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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『 Chess Game : Code α 』



 夜空へと――――高く、低く。

 響くのは、謳。
 女は、長い髪をかきあげるようにしながら、ゆるりと腕をあげた。
 紅い唇から、音がこぼれる。
 音をたてないまま、革のブーツでステップを踏み。
 とろけるような微笑を浮かべ。
 地上25メートルのビルの屋上で。幅5センチの柵の上で。女は踊る。
 微笑を浮かべたまま、軽やかに。

 ――――謳いましょう。踊りましょう。新たなる死者のために。
 あの愛らしい死体のために――――祝福を。

 紅い口唇が、青い桔梗に口付けるのを、東の空から月が見下ろしていた。



     ■  ■  ■


 目を開ければ、見慣れないものが見えた。
 ただ白い平面――それは天井。
 別に珍しくはない。珍しくはないが――見覚えはない。そんな、天井。
(……つまり、)
 外泊したんだな、と、時哉は結論づける。
 昨日の晩は叔父から譲りうけた店を臨時休業にして、19歳の若者らしい付き合いに参加した。いわゆる年度末の飲み会で、未成年の飲酒という――まあ、瑣末な問題はあるものの、それは珍しくもない。
 問題は、この見覚えのない天井だった。
 二日酔いの痛みに眉をしかめる。
 昨晩はあびるほど酒を飲んでいたから、そのせいで記憶が飛んでいるのかもしれない――というか、飛んでいる。
 そして、考えたくはないが、隣に人の寝ている気配がした。
 時哉は、深々と溜息をついて、そっとベッドの中を移動した。良い気はしない。まずいことになったと、そればかりが頭をめぐる。
 あえて、ベッドに横たわる人影から目をそらしつつ、ゆっくりとベッドから出た。
 ドアの外で、走り来る人の足音がした。その音から人数を予想する。おそらくは、4人か5人。
 時哉は、もういちど、深々と――もう、それ以外は他に何もやることがなく、溜息をついた。
 口元がなまぬるい笑みにゆがむ。
 激しい音をたてて開かれるドア。
 なだれこむ紺色の制服。
 どれもが、安っぽいドラマのようだ。現実とは、案外そういうものかもしれない。
「壁に両手をついて大人しくしろ」
 逆らう理由はなかった。逆らって痛い思いをする気はない。だが、視界の中にまともに手をつけような壁は見当たらなく、仕方がないので少し歩いてバスルームを囲むガラスに両手をつけた――が。
 そのガラスに映った背後の光景に、ぎょっとして時哉は振り返る。
「あぁ!?」
 抵抗するものと勘違いした警官に殴られ、気を失う寸前。
 視界に映ったのは、ベッドに横たわる、四十絡みの男の姿だった。


     ■  □  ■


 電話の向こうで、男は深々と溜息をついたようだった。溜息をつきたいのはこっちだってのと、時哉は心中で呟く。
「……まあ、人の趣味にとやかくは言わんが」
「今回に限り、とやかく言ってくれ」
 時哉は嘆息まじりに、男――草間武彦に向かって続ける。
「俺には断じて男趣味は無い。自分と同じ構造の体をなでまわしてどこが楽しい」
 目が覚めたとき、隣にあるのが死体だということは、すぐに気付いた。
 傍にいるのに体温がない。寝息が聞こえない。あるのは、無機物めいた存在感だけ。
 その事実から、横にあるのが死体だと推測するのは難しくない。予定外だったのは、それが四十男だったということくらいだ。
「だが、おかしいな」
 草間は黒電話の受話器を肩にはさんで、新聞を眺めた。2日前の記事だ。
 今では珍しくもなくなった官公署の不省疑惑が紙面を独占しているせいか、大きく取り上げられてはいないが、左隅にラブホテルで発見された男性の変死体の記事が掲載されている。未成年だからか時哉の名前は記載されていない。ただ、『同室に宿泊していたA少年(19)を重要参考人として現在取り調べを行っており……』と、印刷されていた。
「おまえの言うとおりなら、通報したのは誰なんだ?」
 当然だが時哉本人ではなく、ラブホテルの従業員でもなかったらしい。
 通報は女性の声だったというが、それ以上はまだわかっていない。少なくとも、警察の公式発表では、そうなっている。
「だから、その通報者を調べてくれって言ってるんだ」
「誰に」
「あんたに。草間武彦に。草間興信所でもいいぜ」
「おまえなあ。一度くらい電話帳めくってみたことないのか。どこの探偵事務所にも『刑事事件はお断り』って書いてあるだろう」
「あんたんとこ書いてねーよ。電話番号しか」
「……電話帳にスペースとるのは無料じゃないんだ」
 沈んだ草間の声に、時哉が囁く。
「貧乏は敵だな。……ところで、先月の光熱費。意外と馬鹿にならないよなあ、光熱費」
 口に出されたのは具体的な報酬額。さらに草間は沈黙した。
 時哉の仕事はやさしくないが、金払いはいい。身元がしっかりしている分、踏み倒される心配や減額される心配も無い。経費も領収書をそろえて提出すれば、報酬に上乗せされるはずだ。 
 考えて、考えて――事務所の経費も考慮に入れ――妥協案を下す。
「……水道代も含めろ」
 情けないとは思いながら、草間は応じた。
 時哉とは以前にも取引がある。怪奇探偵とまで言われる草間だが、性格は怪奇ではない。身元のしっかりしている確実な酬額を得られる依頼を逃す理由はなかった。
「オッケイ。じゃ、よろしく。通報者がわかったら連絡してくれ」
 了承をとりつげると、用件は済んだとばかりに時哉は電話を切ろうとした。
「待て。探すのは通報者だけでいいのか。犯人はどうする気だ」
 その気になれば、時哉は自分で人材が集められるはず。それを草間は知っている。
 情報屋兼仲介業を、高校2年の若さで継ぐことになった少年。
 いかにも教師の好みそうな優等生じみた表の顔と、人当たりの良さを上回る、欺瞞と利己的な傍観主義。時哉は、2年前に初めて会ったときから、そういう少年――今は青年と呼ぶべきかもしれないが――だった。
「おまえは自分から動いて解決するタイプじゃないが、他人任せも好まないだろう? それを、どうして俺によこす?」
「だからさ……」
「何をしたい。何を見たい?」
「―― そういうことを、いっぺんに聞くなって」
 苦笑して、時哉は答える。
 探すのは通報者だけで構わない。なぜなら、犯人と通報者の間には何らかの関係があると想像をつけているから。
「ついでに店の外で警察が張っててさ。ちょっとまずいだろ、じたばたすると」
 犯人じゃないのに犯人と間違われかねない。だから、今回は外注することにしたんだ。
 くつくつと笑う時哉は、心から楽しそうだった。
「あ、そういや連続殺人らしいぜ、この事件。俺が2日にして早々に解放されたのも、そのせいだろうな」
 フィリップ・マーロウを目指してみろよ。
 そう告げて切れた電話の受話器を、苦々しく思いながら草間は眺めていた。


