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<東京怪談・PCゲームノベル>


|Д゚)ノ かわうそ?追走劇 黒野らせん編

 ――まずはかわうそ?にインタビューします。
 |Д゚)……
 ――なかなか人気物ですが?どう思っていますか?
 |Д゚;)ゞ かわうそ?分からない。
 ――そうですか……。
 
 以上インタビュー(?)でした。
 
 
 ブラック・ドリルガールこと黒野らせんは、暇をもてあましていた。TI社の上司から休暇を貰ったのは良いが、何をすればいいのか分からない。なにせ、試験管で急速成長させられ、TI社独自の戦闘教育プログラムと洗脳を施されいる。一般人として生活する分には差し支えない常識はあっても、娯楽などサブカルチャーは疎い方なのだ。携帯には黒いドリルストラップを付けているがイケてないきもする。
 別段何するわけでもないし、書店に寄って何となく立ち読みか、自分のオリジナルを探し、戦うぐらいしか考えていなかった。
 そんなときである。
 商店街で、小麦色の謎生物が横切ったのは。
 そう、言わずとしれたかわうそ?である。体は他から見ればミンクのようだが…カワウソと言い張っているナマモノ。所構わずいきなり現れる、おかしな生物だ。彼は二足歩行ではなく、四足歩行で口笛(らしい)を吹きながら、散歩を楽しんでいるようだ。
 黒野らせんは……ナマモノの姿をみて、頭に電撃が走った感覚に襲われた。
「か、可愛い……」
 彼女は生まれて初めて生き物が(対象はどうであれ)可愛いと思った。オリジナルがそう言う性格なので、今まで抑えてきた感情が現れたと言っても良いだろうか?
 無意識に、彼女はかわうそ?にゆっくりと近づいていく。かわうそ?も彼女の存在に気が付いた。
 首を傾げるかわうそ?
 ――はて?どこかで見たような?でも違う……。
 と、かわうそ?は思った。
 黒野のほうは、近づいてしゃがみ、
「おいで、おいで」
 と招く。
 かわうそ?は何か危機感を感じたのか、
「ぷ?」
 謎の泣き声を発した。
 らせんと彼の距離は手が届く範囲。
 彼女は手を出して、かわうそ?を撫でようとする。
 しかし、
 カブッ
 かわうそ?はそのまま噛みついた。
「い、痛い……」
 らせんは、引きはがそうとする。かわうそ?は彼女の手を噛むのを止めた。
「機嫌…わるいのか?」
「ぷ」
 謎の返答。
 ナマモノは警戒をしている。TI社の匂いがするからだ。しかし、彼女に敵意はない。彼も困っているのだ。
「なにか用?」
「喋った……!」
 今度はらせんが驚いた。其れもそうだろう、人以外が喋ることは無いと思いこんでいるから。遺伝子操作の怪人達とは会話したことはあるが(約1名即ち、黒いアレは除く)全員人型である。動物ではTI社でなかった。
「かわうそ?喋る」
「珍しい」
 何となく会話。今ならと、らせんは手を伸ばすが……。
 カプ
 ナマモノも条件反射で噛みついてしまった。
 暫くの沈黙。
 ――撫でたい…。
 ――嫌な予感…。
 考えている時間と行動は同時だった。
 らせんがかわうそ?を捕まえようと両手をだす。しかし、ひらりとかわうそ?は身をかわし、信じられないスピードで逃げたのだ。
「まって!」
 らせんも走る。オリジナルと同じように運動神経は抜群だ。更に英才教育と戦闘訓練で基礎能力はオリジナルの其れを上回る。何とかナマモノに追いつき……。
 ダイビングで捕まえた。
「やった!」
 歓喜の声。しかし其れは一瞬にして悲鳴に変わった。
 捕まえたのは体長70ミリの巨大ゴキブリだったのだ。しかも沢山這っている……。
 彼女はショックと怒りのあまり……ブラック・ドリルガールに変身し、沢山の黒き悪魔を殲滅した。商店街にもその被害が及んだので、ひとまず退却するらせん。
 そして彼女はゴキブリに大きなトラウマを持つようになってしまった。


