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<東京怪談ウェブゲーム アンティークショップ・レン>


【黒髪の…】

 嫌なんです 嫌なんです
 あの人じゃなきゃ どうしても嫌なんです
 あの人じゃなきゃ いらないのです

『……ならば、髪を切ってお仕舞いなさい』

 貴女の悲しみ 貴女の苦しみ
 貴女の心を全て 髪に託して
 切ってお仕舞いなさい 捨て去ってお仕舞いなさい
 そうすれば そうすれば……


一、「初めに物語ありき」

 その日「アンティークショップ・レン」を訪れたのは、墨衣に白練の絹を被いた尼僧だった。
 年の頃は五十かそこら。寄る年波が皺となって頬や額に刻まれており、引き結んだ口許は紅すら差していない。しかし、その整った顔立ちは往年の美しさを覗わせて余りあり、潤んだように見える黒い瞳からは殊更、女性としての艶が匂い立っている。
 碧摩蓮はカウンターに腰掛けたままでその美しい尼僧を見つめ、やがて瞬きをひとつした後に口を開いた。
「…それで、これをあたしに買ってほしい、って……そういうわけかい?」
 尼僧は「はい」と首肯する。故に、蓮はその柳眉を一層そばめた。
「まさか、あんたのじゃあないだろうね?」
 煙管の先でその「モノ」を指す蓮に、尼僧は応とも否とも答えない。ただ静かに、持参したそれへ視線を注ぐのみである。
 二人の間、机上に載っているのは一房の髪、だった。
 長さはおよそ二尺ほどだろうか。片端が紙縒りできりりと結ばれ、もう片端は真っ直ぐに切り揃えられている。想像するに、一束に結った長髪を根元からばさりと断った、というところか。一見するだけでも見事な、艶やかな黒髪。尼僧はこの髪を「是非引き取ってほしい」と蓮に申し出ていた。
「……最早、わたくしの手には負えないのです」
 ややあって、尼僧がそう呟いた。
 鈴が鳴るような涼やかな声色。店に不釣合いな、それでいて馴染んでいるような墨染めの衣。蓮はますます眉間の皺を深くする。そして同時に、「アンティークショップ・レン」店主としての好奇心が首を擡げる。
 ──この初老の婦人には何か惹かれるものがある、と。
「……分かったよ」
 かつん、と蓮は煙管で机を叩いた。
「そこまで言うならうちに置こうじゃないか。あんたの品、改めさせてもらうよ」
 手を伸ばし、黒髪に触れようとする。衝撃はその瞬間に来た。
「!」
 ばちりっ! まるで火花が飛んだような感触。咄嗟に手を引き、痛みの走った指先を口に咥える。火傷に似た熱い痛みが指先をじんじんと痺れさせた。
「何なんだい、これは」
 蓮は些か動揺しつつ顔を上げ──そして、瞳を大きく瞠った。
 顔を上げた机の向かい。そこにはもう、誰の姿も見当たらなかった。


