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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


怒りん棒・草間

1.
買い物から帰った草間零は、入り口付近に紙と箱が置いてあるのを見つけた。
拾い上げると、それはどうやら商品を入れていた箱と取説のようだ。
落ちている箱の商品名を見ると『怒りん棒』と書かれている。
・・・だが、箱はかっらぽ。
零はその取説を拾い、読んでみた。

「えーっと・・・商品を頭に装着し、装着者が感情を高ぶらせ5秒後に自動的に棒が振り下ろされます。
 5秒以内に冷静に戻ればカウントはされません。
 『5回棒が振り下ろされる』か『装着者の感情を高ぶらせずに3時間放置』することによってのみ脱着可能・・・」

零は嫌な予感がした。
恐る恐る視線を取説から前方の草間が座っているであろう、いつもの席を見た。

そこには、頭に謎の棒を持った人形を乗せた草間武彦の姿があった・・・。


2.
零によって集められた面々は、それぞれどう口火を切っていいのかわからなかった。
「・・またファンの方々から? 一体誰が武彦さんにそれ被らせたの?」
一番先に口を開いたのはシュライン・エマである。
「そうだ。例によって『全国草間武彦ファンの会』から送られてきた。・・自分で被ったんだよ・・」
語尾に向かうほどボソボソとトーンを落としていく草間。
「・・どうして、こういう妖しげな物を気軽に装備するかな?」
呆れた拍子に柚品弧月(ゆしなこげつ)はつい思ったことを口にしていた。
「まーまー。5回感情を高ぶらせたらええねんな? なら、こういうもんはとっとと取ってしまうに限るワ♪」
押し殺した笑い声に屈託のない笑顔で井上麻樹(いのうえまき)はウキウキと言う・・・が。
「痛いのはダメだってば! あと2時間半の我慢で外れるんだよ? なら耐えるべしです!!」
丈峯楓香(たけみねふうか)が慌ててそんな麻樹を抑止した。
「・・そうねぇ、武彦さん。少し痛いの数回我慢してすぐ外すとの、いつ誰が驚かせるのか微妙な緊張感保ったまま2時間半耐えるのとどっちが良い?」
「・・出来れば殴られるのは勘弁だな」
優しいエマの言葉に、草間は少し考えた後そう答えた。
「甘いですよ、シュラインさん。こんな姿の時に普通の依頼が来たら大変じゃないですか。信用失墜。まさに激貧地獄ですよ? ならば数回の痛さなど耐えられますって」

痛い思いをして短時間で外すか、ゆっくり気長に痛い思いをしないで外すか・・俺なら前者を希望かな。

という思いから、柚品はまず草間よりもエマを説得することにした。
〔将を射るならばまず馬から〕と昔の人も言っている。
「そやそや。柚品さん、ええ事ぬかすなぁ」
麻樹がうんうんと頷きそれに同調した。
「・・取敢えず、事務所の鍵は暫くかけておきましょ。リラックス出来る様、飲物を準備してくるわ」
エマが扉に鍵をかけに行く。
「あ、あたしも手伝いまーす!」
エマの後を楓香が追った。


3.
女性陣2人が去ると、部屋の中には草間・麻樹・柚品となった。
「・・さて、草間さん」
「な・・なんだよ?」
柚品がにっこりと笑い、草間が微妙に引きつった。
「実はシュラインさんに隠れてへそくりとか・・やってませんか?」
「!?」
草間の顔色が変わった。
「シュラインさんって・・ここの所員さんなん?」
麻樹が柚品に訊ねる。
柚品はニコニコと笑い、麻樹に懇切丁寧に説明した。
「シュラインさんはこの草間興信所の所員 兼 実は草間さんの恋人で実は年内に挙式予定が・・・」
「さりげなく嘘を吹き込むんじゃない!!」
コソコソと話し込む2人に草間が割ってはいる。

 ごーん!!!!!!