 しかし、彼女はかわうそ?を撫でたいという欲望を捨てては居ない。
「絶対に……あの可愛い生き物を撫でたい」
 頬を赤らめて、拳を握りしめる黒らせん。噛まれた傷はしっかり治療を施した。幸いあの黒いのは害虫種ではなく、海外ではペットとして飼われるきれい好きな種なのだが、やっぱり抵抗感はある。
「しかし、嫌われている以上……、せめて写真を……」
 彼女はTI社製品の高性能デジカメを装備して、かわうそ?を写真に収める事に決めた。
 TI社デジカメ「TC300D」3000万の解像度、耐水性(水深200メートルまで耐える)、耐衝撃(象の群れによる蹂躙でも壊れない)、更には様々な画像モードであらゆる状況も撮れるという、大きさは人気携帯ゲーム並みの出鱈目万歳な小さなものだ。因みに軍用に開発される「TC301W」は武器搭載可能らしい。
 かわうそ?を発見する黒野。距離は100メートル。しかしこのTC300Dには距離など関係ない。相手は気が付いていない。今がシャッターチャンスだ。
「やった!」
 撮影成功して喜ぶ、らせん。うきうきと撮った画像を確認する……が、
「ええ?何故?!」
 映っていたのは信楽焼の狸の置物……。
 まだ、かわうそ?はその場に2足立ちで何かをしている。
「ま、まだ負けないわ!」
 また、シャッターを切る。
 今度は、道頓堀名物食い倒れ人形だった。
 諦めず、何度も撮る黒らせん。しかし撮った物は通天閣のミニチュア、東京タワー、京都タワー、緑のスーツの社長人形、クスリ屋のカエルの置物、有名お菓子屋のマスコット置物、20世紀後半に大ブーム、社会的現象にまで発展したアニメのクローン少女の1/1ポップ、同人界で大人気になったゲームの吸血鬼人形……と突っ込み満載な物だった。
 とうとう、腹が立ってそのデジカメを地面にたたきつけるらせん。悲しいかな、流石耐衝撃は象の蹂躙でも壊れないので傷一つ無い。其れが更に腹が立った。同時に悲しさで悄気る黒らせん。
「嫌われているんだ……」
 カメラを拾い上げトボトボその場を去っていく。
 かわうそ?は彼女の姿を、じっと見ていた。


 |Д゚)……。
 ――すこし、かわうそう……。
 と、かわうそ?はおもった。
「ぷ?にゅう〜」
 謎の声を発して、黒野らせんをさがす。
「いた……」
 工事中の建物、その上で黄昏れているらせんを見つけた。
「お〜い」
 ナマモノは前足を振って呼ぶが聞こえない。
 仕方ないので、かわうそ?は猫か猿のようにらせんが居る頂上をめざす。
 らせんは、夕日を眺めて黄昏れている。
 彼女は涙を流していた。
 戦うためだけに生まれてきた彼女。しかし、独りは悲しかった。仲間や友達が欲しいと、徐々に思い始めた。そうオリジナルの様に。
 ナマモノは彼女の気持ちを察したのか、彼女の背中にもたれかかり、
「ごめん」
 かわうそ?の声は彼女に届いていなかった。聞こえていても幻聴だろう。そして背中にフワフワしたものは幻覚だ、そう思いこんでいた。
 かわうそ?は今彼女にどう接して良いのか分からなくなったので、ため息をつき、1枚自分の写真だけ彼女の背中に貼り付けて去って行った。

 彼女がTI社に戻るまでにその写真を見つけ、涙しながら喜んだのは言うまでもない。しかし、それがナマモノからの贈り物とは考えても居なかった。


End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【2644 ブラック・ドリルガール(黒野らせん) 1 女 戦闘用クローン人間】


【NPC かわうそ? 年齢性別不明 かわうそ?】

※かわうそ?通信。
|Д゚)……ぷ?にゅう〜(それしか言葉が浮かばないようです。今後も防衛反応(かなり理不尽な効果多数)を繰り返すかもしれない不安がぬぐえないのでしょう)