二、「黒髪の、乱れも知らず」

「……ていうことがあったんだよ」
 話し終えた蓮は苛立ちを隠さぬ表情で腕を組み、昨日以来ずっと机上にある例の髪を見つめて息を吐きだした。
 日も改まったアンティークショップ・レンでのことである。尼僧の残した髪をまじまじと凝視している双眸は、蓮を含め三人分に増えていた。
「つまり、その尼さんが手に負えないから蓮さんのところに持ってきたと、そういう訳ですね?」
 机を挟んで向かって左、黒めがちの瞳をぱちぱち瞬きしているのは雨柳凪砂だ。口許に手を遣り、先刻から熱心に髪に見入っている。同じ黒く豊かな髪を持つ身として興味があるのだろうが、彼女の場合それ以上に職業柄の好奇心が首を擡げているのかもしれない。
「そうなんだろうね。全く、こっちは押しつけられるわ消えられるわで、何だか当て逃げされたみたいな気分だよ」
「あはは、言い得て妙ですね」
 右手、柔らかな笑みを浮かべて相槌を打つの長身の男は、名を向坂愁という。双子の弟がおり、その弟が自分と同名であったという点で特に蓮の記憶に残っている人物だ。一卵性の兄弟なのだろう、弟と造形を一にする整った容貌に穏やかな微笑。彼も凪砂同様、彼も凪砂同様、身体を折ったりしながら髪を覗き込んでおり、耳や手首の銀色が店の灰明りを受け時折煌いている。
 二人は共に「レン」馴染みの客で、今日も偶々店に来たところを捕まえた。互いに顔を合わせるのは初めてのようだったが、どうも共通の知人がいることがすぐに発覚したらしい。挨拶を交わすと程なくして打ち解け、話の途中にも何度か意見を交わしながら二人、髪を矯めつ眇めつしていた。
「ともかくも、こうして行き合った偶然もこの髪に呼ばれた故、ですよね」
 背筋を伸ばした愁が蓮に一瞥を寄越す。
「呪いの類が宿っているのなら浄化を、何らかの能力による攻撃ならば放たれる気を吸収して反射を。どうしましょうか、碧摩さん」
「一応、商品にして高値でもつけてやりたいんだけどね」
「ということは……傷つけるのはまずいか」
 蓮と凪砂が見守る中、愁は開いた手をゆっくり髪へと伸ばしていく。────しかし。
「っ……!」
 ばちり! 蓮の時と同じ炸裂音が指と髪の間で響く。思わず手を引っ込めてしまった愁は整った顔を思い切り顰め、痛むだろう手を苦笑混じりに見つめた。
「……確かに痛いですね」
「あの、今度はあたしがやってみてもいいですか?」
 おずおずと手を上げた凪砂が鼻先を髪に近づける。危ないのでは、という痛み分け二人組の制止をやんわり辞し、彼女は髪へ「くん」と鼻を利かす。二尺──つまり約60cmという長く豊かな黒髪の香を端から順に嗅いでいくのは、ごく普通の女性がするにはやや珍妙な格好だが、当の凪砂本人としては至って大真面目らしい。時折首を傾げながらも、髪の残り香を必死に嗅ぎ取ろうとしているようだった。
「香……お線香、かしら。仏壇や、お寺の匂いに似てるわ。それから……あら?」
 ぴくり。彼女の鼻が髪の根元、紙縒りの上で停止する。凪砂は幾度か首を傾げた後その紙縒りを解き、細く畳まれていたそれを開いて見せた。20cm程の短冊型の和紙──薄いその紙には何事かが墨書してあり、覗き込む三人の視線がその一文に集まった。
 ──黒髪の、乱れも知らず、うち臥せば、まづ掻き遣りし人ぞ、恋しき。
「和歌、でしょうか?」
 同意を求めるように見遣ってきた凪砂に、蓮は怫然とした表情で唇を尖らせ。
「ふざけてるじゃないかい。髪の毛を縛っていたのが髪の毛の歌が書かれた紙だって? 悪いけど、あんた達に丸投げさせておくれよ。抹香臭くて敵やしない」
 はん、と鼻を鳴らして両手を上げる。つまり、お手上げということだ。
「じゃあ、ひとまずあたしが髪を預かりますね。蓮さん、袋か何かありませんか?」
「それは構わないけど、触ったらまた痛い思いをするかもしれないよ?」
「うーん。あ、でも、もしかしたらこの髪は直に触られるのが嫌なのであって」
 凪砂はハンドバックの中からハンカチを取り出し、それで手を覆った上で髪を掴んだ。衝撃は──襲ってこないようだった。
 そうすればよかったのか、と嘆いている蓮と愁をさて置いて、凪砂は借り受けた巾着型の赤い袋に髪を詰め込む。狭い袋の底で髪は何重にも円を描き、その様はまるで巣穴で蜷局を巻く蛇さながらだった。
「ええと、向坂さんと呼べばよろしいですか?」
 袋を手に尋ねた凪砂に、愁は「下の名前でいいですよ」と返す。
「じゃあ、愁さん。よろしければ明日……いえ、明後日にでもまた落ち合って、これを持ってきたっていう尼さんを探してみませんか?」
「いいですよ。僕も、その女性には訊いてみたいことが沢山ありますし。この髪は誰の物なのか、何が「手に負えない」のか……差し当たってはお寺とか訪ねるべきかな?」
「そうですね。あ、それじゃあ尼寺のことも調べておきます」
 そうして二人は明後日の集合場所と時間を確認し合うと、各々会釈しながら店を後にした。
 残された蓮は一人長い息を吐き出して、やれやれと愛用の煙管へ手を伸ばした。


