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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


『 Chess Game : Code α 』



 夜空へと――――高く、低く。

 響くのは、謳。
 女は、長い髪をかきあげるようにしながら、ゆるりと腕をあげた。
 紅い唇から、音がこぼれる。
 音をたてないまま、革のブーツでステップを踏み。
 とろけるような微笑を浮かべ。
 地上25メートルのビルの屋上で。幅5センチの柵の上で。女は踊る。
 微笑を浮かべたまま、軽やかに。

 ――――謳いましょう。踊りましょう。新たなる死者のために。
 あの愛らしい死体のために――――祝福を。

 紅い口唇が、青い桔梗に口付けるのを、東の空から月が見下ろしていた。



     ■  ■  ■


 目を開ければ、見慣れないものが見えた。
 ただ白い平面――それは天井。
 別に珍しくはない。珍しくはないが――見覚えはない。そんな、天井。
(……つまり、)
 外泊したんだな、と、時哉は結論づける。
 昨日の晩は叔父から譲りうけた店を臨時休業にして、19歳の若者らしい付き合いに参加した。いわゆる年度末の飲み会で、未成年の飲酒という――まあ、瑣末な問題はあるものの、それは珍しくもない。
 問題は、この見覚えのない天井だった。
 二日酔いの痛みに眉をしかめる。
 昨晩はあびるほど酒を飲んでいたから、そのせいで記憶が飛んでいるのかもしれない――というか、飛んでいる。
 そして、考えたくはないが、隣に人の寝ている気配がした。
 時哉は、深々と溜息をついて、そっとベッドの中を移動した。良い気はしない。まずいことになったと、そればかりが頭をめぐる。
 あえて、ベッドに横たわる人影から目をそらしつつ、ゆっくりとベッドから出た。
 ドアの外で、走り来る人の足音がした。その音から人数を予想する。おそらくは、4人か5人。
 時哉は、もういちど、深々と――もう、それ以外は他に何もやることがなく、溜息をついた。
 口元がなまぬるい笑みにゆがむ。
 激しい音をたてて開かれるドア。
 なだれこむ紺色の制服。
 どれもが、安っぽいドラマのようだ。現実とは、案外そういうものかもしれない。
「壁に両手をついて大人しくしろ」
 逆らう理由はなかった。逆らって痛い思いをする気はない。だが、視界の中にまともに手をつけような壁は見当たらなく、仕方がないので少し歩いてバスルームを囲むガラスに両手をつけた――が。
 そのガラスに映った背後の光景に、ぎょっとして時哉は振り返る。
「あぁ!?」
 抵抗するものと勘違いした警官に殴られ、気を失う寸前。
 視界に映ったのは、ベッドに横たわる、四十絡みの男の姿だった。


