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<東京怪談ウェブゲーム 神聖都学園>


音楽室の怪4:雫と音楽魔神

Opening
 瀬名雫は退屈な授業を受けていて欠伸をしている。
「退屈そうだな」
 と窓から声がした。
 ビクッと驚くも流石怪奇探検をする女の子皆にバレない様に驚く。
「あ、音楽魔神…」
「如何にも」
 小声で会話する。
「少し頼みたいことがある。放課後初めてであった14音楽室で待っておるぞよ」
 と、魔神はその事だけ伝えて姿を消した。
「ここ……4階なのに……ま、いいか。魔神って言うから」

 放課後、彼女は魔神の言う通りに第14音楽室に向かう。既に教室内にはライブのセッティングをしていた。
 雫は寒気を感じた。
 そう音楽魔神は様々な音楽知識は持っているが、未だ完全覚醒していないため彼が歌うと死ぬほど音痴なのだ。本人は其れを自覚しているのかどうかかなり疑問があることだ。
 帰ろうかなぁと思った雫だがそこから動けない。
 そう、好奇心が勝ってしまった。他に何かが起こることが楽しみと直感で感じたのだ。
「おお、来たか。実は、此処でお主らの友人で余の作った歌などを代わりにバンドを組んで歌って貰いたいのだよ」
 魔神の言葉に雫は、
「は?歌うの?」
「そうじゃのう。人員不足でのう……バンドは解散というか天昇してしまったのだ」
 解散と言うより天昇……前にいたアンデッドバンドのことだろう。

雫は唸る様に考える。歌に関しては自分もそこそこ自信があるが、1人ではバンドは組めない。断る理由は一つだけ。しかし、今回はその危険性もないので…音楽に感心のある友人にメールを送る雫だった。


1.参加者さんの思惑
 鹿沼デルフェスは、スキップで神聖都に向かった。不謹慎なことだが、曰くモノの品物を届けるより、彼女からのメールがとても嬉しかったのだ。雫はすでに校門前にいる。
「雫様、ありがとうございますぅ♪」
 彼女は彼女を見つけるや力一杯抱きしめる。まるで、感涙するかのように。
「デルフェスさんくるしぃ〜」
 下手すれば雫の魂は天に召される所だっただろう。
 デルフェスの次に訪れたのは、毎度おなじみお気楽小学生海原みあおだった。
「任せてっ! 学校でカスタネットとハーモニカとトライアングル習ったからっ!」
 と、やる気満々。
「他に、天使の歌声やハーピィの歌声もあるよ!」
 やる気倍率ドン、更に倍だ。
 しかし、彼女は後々自分の世界観が如何に狭いか思い知る。
「すみません」
 明るく元気な声がした。
「は、ハイ?」
 雫は口から出てくる魂を押さえつけて、声の主の方を向いた。
「知り合いから聞いたんです」
 見たからにおとなしそうな風貌の19歳ほどの女性がいた。おとなしそうでも、手に小麦色のナマモノが猫掴みされてプラプラしている。
 ――体重いくつだよ?ナマモノ。それより携帯持っているのかナマモノ?
「大須観音、此でも音楽に心得あるから期待して♪」
「かわうそ?保証する」
 その場に居る全員は……頷くしかなかった。
 かわうそ?は絶対とは言わないが、嘘を付かないので信じる事にした。

 そして毎度おなじみ天然剣客が奇妙メニューを堪能する食堂では……、
「音楽魔神様には色々お世話になってるわよね、よろしくね」
 と、有無を言わさぬ雰囲気で織田義昭と長谷茜に微笑む硝月倉菜だった。
 さすがの2人も首を縦に振るわなければならなかった。
 ハッキリ言えば、義昭は音楽魔神が嫌いである。理由は初対面の時からだろう。悪い奴ではないが、なんかそりが合わない。そんな存在なのだ。
 茜は別段どうでも良い事件で断りたかったが、度重なる事件で魔神の存在は大きく、断る訳には行かなくなった。
 結局14音楽室に向かう。
 その時に倉菜は義昭にこっそり、
「悪魔退治の時、私の力の制御を助けてくれてありがとう」
 と、先日の事件の礼を言った。
 その言葉に、義昭は
「当然だよ、君とは友人だから」
 彼特有の笑みで答えた。

