たなる死者のために。
 あの愛らしい死体のために――――祝福を。

 紅い口唇が、青い桔梗に口付けるのを、東の空から月が見下ろしていた。



     ■  ■  ■


 目を開ければ、見慣れないものが見えた。
 ただ白い平面――それは天井。
 別に珍しくはない。珍しくはないが――見覚えはない。そんな、天井。
(……つまり、)
 外泊したんだな、と、時哉は結論づける。
 昨日の晩は叔父から譲りうけた店を臨時休業にして、19歳の若者らしい付き合いに参加した。いわゆる年度末の飲み会で、未成年の飲酒という――まあ、瑣末な問題はあるものの、それは珍しくもない。
 問題は、この見覚えのない天井だった。
 二日酔いの痛みに眉をしかめる。
 昨晩はあびるほど酒を飲んでいたから、そのせいで記憶が飛んでいるのかもしれない――というか、飛んでいる。
 そして、考えたくはないが、隣に人の寝ている気配がした。
 時哉は、深々と溜息をついて、そっとベッドの中を移動した。良い気はしない。まずいことになったと、そればかりが頭をめぐる。
 あえて、ベッドに横たわる人影から目をそらしつつ、ゆっくりとベッドから出た。
 ドアの外で、走り来る人の足音がした。その音から人数を予想する。おそらくは、4人か5人。
 時哉は、もういちど、深々と――もう、それ以外は他に何もやることがなく、溜息をついた。
 口元がなまぬるい笑みにゆがむ。
 激しい音をたてて開かれるドア。
 なだれこむ紺色の制服。
 どれもが、安っぽいドラマのようだ。現実とは、案外そういうものかもしれない。
「壁に両手をついて大人しくしろ」
 逆らう理由はなかった。逆らって痛い思いをする気はない。だが、視界の中にまともに手をつけような壁は見当たらなく、仕方がないので少し歩いてバスルームを囲むガラスに両手をつけた――が。
 そのガラスに映った背後の光景に、ぎょっとして時哉は振り返る。
「あぁ!?」
 抵抗するものと勘違いした警官に殴られ、気を失う寸前。
 視界に映ったのは、ベッドに横たわる、四十絡みの男の姿だった。


     ■  □  ■


 電話の向こうで、男は深々と溜息をついたようだった。溜息をつきたいのはこっちだってのと、時哉は心中で呟く。
「……まあ、人の趣味にとやかくは言わんが」
「今回に限り、とやかく言ってくれ」
 時哉は嘆息まじりに、男――草間武彦に向かって続ける。
「俺には断じて男趣味は無い。自分と同じ構造の体をなでまわしてどこが楽しい」
 目が覚めたとき、隣にあるのが死体だということは、すぐに気付いた。
 傍にいるのに体温がない。寝息が聞こえない。あるのは、無機物めいた存在感だけ。
 その事実から、横にあるのが死体だと推測するのは難しくない。予定外だったのは、それが四十男だったということくらいだ。
「だが、おかしいな」
 草間は黒電話の受話器を肩にはさんで、新聞を眺めた。2日前の記事だ。
 今では珍しくもなくなった官公署の不省疑惑が紙面を独占しているせいか、大きく取り上げられてはいないが、左隅にラブホテルで発見された男性の変死体の記事が掲載されている。未成年だからか時哉の名前は記載されていない。ただ、『同室に宿泊していたA少年(19)を重要参考人として現在取り調べを行っており……』と、印刷されていた。
「おまえの言うとおりなら、通報したのは誰なんだ?」
 当然だが時哉本人ではなく、ラブホテルの従業員でもなかったらしい。
 通報は女性の声だったというが、それ以上はまだわかっていない。少なくとも、警察の公式発表では、そうなっている。
「だから、その通報者を調べてくれって言ってるんだ」
「誰に」
「あんたに。草間武彦に。草間興信所でもいいぜ」
「おまえなあ。一度くらい電話帳めくってみたことないのか。どこの探偵事務所にも『刑事事件はお断り』って書いてあるだろう」
「あんたんとこ書いてねーよ。電話番号しか」
「……電話帳にスペースとるのは無料じゃないんだ」
 沈んだ草間の声に、時哉が囁く。
「貧乏は敵だな。……ところで、先月の光熱費。意外と馬鹿にならないよなあ、光熱費」
 口に出されたのは具体的な報酬額。さらに草間は沈黙した。
 時哉の仕事はやさしくないが、金払いはいい。身元がしっかりしている分、踏み倒される心配や減額される心配も無い。経費も領収書をそろえて提出すれば、報酬に上乗せされるはずだ。 
 考えて、考えて――事務所の経費も考慮に入れ――妥協案を下す。
「……水道代も含めろ」
 情けないとは思いながら、草間は応じた。
 時哉とは以前にも取引がある。怪奇探偵とまで言われる草間だが、性格は怪奇ではない。身元のしっかりしている確実な酬額を得られる依頼を逃す理由はなかった。
「オッケイ。じゃ、よろしく。通報者がわかったら連絡してくれ」
 了承をとりつげると、用件は済んだとばかりに時哉は電話を切ろうとした。
「待て。探すのは通報者だけでいいのか。犯人はどうする気だ」
 その気になれば、時哉は自分で人材が集められるはず。それを草間は知っている。
 情報屋兼仲介業を、高校2年の若さで継ぐことになった少年。
 いかにも教師の好みそうな優等生じみた表の顔と、人当たりの良さを上回る、欺瞞と利己的な傍観主義。時哉は、2年前に初めて会ったときから、そういう少年――今は青年と呼ぶべきかもしれないが――だった。
「おまえは自分から動いて解決するタイプじゃないが、他人任せも好まないだろう? それを、どうして俺によこす?」
「だからさ……」
「何をしたい。何を見たい?」
「―― そういうことを、いっぺんに聞くなって」
 苦笑して、時哉は答える。
 探すのは通報者だけで構わない。なぜなら、犯人と通報者の間には何らかの関係があると想像をつけているから。
「ついでに店の外で警察が張っててさ。ちょっとまずいだろ、じたばたすると」
 犯人じゃないのに犯人と間違われかねない。だから、今回は外注することにしたんだ。
 くつくつと笑う時哉は、心から楽しそうだった。
「あ、そういや連続殺人らしいぜ、この事件。俺が2日にして早々に解放されたのも、そのせいだろうな」
 フィリップ・マーロウを目指してみろよ。
 そう告げて切れた電話の受話器を、苦々しく思いながら草間は眺めていた。