三、「うち臥せば、まづ」

 翌々日。凪砂と愁はある駅で待ち合わせ、凪砂の提案によって電車で東に向かうことにした。
 風の強い日だった。車中は空いており、二人はボックス席の窓側に向かい合わせで座る。発車ベルが収まるや居ないや、早速凪砂が昨日一日かけたという調査の報告を始めた。
 彼女が調べたのは尼寺と、それから髪に関すると思われることだ。凪砂はまず知人の人形職人に連絡を取ろうとした。髪を扱う者故に髪についての逸話・出来事に詳しいのではないか、と期待したのだが、生憎彼は留守にしており空振りに終わった。またネットで髪関係のことを検索してみたが、今回の一件に繋がるような話は見当たらず仕舞いだった。
「ごめんなさい、成果が無くて」
 申し訳なさそうに頭垂れる凪砂に、愁は「いえいえ」と微笑を浮かべる。
「こちらこそお任せしてしまってすいませんね。でも一日でそれだけこなされるなんて、頭が下がりますよ」
「そんな……単に、時間を持て余しているだけなんですよ?」
 凪砂は気恥ずかしそうに口許を緩める。
 弟の蓮もそうだが、このコウサカ兄弟は揃って秀麗な容姿を備えているものだから、一女性の凪砂としては、こんな間近で微笑み掛けられた日には思わず見惚れてしまいそうになるのだ。
「ええと、それで」
 僅か火照っている頬をぺちぺち叩きながら、凪砂は話を続ける。
「次に尼さんのいるお寺っていうのを探してみました。大体五十歳くらいで綺麗な人だった、って蓮さん仰ってましたよね。大雑把な情報ですけど、こんな長い髪を持ってたのなら目立つはず、と思ってその点を中心に調べてみたら」
 ──気になる人物が、一人。やや神妙に凪砂が告げると、愁は心持ち膝を乗り出してきた。
「K町の英照寺というお寺にいたという、チケイさんという方なんですが」
 知るに日、恵むで「智恵」さんというそうです。凪砂は空中に字を書いて示す。
「その方が生前、尼になる際切り落とした髪を保管していた、というのを覚えている尼さんがいて」
「待って下さい。……生前?」
「はい。智恵さんは三年前に亡くなっています。四日前……つまり蓮さんが尼さんに出会った日がちょうど、三回忌だったそうですよ」
 数秒、二人の間に沈黙が降りる。がたんがたん、と電車の揺れる音だけが大きく響き、立ち並んぶ家々の残像が窓の外を左から右へと流れていく。電車が次の駅に滑り込んだところで、愁が漸く口を開いた。
「その髪に触れた時、確かに霊的なものを感じました。でもあれは多分、呪いの類ではなくて。そして僕や蓮さんが味わった痛みも──ただの感想なんですが──攻撃というよりは……」
 過剰な防衛──と、袋に目を据えながらゆっくりと口にした愁につられ、凪砂も手の中のそれに視線を落とす。
「そう、ですね。ええ、触られるのを嫌がっているんですよ、きっと。そして何か……求めているのかしら? そしてそれは、少なくとも持ってきた尼さんではなくて……って、全部私の想像に過ぎませんけどね」
「いえ、結構イイ線いってるんじゃないかと思いますよ」
 またけたたましい発車ベルが鳴った。再び動き出した車体、愁は過ぎ行く駅舎に目を遣りながら──寧ろ遠くどこかを眺めるような瞳で、呟いた。
「人はいつでも、誰か大切な人を求めているものなんですよ。僕が、そうであったようにね」
「……もしかして、弟さん、とか?」
「ええ。大切で大事でもう手離せない弟です」
「……熱烈ですね」
 衒いなく言われたので、凪砂の方が何だか照れてしまう。同じ顔の弟も、この兄のことをこんな風に人に話したりするのだろうか、何て思ったりした。

 目的の駅で降り、改札を出ると、凪砂は持参した地図を(風に煽られながらも)広げて駅から寺への道順を指で追い示した。
「結構入り組んだ道が続いてますから、迷わないようにしなきゃいけませんね」
「……頼りにしてます、雨柳さん」
 人通りの少ない、静かな住宅街だった。生活音すら洩れてこない平日の昼下がりの静寂。そこにすうと通って行く春間近の涼風。いっそ育った国の教会に似た静謐な雰囲気のある街だと、愁は歩きながらふと思う。
「あ、そういえば」
 前を行く凪砂がふと思い出したように、袋の中を探って例の紙を取り出した。
「ここに書かれていた和歌も、念のために大学時代の友人に頼んで調べてもらったんです。そうしたらこれ、平安時代…大体千年くらい前の和歌だったみたいで。意味は、こんな風だそうですよ」

『黒髪が乱れるのも構わずに臥せると、まずこの髪を優しく掻きやってくれたあの人が恋しく思われる』

「……関係、あるのかな」
 失礼、と断りつつ愁は紙を今一度見ようと手を伸ばす。それに気付いた凪砂が渡そうと紙を持つ手を緩めた。
 ────そこに、突風が吹いた。
「あ!」
 二人が同じに声を上げる。瞠った四つの瞳が追ったのは蒼穹の方向、紙がひらりと天に舞った。
「いけないっ」
 拾って来ます、と愁が駆け出した。出遅れた凪砂は手を中空に残したまま、呆然とその背を見送った。