いい音がした。
「な、何? 今の音!」
「武彦さん!?」
慌てて飲み物を持ってきたエマと楓香が戻ってくると、そこには人形に振り下ろされた棒に強打されうずくまる草間の姿が・・。
「・・結構痛そうですね・・」
柚品が呟いた。これは思った以上に痛そうだ。
「後4回の辛抱や、草間さん♪」
「いっ・・て〜・・。お前ら、他人事だと思ってーー!!」
麻樹の言葉に草間がキレた。
「だ、ダメだって! 煙草〜!!」
草間の逆上に楓香が思わず能力を使った。
それは楓香曰く【煙草】である筈だったが・・。

『タバコ吸うと、体に悪いですよ』

煙草の類似品は草間に向かい、そう呟くと溜息をついた。
「お、俺はお前を煙草だとは認めん!!」

 ごーん!!!!!!!!!!

「いやあ!! 何で殴られるのぉ!?」
再び頭を殴られうずくまる草間に楓香は訳が分からずに叫んだ。
「・・あと3回ね・・」
エマが、ぼそっと呟いた。


4.
「とりあえず、落ち着きましょう」
残り時間・約1時間。
草間のたんこぶに冷やしタオルを置いたエマは皆に飲み物を渡し、落ち着かせることにした。
ズズーっとお茶を流し込む一同。
一息つくと、麻樹が言った。
「で、さっきの『へそくり』の話はやっぱあるん?」
「・・さっきの話? へそくり?」
「!!」
キラリとエマの視線が鋭くなった。
草間の顔色が先ほどよりも強烈に変わる。
「あるの? へそくり」
エマの鋭い眼光に草間の視線が徐々に上へと逃れていく。
「怒らないから、言って? あるの??」
顔は笑っているが目が笑っていないエマに、柚品はただ見守ることしか出来ない。
「え・・えっ・・と・・」

 ごーーーーん!!!!!!!

強烈な一撃が再び草間の脳天を直撃した。
「あぁ! そ、そんなつもりは・・」
エマがオロオロと思わぬ一撃に慌てふためく。
「後2回・・・やな」
「やはりここはシュラインさんのためにもへそくりを見つけるのが手っ取り早いかな?」
思わず呟いた麻樹に柚品は決意も新たにへそくり探求を始める。
「だ、ダメですって! 後1時間の我慢で取れるんだよ!? ・・そうだ! ここは1つ可愛い動物なんかで癒されるのが・・」
そんな2人を抑止するが如く、楓香がまたしても能力を発揮する。
ボテボテッと謎の物体が草間興信所内を徘徊し始めた。
「・・動物?」
「可愛いでしょ〜? 癒されるでしょ〜? あっちはウサギで〜・・」
エマの突っ込みに楓香はニコニコと説明を始める。
が、その謎の動物たちはいつしか群れを作り始めていた。
「なんや、雲行き怪しゅ〜ない?」
「・・・」
「あ、あれれ??」
「あぁ!? 武彦さんに向かってるわ!」

「丈峯!! なんとかし・・・」
 ごーーーーん!!!!!!!

草間が言い終わるか言い終わらないかのタイミングで、草間はノックダウンした。
「残り、あと1回や」
麻樹がそう呟くと、小さく合掌をした・・。


5.
「後30分。このまま武彦さんが起きなければ頭のコレは外れるわ。とりあえず起こさない方向でね?」
エマがそう微妙に語尾を強く柚品・麻樹・楓香へと言った。
『は〜い』 と反省して柚品は素直にそう返事をした。
気絶した草間をソファへ移動し、布団をかけ、冷やしタオルで頭を冷やした。
リラックスムード、ここに極まれりである。
「・・う・・」
かすかに、草間が体を動かした。
ゆっくりと横向きになり、草間が目を覚ますとそこには。
「大丈夫? 武彦さん」
エマのにっこりと優しい笑顔。そして・・・

「○×※*□〜?!!?」

言葉にならない言葉を叫び、草間は飛び起きた。
飛び起きると同時に再び

 ごーーーーーーーん!!!!!!!!!!!!!!!