     ■  □  ■


 どこか懐かしさを感じさせる店内。
 それは、大正か昭和初期の、戦前を懐かしむような古き良き時代の。
 この店に訪れるのは、正直、初めてではない。夏野・影踏(なつの・かげふみ)は、草間興信所に調査を依頼した店に限りなく似て異なる店、つまりは【紺青茶房】にいた。以前に災難にみまわれた店なので、なんとなく居心地が悪い……ということはなく、あっけらかんとカウンターに座っている。
 よれたシャツも無精髭も、お菓子のにおいがする店の雰囲気から激しく浮いてはいたが、志賀・哲生(しが・てつお)もあっさりと座っている。物怖じしていては探偵はつとまらない。
 いちばん居心地悪そうにしているのは、時哉だった。
「おまえ、なんで昼間から仕事してるんだ?」
「とりあえず、ソルティドッグひとつ」
 哲生が怪訝そうな顔をすると、時哉は、うんざりしたように溜息をついた。影踏の注文を聞いて、さらに溜息をつく。
「こちらは喫茶店ですので、アルコールは御用意しておりません。アイリッシュコーヒーなら御用意できますが――未成年が酒場の店主やってると、色々都合が悪いんだよ。特に今は」
 手元だけは休みもせずにグラスを洗いながら、言い返す。
「おまえ、未成年だったのか」
「汚れ無き19歳」
 哲生が驚き、きっぱりと時哉が言い返せば、
「それは嘘だろ」
「大嘘つくなって」
 2人から同時に突っ込みが入る。
 それを見ていた【紺青茶房】の店主は、楽しそうに微笑した。
「おかげで夜の分は赤字ですし、昼間に働いてもらっているんですが――さて、お客様は、あなたに話があるようですね。休憩に入ってもいい構いませんよ、時哉さま」
「こんなときまで『さま』つけんなっ。嫌味だろ、それは!」
「ええ」
 絵に描いたような営業スマイル。
 哲生が、ぽんと時哉の肩に手をおいた。
「ご苦労様だな。――で、話なんだが」
 ずかずかと荒い歩調でカウンターの中から出てきた時哉に、一転して真剣な表情になる。
「まずは、おまえの匂いをかがせてくれ」
「――ああ!?」
「死体と同衾したんだろう。なんて羨ましいことをやらかすんだ。あの、息もない、動きもしないのに美しさを残した肢体。やわらかな肌は冷たくなるにしたがって蝋のように見え、生きているときとは違う甘い芳香が――――やべぇ、想像してたら色々と――――トイレはどこだ」
「……何をしにきたんだ、あんた……」
 がくりと脱力する時哉。
「安心してくれ。今のは冗談だ」
 誰が見ても本気としか思えない表情で、哲生が言い放つ。
「真顔で言われても、限りなく疑わしいけどな」
 時哉の感想は、尤も。
「女の死体じゃなくて残念だったな。女だったら――いや、それはともかく」
「そうだ。男もなかなか捨てたもんじゃないぞ。個人の趣味だから別に薦めたりしないが」
 横合いから影踏が割りこみ、話はさらに脱線する。
「性別で差別しちゃいかーん、と、俺は思う」
「そうだ。生死で差別するものじゃないぜ」
 果てしなく噛みあわない会話。
「…………いや、だから何をしにきたよ、あんたら…………」
 哲生、影踏の2人から、わざわざ席をひとつ空けて座った時哉がカウンターに突っ伏した。