     ■  □  ■


 電話の向こうで、男は深々と溜息をついたようだった。溜息をつきたいのはこっちだってのと、時哉は心中で呟く。
「……まあ、人の趣味にとやかくは言わんが」
「今回に限り、とやかく言ってくれ」
 時哉は嘆息まじりに、男――草間武彦に向かって続ける。
「俺には断じて男趣味は無い。自分と同じ構造の体をなでまわしてどこが楽しい」
 目が覚めたとき、隣にあるのが死体だということは、すぐに気付いた。
 傍にいるのに体温がない。寝息が聞こえない。あるのは、無機物めいた存在感だけ。
 その事実から、横にあるのが死体だと推測するのは難しくない。予定外だったのは、それが四十男だったということくらいだ。
「だが、おかしいな」
 草間は黒電話の受話器を肩にはさんで、新聞を眺めた。2日前の記事だ。
 今では珍しくもなくなった官公署の不省疑惑が紙面を独占しているせいか、大きく取り上げられてはいないが、左隅にラブホテルで発見された男性の変死体の記事が掲載されている。未成年だからか時哉の名前は記載されていない。ただ、『同室に宿泊していたA少年(19)を重要参考人として現在取り調べを行っており……』と、印刷されていた。
「おまえの言うとおりなら、通報したのは誰なんだ?」
 当然だが時哉本人ではなく、ラブホテルの従業員でもなかったらしい。
 通報は女性の声だったというが、それ以上はまだわかっていない。少なくとも、警察の公式発表では、そうなっている。
「だから、その通報者を調べてくれって言ってるんだ」
「誰に」
「あんたに。草間武彦に。草間興信所でもいいぜ」
「おまえなあ。一度くらい電話帳めくってみたことないのか。どこの探偵事務所にも『刑事事件はお断り』って書いてあるだろう」
「あんたんとこ書いてねーよ。電話番号しか」
「……電話帳にスペースとるのは無料じゃないんだ」
 沈んだ草間の声に、時哉が囁く。
「貧乏は敵だな。……ところで、先月の光熱費。意外と馬鹿にならないよなあ、光熱費」
 口に出されたのは具体的な報酬額。さらに草間は沈黙した。
 時哉の仕事はやさしくないが、金払いはいい。身元がしっかりしている分、踏み倒される心配や減額される心配も無い。経費も領収書をそろえて提出すれば、報酬に上乗せされるはずだ。 
 考えて、考えて――事務所の経費も考慮に入れ――妥協案を下す。
「……水道代も含めろ」
 情けないとは思いながら、草間は応じた。
 時哉とは以前にも取引がある。怪奇探偵とまで言われる草間だが、性格は怪奇ではない。身元のしっかりしている確実な酬額を得られる依頼を逃す理由はなかった。
「オッケイ。じゃ、よろしく。通報者がわかったら連絡してくれ」
 了承をとりつげると、用件は済んだとばかりに時哉は電話を切ろうとした。
「待て。探すのは通報者だけでいいのか。犯人はどうする気だ」
 その気になれば、時哉は自分で人材が集められるはず。それを草間は知っている。
 情報屋兼仲介業を、高校2年の若さで継ぐことになった少年。
 いかにも教師の好みそうな優等生じみた表の顔と、人当たりの良さを上回る、欺瞞と利己的な傍観主義。時哉は、2年前に初めて会ったときから、そういう少年――今は青年と呼ぶべきかもしれないが――だった。
「おまえは自分から動いて解決するタイプじゃないが、他人任せも好まないだろう? それを、どうして俺によこす?」
「だからさ……」
「何をしたい。何を見たい?」
「―― そういうことを、いっぺんに聞くなって」
 苦笑して、時哉は答える。
 探すのは通報者だけで構わない。なぜなら、犯人と通報者の間には何らかの関係があると想像をつけているから。
「ついでに店の外で警察が張っててさ。ちょっとまずいだろ、じたばたすると」
 犯人じゃないのに犯人と間違われかねない。だから、今回は外注することにしたんだ。
 くつくつと笑う時哉は、心から楽しそうだった。
「あ、そういや連続殺人らしいぜ、この事件。俺が2日にして早々に解放されたのも、そのせいだろうな」
 フィリップ・マーロウを目指してみろよ。
 そう告げて切れた電話の受話器を、苦々しく思いながら草間は眺めていた。


     ■  □  ■


 どこか懐かしさを感じさせる店内。
 それは、大正か昭和初期の、戦前を懐かしむような古き良き時代の。
 この店に訪れるのは、正直、初めてではない。夏野・影踏(なつの・かげふみ)は、草間興信所に調査を依頼した店に限りなく似て異なる店、つまりは【紺青茶房】にいた。以前に災難にみまわれた店なので、なんとなく居心地が悪い……ということはなく、あっけらかんとカウンターに座っている。
 よれたシャツも無精髭も、お菓子のにおいがする店の雰囲気から激しく浮いてはいたが、志賀・哲生(しが・てつお)もあっさりと座っている。物怖じしていては探偵はつとまらない。
 いちばん居心地悪そうにしているのは、時哉だった。
「おまえ、なんで昼間から仕事してるんだ?」
「とりあえず、ソルティドッグひとつ」
 哲生が怪訝そうな顔をすると、時哉は、うんざりしたように溜息をついた。影踏の注文を聞いて、さらに溜息をつく。
「こちらは喫茶店ですので、アルコールは御用意しておりません。アイリッシュコーヒーなら御用意できますが――未成年が酒場の店主やってると、色々都合が悪いんだよ。特に今は」
 手元だけは休みもせずにグラスを洗いながら、言い返す。
「おまえ、未成年だったのか」
「汚れ無き19歳」
 哲生が驚き、きっぱりと時哉が言い返せば、
「それは嘘だろ」
「大嘘つくなって」
 2人から同時に突っ込みが入る。
 それを見ていた【紺青茶房】の店主は、楽しそうに微笑した。
「おかげで夜の分は赤字ですし、昼間に働いてもらっているんですが――さて、お客様は、あなたに話があるようですね。休憩に入ってもいい構いませんよ、時哉さま」
「こんなときまで『さま』つけんなっ。嫌味だろ、それは!」
「ええ」
 絵に描いたような営業スマイル。
 哲生が、ぽんと時哉の肩に手をおいた。
「ご苦労様だな。――で、話なんだが」
 ずかずかと荒い歩調でカウンターの中から出てきた時哉に、一転して真剣な表情になる。
「まずは、おまえの匂いをかがせてくれ」
「――ああ!?」
「死体と同衾したんだろう。なんて羨ましいことをやらかすんだ。あの、息もない、動きもしないのに美しさを残した肢体。やわらかな肌は冷たくなるにしたがって蝋のように見え、生きているときとは違う甘い芳香が――――やべぇ、想像してたら色々と――――トイレはどこだ」
「……何をしにきたんだ、あんた……」
 がくりと脱力する時哉。
「安心してくれ。今のは冗談だ」
 誰が見ても本気としか思えない表情で、哲生が言い放つ。
「真顔で言われても、限りなく疑わしいけどな」
 時哉の感想は、尤も。
「女の死体じゃなくて残念だったな。女だったら――いや、それはともかく」
「そうだ。男もなかなか捨てたもんじゃないぞ。個人の趣味だから別に薦めたりしないが」
 横合いから影踏が割りこみ、話はさらに脱線する。
「性別で差別しちゃいかーん、と、俺は思う」
「そうだ。生死で差別するものじゃないぜ」
 果てしなく噛みあわない会話。
「…………いや、だから何をしにきたよ、あんたら…………」
 哲生、影踏の2人から、わざわざ席をひとつ空けて座った時哉がカウンターに突っ伏した。