四、「掻き遣りし人ぞ」

「どうしちゃったのかしら、愁さん……」
 愁が紙を捕まえに行ってから早十分近く経っただろうか。待ちぼうけの凪砂は一人途方に暮れていた。
 元凶である風はやはり強く、縛っていない長髪を無造作に煽ってくれる。四方八方にはためく髪を抑えつつ、凪砂はふと、咽喉の──首輪へと指を伸ばし、触れた。
 『グレイプニル』──最早外せぬ大事な戒め。身の内に潜む獣につけられた首輪。初めの頃は戸惑っていた感触も今では身体の一部であるかのように錯覚する。それだけ『影』との付き合いが長く、実際力も制御出来るようになってきたということなのだろう。そしてまたその月日は、自分が嘗ての自分ではなくなった時間でもあるのだ。
 自分の中に自分ではないモノが在り、それはまた自分でもある。時に心を別にする友人となるけれど、時に精神を同じくする自身にもなり得る。『影』と同化してから自分という境界が揺らぎ、曖昧になっていくのを感じる。内側からの変質、それは嘆くことなのか喜ぶことなのか。慣れはしても受け容れきれていない、そんな不安定な所に凪砂は立ち尽くしているような気がした。
 ────と。
「あの、もし」
「きゃっ!」
 すっかり思考に没頭していた凪砂に背後から、突然声が掛かった。心臓が飛び出さんばかりの衝撃に思わず悲鳴を上げ、慌てて振り向いたところで凪砂はさらに愕然とする。
 何時の間に近づいていたのだろう、そこには墨衣を纏った尼が一人立っていた。初老の、幽艶なる美しさを持つ尼僧。合致した符号に思わず息を呑む。
「こんなところでどうかなさいましたか?」
「あ、いえあの、お寺に行く途中で。その……英照寺という尼寺に……」
 どもってしまう受け答え。しかし尼僧は皺の刻まれた頬をほこりと綻ばせ、
「まあ奇遇ですわね。わたくし、その寺に住み込んでおりまして、今は出先からの帰りですのよ」
 余りにも自然に、穏やかに微笑む尼僧の様子に凪砂の鼓動も収まっていく。生身の人間、のような気がするのは白昼堂々だからだろうか。綺麗な尼さんなんて然程珍しくはないのかもしれないし、わざわざ声をかけてくる亡霊というのも何だか変だし……。くるくると回転する頭は、やがて凪砂に平静を取り戻させる。掌で胸を抑え、軽く一呼吸してから「あの」と切り出した。
「あたしは雨柳凪砂と申します。昨日そちらのお寺に智恵さんという方について問い合わせたものです」
「あら、そういえば……はいはい、そのような話伺っておりますよ。確か、髪が何とかと」
「はい、そうなんです。それで、実は今日智恵さんについてもっと詳しく教えていただこうと……ええと」
 これを。言いながら袋の口を開き、中を尼僧へと示す。彼女の目が驚きに見開かれたのは一目瞭然だった。
「まあ、何てこと……。ええ覚えていますともこの色、この艶、そして長さ。これは智恵が生前持っておりました髪ですよ。……どうして貴女がこれを?」
「それは、話すとちょっと長くなるんですけど……」
 凪砂は心持ち顎を引きながら問う。
「もし宜しければ、智恵さんについて色々とお伺い出来ませんか? この髪について、知りたいのです」
 尼僧は数瞬押し黙り、じっと凪砂の顔を見つめた。垂れた瞼の奥にある泉のような黒曜石の瞳。一瞬彼女の年齢を忘れさせるその黒い光に、凪砂はどきんと胸を鳴らした。
「……承知しました。わたくしの存じていることで良ければお話しましょう。……そうですね、では智恵のお墓へ案内しましょうか。話はその道中に」
「ありがとうございます。……あ、でも実は連れがいて、今その人を」
 待っているんです、と言い差した凪砂はその時急に言葉を呑み込んだ。
「…………」
 吹いたのは先刻髪を飛ばした春先の風。そして、風上にいる尼僧から運ばれてきたのは、彼女の──仄かな香り。
 凪砂の鋭敏な鼻腔それを捉え、一昨日の記憶を鮮明に呼び覚ます。ほんの少しだけ、しかし確かに感じた香。甘い、柔らかな──。
(これは……もしかして)
 早鐘を打ち鳴らす心臓を隠しながら凪砂は唇をきゅっと引き結ぶ。そして尼僧に向き直ると。
「……はい。お願い致します」
 軽く頭垂れ、では、と先導し出した尼僧について歩き出す。愁のことは当然気掛かりだったが、これを逃してはいけないという警鐘が凪砂の脳に大きく響き渡っていた。

