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<東京怪談・PCゲームノベル>


|Д゚)ノ かわうそ?追走劇 トール編

 10歳にして科学者のトール・ウッド。
 ひねくれているが、天才と言うことは確かなようだ。証拠にかなりの特許を持っており生活に困ることはないらしい。博士号を取っているかもしれない。
 メイドロボ零式がジュースとケーキを運んできた。
「ありがとう」
 ある写真を見ながら、彼はジュースを飲む。
 零式に装備していたカメラの映像を写真にしたのだ。
 其処には、1匹のナマモノ。
 そう、草間興信所の騒ぎでよく見かけるかわうそ?だ。
生物学的にも不可思議な生き物。好奇心旺盛な科学者である彼(また、子供であるし)が、このナマモノを無視するわけにはいかない。神出鬼没、会話も出来る、噂では料理は一流。だいたい、自分の名前に「?」を付けることがおかしい。
 彼は立ち上がった。
「よし、今からかわうそ?を捕獲研究するぞ!」
 これが、彼とかわうそ?にとって災難な日になる。


 かわうそ?は運送業のバイトをしていた。軽トラックにかわうそ?が乗っているようだ。
「かわうそ?次は3丁目の田村さんちだ」
「あい」
 そして、彼の昼のバイトは終わった。
「労働の汗、気持ちいい」
 そう言って、OMCビールを飲む。のど元爽やか。
「ぷは〜!」
 気持ちが良いらしい。
「さて、次〜」
 かなりの働き者だ。

 そこから10メートルもしない距離でトールがいる。その後ろに零式が居る。
「零式、熱光学迷彩で接近し、かわうそ?を捕獲だ!」
「ハイ、マスター」
 零式はとたんに姿を消した。ステルス機能も付いているとは驚きである。
 5m……4……3mと接近し、上手く捕獲領域にはいった。
「いまだ!」
 かわうそ?の後ろから零式が彼を捕まえようとする。
 しかし、其処にはいるはずのかわうそ?はいない。持っているのは…生ゴミだった。
「隠れ身の術!?」
 遠くで驚くトール。
 生ゴミの袋が破けたため、近くに群がっていたカラスが零式を突き始める。
「零式急いで戻れ!!」
 零式は彼の言うことを実行する。何と生ゴミを持って。
「こらー!生ゴミはゴミ捨て場に〜ぎゃあ!」
 零式は痛みを知らないアンドロイド、カラスの襲撃と生ゴミの悪臭に耐えることは可能だ。しかし、生身のトールはそうではなく、生ゴミの悪臭とカラスの攻撃に遭ってしまった。
 ボロボロにカラスの群れに突かれたトールを見つめている零式。2人の頭に1羽ずつカラスが乗っており、
「あふぉー」
 と、泣いて羽ばたいていった。


「今度こそは!」
 洗浄殺菌消毒を終了した零式に傷の手当てをして貰い、2度目の挑戦。
 今度は商店街でナマモノを発見。近くに公園がある。その公園は、かなり広くてサッカーグラウンド並である。
 彼の作戦は零式のF1並のローラー移動でその公園に追いつめる事らしい。
「行くぞ、零式!」
「ハイ、マスター」
 足裏からローラーを出し、零式はかわうそ?に向かっていった。速いのに何と静音機能つき。見事にかわうそ?を捕獲した。
「やった!」
 零式に捕まえられたかわうそ?は
「いやー、いやー」
 と、泣き叫ぶ。
「マスター、オマチデス」
 零式は淡々と言っている。
 かわうそ?は口を大きくあけ、零式の腕に噛みついた。
 ――内部は金属で出来ているアンドロイドに無駄な事を。
 トールは笑ったがそれは3秒で思考停止する。
 ナマモノは……零式の腕を噛み切ったのだ。
「そ、そんな馬鹿な〜!?」
 愕然とするトール。
 ナマモノはトールの居場所を確認し、食いちぎったアンドロイドの腕に何か細工して、放り投げる。
 ――爆発音。
 黒こげ、アフロになったトール。既にかわうそ?は零式の手には居ない。
「ダイジョウブデスカ?マスター」
「な、なんとか…」
 と、やせ我慢するもその場で倒れ気絶した幼き科学者だった。