 15分後。
 どうにか意識を浮上させるのに成功したらしい時哉が、身をおこす。
 その間、哲生は店主と死体談義に花を咲かせ、影踏はソルティ・ドッグの代わりにケーキを2個食べきった。
『――つーかな。隣で変死体やらミイラの作り方の話やらされて! その向こうで元気よくケーキ食われて! ひとりでぼこぼこ落ち込んでられるような状況じゃねえってんだよっ。どーにかしろよ、あいつら!』
 とは、後の時哉の発言だが。
 店主が妙に法医学だの解剖学だのに詳しかったのが、拍車をかけた原因だろうか。快楽殺人を起こす人の脳の動きや仕組みを解説されていると、教育番組でも聞いているような気分になってくる。
 そんな理由で、落ち込むのはやめたらしい。
「それで、何が聞きたい」
 もはや手っ取り早く終らせてしまえとばかりに時哉が向き直った。
 3個目になるモンブランにフォークを突き刺し、影踏が首をひねる。
「とりあえず論理的に、非科学的な可能性を排除して」
「ああ」
「……まず疑わしいのは、お前だ」
「ちょっと待て」
 どこが論理的なんだと椅子から立ち上がりかけた時哉の前で、哲生が呟く。
「素直に考えれば、通報者の女が犯人ないし、真犯人を知るものということになるが……さて」
「さてって何だよ」
「その晩の自分の足取りを追ってみたらどうだ?」
 常識的な哲生の意見に、だが、時哉が首をふる。
「無理だ」
 はっははーと、妙に乾いた笑い声。
「仲間ってほどでもねーじゃん。単に学科が同じってだけだしな。それはともかく……本当に憶えてないんだ。きれいさっぱり。そもそも、4次会でどこ行ったかも知らないしな、俺――飲んでたのは憶えてるけど」
「周りに聞けばわかるだろう」
「それは警察がやってくれたよ。なんでも、とりあえずは4次会で解散して――ファミレスで朝食が5次会だったって話だけどな。俺は4次会で帰った――らしい。どうやら」
 どれだけ飲んだんだと突っ込みかけて――哲生は気付く。
「未成年?」
「さっき19って言っただろ。今年で成人」
「―― それは、酒を飲んでいい年じゃないだろう」
 さすが、元・刑事(一応)。
 至極まともな―― それを言った当人がまともかどうかはともかく――意見に、時哉がふと目をそらした。どこか遠くを見るように。
「なあ、いまどき、飲み会もやらない大学があるかよ。高校の卒業打ち上げでさえ、酒飲んだぞ、俺」
「わかる。わかるぞ。俺も20歳前から飲んでるもんな。――そうか、わかった。答えは、お前か男が、無意識で女に化けるとかできたんだ。だから、通報者は――いだっ」
 無言のままで蹴りを入れた時哉を、影踏が涙目で見上げる。
「痛いじゃないか。時哉くん。―― それなら、怨霊で」
「次は鳩尾ねらうぞ」
 年が近いせいか、掛け合い漫才の様相をていしてきた2人を眺め、コーヒーをすすった哲生がぽつりともらす。
「若いってのはいいねぇ……」
 そういう哲生も、最初に飲酒をしたのが20歳前だったりするわけで、あまり人のことを言えた立場ではない。
「連続殺人だって言ったな。他の事件でも通報はあったのか?」
「もちろん。さすがに証拠までは入手してないけど、これでも情報屋兼だぜ。そのあたりまでは自分で調べたさ。被害者はなぜか全員が男。ここ数ヶ月の間にラブホテルで死んだのは俺のを含めて5件。全部、女の声で通報あり」
「ひととおりは調べたのか」
「言ったろ。俺のとこは情報屋兼なんだって。何も知りませんじゃみっともねーじゃん」
 時哉はそれから、死亡者の名前と死因をあげていった。職業、交友関係、愛人の有無。さらには、行きつけのクラブから、いつも指名するホステスの名前まで調べ上げているあたり、警察よりも行動は素早いかもしれない。
「それでも、被害者の接点が男ってこと以外出てこねーんだよな」
「見落としがあるんじゃないか」
「あっても気付かなきゃ、一緒だろーがよ」
 外は見ただろ? 警察の車が四六時中見張って後ついてくるから、自分で動き回るわけにもいかないじゃん。ほら、殺人容疑ははれてるけど、飲酒で厳重注意くらってるし。
 苦笑しながら時哉が続ける。
 自分で人に依頼したくても、この手の仕事に関わってくれそうなのは、夜の――【揺籠】の客たちだ。
 営業を再開できないことには、調べようがない――結果、草間興信所に依頼を出したわけだが。
「じゃあ、時哉くんが女装して――」
「まだ、言うか」
 興味はあるが、シリアスムードに耐えられないらしい影踏に、時哉が冷たい目をむけた。
「身長180こえてる男が女装して何が楽しい。見た目にも麗しくない!」
「化粧によっては意外と」
「冗談だろ。口紅は不味いんだぞ」
 ―― そういう問題でもない。
「まったく。埒があかないな。ひとまず、現場に行ってみるか」
 溜息をつきながら、死体が見つかったベッドで寝てみたいなどと、やはり本気で思いつつ、哲生が腰をあげる。
「おう。時哉くんは?」
「警察にはられてるから動かない」
 哲生は訳知り顔にうなずいた。
 時哉が動けば、この店をはってる連中も動くだろう。聞き込みをしたり探ったりと動くのに、糸は不要だ。
「それが正解だ。じゃあ行くか」
 当然、一緒に行くつもりだろうと影踏を見れば、いきなり目の前にばっと両手を突き出された。
「見たように、俺の手はクリームでべたべただ。だから、洗ってくる」
 マロンクリームのついた指をなめながら、影踏はトイレへ向かった。
 向かった理由はふたつ。
 クリームのついた指を洗うこと。
(―― それに、時哉くん、なんか言いたげだったもんな〜)
 これでも、一応は考えているのだ。
 うん、よく気付いた。察するなんて偉いぞ、俺。
 誰も褒めてくれないので、とりあえずは自分で自分を褒めておく。
 トイレから戻ると、時哉は哲生とよりそっていた――ように、影踏には見えた。
 ……影踏フィルタ効果だろうか。
「時哉くん。男に目覚めたのか」
「誰が目覚めるかっ」
「いや、今、こうよりそってたし」
「誰がいつどこで、地球が何回まわったときだ?」
「……時哉くん、すっごく大人気ないぞ」
 軽口をたたきあう2人を見ながら、哲生は薄く笑んで視線をふせた。
 だから……その哲生を横目で見た影踏と時哉が、さっと目配せしあったことに、哲生は気付かなかった。