 15分後。
 どうにか意識を浮上させるのに成功したらしい時哉が、身をおこす。
 その間、哲生は店主と死体談義に花を咲かせ、影踏はソルティ・ドッグの代わりにケーキを2個食べきった。
『――つーかな。隣で変死体やらミイラの作り方の話やらされて! その向こうで元気よくケーキ食われて! ひとりでぼこぼこ落ち込んでられるような状況じゃねえってんだよっ。どーにかしろよ、あいつら!』
 とは、後の時哉の発言だが。
 店主が妙に法医学だの解剖学だのに詳しかったのが、拍車をかけた原因だろうか。快楽殺人を起こす人の脳の動きや仕組みを解説されていると、教育番組でも聞いているような気分になってくる。
 そんな理由で、落ち込むのはやめたらしい。
「それで、何が聞きたい」
 もはや手っ取り早く終らせてしまえとばかりに時哉が向き直った。
 3個目になるモンブランにフォークを突き刺し、影踏が首をひねる。
「とりあえず論理的に、非科学的な可能性を排除して」
「ああ」
「……まず疑わしいのは、お前だ」
「ちょっと待て」
 どこが論理的なんだと椅子から立ち上がりかけた時哉の前で、哲生が呟く。
「素直に考えれば、通報者の女が犯人ないし、真犯人を知るものということになるが……さて」
「さてって何だよ」
「その晩の自分の足取りを追ってみたらどうだ?」
 常識的な哲生の意見に、だが、時哉が首をふる。
「無理だ」
 はっははーと、妙に乾いた笑い声。
「仲間ってほどでもねーじゃん。単に学科が同じってだけだしな。それはともかく……本当に憶えてないんだ。きれいさっぱり。そもそも、4次会でどこ行ったかも知らないしな、俺――飲んでたのは憶えてるけど」
「周りに聞けばわかるだろう」
「それは警察がやってくれたよ。なんでも、とりあえずは4次会で解散して――ファミレスで朝食が5次会だったって話だけどな。俺は4次会で帰った――らしい。どうやら」
 どれだけ飲んだんだと突っ込みかけて――哲生は気付く。
「未成年?」
「さっき19って言っただろ。今年で成人」
「―― それは、酒を飲んでいい年じゃないだろう」
 さすが、元・刑事(一応)。
 至極まともな―― それを言った当人がまともかどうかはともかく――意見に、時哉がふと目をそらした。どこか遠くを見るように。
「なあ、いまどき、飲み会もやらない大学があるかよ。高校の卒業打ち上げでさえ、酒飲んだぞ、俺」
「わかる。わかるぞ。俺も20歳前から飲んでるもんな。――そうか、わかった。答えは、お前か男が、無意識で女に化けるとかできたんだ。だから、通報者は――いだっ」
 無言のままで蹴りを入れた時哉を、影踏が涙目で見上げる。
「痛いじゃないか。時哉くん。―― それなら、怨霊で」
「次は鳩尾ねらうぞ」
 年が近いせいか、掛け合い漫才の様相をていしてきた2人を眺め、コーヒーをすすった哲生がぽつりともらす。
「若いってのはいいねぇ……」
 そういう哲生も、最初に飲酒をしたのが20歳前だったりするわけで、あまり人のことを言えた立場ではない。
「連続殺人だって言ったな。他の事件でも通報はあったのか?」
「もちろん。さすがに証拠までは入手してないけど、これでも情報屋兼だぜ。そのあたりまでは自分で調べたさ。被害者はなぜか全員が男。ここ数ヶ月の間にラブホテルで死んだのは俺のを含めて5件。全部、女の声で通報あり」
「ひととおりは調べたのか」
「言ったろ。俺のとこは情報屋兼なんだって。何も知りませんじゃみっともねーじゃん」
 時哉はそれから、死亡者の名前と死因をあげていった。職業、交友関係、愛人の有無。さらには、行きつけのクラブから、いつも指名するホステスの名前まで調べ上げているあたり、警察よりも行動は素早いかもしれない。
「それでも、被害者の接点が男ってこと以外出てこねーんだよな」
「見落としがあるんじゃないか」
「あっても気付かなきゃ、一緒だろーがよ」
 外は見ただろ? 警察の車が四六時中見張って後ついてくるから、自分で動き回るわけにもいかないじゃん。ほら、殺人容疑ははれてるけど、飲酒で厳重注意くらってるし。
 苦笑しながら時哉が続ける。
 自分で人に依頼したくても、この手の仕事に関わってくれそうなのは、夜の――【揺籠】の客たちだ。
 営業を再開できないことには、調べようがない――結果、草間興信所に依頼を出したわけだが。
「じゃあ、時哉くんが女装して――」
「まだ、言うか」
 興味はあるが、シリアスムードに耐えられないらしい影踏に、時哉が冷たい目をむけた。
「身長180こえてる男が女装して何が楽しい。見た目にも麗しくない!」
「化粧によっては意外と」
「冗談だろ。口紅は不味いんだぞ」
 ―― そういう問題でもない。
「まったく。埒があかないな。ひとまず、現場に行ってみるか」
 溜息をつきながら、死体が見つかったベッドで寝てみたいなどと、やはり本気で思いつつ、哲生が腰をあげる。
「おう。時哉くんは?」
「警察にはられてるから動かない」
 哲生は訳知り顔にうなずいた。
 時哉が動けば、この店をはってる連中も動くだろう。聞き込みをしたり探ったりと動くのに、糸は不要だ。
「それが正解だ。じゃあ行くか」
 当然、一緒に行くつもりだろうと影踏を見れば、いきなり目の前にばっと両手を突き出された。
「見たように、俺の手はクリームでべたべただ。だから、洗ってくる」
 マロンクリームのついた指をなめながら、影踏がトイレへ消えて――見計らったように時哉が動く。哲生の側へ。
「あんた……志賀だったか」
 すっと哲生の肩口に顔をよせた。
 哲生は、身長こそあるものの、まだ少年の細さがぬけきらない時哉の肩を見ていた。
 その肩に、消えない死の『匂い』がまとわりついている。それは、時哉がまだ、この事件に関わりつづけていることも示していた。完全に手をひいてはいない。哲生はそれを再認識する。
 口当たりに反してアルコール度数の高いカクテルを口に含んだときのような軽い酩酊感は、首をふって追い払った。
「嫌な予感がする。俺は『視る』のが仕事だからな……あんたの力は判る。多くは言わない。引きずられるな」
 影踏と遊んでいたときとは、うってかわった静かな口調だった。
 冗談を含まない口調と――視線。
「むこうは大丈夫だ。名前に反して、影に踏み込んでくようなタイプじゃない。でも――あんたは違う。むこうより、あんたの方がずっとヤバそうだから――たぶん、相手の女も」
「おまえ……」
 哲生が何かを言おうとする前に、時哉は離れた。
 トイレから戻ってきた影踏が、2人を見る。
「時哉くん。男に目覚めたのか」
「誰が目覚めるかっ」
「いや、今、こうよりそってたし」
「誰がいつどこで、地球が何回まわったときだ?」
「……時哉くん、すっごく大人気ないぞ」
 軽口をたたく2人を見ながら、哲生は薄く笑んだ。視線は床に落ちる。
 言葉で言うほど――引きずられないってのは、簡単じゃねえんだよ。
 そっと、胸の内に囁いて。