     ■  □  ■


 車の行き交う道から北西へのびる路地へ入り暫く進む。
 右手にある柱のと屋根の歪んだ、崩れかけたような小さい店。ここは綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)が好んで訪れる古書店のひとつだ。
 有名ではなく、気難しい老爺と薄暗い店内に、他では見られないような類の本がずらりと並んでいる。いわゆる『いわくつき』の本までが無造作に床に積みあがっていたりするのも、汐耶にはおもしろい。
 本棚の間をきょろきょろと動き回る汐耶のことを、主人は見る目のあるお嬢さんだと気に入っている様子で、店の入口近くの上がり、カウンター代わりになっている文机の上に、汐耶のため老爺が淹れた煎茶が置いてある。
 汐耶自身はというと、その煎茶が冷めていくのも忘れて、両腕の中に確実に増えていく本を抱きしめながら、本棚めぐりを続けていた。
 その本が並んでいる本棚が、美麗な木目の杉で作られていたり、老爺が算盤をはじく文机が、分厚い樫の一枚板で作られた上物だったりするのだが、汐耶の関心はそこにはない。
 とりあえず、本。
 何はなくとも、本。
 命と妹と兄の次くらいには、本。
 両腕めいっぱいに本を抱えて、ちょっと埃に咳き込んだりしながら、汐耶はカウンターもとい、文机の前にどさりと本を下ろした。腕が少し痛い。仕方ないわね、と、汐耶は軽く腕をふる。
「待ちな。あんたむけのお勧めがあるよ」
 眼鏡をかけた老齢の店主が、厚い本をとりだす。
 赤い布張り。おもしろそうだと直感する。汐耶の目には、その本にかけられた封印も見えていた。
 何も知らない素人がかけたような、単純そうな封印。しかし、その奥に一筋縄ではけして解けない――下手をうてば、解くどころか、封印の跳ね返りを受けて大怪我でもすまないような。
 そんな性質の悪い封印。
 汐耶は少し考え、首をひねる。
「値段はいくらかしら?」
 そう。このさい、問題は封印のややこしさではなく―― それは解いてしまえばいいのだから――価格だ。
「ちょっと高いね」
 これっぽちと、老爺が2本指をだす。
 20万。
 いくら給料日の直後とはいっても、限度がある。
 5秒なやんで、汐耶は言った。
「分割してほしいんですけど」
 買うのをやめる選択肢はなかったようだ。汐耶は、その本も買い込み――代わりに他の本はまけてくれた――そのまま足を道の奥に向けた。
 十数メートルほどで、その店の扉は見える。
「……あら」
 汐耶は、店の扉の前で立ち止まった。足を止めた拍子、かけていたバッグが左肩からずるりとすべりおち、中途半端に腕にからまる。