「確かに、智恵は削いだ自分の髪を捨てずに持っておりました」
 道すがら、尼僧は凪砂が請うままに語って聞かせてくれた。迷いなく街を進み、寺の裏山にあるという智恵の墓にまで案内してくれるとのことだった。
「智恵が尼となったのは、何でも恋人に先立たれたとかで」
「恋人、ですか」
「ええ。耐えられぬ悲しみから逃れるために飾りを落とし、一切の未練を髪と共に切り離したと申しておりました」
 自然、凪砂の表情が曇る。その悲しみを自分は身を以って知っていた。降って湧いたような富みに振り回され逝ってしまった両親、もう会えない大事な人達。胸を掻き毟らんばかりの惨苦を、凪砂もまた味わっている一人なのだ。
「確かにそれは、切り離してしまいたいかもしれませんね」
 出来るならば。──髪と共に苦しみや悲しみが去ってくれるならば。
「ええ。ですが言葉とは裏腹に智恵は髪をどうしても捨てられなかった。何故かそれが、叶わなかった。……そして、そう三十年近く大事に、彼女は自分の髪を手元に置いていたのですよ」
 三十年。凪砂は心の中で復唱し絶句する。袋の中の髪は、まるで今しがた人の身から離れたばかりかのような瑞々しさと漆黒とを誇っていた。しかしこれは、三十年も前に切り落とされたという。そんな年月を経た髪は尚、頭にあった時と同じ様でいられるのだろうか。それともこの髪が──特別だからなのだろうか。
 やがて眼前に寺の門が見え始め、入ると思われたそこを尼僧は左に折れた。
「裏山にはこちらの道が近いのですよ」
 尼僧は微笑と歩調を崩さない。髪の変わりに頭を覆う被きの真白さが殊更目に焼き付く。徐々に未舗装となっていく坂道を登っていくと、辺りは街並みから鬱蒼とした林へと景色を転じた。
「雨柳さん、貴女は髪とは何だと思われます?」
 さり、と道を踏みしめながら前を行く尼僧が問うてくる。
「え、髪、ですか。特に考えたことはありませんけれど、女の命とは言いますよね。それから……あの、知人の受け売りなんですけれど、心だとも」
 教えてくれたのは戸塚秀晴という、昨日捕まらなかった人形師だ。六十過ぎの男性で、白髪混じりの頭に高い鷲鼻そして鋭い眼差しに太い眉、と所謂強面な人物だが、美しい女性の人形を造らせたら右に出る者はいない程の腕を持っている。そんな彼が以前口にしていたのだ、髪とは心だと。女が恋人を想う心そのものだと。
「ええ、命であり、そして心。智恵は申しておりました」
 尼僧は続ける。この髪は、もう二度と逢えない恋人を想う心。だから、切って離して捨ててしまおうと、彼女は思ったそうですよ、と。
「最早自分の手に負えず、痛みしか齎してくれない辛い恋心そのものだと」
「手に負えない、こころ……」
 と、尼僧が歩みを止める。そこは山の中腹で木々が払われ、小さな広場のようになっていた。頭部程の大きさの石がぽつん、と、盛り上がった土の上に慎ましく置かれており、それが粗末ながらも墓標なのだと凪砂は察した。
 両親の前でそうするようにそっと手を合わせ、目を閉じる。先刻から脳裏に渦巻いている一つの確信。それを今一度心の中で確かめ終え決意に変えると、下ろしていた瞼をゆっくり上げ、尼僧に向き直った。
「……その香は何ですか?」
「はい?」
「先刻、貴女から甘い香りがしました。雨に濡れた花のように、しっとりとした香です。香水なのかお香なのかは存じませんけれど、それは」
 この──と、目にも鮮やかな赤い袋を掲げて見せると、尼僧の瞳がほんの少し揺れたような気がした。
「この髪を縛っていた紙と同じ香でした。和歌の書かれた紙に、染み込んでいた香と同じ」
 随分鼻がよろしいのね、と尼僧がぽつり呟く。それが決定打だった。

「貴女が……智恵さんですね? そしてこの髪は、貴女のものですね?」

 尼僧は──いや、智恵は「はい」と首肯した。
 やっぱり、と凪砂は唇を噛み締めた。
「あたしの前に現れたのは……あたしが貴女のことを調べたからですか?」
「ええ。そして、わたくしの髪を持ってきてしまったから」
 引き寄せられました。智恵は言った。
「智恵さん、教えて下さい。どうして貴女は髪を『レン』に持ってきたのですか? いったい何が手に負えないんです? だってこれは、貴女の……心なのでしょう?」
 問いは、一昨日愁が気にしていたことだ。だが今は凪砂自身の問いでもある。だって彼女は髪は命だと、心だと言った。失った恋人を想う心そのものだと言ったではないか。それを、何故────。
「だから手に負えないのですよ、雨柳さん」
 鞭のように尼僧の声が撓り、凪砂を打つ。彼女の顔から笑みは消え、花のかんばせがすうと凍りついていく。
「自分の内にあるのに自分の思い通りにならない。自分であるのに自分でない。自分を傷つけ、自分を変えていってしまう。そんな狂暴な心、わたくしは耐えられなかった……捨てられないのに、耐えることも出来なかった」
 あの人を愛した記憶がそのまま牙となり身に突きたてられる。
「……手に、余るのですよ。この遣り場の無い悲しみは、猛り狂った哀しみは、もう、わたくしの手には……」