「天昇ですか……予想していましたが」
「うむ、肉体をもつ忌屍者は何れ灰になる。其れも又さだめなのよ。ああ、今まで共に音楽を奏でた友よ〜」
「いきなり、詩を作らないでくれ。前の時より上手になった気はするが」
「おおっとすまん。つい癖でのう」
 既に14音楽室で榊船亜真知と御影蓮也が魔神と話しをしていた。緑茶が美味しい。
「ところで、メンツの確保って出来ているのか?」
 と、蓮也は魔神に訊いた。
「期待して良いぞ。何より雫殿には友人がいっぱいおられる。余は素晴らしい友を持って感激ぞよ」
「織田義昭も来るかもしれないぞ」
「……」
 沈黙。
 魔神も義昭が苦手ならしい。やっぱり初対面の印象が悪かったからだろう。


2.14音楽室
 第14音楽室に集まった皆さん。
「気味が悪いなぁ」
 第一声、観音。
「其れはそうよ、だって前にゾンビとかいたもん」
 雫が答える。
「ヘヴィメタルならこれぐらい気味が悪くても良いさ」
 義昭や蓮也がいう。もう慣れたと言う感じだ。
「おお、来てくれたか、余はうれしいぞ」
 と、白くぽっちゃりしたヘヴィメタル衣装に身を包んだ歓喜の声を上げて迎えてくれた。
 デルフェスは苦い顔をしている。もちろん義昭も蓮也もだが。
 実は言うとデルフェスは彼を敬遠していた。なぜなら織田義昭をぞんざいに扱う事を嫌っているのだ。しかし、これは良い機会かもしれない。音楽を司る神あらば、完全覚醒時だと人が変わるかもしれないからだ。
 「皆さんがお集まりになったところで、楽譜と歌詞を拝見しましょう」
 亜真知がにこやかにお茶を人数分配る。
 予め人数+α分コピーした楽譜と歌詞を見る参加者。
 反応は。
「奇抜……だね……」
「此がヘヴィメタル……と言うものですか?」
「覚醒しなくてもなかなかいいんじゃないか?」
「歌詞は……怪談ものですか。しっかり日本語で書いているのが親切ですね」
 そう、音楽魔神の書いたのはヘヴィメタルなのだ。
 何人かは、彼のバンドが如何に酷い様だったか分かっている。
「魔神様」
 倉菜と亜真知が魔神に訊く。
「なんぞや?」
「もう少しポップスにすると良いかも」
 倉菜が提案する。
「ふむ……」
 魔神は腕を組んで思案している。
「分かった。アレンジなどはそなたらに任せる」
 承諾した。
 しかし、雫は
「歌詞はこのままが良いなぁ♪」
 と、うっとりしている。
「ど、どうして?」
 誰ともなく訊いた。
「だってさ!この学園で実際あった不思議事件を歌っているんだよ!もう歌ったら凄く怖いかも!」
「みあおも賛成!」
「……」
 流石にオカルト好きな元気少女とお気楽少女、誰も文句が言えなかった。
 ――召還呪歌より幾分ましであろう。


2.ヴォーカルだれにするの?
「問題は……役割分担ですね」
 このメンバーで一番音楽に詳しいのは楽器職人の卵である倉菜である。デルフェスも詳しいが400年前のクラッシックやオペラであるため現代音楽には疎い。
「さて、ヴォーカルは誰がしたいですか?」
 挙手したのはみあお、デルフェス、雫、そして観音だった。
「……これじゃバンドじゃなくてユニットかコーラスね」
 困った顔をする倉菜。
 義昭達は、楽器の微調整を手伝っている。義昭はギター、ベースはやっているという隠れた趣味をもっていた。
「一寸うるさくなるけど我慢してね」
 と、義昭はエレキギターを手に取り、弾いてみる。
 なかなか、たしなみレベルじゃない。インディーズからスカウト来るんじゃないかと言うレベルだ。
「じゃあ、先に楽器から決めた方が良いのかしら?」
「そうですわね」
 倉菜の言葉に同意する亜真知。
 此はさっくりと決まった。エレキギターが義昭、ドラムが茜(何故か)、キーボードが倉菜になった。
 アコースティック系しか手に付けていない蓮也は、
「アコースティックギターなら大丈夫だが?」
 と、言った。
 別段問題ないだろう