   『 Closed 』

 目の前の扉にかけられた、真鍮製のプレート。
 店の閉店を示す、それ。
 夕闇をすぎた路地は、街灯の明かりまでが闇に沈んでいるようで、奇妙なまでに暗い。
 もう開店しているはずの時間なのにと、汐耶は首を傾げる。
(……かといって、ここまで来てしまいましたし……帰るのも面倒ですね)
 最初から夕食までには帰る予定だが、書店巡りのあとに珈琲を一杯のつもりで、予定を組んだのだ。
 店が閉まっているのは、予想外だった。
 少し考えた結果、汐耶はあっさりと決心した。
(店は休みでも人はいるでしょうし)
 ぎいぃ。
 今日に限って妙に重く聞こえる店のドアを背中で押す。
 何しろ、両手は本の重い袋でふさがっている。給料日の直後だったこと、さらに気になる新冊が並んでいたことも手伝って、買った本の数は半端ではない。現在、開いているのは背中しかないのだ。
 とりあえず、この荷物を置いて、ひとやすみしたい。
 ドアの開く音に、カウンターの中で振り返った店主の時哉は、がくりと首を折る。
 そして、恨み言のように呟いた。
「……原書だって読めるくせに、『Closed』 の意味くらい察しろよ……」
「道が暗くて読めませんでした」
「嘘だ……」
 その時哉の台詞を、汐耶はきっぱりと無視することにして、カウンターに腰をおろす。
「今日は休みだし。酒は出せねーから。そのつもりで」
「ええ。珈琲を一杯。焙煎の粗挽きで」
「承りました。……相変わらず、すごい本の量だな」
 開いている席に、どさりと置かれた本屋の袋に、いつものこととはいえ、時哉が厭きれたように言う。
 学生である以上、最低限の本には目を通すが、「それ以外は、週刊誌でもパス」という時哉は、きっと自分には一生かかっても理解できない趣味だと、ひそかに思う。
「予想よりも増えたんです。ハードカバーで買った本が、文庫で再販されていたりしましたので」
「買う理由がどこに……」
 茫然と――手元だけは、休まず動いているあたり、プロだが――時哉が呟く。
 汐耶は、逆に首をかしげた。
 ――たとえ同じ作者の、同じタイトルの、ほぼ同じ内容の本だとしても、ハードカバーで出版されたときと文庫版になったときでは登場人物のセリフが全く違っていたり、加筆されていたり、くどい部分が削除されていたりとあなどれない。
 後書きも変わっていたりするし、解説者が加わっていることもある。
 それらを全て把握して揃えてこそ、真の活字中毒者というものではないだろうか。
 ……そこまで極端なのは、活字中毒者の中でも稀な性癖であることは別にして――もちろん、汐耶がその稀な性癖の持ち主だとは、誰もひとことたりとて言っていないわけだが。
 その気があるのは、確かだ。
「それよりも、何があったんです?」
 置かれた珈琲カップの音を聞きながら、汐耶は視線を店のドアへとむけた。
「一応は隠れてましたけど、まるで警察の様な方もいらっしゃいますし」
「まるでじゃなくて、本物だけどな」
 この通り、普段は人が少ないから、車の1台でも止まってると目立つじゃん、と、時哉が見も蓋もないことを言う。
「ええ。確かに。あからさまに怪しく見えました」
 微笑みながら、汐耶は、ずばり核心をつく。
「それで、何があったんですか?」
「……いや、ちょっと」
「はい」
「飲みすぎて……気がついたら死体があったり……」
 汐耶が冷たい視線を時哉にそそぐ。
「男性が御趣味とは知りませんでしたが、私は、偏見はありませんから、安心してください」
「違っ」
「冗談です」
 空になったカップを置いた汐耶は、どう見てもあきれていた。
「……先週の記事ですね」
「よく憶えてるな」
「私、活字中毒者ですから。新聞も活字ですよ?」
 脱力というか、降参した時哉は、状況をいちから説明することにした。
 大学の飲み会があったこと。
 4次会の頃から記憶がないこと。
 気がついたら昼過ぎで、ラブホテルにいて、隣に死体があったこと。
 すぐに警察が踏み込んできて、参考人として任意同行を求められ……。
「でも、容疑者を詰問するような態度じゃないのが気にかかったんだ。夜になれば――監視付きでも、家に帰してくれたし、怒鳴られることもなかった。そうだな。あれは、『容疑者ではないことを確認』してるみたいだった」
 警察の態度はおかしかった。
 もし、あれが連続殺人で、今までの形式にのっとるなら、時哉は容疑者から外れる。
 時哉自身が、自分の犯行計画をごまかすために、目的のある連続殺人に見せかけようとしているのではない限り。
「そうですね……」
 肯きながら聞いていた汐耶は、時哉――の後ろの棚に並ぶ、酒瓶の列を眺めた。
「お酒を出す店の店主が、酔い潰れてどうするんですか」
「悪かったな。あんたみたいにワクじゃなくて!」
「ワク?」
「ザルなら、まだ網目があるだけマシだろーが」
 汐耶は無言のまま、カウンターごしに時哉の手の皮をつねる。
 思い切り。
 声も出ないまま、手を抱えて蹲った時哉に関せず、空になったカップに、代わりをそそいだ。
「うかつですね。口は禍いの元だそうです」
「自分でやっておいて何を……っ」
「調べられることは、全て調べたんですか? 飲み会の時にいた人は大学の関係者だと言いましたよね。連続殺人なら被害者達に関連性や共通性があるかもしれないでしょう? それに、有志さんもお酒には強いほうですから、酔い潰すのに薬が使われた可能性も――」
「――血液検査は、警察でされたよ。でも、睡眠剤なんかが使われたとしても、よっぽど大量じゃなきゃ、眠ってる間に分解されちまうらしい。お手上げだな」
「ラブホテルって防犯カメラあるからそれに写っているとか……いえ、それはコネがないと調べにくいわね」
「映ってたら指名手配されてるさ」
「そうですね……」
 汐耶は手元のカップを取りあげて口に運び、2杯目も空にしてしまったことに気付いた。
「有志さんは、通報した人を見つけたら――」
「もし、綾和泉が気になるなら、今、調べてるやつを紹介するぜ。見つけてくれたら、あれ、譲るよ」
 時哉が、親指で指ししめしたのは、店内に飾られている、スイス製の珈琲サイフォンだった。