 負えないのですよ。

「!」
 智恵が言葉を紡いだ瞬間、凪砂の手にしていた袋が宙に踊った。強烈な力で腕を引っ張られ、堪らず手を離すと袋は──いや中に在った髪が袋を突き破り、その細長い身を反らせるやぬらぬらとしたものに姿を変えた。
「へ、蛇!?」
 その姿を見とめた凪砂が目を瞠る。最早髪ならぬ黒き蛇は、空中で牙を剥き、赤い舌を覗かせながら一直線に飛んできた。
「智恵さん!」
 咄嗟に智恵に目を遣るも、彼女はただ静か佇み、悲哀に満ちた表情でこちらを見つめているだけ。彼女を離れ、彼女の心を形として引き受けてしまった髪の、これが「手に負えない」悲しみ・辛さ、そして恋しさなのかと凪砂は泣きたくなった。
(だって、あたしだって、知っているもの!)
 向かってきた蛇を紙一重でかわす。身の内から湧き上がる獣の力、瞳に紅い熱を感じる。このまま『影』に身を委ねるのは容易だ。しかし今は。
(……って……喰らって、しまえ……)
「駄目!」
 内なる声を珍しい程の激しさで叱咤し、そのまま地を蹴る。獰猛な蛇は執拗に襲い掛かり、やがて凪砂は木の幹を背にするところまで追い詰められた。
「それじゃあいけないのよ。あたしは知っているもの。悲しいからって、受け容れられないからって、拒んでばかりじゃ……駄目なのよ!」
 智恵さん! 叫んだ凪砂に蛇の牙が迫る。
 獣化することも逃げることも選べずに、凪砂はぎゅっと固く目を瞑った。


五、「恋しき」

「トモエさん!」

 突然聞こえた叫び声といつまで経っても襲ってこない衝撃の不自然さに、凪砂は恐る恐る瞼を押し上げた。
 蛇はまさに寸前、鼻先まで迫ってきていた。びくり、と身体が強張るもののそれは何故か動きを止めており、慌てて凪砂はその射程から逃げ出す。そしていったい今の声は何だったのかと、首を巡らし探したところで。
「愁さん!」
 愁と、もう一人初老の男性がいることに気付き駆け寄った。
「すいません、遅くなりまして」
 愁はこちらに安堵の笑みを向けた後、視線を厳しいものへと変えそれを奥の智恵へと据え直す。つられ彼女を覗い見れば、あの憂いを含んでいた瞳が驚愕に見開かれていて。「ひであきさん」と、微か唇が動いたように凪砂には見えた。
「彼女の本名がトモエなんだそうです。それからこの人は、戸塚秀晴さんと言って」
 愁が横にいた男を示す。凪砂はまあと口に手を当てた。
「あれ、お知り合いですか?」
「あ、はい。あたしが髪のことを訊こうとした人形師って、この方なんですよ。でも、どうして」
 貴方がここに? 凪砂が訊くも、秀晴は直立不動で微動だにせず、呼吸すら忘れじっと智恵へと瞳を凝らしているようだった。彼の手には白百合の花束が握られ、その花弁が風に揺れていた。
「雨柳さん、この人は」
 愁は一度瞬きした後に、ゆっくりと言葉を唇に載せた。
「戸塚秀晴さんは、智恵さんの恋人だった戸塚秀明さんの、双子の兄なんだそうですよ」
 互いに見詰め合う男と女。秀晴が眩しそうに目を細める。
「……智恵さん。本当に智恵さん、あんたが自分の髪を手放したのか。最期の最後まで私に呉れなかったあんたの髪を、自ら手放したのか……?」
 秀晴は持っていた花束を掻き抱き、ふるふると首を打ち振った。
「どうしても私には、あんたの心を、あんたの想いを呉れないというのか……?」
「……だって」
 智恵が両手で顔を覆う。すると空中で静止していた蛇が、天に向かって再び牙を剥いた。
「だって……嫌なんです」
「!」
 蛇が、まるで黒い矢のように宙を飛んだ。凪砂と愁はすかさず横に避けたが、呆然としていた秀晴が僅か逃げ遅れる。
「戸塚さん!」
 凪砂は慌てて戻り、秀晴の腕を掴むや高く跳躍した。その様はまるで岩場を駆ける四足の獣のようだった。
 蛇は明らかに秀晴を狙っていた。心の化身である髪が、恋人と同じ顔を持つ男を傷つけようと風を切る。
「だって、だって……どうしても、あの人じゃなきゃ。わたくしが求めたのは貴方の手ではない。あの人じゃなきゃ、いらないのですよ……」
 秀晴の手からがくりと力が抜ける。凪砂が引こうとしても彼は地に膝をつき動かない。
「……だから私は貴女に、髪を切ってしまうよう言ったんだ」
 貴女の悲しみ、貴女の苦しみ。貴女の心を全て、髪に託して切ってお仕舞いなさい。捨て去ってお仕舞いなさい。
 そうすれば、そうすれば……私も貴女に拒まれる苦しみから逃げられる。想いを殺してしまえる。
 蛇が迫る。秀晴は嗚呼と泣いて花に顔を埋める。愁は迂闊に手出しも出来ないと、歯痒く成り行きを見守っている。
 凪砂は意を決し、顔を上げて、叫んだ。
「いい加減にして下さい!」
 向かって来た蛇へと手を伸ばし、捕まえる。蛇はもがき手首へと牙を立てたが、それでも凪砂は決して手を離そうとはしなかった。
「智恵さん、貴女は悲しいからって全て、何もかもを拒んでいる。傷つけても仕方ないって、そんな風に考えているんじゃありませんか? でもそれは我が侭ですよ。辛くても、自分が痛くても、受け容れなくちゃいけないことがあるんです。大切な人が死んでしまうこととか、自分の内側に恐ろしいものがあることとか……目を背けてるだけじゃ、いけないんですよ!」
 凪砂の手から血が溢れる。その雫が腕を伝い、落ちて秀晴の花を染める。
 痛みに耐えながら凪砂は、首もとの戒めにそっと触れた。
「悲しい思い出も、恐ろしい力も……皆、自分の一部なんですよ」
 智恵はゆるゆると顔を上げ、泣き濡れた面を凪砂に向ける。凪砂は牙が手首に食い込むのも構わず、優しく微笑んでそれに答えた。
「……受け容れて下さい、智恵さん」