 一方、ヴォーカル組はどうするか30分ほど話し合って、
「オカルトの歌以外にないかしら……う〜んボク、楽器担当にうつるよ」
 観音が首をひねる。
「わたくしはバックコーラスで構いませんわ……」
 デルフェスが身を引く。
「じゃ、あたしもハーピィの歌声でバックコーラスにまわるか写真撮りにする〜」
 不思議なことにみあおも身を引いた。
「じゃ、決まりだね!」
 やる気満々の雫がヴォーカルとなった。

 蓮也と亜真知は魔神にこう訊いた。
「何故?俺たちを呼んだ?あんたの力なら……」
「どうしてですの?」
 しかし魔神は、
「音楽を好む友人を誘った方が楽しくはないかね?」
 そうとしか答えなかった。


3.みあおの時代錯誤発言
 さて、役割が決まったときにみあおが
「ところで“ばんど”って何?」
 魔神含むその場の方々が見事にころんだ。其れはギャグマンガのごとく。
「お父さんが言ってた“いかてん”とか“ふぉーくそんぐ”とかと関係あるのかな。“たけのこぞく”とか?」
「それは……似て非なる物だと思うのだが……少女よ」
 魔神は一応簡単にバンドの事を説明する。簡単に言えば各楽器とヴォーカル1名ずつ分担された小さな音楽集団、タケノコ族とはかつて自由歩道があったあの場所で踊る若者の中規模の集団、フォークソングは、現在駅前などで目立っているストリートミュージシャンなどが歌うジャンルでもある。懐メロものもあるだろう。
「ふ〜ん」
 あまり感心がないらしいみあお。実際彼女の参加理由は
 ――魔神が絡めば怪奇事件があるんだ
 ということなのだ。
 確かに既に数匹の音楽好きな浮遊霊やら非実体のインプがうろうろしている。
 観音が、
「ねぇ、結界呪符はっていい?」
 と、尋ねているが、もちろん結界呪譜を貼るなんて大却下である。
「とほほ」
 観音はションボリする。
 彼女を慰めるナマモノがいたりする。


4.倉菜さんスパルタ練習
 皆と音楽魔神との話し合いにより、音楽は少しメタルからロックに移行したが、歌詞だけは怪談ベースを微調整した。
 音楽をたしなむ者は其れに関すると人が変わる。硝月倉菜とて例外ではなかった。
 なにより、ライブの日程は直ぐ其処なのだ。時間がない。
 3ヶ月でプロ入りするTV番組があるわけだが(あったと言うのが正しいのか)、あれほど世の中うまくはいかないのだ。故に彼女は鬼のオーラを纏って、バンドメンバーを怒鳴る。
「義昭君!音程ずれているわ!」
「茜さん!〜」
「雫ちゃん!声が〜」
「バックコーラス!タイミングがずれているわ!」
 トドメとばかりに周りに浮遊霊や悪魔もケタケタ笑っているが、倉菜の睨みで縮こまる。
 注意されないで、逆に褒められるのは、観音だ。かなり筋が良いという。
そのおかげか、めきめきとメンバーは上達し、補欠の亜真知も一緒に楽器を練習し、みあおは逐一記撮影を楽しんでいる。
 休憩にはいると、倉菜の鬼の表情は消えた。
 お菓子などを手にティータイムになり、皆は真剣に且つ楽しくどうするかを話している。
「たとえば、このタイミングに」
「俺はこう〜」
「幽霊との悲恋歌は蓮也君が主役だよ」
 魔神とデルフェスは、ぎこちないが400年前の音楽について話しをしているようだ。
「あのオペラは、役者を選ぶのが難点であるが秀逸であるぞ」
「まぁ、良くおわかりで魔神様」
 こんな感じで。
 冷やかしで来ている、浮遊霊などは倉菜達と会話に参加していた。


5.本番:雫の本領発揮
 倉菜がライブチケットを剣道部や料理研究会の仲間や友人に売っていったり、観音も自分の喫茶店にチケット販売をしたりと客入りが良かった。
 バンド名は「Horror Tales」と勝手に決めてみる。
「ひねりがない……いやー」
 と、ナマモノの突っ込みは皆のいぢめで却下される。