 夕方も過ぎて合流した女性は、名前を綾和泉・汐耶(あやいずみ・せきや)と言った。
 ひとことで言えば、クール。
 パンツスーツも颯爽として、涼やかに格好いい。
「関わってしまった以上、気になりますので。よろしくおねがいします」
 すいと頭をさげる相手に、好印象を持ったのは、哲生も影踏も同じ。
 隠すことなく、「綺麗なおねいさん」は大好きな――おにいさんも同じくらい好きだが――影踏が視線を送ったが、それはあっさりと無視されてしまったようで、ちょっとだけ悲しい。
「今までに判ったことはありますか?」
「ホテルの従業員は関係ないってことくらいか。全員に会ってみたが、被害者の死に関わってそうな奴はいなかった。近くを聞き込んでもみたが……事件のあった夜に、有志を見た憶えのあるやつさえいなかったくらいだ。ホテル街だから、人の顔を注視しないって言えば、それまでなんだが」
「そうそう。聞き込みして気付いたけど、俺もホテル行くとき、すれちがう奴の顔なんかじっくり見ないよなぁ」
 よっぽどの美人なら別だけど。
 そう付け加えた影踏の言う『美人』には、もちろん女性と男性の両方が含まれている。
「有志が泊まった部屋ものぞいてきたが――あそこは、ベッドが変わってるな。まったく、惜しいことをしてくれる」
 哲生が足元の小石を蹴る。
「綾和泉さん――か。知ってることは?」
「ヒントになるかは判りませんが、草間興信所に依頼してると聞きましたので、連絡をとってみました。事務所は留守だったので、シュラインさんの携帯にですが……それで、ヒントは『チェス』とのことです」
「あ。知ってる。人間がコンピューターに負けた」
 雑学には豊富な影踏が、ぽんと手をうった。
「はい。それで思い出したんですが、鏡の国のアリスは、ご存知ですか?」
 一応は、不思議の国のアリスの続編ということになるのだろうか。ルイス・キャロルの小説である。
 話の中で、アリスは白の歩兵だ。それが赤の女王を倒し、最終的には王手をかけられる局面までもってゆく。これはチェスボードの上で再現もできる。
「普通、駒の色は黒と白なんですが、あの中では、『赤』と『白』になっているんです。殺した方法などは聞きましたが―― それで少し気になってしまって。1件目と3件目だけが、血が出る方法で殺されているんです」
 うわ。趣味サイアク。
 影踏は、思わず視線を無意味にめぐらす。 
 そのせいか、どこか虚ろな目の哲生がよろめいたが、影踏も汐耶も気付かーなかった。
「だけどさ、それだけわかっても」
「ええ」
 口をとがらせた影踏に、汐耶が肯いて続ける。
 シュラインさんの話では、葛生・摩耶(くずう・まや)さんが情報をくれたそうです。
「次の殺人が起こりそうな場所があると言っていました。行ってみますか?」
 汐耶の問いに答えたのは、影踏ではなかった。
「ああ。すぐに行こう――」 
 とろりとした目で、哲生が笑ったいた。
 影踏は、時哉とかわした目配せを思い出して、手を握る。
 ――手のひらが、冷たい汗にぬれる。