 ────と。無言のまま愁がこちらに歩み寄って来て、秀晴の肩に手を置いた。
「秀晴さん、あの紙を貸して下さい。……本当に智恵さんを想っているなら、僕に渡して下さい」
 おずおずと顔を上げた秀晴に、愁は逸らさぬ視線をじっと注ぐ。やがて秀晴は懐からあの和紙を取り出し、受け取った愁は凪砂へと向き直った。
「痛いでしょう。すいません、こんな役をやらせてしまって。今、助けますからね」
 愁は手にした紙縒りを一度ぐっと握り締めると、のたうつ蛇の首へと固くそれを結びつける。蛇は二三度びくびく痙攣したかと思うと急に頭垂れ、見る見る内にその姿を元の黒髪へと変えた。
 そして愁は血の滲む凪砂の手から髪を取上げて、塚の傍ら、智恵の元へと歩み寄った。
「きっと……雨柳さんの仰る通りですよ」
 ────浄化はしました。愁は髪を智恵に差し出す。
「ですが、未だ髪が人を拒んでいることは変わりありません。実際、痛いですよ。この手、一応商売道具なんですけれどね。貴女が秀明さんの想う気持ちが、それこそ痛い程分かります」
 だからこそ。
「人を一途に求める気持ちを、人を傷つけるためなんかに使ってはいけないんじゃないですか? その想いは、心は、幸せになるためにあるんだと……僕は、思っているんですけど」
 智恵は面を伏したまま。愁は智恵を真摯な眼差しを彼女に注ぎ、凪砂はそんな愁を固唾を飲んで見守る。
 その時ゆらりと、秀晴が立ち上がった。
 赤に染まった花を提げ、ふらりふらりと覚束ない足取りで愁の横へ──智恵の前へと歩み出た。
「智恵さん、私は……いや」
 秀明が。────私の弟が。
「悲しんでいるよ。だから……早く、逝くといい」
 愁は秀晴の横顔を覗い見る。先刻まで嘆いていた人とは何か違う、兄の顔がそこにはあった。弟とその恋人の仲を嫉み、素直に悲しむことも祝福することも出来なかった彼が、今は穏やかな、兄の顔をしてそこに立っていた。
「髪は、私が引き受けよう。それが……兄なんだろう?」
 愁は表情を緩め、何も言わずに伸ばされた手へと髪を託した。
 秀晴は一瞬顔を歪めながらも、髪をぎゅっと握り締め、代わりに花束を智恵へと捧げた。
「あんたの悲しみは私が引き受けるから、あんたはもう、安らかに……秀明の元へ逝ってくれ」

 ゆっくり、智恵が顔を上げていく。
 花を見て、泣き濡れた頬を僅かに綻ばせ。
 綺麗ね秀明さん、と呟いたので。
 秀晴は、そうだね、と答えた。
 智恵は立ち上がり、花を受け取って。
 髪を愛しそうに見つめた後。
「……秀晴さん。それはわたくしの……大事なものだから」
 そうです、大切な心だから。
「……捨てないで、残して下さい。わたくしの、心を」
 秀晴は、ああ、と頷いた。
 智恵の姿はそこで煙のように掻き消えた。