 ――汐耶が、時哉に紹介された彼らに合流したのは、もう18時も回った時刻だった。
『不精髭の自称探偵と、能天気なおちゃめさん』
 相手の特徴を尋ねられた時哉は、そう謎の言葉で表したが、見て納得した汐耶である。
 よれたシャツと、よれたネクタイの中年――には少し早すぎる年代の男性がひとり。
 よく分からないまま、首をつっこんでしまったと見える青年がひとり。
 香水の匂いがきつすぎるのが気になる、その『不精鬚の自称探偵』の名を、志賀・哲生(しが・てつお)。
 表情のせいか、少年ぽさを残して見える、『能天気なおちゃめさん」の名が、夏野・影踏(なつの・かげふみ)。
 そこに、クールなスーツ姿の汐耶が加わる形になった。
「関わってしまった以上、気になりますので。よろしくおねがいします」
 そして、汐耶は時間を無駄にしなかった。
 哲生に顔をむけて、尋ねる。
「今までに判ったことはありますか?」
「ホテルの従業員は関係ないってことくらいか。全員に会ってみたが、被害者の死に関わってそうな奴はいなかった。近くを聞き込んでもみたが……事件のあった夜に、有志を見た憶えのあるやつさえいなかったくらいだ。ホテル街だから、人の顔を注視しないって言えば、それまでなんだが」
「そうそう。聞き込みして気付いたけど、俺もホテル行くとき、すれちがう奴の顔なんかじっくり見ないよなぁ」
 よっぽどの美人なら別だけど。
 そう付け加えた影踏の言う『美人』に、男性と女性の両方が含まれていることは、秘密。
 ついでに、ちらりと送られた視線も、汐耶はさらりとかわすことにした。
「有志が泊まった部屋ものぞいてきたが――あそこは、ベッドが変わってるな。まったく、惜しいことをしてくれる」
 哲生が足元の小石を蹴る。
「綾和泉さん――か。知ってることは?」
「ヒントになるかは判りませんが、草間興信所に依頼してると聞きましたので、連絡をとってみました。事務所は留守だったので、シュラインさんの携帯にですが……それで、ヒントは『チェス』とのことです」
「あ。知ってる。人間がコンピューターに負けた」
 雑学には豊富な影踏が、ぽんと手をうった。
「はい。それで思い出したんですが、鏡の国のアリスは、ご存知ですか?」
 一応は、不思議の国のアリスの続編ということになるのだろうか。ルイス・キャロルの小説である。
 話の中で、アリスは白の歩兵だ。それが赤の女王を倒し、最終的には王手をかけられる局面までもってゆく。これはチェスボードの上で再現もできる。
「普通、駒の色は黒と白なんですが、あの中では、『赤』と『白』になっているんです。殺した方法などは聞きましたが―― それで少し気になってしまって。1件目と3件目だけが、血が出る方法で殺されているんです」
 そういえば、【揺籠】にも、チェスボードが置いてあったわね……。
 ぼんやりと汐耶は思いだす。
 店の雰囲気作りに骨董品めいたものも飾ってあるのだろうと、前に見かけたときは、気にしなかったのだが。
 どこか虚ろな目の哲生がよろめいたが、汐耶も影踏も気付かなかった。
「だけどさ、それだけわかっても」
「ええ」
 口をとがらせた影踏に、汐耶が肯いて続ける。
 シュラインさんの話では、葛生・摩耶(くずう・まや)さんが情報をくれたそうです。
「次の殺人が起こりそうな場所があると言っていました。行ってみますか?」
 汐耶の問いに答えたのは、影踏ではなかった。
「ああ。すぐに行こう――」 
 とろりとした目で、哲生が笑った。