     ■  ■  ■



 ねえ、知っている?
 ――女はね、月の生き物なのよ。

 男の腕に、自分の腕をからめて女は微笑む。
 化粧気の少ない女の、不意をついた蠱惑的な微笑に、男は陶然とした。
 見下ろす白い首筋からたちのぼる、甘い香水。

 今宵は既月。
 細い月は西の地平へ消えてゆこうとしていた。



     ■  ■  ■


「うーん。死のにおいが近付いてきた……ああ、いい匂いだ……」
 かつかつと、路地にヒールの足音を響かせる汐耶の背後で、哲生がうっとりと呟いた。
 その足元が、ふらふらとしている。
「……何者ですか?」
「や。俺も知らない」
 汐耶にじっと見つめられて、影踏は首をふる。
 まだ僅かな時間しか付き合ってない汐耶よりも、既に数時間も哲生に付き合ってる影踏の被害は甚大だった。
 法医学の基礎から始まって、様々な死体と死にかけの人間の話をえんえんと聞かされるのは、もはや拷問と言ってもいい。いや拷問と言うべきだ。それ以外のなんだと言うのか!
 元は、被害者の死体がどう処理されるのかが気になって、元は刑事だったという哲生に、変死体がどう扱われるのかを尋ねてしまった影踏のミスなのだが、聞かなくてもいいことまで聞いてしまった。
 いや、聞いている間は楽しかったのだが、薄気味悪いが、なかなかひいていってくれないのだ。
 哲生の話が分かりやすく、リアルだったからかもしれない。
 おかげで、1ヶ月はハンバーグが食べられなくなりそうだなあと思う。
 何かを言い返さなきゃだめだと――まだ何を言い返すか、まったく決まってなかったりしたのだが――影踏は拳をぎゅっと握る。口を開きかけたとき、哲生が急に立ち止まった。
「死体のにおいだ……」
「――『死』じゃなくて、『死体のにおい』ですか?」
「ああ。間違いない。行くぞっ」
 言うが早いか、哲生が走りだす。仕方ないとばかりに、汐耶が後を追う。
「うぅあぁっ。ちょっと付き合いよすぎだぞ、俺っ」
 後を追いつつ、影踏がやけくそぎみに叫んだ。