 興信所近くの喫茶店。其処に零とエヴァが茶を飲んでいる。
 ――実に奇妙な風景だ。
「どういう風の吹き回し?姉さんから誘うなんて」
 エヴァが零に訊いた。
「えっと〜何となく」
「何となくって……姉さん……少し変」
「そうかなぁ?姉妹というならこんな事があっても不思議じゃないと思うんですけど?」
「……いくら、同じ霊鬼兵でも敵同士よ、姉さん?」
 今日の零はどこかおかしい。姉(仮)が何を考えているのか分からないエヴァは悩んでいた。ただ、何気ない会話をしたいと思っている零なのだが。まだエヴァには理解不能のようだ。
「ここのコーヒーが美味しくて、淹れ方マスターしたんだよ、エヴァ」
 にっこり笑う零。
 ――ああ、そう言うことか。
 草間がコーヒーに拘る事、興信所のコーヒーが旨いのは草間の拘りの店があって、更に草間自身が自分でコーヒーを淹れるから、零も必至に覚えたのだとエヴァは思った。
「あと、パフェが美味しいの♪たまにお小遣いで食べるんだ♪兄さんが奢ってくれた時にね…」
「……へぇ」
 どうやら、姉は普通の女の子(零基準で)になって欲しいのだろう。気持ちはありがたいが、「最強でありたい」という執念が其れを留めている。やはり決着を付けたいエヴァ。
 しかし、零の微笑んで話す姿に其れを口出せない。どうしてだろう?
 悩むエヴァに零は首を傾げる。
「どうしたの?体の具合が悪いの?」
 零がエヴァの額に手を当てようとする。
「いや、何でもないの。た……」
 ただ……自分が何のために霊鬼兵として生まれたのか理由を言いたかった瞬間……、
トールのメイドアンドロイド零式が突っこんできた。
 2人の霊鬼兵は素早く身をかわす。
「な、何!?」
 姉妹は驚いた。
 店中は大混乱。人の悲鳴と掘削音、ガラスや陶器が割れる音。その中で、
「まてー!」
「いやー、いやー」
 と、子供とナマモノの声がする。
「あ、あれはあの時のボーイ!」
 エヴァが言った。そして姉をみる。
「止めないと!」
 零が頷く。
「皆さんが大けがしますし、美味しいパフェが食べられなくなります!」
 その言葉で妹はズッコケタ。
「前者はいいとしてどうしてパフェなのよ!」
 尽かさず突っこむエヴァだが……。
 ……彼女の横から零式の突撃が……、
「きゃあー!」
 哀れエヴァ、零式に轢かれる。
 零式はそのまま方向をかえて……、
「エヴァ!」
 駆け寄ることも出来ない零。それはそのまま零式に轢かれたからだ。
「きゃあー」
 ローラーの後が痛々しく突っ伏す霊鬼兵姉妹だった。

「いやー、いやー」
かわうそ?は逃げる。
「ははは、待つんだ!」
 零式の腕にドリルを装着し、障害物を破壊するトール。
 とうとう、隅に追いやられ絶体絶命のピンチ……。
「おとなしく捕まるんだ、かわうそ?」
「ぷー!」
 かわうそ?は謎の声をだす。
「つかまえろ!零式!」
 命令するトール。
 しかし、零式は動かない。
「ど、どうした!?」
 トールは驚く。
 よく見ると
 ――バッテリーメーターが空と表示されていた。
 つまり、電池切れ。しかも運が悪いことに、今までの追跡劇で携帯していた乾電池は全て無くなっている。
「ぷー!ぷー!」
 ナマモノはいまだ謎の声をだす。此は怒っているのかもしれない。
 ――まったく謎の生き物だ。
「こうなったら……僕1人で……ってあれ?」
 トールがかわうそ?に迫ろうとしたとき体が宙に浮いた。
 何が起こったのか分からないトール。足をジタバタさせる。
「ユーね……」
 どこかで聞いた声。
「お仕置きですね」
 同じく聞いた声。
 トールは後ろを振り向く。
 汚れてはいるもの、傷は一切ない、零とエヴァがいた。2人とも怒っている。
「……や、やぁ!元気?」
「そりゃもう元気よ……」
 顔はもう笑っていない。
「ハハハ、諸君!紳士的に話合おう……ね、ね?」
 だらだら汗をかきながら、説得するも……。
 周りの客も、店員も、其れに応じない。
「姉さん、「オシオキ」ってどうするの?」
「子供のお仕置きって、兄さんの友達から聞いたことがあります」
 零がエヴァに耳打ちする。
「へぇー面白いわ」
 エヴァはニコリと笑う。
「へ?」
 トールはなにもわからず、エヴァにズボンをめくられ……。
 心地の良い、パシーンと音が鳴る。
「いたい〜!」
 彼女に、尻叩きされたのだ。しかも大衆の目の前で。
 その数、108回。暫く立つことが出来ないぐらい腫れたおしり。もちろん弁償等々はトールで、これから多忙な謝罪行脚が始まるだろう。

「ぷー!ぷー!ぷー!」
 未だに怒っているナマモノ。
「だいじょうぶでした?もう心配ないですよ」
 零が手をさしのべる。
 我に返ったナマモノは……一言、
「……はう、こわかった……」
 緊張の糸が切れて、へなへなと倒れてしまった。


 興信所でナマモノはうつぶせで目覚めた。
 目の前に焔が心配そうに見ている。頭に饅頭うさぎのすぴが乗っかっている。
「たれかわうそ?です」
 彼はだらりとなる。
「にゃー」
「すぴー」
「元気になって良かったです」
 零はにっこり微笑んだ。

End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2625 トール・ウッド 10 男 科学者】


【NPC かわうそ? 年齢性別不明 かわうそ?】

※かわうそ?通信。
|Д゚)ノトール、いじめっ子。ぷー!(怒っている)
|Д゚)ノ反省する。ぷー!