「秀晴さん、手、大丈夫ですか? 髪がまるで、火花のようでしょう?」
 智恵が完全に見えなくなってしまうと、愁はそう傍らの秀晴に訊いた。花束は塚の上へぽとりと落ち、今は霊前の供えとしてさやさや花弁が風に揺られている。
 凪砂が小走りで駆け寄ってくると、秀晴は漸く口を開いた。
「向坂くん、だったか」
「あ、はい」
「もう……痛くないのだよ。これは智恵さんが私を……受け容れてくれた証、なんだろうか?」
 愁は一瞬逡巡し、その後で「そうですよ」と破願する。
 凪砂は何のことだか分からずに、きょとんと二人を見比べていた。


六、「物語の終わりに」

「……で。結局髪は、そいつに呉れてやったってことかい?」
 そして再び数日後。「アンティークショップ・レン」にて。
 蓮は机に肘をつき、半ば呆れた表情で凪砂と愁とを交互に見比べた。
 二人はそれぞれ、手に白い包帯を巻きつけている。何でも髪の一件で刺し傷・火傷をこさえてきたらしく、「パソコンが打ちにくいんです」だとか「ヴァイオリンが持てなくて」だとか、結構深刻な症状を苦笑混じりに報告してくれた。
「何でも、智恵さんが秀明さんを好きだった気持ちをこの世に長く残してあげたいから、って。人形の髪として、形を与えてあげるんだそうですよ」
「はァん。その内呪いの人形とかでうちに回ってきそうだねえ。大体さ、秀晴だっけ? そいつの嫉妬が篭もっているんだろう、その人形には」
「その点は大丈夫ですよ」
 愁がやや胸を逸らす。
「弟の幸せを願って造るんですから。それが”兄”でしょう?」
「……あんたの中ではそういう理解かい」
 ははン、と蓮は乾いた笑いを漏らす。そして客人の手前、一応遠慮していた煙管を手に取ると。
「とにかくご苦労様。ま、暇があったらまた店に寄りなよ。その時もきっと、曰く付きの品があるだろうからさ」
 今日は店じまい、とばかりに煙をふうっと吐き出した。薄暗い店の天井に、紫煙がくゆりやがて。
 消えた。


 了


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

1847 / 雨柳・凪砂(うりゅう・なぎさ) / 女性 / 24歳 / 好事家
2193 / 向坂・愁 (こうさか・しゅう) / 男性 / 24歳 / ヴァイオリニスト


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■         ライター通信          ■
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初めまして、ライターの辻内弥里と申します。この度は拙作へのご発注、真に有難う御座いました。
募集時には「4人以下」としておりましたが、お二方のプレイングを拝見し、これは充分お二人で解決していただけると判断し、今回はお二方のみのご参加となりました。その辺ご了承下さいませ。
い、如何だったでしょうか? 少しでも楽しんで頂けましたならば、これ以上の幸いはありません。
既にご存知かもしれませんが、実はこの話が私のライターとしての初仕事だったりします。初めてだけに粗相のないように! と相当力を入れたのですが……何だか髪の毛だとか和歌だとか、しっかり趣味に走った話となってしまいました……。お気に召して頂ければよいのですが……。(汗)
なお、「四」が個別パートとなっておりまして、他PC様の個別部分を読んでいただけると一層智恵と秀晴のことが分かって頂けるようになっております。お暇御座いましたら、是非ご一読下さい。
それから。余談ながらひとつ。
作中の和歌は和泉式部という平安中期の女流歌人が詠んだもので、勅撰集にも撰ばれております。和泉式部は初め兄と恋仲になり、彼の死後、その弟とも恋仲になったという女性で(ちなみに弟とも死別しております)それが今回の話のベースになっていることは言うまでもありません。
……ええと、はい、趣味ですね……。

>雨柳凪砂様
まずは怪我をさせてしまってごめんなさい。その後傷はどうでしょう? 雨柳様のように控え目で楚々とした女性に力技をさせてしまって申し訳ない限りです。
雨柳様の設定等拝見し、芯は相当確りした強い女性なのではないかなあ、という印象を受けまして、智恵への叱り役を担当して頂きました。またプレイングにありました「人形師」というのが、操る方か造る方か分からなかったのですが、髪を使う、ということで造る方だと判断致しました。
それぞれイメージと違っていましたらすいません。ご容赦下さい。
それにしても身の内に獣を宿している可憐な女性、というのは素敵ですね。その共生について、結構きちんと受け容れているところがまた彼女の魅力なんじゃないかと私は思いまして、今回あのように心情を描かせていただきました。
ど、どうだったでしょうか。ともかくも書かせてくださって有難う御座います。楽しかったです。

それではご縁がありましたらまた、ご用命下さい。
ご意見・ご感想・叱咤激励、何でも切実に募集しております。よろしくお願い致しますね。
では、失礼致します。