 路地を走り、少し広い道へ出る。
 哲夫に数歩送れて、影踏が追いついた。
 息があがる。呼吸困難で、胸が痛い。
 立ち止まった哲生の目は女を――たったひとりの女を捕らえていた。
 ホテルの屋上に立ち、白い肌を惜しげもなく露出させた綺麗な――けれど、その女が、ひどく危険な気配をただよわせていることには、哲生のような刑事の経験も荒事の経験もない影踏でさえ判る。
「あの女がやばいのか!?」
 走ったせいですっかりあがった息を隠すこともできず、深呼吸をしようと視線を落とした影踏は―― そこに、少女2人の姿を発見する。
 こんなときに。
「ああああ! えっと、そこの女の子! 銀髪と黒髪のっ!」
 きょとんとして海原・みあお(うなばら・―)が立ち止まる。隣に長い黒髪の少女――草間零をつれて。
 どこかで見たような気がしたがそれどころではなく――哲生と影踏は、ほぼ同時に、そして蒼褪めた顔で叫んだ。
「逃げろ!」
 哲生が叫んで駆けだす。
「え?」
「いいから、全力で逃げろ!」
 哲生が繰り返し叫んだ瞬間、女が無造作に足を踏みだす。屋上の端に立っていた女は、当たり前に落ちた。
(違う。絶対に違う!)
 落ちたんじゃなくて、飛び降りたんじゃなくて……。
 考える暇はなかった。
 哲生の後を追うように、影踏も動いていた。
 女が落ちてくる。みあおの目前に。
 そして――落ちたスピードのまま。路上に着地した。
 左手に持っていた銃がみあおに向けられ――庇うように零が飛びだす。みあおと握っていた手を後ろにひいて。
「きゃああああっ」
 銃声は悲鳴でかきけされた。
「タナトス!」
 哲生が叫ぶと同時に何かをしたのは判ったが、影踏には何をしたのかわからなかった。
 ただ、女の動きがとまる。
 何ができるのかもわからないまま、倒れた零と、みあおの前に立った。横に汐耶が並ぶ。
 女は、何かに縛られたように、そこに立っている。
 顔を見ようとした瞬間、女の紅い唇が笑みを形づくった。
(消える――)
 どうして、そう感じたのか、わからない。
 けれど実際に、女は消えた。
 何かの呪縛から逃れるように腕を払うと、そのまま、アスファルトの路面へ。沈む。
「嘘……っ」
 駆けよった影踏が、無謀にも、消え行く手を掴もうとした。
 掴んだはずだった。掴んだように汐耶にも見えた―― そのはずなのだが。
 影踏は、訳がわからずに自分の手を見つめる。 
「え……だって、俺……」
 一瞬だけ、掴んだ感触があった。それが、冗談のようにすりぬけた。
 何だったんだろうと顔をあげて、茫然と立ち尽くしている哲生の姿が目に入る。
「しっかりしろって」
 背中を叩くと、幽霊でも見たような顔で振り返った。
「――あの女は」
「消えた……てか、沈んだ。水の中に落ちるみたいに、アスファルトなのに……」
「そう、か」
 視線が虚ろに、この世ではないどこかをさまようようで、影踏は眉をしかめた。
「零ッ!」
 かけつけてきた草間が、妹に呼びかけていた。
 振り向いて――そこに倒れる零の姿に、服を汚す血の量にぞっとする。
(死ぬ……?)
 ばくばくと心臓が早鐘をうつ。
「武彦さん、揺らさないで!」
「あ、ああ。わかってる……零!?」
 シュライン・エマに肩を抱かれながら、草間はそっと妹を抱き起こす。
「……草間? みあお……みあおはぶじ……」
 服についた血に、何が起こったのかわからないというふうに、みあおが周りを見る。
 焦点の合わない瞳。
 汐耶は、ともすると倒れかねないみあおの背を支えた。
「ええ、キミは無事。怪我はないわ。安心しなさい」
 混乱しているらしいみあおに視線を合わせ、ゆっくりと、囁く。
「大丈夫。大丈夫だから」
 やさしく、落ち着けるように髪を撫でる汐耶の指も、小さくふるえていた。
「えっと、ええ……救急車いるよな」
 何をしようか迷って、うろたえながらも携帯を手にした影踏に、草間が首をふった。
「いや……病院じゃなく、事務所に連れてかえる」
「タクシーは無理ですね。私がレンタカーを借りてきます。待っててください」
 立ち上がって歩き始めた汐耶の後ろ姿を見て、影踏は慌てて後を追った。
「私、ひとりでも大丈夫ですから」
「いや、でも……ほら、ええと。まず、靴履かないと」
 どこで靴をぬいだんだろうと疑問に思い、すぐに気付く。
 路地を走っていたとき。
 汐耶が何かを言って、投げ捨てるような音がした。
「その足で行ったら、何事かと思われるし。俺が拾ってくるから」
 後ろを追った影踏は見えていた。
 ところどころに血の滲んだ、汐耶の足の裏が。
「時間ないし。車とって戻ってくるまでに、探しとく」
 自分のスニーカーを脱いで差し出せば、借りられないと首を横にふられる。
「やっぱ、男の靴なんか汚いよなぁ……」
 くすんと泣きまねをしてみせると、汐耶が困ったように、「そういうことではなく……」と視線を泳がせる。
 その隙に、影踏は、スニーカーを汐耶の手に押し付けて、道を引き返していた。
「夏野さん!」
「だって、女の子守るのって男の特権じゃん」
 影踏は、ぐっと親指をたてて、後を見ずに走りだす。
「あー。痛い。めちゃくちゃ痛いーっ」
 痛いのは最初から分かっていても、『綺麗なおねいさん』の前では格好をつけておきたいのが男というもので。
 大怪我をした零の前で、痛いなどと騒げるわけもなく。
 この治療費は時哉くんに請求してやると、無理やり勝手に影踏は誓った。