     ■  ■  ■



 ねえ、知っている?
 ――女はね、月の生き物なのよ。

 男の腕に、自分の腕をからめて女は微笑む。
 化粧気の少ない女の、不意をついた蠱惑的な微笑に、男は陶然とした。
 見下ろす白い首筋からたちのぼる、甘い香水。

 今宵は既月。
 細い月は西の地平へ消えてゆこうとしていた。



     ■  ■  ■

「うーん。死のにおいが近付いてきた……ああ、いい匂いだ……」
 かつかつと、路地にヒールの足音を響かせる汐耶の背後で、志賀・哲生(しが・てつお)がうっとりと呟いた。
 その足元が、ふらふらとしている。
「……何者ですか?」
「や。俺も知らない」
 汐耶にじっと見つめられて、夏野・影踏(なつの・かげふみ)は首をふる。
 まだ僅かな時間しか付き合ってない汐耶よりも、既に数時間も哲生に付き合ってる影踏の被害は甚大だった。
 法医学の基礎から始まって、様々な死体と死にかけの人間の話をえんえんと聞かされるのは、もはや拷問と言ってもいい。いや拷問と言うべきだ。それ以外のなんだと言うのか!
 元は、被害者の死体がどう処理されるのかが気になって、元は刑事だったという哲生に、変死体がどう扱われるのかを尋ねてしまった影踏のミスなのだが、聞かなくてもいいことまで聞いてしまった。
 おかげで、1ヶ月はハンバーグが食べられなくなりそうだなあと思う。
 何かを言い返さなきゃだめだと――まだ何を言い返すか、まったく決まってなかったりしたのだが――影踏は拳をぎゅっと握る。口を開きかけたとき、哲生が急に立ち止まった。
「死体のにおいだ……」
「――死のにおいじゃなくて、『死体のにおい』ですか?」
「ああ。間違いない。行くぞっ」
 言うが早いか、哲生が走りだす。仕方ないとばかりに、汐耶が後を追う。
「うぅあぁっ。ちょっと付き合いよすぎだぞ、俺っ」
 後を追いつつ、影踏がやけくそぎみに叫んだ。

 路地を走る。
 最初、自分の後ろを走っていた影踏が、何時の間にか前にいた。
 少し高めのヒールが、今は走りにくい。
「あの女がやばいのか!?」
 立ち止まった哲生に並んだ影踏が叫ぶ。
「ああああ! えっと、そこの女の子! 銀髪と黒髪のっ!」
 それが誰なのか、遅れている汐耶には、まだ見えない。
 けれど、『草間興信所』、『銀髪と黒髪の少女』、その単語が意味するものに、汐耶は心当たりがある。
 ――まさか。
 ――こんな場所に。
 嘘でしょうと叫びたくなりながら、汐耶は走った。
「逃げろ!」
 哲生が叫んで駆けだす。
「え?」
 そう反応した声は、よく聞き覚えのあるもので――汐耶はヒールの折れかけた靴を投げ捨てた。
「いいから、全力で逃げろ!」
 汐耶が路地の終わりに辿りついたのは、まさにそのときだった。
 視線は、一瞬で見慣れた姿を移す。海原・みあお(うなばら・―)と、草間零。
 女が落ちてくる。みあおの目前に。
 そして――落ちたスピードのまま。路上に着地した。
 左手に持っていた銃がみあおに向けられ――庇うように零が飛びだす。みあおと握っていた手を後ろにひいて。
「きゃああああっ」
 銃声は悲鳴でかきけされた。
「タナトス!」
 哲生が叫ぶのが聞こえたが、汐耶は見なかった。
 何かを叫んだかもしれない。
 倒れた零と、みあおを護らなければと――思ったかどうかもわからない。
 反射的に。
 そこに立たなければと思ったのだ。
 女は、何かに縛られたように、そこに立っている。
 顔を見ようとした瞬間、女の紅い唇が笑みを形づくった。
(消える――)
 どうして、そう感じたのか、わからない。
 けれど実際に、女は消えた。
 何かの呪縛から逃れるように腕を払うと、そのまま、アスファルトの路面へ。沈む。
「嘘……っ」
 駆けよった影踏が、無謀にも、消え行く手を掴もうとした。
 掴んだように、汐耶には見えた――見えたのだが。
 影踏も、訳がわからないというように、自分の手を見ている。 
「え……だって、俺……」
 すりぬけた、と、影踏が呟く。
「零ッ!」
 かけつけてきた草間の声で、汐耶も我に返った。
 振り向いて――そこに倒れる零の姿に血の気を失う。
 その服を汚す、血の量に。
「武彦さん、揺らさないで!」
「あ、ああ。わかってる……零!?」
 シュライン・エマに肩を抱かれながら、草間はそっと妹を抱き起こす。
「……草間? みあお……みあおはぶじ……」
 服についた血に、何が起こったのかわからないというふうに、みあおが周りを見る。
 焦点の合わない瞳。
 汐耶は、ともすると倒れかねないみあおの背を支えた。
「ええ、キミは無事。怪我はないわ。安心しなさい」
 混乱しているらしいみあおに視線を合わせ、ゆっくりと、囁く。
「大丈夫。大丈夫だから」
 やさしく、落ち着けるように髪を撫でる汐耶の指も、小さくふるえていた。
「えっと、ええ……救急車いるよな」
 所在なさげにしていた影踏が、うろたえながらも携帯を手にすると、草間が首をふった。
「いや……病院じゃなく、事務所に連れてかえる」
「タクシーは無理ですね。私がレンタカーを借りてきます。待っててください」
 汐耶がみあおを気にしながらも立ち上がると、影踏が後を追ってきた。
「私、ひとりでも大丈夫ですから」
「いや、でも……ほら、ええと。まず、靴履かないと」
 影踏に言われて、汐耶は自分が靴を投げ捨てたことを、やっと思い出した。
 気がつけば、足の裏が痛い。パンストの薄さの靴下が、足を守ってくれているわけもない。
「その足で行ったら、何事かと思われるし。俺が拾ってくるから」
 汐耶に差し出されたのは、影踏のスニーカーだった。
「時間ないし。車とって戻ってくるまでに、探しとく」
 借りられないと首をふれば、「やっぱ、男の靴なんか汚いよなぁ……」と大きくうなだれられ、汐耶は思わず、「そういうことではなく……」と言ってしまっていた。
 はっとしたときには、遅い。
 影踏は、スニーカーを汐耶に押し付けるようにして、道を引き返していた。
「夏野さん!」
「だって、女の子守るのって男の特権じゃん」
 影踏は、ぐっと親指をたてて、後はもう走っていってしまう。
 汐耶は手渡されてしまったスニーカーをどうしようかと思ったが――迷ってる暇はない。
 零は怪我をしている。
 靴をなくし、靴下もぼろぼろに破れた女が車を借りに行けば、不審な目を向けられるのは必須だ。
(――お借りします)
 きっと、履けば靴の中を血で汚してしまうことだろう。
 でも、ここでスニーカーを放ってしまうのは、影踏の好意を無駄にするだけだ。
 戻っていった影踏に、胸の中で頭をさげて、汐耶はスニーカーを履いて走った。