 夕方も過ぎて合流した女性は、名前を綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)と言った。
 ひとことで言えば、クール。
 パンツスーツも颯爽として、涼やかに格好いい。
「関わってしまった以上、気になりますので。よろしくおねがいします」
 すいと頭をさげる相手に、好印象を持ったのは、哲生も影踏も同じ。
「今までに判ったことはありますか?」
「ホテルの従業員は関係ないってことくらいか。全員に会ってみたが、被害者の死に関わってそうな奴はいなかった。近くを聞き込んでもみたが……事件のあった夜に、有志を見た憶えのあるやつさえいなかったくらいだ。ホテル街だから、人の顔を注視しないって言えば、それまでなんだが」
「そうそう。聞き込みして気付いたけど、俺もホテル行くとき、すれちがう奴の顔なんかじっくり見ないよなぁ」
 よっぽどの美人なら別だけど。
 そう付け加えた影踏の言う『美人』に、男性と女性の両方が含まれていることは、秘密。
「有志が泊まった部屋ものぞいてきたが――あそこは、ベッドが変わってるな。まったく、惜しいことをしてくれる」
 哲生が足元の小石を蹴る。
 おそらく、惜しいと思うのは哲生か死体愛好者か、またはホテルの経費節減をうたう管理者だけだろうが。
「綾和泉さん――か。知ってることは?」
「ヒントになるかは判りませんが、草間興信所に依頼してると聞きましたので、連絡をとってみました。事務所は留守だったので、シュラインさんの携帯にですが……それで、ヒントは『チェス』とのことです」
「あ。知ってる。人間がコンピューターに負けた」
 雑学には豊富な影踏が、ぽんと手をうった。
「はい。それで思い出したんですが、鏡の国のアリスは、ご存知ですか?」
 一応は、不思議の国のアリスの続編ということになるのだろうか。ルイス・キャロルの小説である。
 話の中で、アリスは白の歩兵だ。それが赤の女王を倒し、最終的には王手をかけられる局面までもってゆく。これはチェスボードの上で再現もできる。
「普通、駒の色は黒と白なんですが、あの中では、『赤』と『白』になっているんです。殺した方法などは聞きましたが―― それで少し気になってしまって。1件目と3件目だけが、血が出る方法で殺されているんです」
 つまり、赤く――。
 その光景をリアルに想像してしまった哲生が、ふらりとよろめいた。 
 死。死。死。死――。
 喉が渇く。影踏も汐耶も気付かなかったが、哲生は完全に酔い始めていた。
 時哉から始まって、今日はあまりにも『死』に近付きすぎている。人が死んでから間もないホテル。死体を見た従業員。強くはなくとも、そのどれもが死の芳香をただよわせていて……自分が止められなくなりそうだ。
「だけどさ、それだけわかっても」
「ええ」
 口をとがらせた影踏に、汐耶が肯いて続ける。
 シュラインさんの話では、葛生・摩耶(くずう・まや)さんが情報をくれたそうです。
「次の殺人が起こりそうな場所があると言っていました。行ってみますか?」
 汐耶の問いに答えたのは、影踏ではなかった。
「ああ。すぐに行こう――」 
 とろりとした目で、哲生が笑った。