     ■  □  ■


(―― 【禍と幸と揺籠】 ――)
 そんな名前だったなと思い出しながら、草間は煙草のフィルタを噛む。
 幸と禍。禍と幸。
 その単語を、ただの順番の違いと、決め付けられるだろうか。
 開店前の店は薄暗く、ざわめきもなく、ただ静かで。
 人が入れば、それなりに幻想的な雰囲気をかもしだすに違いないオレンジ色の灯りさえ、不気味に人の影をゆらめかせる道具でしかない。
 そのカウンターの中に立つ時哉は、あまりにも違和感がなかった。
 いい気分はしなかった。ここに来ることさえ避けたかった。少なくとも今は。
 噛みすぎた煙草のフィルタが、口の中で散切れる。はかったように目の前に置かれた灰皿へ吐き出して、煙草を揉み消した。乱暴に。
「――犯人が誰なのか、気付いてたんじゃないのか、有志」
 草間は、調査報告書を持って時哉を見る。
 調査を請けおった興信所としての義務感だけで。
「最初から知ってたのか。犯人を」
「まさか」
 信じないとばかりに厳しい目で睨まれて、時哉は天井を仰ぐ。
 口にしているのは、本心から誓って事実なのだが、信じてもらえないのは仕方がない。
「まあ、いちばん楽で昔からある手じゃん。殺した本人が警察に通報するって」
 あれから――零が撃たれた夜から数日がたち、警察の捜査も前よりは進んでいる。
 だが、『進んでいる』と、『捗っている』は、イコールではない。
 通報に使われた携帯電話の番号は判明したが、プリペイド式の携帯電話を手に入れる術はいくらでもあり、入手ルートを特定するのは至難の業だと、馴染みの刑事が教えてくれた。
 所有者の名前はわれたのだが、予想どおりというべきか――実在しない架空の名義だった。
「……有志」
 どうして、それを最初に言ってくれなかったかと詰問しかけて、やめる。
 答えは簡単に想像がついた。
『訊かれなかったから』
 返る反応は、おそらくそんなところだ。
「飲めよ」
 草間の前に、音をたてずに湯気をたてるグラスが置かれる。
 温められた赤ワイン。いや、チェリーの香りが――わずかにするか。
「その顔色で帰らないほうがいいぜ?」
「誰のせいだと思ってる」
「俺は、草間興信所に依頼を出した。あんたは依頼を受けて調べたんだ」
 草間は調査書をカウンターに放り出し、立ち上がった。
 乱暴な動作に倒れた椅子の音が、耳につく。
「飲んでいかないのか?」
「誰がいるか」
 歩幅を大きくして、扉に向かう。振り返ることはおろか、椅子を直しもしなかった。
「―― 志賀は気付いたんだけどな」
 小さく笑いながら椅子をおこす時哉の声を聞いたのは、その本人と、誰もいない店内だけだった。