     ■  □  ■


(―― 【禍と幸と揺籠】 ――)
 そんな名前だったなと思い出しながら、草間は煙草のフィルタを噛む。
 幸と禍。禍と幸。
 その単語を、ただの順番の違いと、決め付けられるだろうか。
 開店前の店は薄暗く、ざわめきもなく、ただ静かで。
 人が入れば、それなりに幻想的な雰囲気をかもしだすに違いないオレンジ色の灯りさえ、不気味に人の影をゆらめかせる道具でしかない。
 そのカウンターの中に立つ時哉は、あまりにも違和感がなかった。
 いい気分はしなかった。ここに来ることさえ避けたかった。少なくとも今は。
 噛みすぎた煙草のフィルタが、口の中で散切れる。はかったように目の前に置かれた灰皿へ吐き出して、煙草を揉み消した。乱暴に。
「――犯人が誰なのか、気付いてたんじゃないのか、有志」
 草間は、調査報告書を持って時哉を見る。
 調査を請けおった興信所としての義務感だけで。
「最初から知ってたのか。犯人を」
「まさか」
 信じないとばかりに厳しい目で睨まれて、時哉は天井を仰ぐ。
 口にしているのは、本心から誓って事実なのだが、信じてもらえないのは仕方がない。
「まあ、いちばん楽で昔からある手じゃん。殺した本人が警察に通報するって」
 あれから――零が撃たれた夜から数日がたち、警察の捜査も前よりは進んでいる。
 だが、『進んでいる』と、『捗っている』は、イコールではない。
 通報に使われた携帯電話の番号は判明したが、プリペイド式の携帯電話を手に入れる術はいくらでもあり、入手ルートを特定するのは至難の業だと、馴染みの刑事が教えてくれた。
 所有者の名前はわれたのだが、予想どおりというべきか――実在しない架空の名義だった。
「……有志」
 どうして、それを最初に言ってくれなかったかと詰問しかけて、やめる。
 答えは簡単に想像がついた。
『訊かれなかったから』
 返る反応は、おそらくそんなところだ。
「飲めよ」
 草間の前に、音をたてずに湯気をたてるグラスが置かれる。
 温められた赤ワイン。いや、チェリーの香りが――わずかにするか。
「その顔色で帰らないほうがいいぜ?」
「誰のせいだと思ってる」
「俺は、草間興信所に依頼を出した。あんたは依頼を受けて調べたんだ」
 草間は調査書をカウンターに放り出し、立ち上がった。
 乱暴な動作に倒れた椅子の音が、耳につく。
「飲んでいかないのか?」
「誰がいるか」
 歩幅を大きくして、扉に向かう。振り返ることはおろか、椅子を直しもしなかった。
「―― 志賀は気付いたんだけどな」
 小さく笑いながら椅子をおこす時哉の声を聞いたのは、その本人と、誰もいない店内だけだった。