 カスミに第14音楽室の使用許可を簡単に貰った(?)事でかなり下準備など簡単になった。もちろん、響カスミが付添人として登場する。
「大丈夫でしょうか?」
亜真知は義昭に訊く。
「何が?」
「いえ、カスミ先生霊感はないでしょうが……悪戯好きの……」
「ああ、やつら練習中に茜や硝月の体を触ろうとして返り討ちにあっているから大丈夫だ。魔神もその後こっぴどく叱っていたらしい」
「そうですか」
 どうも、魔神は何か隠しているのだろうと思った。
 因みに、魔神は棺桶で寝ているのこと。流石に悪魔独特の気を常人が触れると危険とかいうのだ。特に響カスミの前に現れたらどうなるかと言うこともある。
 そして、ライブが開幕された。

 狭いライブハウスである14音楽室。
「みんな、忙しい中集まってくれてありがとう!」
「おー!」
「怪談を曲に合わせてお届けするね。実話も入っているからって怖がっちゃ行けないよ!」
「おー!」
 もうノリノリの雫。因み悪魔達の出す歓喜のラップ音はかき消されている。
「まずは一曲目〜!」
 義昭のギターと茜のドラム、観音のベースに倉菜のキーボード。裏方で亜真知とカスミが音響調整をしている。
 かわうそ?とみあおは、写真撮影や録音担当に回った。
数曲目にアコースティックギターの蓮也の出番。とある幽霊の悲恋の歌。バックコーラスのデルフェスとみあお。悲しそうにそして切なそうに歌う雫。
 アンコール曲終了時、観客は大きな喝采(中にはラップ音)が14音楽室に轟いた。
 準備室の棺桶の中にいる魔神はにっこり微笑んでいることを誰も知らない。


Ending
 かなりの成功を収めた、怪談に曲を合わせたのライブ。
 今はカスミ抜きで魔神と皆は和気藹々と亜真知の用意したシフォンケーキ付きのティーセットで談話している。
「楽しかったですわ」
「余も満足よ。棺桶の中からでも聞こえた」
 この一幕で、デルフェスと魔神は仲が良くなった気もする。みあおは浮遊霊と悪魔と楽しくおしゃべりしている。
 義昭は、自分のギターの手入れをしてアコースティックギターを手に取って、何かを弾き始めた。
「Bard’s Song Iだな」
 魔神が言う。
「気に入っているんだ。この静かな曲はね」
 義昭が奏でるこの曲は、ドイツのメタルバンドが良くライブで弾くモノだったりするのだ。
 静かに流れるこの音楽。会話は弾む。
「雫さんがこんなに歌が上手とは思っていませんでしたわ」
「ありがとうデルフェスさん」
「本当に怖がって居た人もいるものね」
 ヴォーカルを務めた雫に話しが集中する。
「雫クン、いっそアイドルデビューしてみれば?」
「え?あたしがぁ?」
「ええぇ?」
 観音の言葉に、雫と若干名が驚く。
「そうだよ、写真写りも最高だし。歌最高だったよ!」
 カメラ係のみあおが笑って言った。
「そ、そんなの無理だよ〜」
 照れくさくて言葉を濁す雫だった。

 魔神はその話題をただ聞いていて笑っているだけだった。
 しかし、運命の歯車は回り始めていることを……彼女は知らない。



End?

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1415 海原・みあお 13 女 小学生】
【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2194 硝月・倉菜 17 女 女子高生兼楽器職人】
【2252 大須・観音 19 女 アイドルタレント兼喫茶店オーナー】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です
「音楽室の怪4:雫と音楽魔神」に参加して下さりありがとうございます。
ヴォーカル志望の方が多く選出に困りましたが、バックコーラス組にさせていただきました。
みあお様の「“ばんど”ってなに?」には笑いまして絶対入れたいシーンでした。
硝月様のスパルタも楽しませて書かせていただきました。
さて、魔神は何を考えていたのか……これは別のお話で。

大須観音さま初参加ありがとうございます。

では、機会がありましたらお会いしましょう。