     ■  ■  ■



 ねえ、知っている?
 ――女はね、月の生き物なのよ。

 男の腕に、自分の腕をからめて女は微笑む。
 化粧気の少ない女の、不意をついた蠱惑的な微笑に、男は陶然とした。
 見下ろす白い首筋からたちのぼる、甘い香水。

 今宵は既月。
 細い月は西の地平へ消えてゆこうとしていた。



     ■  ■  ■


「うーん。死のにおいが近付いてきた……ああ、いい匂いだ……」
 かつかつと、路地にヒールの足音を響かせる汐耶の背後で、哲生がうっとりと呟いた。
 アスファルトを踏んでいるはずの足元が、妙にふわふわとしているような気がしていた。
「……何者ですか?」
「や。俺も知らない」
 汐耶にじっと見つめられて、夏野・影踏(なつの・かげふみ)は首をふる。
 まだ僅かな時間しか付き合ってない汐耶よりも、既に数時間も哲生に付き合ってる影踏の被害は甚大だった。
 法医学の基礎から始まって、様々な死体と死にかけの人間の話をえんえんと聞かされるのは、もはや拷問と言ってもいい。いや拷問と言うべきだ。それ以外のなんだと言うのか!
 元は、被害者の死体がどう処理されるのかが気になって、元は刑事だったという哲生に、変死体がどう扱われるのかを尋ねてしまった影踏のミスなのだが、聞かなくてもいいことまで聞いてしまった。
 おかげで、1ヶ月はハンバーグが食べられなくなりそうだ。
 何かを言い返さなきゃだめだと――まだ何を言い返すか、まったく決まってなかったりしたのだが――影踏は拳をぎゅっと握る。口を開きかけたとき、哲生が急に立ち止まった。
「死体のにおいだ……」
「――『死』じゃなくて、『死体のにおい』ですか?」
「ああ。間違いない。行くぞっ」
 言うが早いか、哲生が走りだす。仕方ないとばかりに、汐耶が後を追う。
「うぅあぁっ。ちょっと付き合いよすぎだぞ、俺っ」
 後を追いつつ、影踏がやけくそぎみに叫んだ。