 館内のざわめきが、いつもより大きく聞こえる。
 そのざわめきの大きさが、騒ぐ子供の笑い声が耳にさわる。
 汐耶は、カウンターで淡々と返却・貸出業務をこなしながら、こっそりと溜息をついた。
(……あと5時間)
 それで、今日の仕事は終る。
 いつもなら、居残ってまで本とともにいたいくらいであったが、今日ばかりは本当に疲れていた。
 しかも――月曜が休館日とあってか、火曜日の仕事は多い。
 まず、山のような返却ボックスの本の片付けから始まって、既に休みになった学生たちが場所もわきまえず騒ぐのを苛立ちながら眺め、本を読むはずの机にもたれて眠るホームレスに眉をしかめ……。
「ほんと、疲れたわ」
 休憩時間になり、汐耶は来館者からは見えない場所で、思い切り両腕をのばした。
 そのときだ。
「……お姉さん」
 少し困ったように首をかしげ、少女が姿をのぞかせる。
 汐耶は、まばたき。
 ここで、この時間に見ると思わなかった少女の姿が、そこにある。
「何かあったの?」
 少女は、ふるふると首を横にふった。
「お姉さん、今日の朝、とても疲れていたみたいだから」
 ――疲れないはずもない。
 あの後――零が重傷をおった後のことだが、汐耶はレンタカーを借りに走り、その車の鍵を草間にわたした後、時哉の店に置き忘れた本の山に気付き…………。
 無意識にこぼれおちてしまった溜息を、少女は聞いたのだろう。
「来たら、だめでしたか?」
「いいえ。そうじゃないわ。本当に疲れてるわね、私」
 汐耶は少女を手招きすると、その体をぎゅっと抱きしめた。
 細い体から、ほんのりと珈琲の薫りがした。
 人のざわめきが遠くなる。
「あの……私、お弁当つくってみたんです。お姉さん、今日は作らなかったから」
「……学校は?」
「それは、あの……」
 視線を落として唇をかむ少女を、汐耶は微笑を浮かべて、もういちど抱きしめた。
「ありがとう」
 泣きたいほど嬉しいのは、こういうときだ。
 汐耶は涙をこらえるために天上を仰ぐ。
「でも、少し失敗したんです。お姉さんみたいには上手じゃなくて。学校は……」
「いいのよ」
 言い募る少女の口をひとさしゆびで、つんとおさえて、汐耶は少女の頭をなでた。
 空調の音さえ気にさわる、さきほどまでの気分が嘘のようだ。
 少女の腕をひいて、汐耶は歩きだす。
「ここで食べるのはいけないの。2階に食べるところがあるから、そこで食べましょう?」
 姉の笑顔と、つないだ手のぬくもりに、少女はやっと安心したようだった。
 もう終業式も間近で授業らしい授業もないとはいえ、怒られるのではないかと、ずっと心配だったらしい。
 はにかむように微笑んだ少女の肩を、汐耶は抱き寄せる。
 指先に、キズバンがふたつ。
「そのうちに、料理も教えてあげるわ」
「はい」
 明るい少女の返事に、汐耶は肩を抱く腕に力をこめた。
 そして、本心からの、なんの偽りもない言葉を。
 ただ、感謝を。かみしめるように。

「……ありがとう」


     ■  ■  ■



 パステルカラーのパンプスだった。
 唇はピンク。ピアスの耳元に、淡いトルマリン。
 薄いグレイのスーツは、しなやかな女の体の線を強調しつつも、下品ではなかった。
 片方の肩にかけた大きめのバッグが、仕事がえりのOLを思わせる。
 擦れ違いさま、肩のぶつかった男性に微笑みをむけて、女は駅の階段をのぼった。
 8センチのヒールの足元が、音もたてずに歩くことに誰も気付かない。
 帰宅時間にさしかかり、混雑するプラットフォームで、女は下りの電車を待つ。
 さして待つこともなく入ってきた電車の混み具合に疲れたような溜息をひとつおとして、乗りこんでいった。
 そのまま、何事もなく電車は動きだす。
 プラットフォームのゴミ箱に、もう、いらなくなった携帯電話を残して。


 この日――都内のホテル数件において、殺人事件があった。
 通報は、高く澄んだ女の声。
 謳うように、ゲームの終わりを告げた。

「Game Over。もう厭きたわ。時間切れよ」

 ――時計は、18時12分をさしていた。





                                  ― 了 ―



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                        ≪ 草間興信所 依頼報告書より、抜粋 ≫


  依頼人 :
    有志 時哉 (ゆうし ときや)

  依頼時刻 :
    3月21日、午後10時。依頼人より入電。

  依頼内容 :
    依頼人が巻き込まれた殺人事件の通報者について素性を調べてほしいとのこと。
    尚、犯人については調査の必要がないことを確認。


  事件内容 :
    3月16日、午前5時39分。
    所轄警察署に直接、女性の声で「死体を見つけて」との通報が入る。
    この時、女性はホテルの住所・名称・部屋番号も告げている。

    同日、午前5時47分。
    通報を受けた警察は都内某ホテルにて、男性の死体を発見。
    同室に宿泊していた依頼人を重要参考人として任意同行。
    男性の名は川本則夫。満42歳。
    検死によれば、死因は頚動脈に注射された高濃度の農薬による中毒死と判明。
    使用されたと思われる注射器は、同室のゴミ箱より発見された。
    科捜研にて詳しい鑑定を試みるが、指紋、その他の証拠物は発見されず。
    その後の調べにより、川本は名古屋に本社を持つ会社の社長であると確認された。

    死亡推定時刻は午前2時〜3時。
    重要参考人と目されて取調べを受けていた依頼人だが、その時刻、都内のカラオケスタジオにいたことを、
    店舗スタッフを含めた複数の人間が目撃しており、また、同カラオケスタジオから殺害現場のホテルまでは
    往復で40分程度かかることから、依頼人は容疑者から除外された。