あっけない5回目・・・。
「な・・何がいけなかったのかな??」
哀れにも倒れた草間を横目に、楓香は誰に聞くでもなくそう呟く。
「きっとアレやな。シュラインさんの太ももが刺激強すぎたんちゃうん?」
「・・あれでなかなか純情な人ですからね・・」
うんうんと頷きあう麻樹と柚品。

そう。
寝心地が悪いであろうソファのクッションを少しでも快適にするため、エマは自らの身を犠牲に草間の枕役を買って出ていたのだ。
それを人は 『膝枕』 と呼ぶのであるが・・・。

「わ、私が悪いって言うの!?」
エマは良かれと思ってしたことが裏目に出たことで少々慌てていた。
「いやいや。全ては草間さんが妙なものを被ったせいですから」
「そや。恋人の膝枕で動揺するんが悪い」

「おーまーえーらー・・言いたいこと言いやがって・・・」

エマにフォローをしていた柚品と麻樹に、外れた謎の人形を手に持ち草間が復活。
「おまえらにもこの人形つけてやろうかぁ〜?」
草間の目は据わっている。
「え、遠慮しときまーす!」柚品が一番乗りで逃げ出した。
「俺も遠慮しとくわぁ」それに続き麻樹が逃げ出す。
「なんでー!? あたし、努力したのにぃ〜!!」草間に人形を付けられそうになって逃げ出す楓香。
「だ、駄目よ? 冷静に話し合いましょう?」笑顔を絶やさず説得をするエマ。

と、事態は思わぬ方向へと流れた。


6.
「兄さーーん! コレつけると1発で怒りん棒が取れるって・・あ!?」
どこに行っていたのか・・勢いよく走ってきた零がコードに足を取られてこけた。
手に持っていたものが空中を飛び、草間の頭へとクリーンヒットする。

『あぁ!?』

逃げていた一同の動きが止まり、草間の頭へと視線が集中した。
草間の頭には先ほどの妙な人形と見間違えるような人形が再び乗っていた。

「あぁ!? ニコりん棒が!?」
零が叫ぶ。
「れ・・零ちゃん? アレは何かしら?」
嫌な予感がヒシヒシとしながらも、エマは聞かずにはいられなかった。

「怒りん棒に同梱してあったニコりん棒と言います。怒りん棒をつけている時にコレをつけると力が相殺しあって、すぐに取れると・・」

「じゃ、じゃあ。単体でつけると??」
楓香がさらに付け足しで訊ねた。

「・・喜や楽の感情で棒を振り下ろすもので、『5回棒が振り下ろされる』か『装着者の感情を高ぶらせずに3時間放置』することによってのみ脱着可能と・・」

「『痛』算10回か・・ちーとしんどいかもしれんなぁ」
麻樹がニヤニヤと笑う。
「まぁ、でも草間さんのためですし」
柚品も手の指をポキポキと鳴らしウォーミングアップする。

「ちょ、ちょっと待て! うわあああぁあぁぁぁああ!!!!」


その日、草間興信所からは異様な叫び声が聞こえ続けたという・・・。

−−−−−−

■□   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  □■

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 15 / 高校生

2772 / 井上・麻樹 / 男 / 22 / ギタリスト

1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22 / 大学生

0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員


■□     ライター通信      □■
 柚品弧月様

この度は『怒りん棒・草間』へのご参加ありがとうございます。
麻樹様と柚品様がほぼ同傾向のプレイングでしたのでタッグ組んでいただきました。
性格は違う2人ですが、なにやら上手い具合に気が合ってしまわれているようです。(笑)
柚品様の崩れっぷりが度を越しているようでしたら申し訳ないです。
が、とても楽しく書けました。(^^;
それでは、とーいでした。