 路地を走り、少し広い道へ出る。
 哲生の目は女を――たったひとりの女を捕らえていた。
 ホテルの屋上に立ち、白い肌を惜しげもなく露出させた――香水のように死の『匂い』を身に纏わりつかせる、ひどく危険な気配の女を。
「あの女がやばいのか!?」
 走ったせいですっかりあがった息を隠すこともできず、影踏が哲生の視線がむいた方向を見る。
 そして――少女2人の姿を目にした。
「ああああ! えっと、そこの女の子! 銀髪と黒髪のっ!」
 きょとんとして海原・みあお(うなばら・―)が立ち止まる。隣に長い黒髪の少女――草間零をつれて。
 どこかで見たような気がしたがそれどころではなく――哲生と影踏は、ほぼ同時に、そして蒼褪めた顔で叫んだ。
「逃げろ!」
「え?」
 哲生が叫んで駆けだす。
 死体はいい。死体を見るだけで、愛情さえ感じる。少女の死体写真も持っている。だが――目の前の少女たちに死の『匂い』はない。彼女たちの本来の死期は、まだ遥か先だ。少なくとも哲生が感じ取れないほどに。
 その遠いはずの死期が無理やりに捻じ曲げられようとしている。
 刹那、少女たちが死ぬのを想像した。
 紅い血溜り。むせかえるような血臭の中で、甘い香りを発しながら死体になっていく少女。
 それをつぶさに観察していたい。間近で。その鼓動が止まり、生気にあふれた瞳が濁っていくのを見ながら――。
 想像に流されかけながらも哲生は――情景をふりはらって叫んだ。
「いいから、全力で逃げろ!」
 哲生が繰り返し叫んだ瞬間、女が無造作に足を踏みだす。屋上の端に立っていた女は、当たり前に落ちた。
 そして――落ちたスピードのまま。路上に着地する。みあおの目前に。
 左手に持っていた銃がみあおに向けられ――庇うように零が飛びだす。みあおと握っていた手を後ろにひいて。
「きゃああああっ」
 銃声は悲鳴でかきけされた。
「タナトス!」
 哲生が叫んで、不可視の鎖を女へと絡みつかせ――顔をゆがめた。
 ひとりの女が放つとは思えないほど、濃密な死の気配。息苦しくなるくらいに甘ったるい、死の『匂い』。
 それが、鎖をつたわってくる。
 逆浸入だ。
 誘惑されそうになる。いや、もうとっくに誘惑されていたのかもしれない。
 哲生は、訪れた目眩に瞼を強く瞑った。
 その瞬間、ふいに女の気配が薄れる。慌てて、女と自分の手に絡み付いているはずの『鎖』をひいたが、遅い。
 何かを締めるような感覚を手に残したまま、目を見開いたときには女は消えていた。
「しっかりしろって」
 影踏に背中を叩かれて、我に返る。
「――あの女は」
「消えた……てか、沈んだ。水の中に落ちるみたいに、アスファルトなのに……」
「そう、か」
 あれは、死だ。
 哲生は認識する。
「零ッ!」
 かけつけてきた草間が、妹に呼びかけていた。
「武彦さん、揺らさないで!」
「あ、ああ。わかってる……零!?」
 シュライン・エマに肩を抱かれながら、草間はそっと妹を抱き起こす。
「……草間? みあお……みあおはぶじ……」
「ええ、キミは無事。怪我はないわ。安心しなさい」
 みあおの背を支え汐耶は、言い聞かせるように耳元に囁いていた。その汐耶の指も、小さくふるえている。
(――死ななくてよかった)
 いつか、腕の中に死体を抱いてすごした夜を思う。
 死は絶対の救済。花の匂いとともに体をつつむ安らぎ―― それを否定することはできない。
「えっと、ええ……救急車いるよな」
 所在なさげにしていた影踏が、うろたえながらも携帯を手にすると、草間が首をふった。
「いや……病院じゃなく、事務所に連れてかえる」
「タクシーは無理ですね。私がレンタカーを借りてきます。待っててください」
 汐耶がみあおを気にしながらも立ち上がり、戸惑いながら影踏が後を追った。
 一応、男としてボディガードのつもりなのかもしれない。
 哲生はひとり、手に残る女の感触を確かめるように立っていた。
 人が死ななかったことに安堵する自分もいるのなら……まだ、哲生は、ここにいられるはずだった。
 たとえ――目の前の悲劇が、遠いできごとのようにしか感じられなくても。


     ■  □  ■


(―― 【禍と幸と揺籠】 ――)
 そんな名前だったなと思い出しながら、草間は煙草のフィルタを噛む。
 幸と禍。禍と幸。
 その単語を、ただの順番の違いと、決め付けられるだろうか。
 開店前の店は薄暗く、ざわめきもなく、ただ静かで。
 人が入れば、それなりに幻想的な雰囲気をかもしだすに違いないオレンジ色の灯りさえ、不気味に人の影をゆらめかせる道具でしかない。
 そのカウンターの中に立つ時哉は、あまりにも違和感がなかった。
 いい気分はしなかった。ここに来ることさえ避けたかった。少なくとも今は。
 噛みすぎた煙草のフィルタが、口の中で散切れる。はかったように目の前に置かれた灰皿へ吐き出して、煙草を揉み消した。乱暴に。
「――犯人が誰なのか、気付いてたんじゃないのか、有志」
 草間は、調査報告書を持って時哉を見る。
 調査を請けおった興信所としての義務感だけで。
「最初から知ってたのか。犯人を」
「まさか」
 信じないとばかりに厳しい目で睨まれて、時哉は天井を仰ぐ。
 口にしているのは、本心から誓って事実なのだが、信じてもらえないのは仕方がない。
「まあ、いちばん楽で昔からある手じゃん。殺した本人が警察に通報するって」
 あれから――零が撃たれた夜から数日がたち、警察の捜査も前よりは進んでいる。
 だが、『進んでいる』と、『捗っている』は、イコールではない。
 通報に使われた携帯電話の番号は判明したが、プリペイド式の携帯電話を手に入れる術はいくらでもあり、入手ルートを特定するのは至難の業だと、馴染みの刑事が教えてくれた。
 所有者の名前はわれたのだが、予想どおりというべきか――実在しない架空の名義だった。
「……有志」
 どうして、それを最初に言ってくれなかったかと詰問しかけて、やめる。
 答えは簡単に想像がついた。
『訊かれなかったから』
 返る反応は、おそらくそんなところだ。
「飲めよ」
 草間の前に、音をたてずに湯気をたてるグラスが置かれる。
 温められた赤ワイン。いや、チェリーの香りが――わずかにするか。
「その顔色で帰らないほうがいいぜ?」
「誰のせいだと思ってる」
「俺は、草間興信所に依頼を出した。あんたは依頼を受けて調べたんだ」
 草間は調査書をカウンターに放り出し、立ち上がった。
 乱暴な動作に倒れた椅子の音が、耳につく。
「飲んでいかないのか?」
「誰がいるか」
 歩幅を大きくして、扉に向かう。振り返ることはおろか、椅子を直しもしなかった。
「―― 志賀は気付いたんだけどな」
 小さく笑いながら椅子をおこす時哉の声を聞いたのは、その本人と、誰もいない店内だけだった。