  依頼された通報者の素性について :
    警察に残されていたテープから声紋鑑定した結果、間違いなく女性の声と確認。
    変声機等を使っていた痕跡は確認できないことから、肉声と思われる。
    警察の聞き込みに同行していたシュライン・エマも同一の声と明言している。
    また、通報者本人と接触し、携帯から警察に事件を通報する現場にいた葛生摩耶がテープの声を確認した
    ところ、声の他、話し方のアクセントや特徴がよく似ているとの判断を得た。

    数分後、通報者と思われる女性は、海原みなも、草間零を襲っているが、理由は不明。
    銃の種別は特定できなかったが、その場に残された弾丸から28口径の銃と判明。
    少女2人が襲われる現場にかけつけた、志賀哲生、夏野影踏の両名だが、女性の年齢は20代後半、髪を
    長くのばした、売春婦にも見えかねない格好であったと証言している。
    志賀哲生が強く主張したところによれば、少なくとも女性は数十名を殺した経験があるはずとのこと。

    海原みなも、草間零を襲ったあとの女性の行動については、確認ができていない。

    襲われた海原みなもは恐慌状態に陥っており、シュライン・エマも止血に集中していた。
    通報者と接触した葛生摩耶は、その際に銃で撃たれており現場を引き上げている。
    志賀哲生は、女性と接触した直後から酩酊状態に陥り、3日間、二日酔いの症状が続いた。
    血中からアルコールの検出されなかった志賀哲生が酩酊状態に陥った理由は解明できていない。

    女性を注視していた綾和泉汐耶、夏野影踏の両名は、女性が水面にでも沈むようにアスファルトの路面へ
    沈んで消えたと証言しているが、こちらも他の目撃者はなく確認はとれていない。
    尚、女が沈んだとされている場所の地下数メートルに、廃棄された地下道があることが判明。
    警察では現在、両名の証言との関連性を調べている。


    これらのことから、通報者の女性=犯人である可能性が高いと思われるが、銃を所持していながら、殺害に
    銃を使用していない理由は、未だ不明である。





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     登場人物 (この物語に登場した人物の一覧)
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生
 1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 都立図書館司書
 1979 / 葛生・摩耶  / 女 / 20 / 泡姫
 2151 / 志賀・哲生  / 男 / 30 / 私立探偵(元・刑事)
 2309 / 夏野・影踏  / 男 / 22 / 栄養士

 NPC  / 有志・時哉  / 男 / 19 / 大学生/【禍と幸の揺籠】の店主
 NPC  / 桔梗 (仮名) / 女 / 年齢不明 / 職業不明

 ※ 整理番号順に並んでいます。

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     ライターよりのひとこと   (ライター通信)
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 那季・契と申します。
 遅延となっておりましたチェスゲームをお届けします。
 長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

 起こっている事件自体は、他の方のものと変わっておりません。
 全く同じです。
 興信所依頼らしく、最後に報告書(らしきもの)も付けさせていただきました。
 2,3日中の間には、桔梗の作っていたチェスの版面をサイトのページに掲載します。
 よろしければ、御覧になってみてください。
  (現在、移転を検討中ですので、アドレスは記載いたしません)

 ちなみに、時哉が事件に巻き込まれたのは3月16日。
 時哉の依頼を受けて、皆様が行動を起こしていたのは3月22日。
 そして、エンディングの事件が起こったのは、3月29日です。
 どうして通報が18時12分なのか気になる方は、月齢を調べてみてください。
 ―― 蛇足ですが、時哉の事件の通報は12時35分でした。

 最後に。
 私個人の都合が重なったとはいえ、納期から10日以上お待たせする形になってしまいまして、
 綾和泉・汐耶さまと夏野・影踏さまには、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。

 本当に御参加いただき有難うございました。


---◆ 綾和泉・汐耶 さま ◆---

 初めまして。御参加ありがとうございました。
 そして、非常に遅くなってしまったことを改めてお詫びします。
 もしお気に召しましたなら、今後とも宜しく御願い致します。

 図書館司書さん。
 ひそかに大変な体力と労力のいる職場とうかがっております。
 無断持ち出しも多いことですし。
 今は、バーコードやICチップの図書館が大半になってしまって、
 カウンター業務も昔よりは便利になったものですが。
 貸し出しカードに自分の名前を書くのも、ひとつの楽しみでした。
 ……私事ですみません。

 汐耶さまなどは、御自宅にも大変な蔵書がありそうです。
 本は重い上にかさばりますから。
 お引越しの際、引越し業者の方は慌てて増援を呼んだことでしょう。

 ところで、今回、私は最後に出てきた少女――汐耶さまには、どなたなのか
 お心あたりもあるのではと思いますが……。
 そういえば、私立の学校の春休みというのは早くはじまるのでしょうか。
  (公立の小学校だったもので、春休みの始まり時期がいまいち……)

 今回は本当に申し訳ありませんでした。
 次回がありましたら、改めて宜しくおねがいします。
 個人的には書かせていただけて、とても楽しかったです。
 改めて、ありがとうございました。





        那季 契