「ちくしょう……」
 散らかったテーブルの上に投げ出した新聞。
 1面に殺人事件の記事があった。
 警察は、ここにきて正式に連続殺人と断定したらしい。おかげで、マスコミも一気に加熱したようだ。
 状況は今までとあまり大差ない。
 やはり場所はホテル。死因は溺死。バスルームで洗面台に頭を突っ込んだ形で発見された。被害者は僧侶。今までと同じように発見時に人が一緒にいて、今度は女。
 新聞では、飽きもせずに『堕落した聖職者』だのと語られているが、なんのことはない。あの女の死臭に巻きこまれただけなのだと、哲生は知っている。
 そもそも、僧侶はサービス業で、聖職者ではないのだが。
「あの日は牧師……今日は僧侶。キーワードは、チェス……」
 何かが結びつくようで、うまく結びつかない。
 ピースが足りなくて組みあがらないパズルのようだ。
 だが、哲生にもひとつだけ、確実に判ることがある。この連続殺人は終っていない。
「……いつまで続くんだ……」
 考えれば、背筋が冷える。
 恐怖ではなく。もっと――狂おしい、愛情のような。焦燥に。
 あの時、死そのものが形づくったような女を前に、『鎖』でさえ通じなかった。
 通じないどころか、逆に遡ってきた。
 死の冷気が。
 『鎖』に巻きつくように。
 逆流して遡って――もう少しだけ、あの冷気がこちらまで来ていたら――腕に絡むところまで近付いてきたら、巻きつかれていたらどうなったのだろう。
『多くは言わない。引きずられるな』
 時哉は言った。
『引きずられるな』
 言葉にして、たった7文字。その7文字を堪えるのが、どれほどに難しいか。
「あの女――」
 哲夫は、感触を確かめるように手を握る。
 最後に鎖を引いたとき。
 柔肌に食い込むようにして消えた、あの『死』の感触が手から消えない。
 誰かを絞め殺せば、あの感触を味わうことができるのだろうか。それとも切り落とせば?
 思考はぐるぐると回り、柔らかく緩慢な死を想像する。
 目を閉じれば、脳裏に浮かぶ女の微笑が。白い肌の中、そこだけが印象に残る紅い唇が。
 ――哲生を、「こっちへおいで」と誘っているかのようだった。


     ■  ■  ■



 パステルカラーのパンプスだった。
 唇はピンク。ピアスの耳元に、淡いトルマリン。
 薄いグレイのスーツは、しなやかな女の体の線を強調しつつも、下品ではなかった。
 片方の肩にかけた大きめのバッグが、仕事がえりのOLを思わせる。
 擦れ違いさま、肩のぶつかった男性に微笑みをむけて、女は駅の階段をのぼった。
 8センチのヒールの足元が、音もたてずに歩くことに誰も気付かない。
 帰宅時間にさしかかり、混雑するプラットフォームで、女は下りの電車を待つ。
 さして待つこともなく入ってきた電車の混み具合に疲れたような溜息をひとつおとして、乗りこんでいった。
 そのまま、何事もなく電車は動きだす。
 プラットフォームのゴミ箱に、もう、いらなくなった携帯電話を残して。


 この日――都内のホテル数件において、殺人事件があった。
 通報は、高く澄んだ女の声。
 謳うように、ゲームの終わりを告げた。

「Game Over。もう厭きたわ。時間切れよ」

 ――時計は、18時12分をさしていた。





                                  ― 了 ―



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                        ≪ 草間興信所 依頼報告書より、抜粋 ≫


  依頼人 :
    有志 時哉 (ゆうし ときや)

  依頼時刻 :
    3月21日、午後10時。依頼人より入電。

  依頼内容 :
    依頼人が巻き込まれた殺人事件の通報者について素性を調べてほしいとのこと。
    尚、犯人については調査の必要がないことを確認。


  事件内容 :
    3月16日、午前5時39分。
    所轄警察署に直接、女性の声で「死体を見つけて」との通報が入る。
    この時、女性はホテルの住所・名称・部屋番号も告げている。

    同日、午前5時47分。
    通報を受けた警察は都内某ホテルにて、男性の死体を発見。
    同室に宿泊していた依頼人を重要参考人として任意同行。
    男性の名は川本則夫。満42歳。
    検死によれば、死因は頚動脈に注射された高濃度の農薬による中毒死と判明。
    使用されたと思われる注射器は、同室のゴミ箱より発見された。
    科捜研にて詳しい鑑定を試みるが、指紋、その他の証拠物は発見されず。
    その後の調べにより、川本は名古屋に本社を持つ会社の社長であると確認された。

    死亡推定時刻は午前2時〜3時。
    重要参考人と目されて取調べを受けていた依頼人だが、その時刻、都内のカラオケスタジオにいたことを、
    店舗スタッフを含めた複数の人間が目撃しており、また、同カラオケスタジオから殺害現場のホテルまでは
    往復で40分程度かかることから、依頼人は容疑者から除外された。


  依頼された通報者の素性について :
    警察に残されていたテープから声紋鑑定した結果、間違いなく女性の声と確認。
    変声機等を使っていた痕跡は確認できないことから、肉声と思われる。
    警察の聞き込みに同行していたシュライン・エマも同一の声と明言している。
    また、通報者本人と接触し、携帯から警察に事件を通報する現場にいた葛生摩耶がテープの声を確認した
    ところ、声の他、話し方のアクセントや特徴がよく似ているとの判断を得た。

    数分後、通報者と思われる女性は、海原みなも、草間零を襲っているが、理由は不明。
    銃の種別は特定できなかったが、その場に残された弾丸から28口径の銃と判明。
    少女2人が襲われる現場にかけつけた、志賀哲生、夏野影踏の両名だが、女性の年齢は20代後半、髪を
    長くのばした、売春婦にも見えかねない格好であったと証言している。
    志賀哲生が強く主張したところによれば、少なくとも女性は数十名を殺した経験があるはずとのこと。

    海原みなも、草間零を襲ったあとの女性の行動については、確認ができていない。

    襲われた海原みなもは恐慌状態に陥っており、シュライン・エマも止血に集中していた。
    通報者と接触した葛生摩耶は、その際に銃で撃たれており現場を引き上げている。
    志賀哲生は、女性と接触した直後から酩酊状態に陥り、3日間、二日酔いの症状が続いた。
    血中からアルコールの検出されなかった志賀哲生が酩酊状態に陥った理由は解明できていない。

    女性を注視していた綾和泉汐耶、夏野影踏の両名は、女性が水面にでも沈むようにアスファルトの路面へ
    沈んで消えたと証言しているが、こちらも他の目撃者はなく確認はとれていない。
    尚、女が沈んだとされている場所の地下数メートルに、廃棄された地下道があることが判明。
    警察では現在、両名の証言との関連性を調べている。


    これらのことから、通報者の女性=犯人である可能性が高いと思われるが、銃を所持していながら、殺害に
    銃を使用していない理由は、未だ不明である。





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     登場人物 (この物語に登場した人物の一覧)
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生
 1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 都立図書館司書
 1979 / 葛生・摩耶  / 女 / 20 / 泡姫
 2151 / 志賀・哲生  / 男 / 30 / 私立探偵(元・刑事)
 2309 / 夏野・影踏  / 男 / 22 / 栄養士

 NPC  / 有志・時哉  / 男 / 19 / 大学生/【禍と幸の揺籠】の店主
 NPC  / 桔梗 (仮名) / 女 / 年齢不明 / 職業不明

 ※ 整理番号順に並んでいます。

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     ライターよりのひとこと   (ライター通信)
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 那季・契と申します。
 納品物に一部不完全な部分がありましたので、改めて再納品させていただきます。

 起こっている事件自体は、他の方のものと変わっておりません。
 全く同じです。
 興信所依頼らしく、最後に報告書(らしきもの)も付けさせていただきました。

 桔梗の作ろうとしたチェスの版面と殺した順番の理由については、
 異界、【禍と幸の揺籠】内において、2・3日中に詳細を掲載させていただきます。
 もし宜しければ、御覧になってみてください。

 ちなみに、時哉が事件に巻き込まれたのは3月16日。
 時哉の依頼を受けて、皆様が行動を起こしていたのは3月22日。
 そして、エンディングの事件が起こったのは、3月29日です。
 どうして通報が18時12分なのか気になる方は、月齢を調べてみてください。
 ―― 蛇足ですが、時哉の事件の通報は12時35分でした。

 最後に。
 私個人の都合が重なったとはいえ、納期から10日以上お待たせする形になってしまいまして、
 綾和泉・汐耶さまと夏野・影踏さまには、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。

 本当に御参加いただき有難うございました。


---◆ 志賀・哲生 さま ◆---

 初めまして。御参加ありがとうございました。
 もしお気に召しましたなら、今後とも宜しく御願い致します。

 夏野・影踏さまとおふたり一緒の行動になっておりますので、
 他と比べて若干、長くなっております。
 ……序盤、延々と続く会話のせいかもしれません。
 いちばんコメディタッチだと思います。たぶん。

 ちなみに、「女」の名前は、桔梗ですが、おそらくは通称です。
 ですが、桔梗はどんな『匂い』でしたか……。
 私が思い出せずにいます。(をい)
 私事ですが、百合の匂いは確かに気分が悪くなり……。
 本当に強すぎるんですね、あの匂いは。
 イメージとしては、彼女は紫よりも紅い花なんですが。

 では、哲生さまが踏みとどまれることを祈って。
 ……踏み出してしまえば、また別の幸せがあるのでしょうが。

 そして、思わず死体博物館サイトめぐりしてしまいました。





        那季 契