「りべんじ。ソルティ・ドッグ」
 草間が報告書を出していった、その夜に時哉のもとを訪れた影踏は、無言でドアを開けるなり、ずかずかと歩いてきてカウンター席に陣取った。
 昼間は喫茶店として営業を再開している店も、夜の間は、まだ当分の間は休業が続くらしく、いくつかあるテーブルは、どれひとつとしてセッティングされていない。
 それどころか、いかにも営業は終りましたというふうに、テーブルの上に椅子が逆さまに乗っている。
「時哉くん、ソルティ・ドッグ。りべんじ」
 まだ店は休業中だし、外で警察の怖いオジサンたちが見張ってんだけどなあ……と呟きつつ、時哉は素直にグラスを用意しはじめた。
 ただし、時哉が作っているのは、ソルティ・ドッグではない。
 草間に出したのと同じ、ホットの赤ワインだ。
「足が痛い」
「聞いたよ」
 溜息をつく影踏の目の前に、グラスがおかれる。
 ホットカクテル用の、綺麗なグラスだった。
「女に気をつかって靴を貸すなんて格好いいじゃん」
「――なんも聞かないんだ?」
「昼間、草間が来ていったからな。報告書には、ざっと目を通した」
 ふぅんと鼻をならすと、くつくつと時哉が笑う。
 かたんと音をたてて影踏の前に置かれた皿には、数種類のケーキ。
「昼の余り」
「俺が、いつでも甘いもので元気になると思ったら大間違いだ」
「――でも、とりあえず」
 影踏の目の前に、フォークが置かれる。
「少しは元気になれるだろ?」
「……少しだけな」
 むすっとしながらも、影踏はケーキに手をつけた。
 甘いものは疲れをやわらげてくれる。
 それは、時哉はもちろん、栄養士である影踏もよく知っているのだった。


     ■  ■  ■



 パステルカラーのパンプスだった。
 唇はピンク。ピアスの耳元に、淡いトルマリン。
 薄いグレイのスーツは、しなやかな女の体の線を強調しつつも、下品ではなかった。
 片方の肩にかけた大きめのバッグが、仕事がえりのOLを思わせる。
 擦れ違いさま、肩のぶつかった男性に微笑みをむけて、女は駅の階段をのぼった。
 8センチのヒールの足元が、音もたてずに歩くことに誰も気付かない。
 帰宅時間にさしかかり、混雑するプラットフォームで、女は下りの電車を待つ。
 さして待つこともなく入ってきた電車の混み具合に疲れたような溜息をひとつおとして、乗りこんでいった。
 そのまま、何事もなく電車は動きだす。
 プラットフォームのゴミ箱に、もう、いらなくなった携帯電話を残して。


 この日――都内のホテル数件において、殺人事件があった。
 通報は、高く澄んだ女の声。
 謳うように、ゲームの終わりを告げた。

「Game Over。もう厭きたわ。時間切れよ」

 ――時計は、18時12分をさしていた。





                                  ― 了 ―



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                        ≪ 草間興信所 依頼報告書より、抜粋 ≫


  依頼人 :
    有志 時哉 (ゆうし ときや)

  依頼時刻 :
    3月21日、午後10時。依頼人より入電。

  依頼内容 :
    依頼人が巻き込まれた殺人事件の通報者について素性を調べてほしいとのこと。
    尚、犯人については調査の必要がないことを確認。


  事件内容 :
    3月16日、午前5時39分。
    所轄警察署に直接、女性の声で「死体を見つけて」との通報が入る。
    この時、女性はホテルの住所・名称・部屋番号も告げている。

    同日、午前5時47分。
    通報を受けた警察は都内某ホテルにて、男性の死体を発見。
    同室に宿泊していた依頼人を重要参考人として任意同行。
    男性の名は川本則夫。満42歳。
    検死によれば、死因は頚動脈に注射された高濃度の農薬による中毒死と判明。
    使用されたと思われる注射器は、同室のゴミ箱より発見された。
    科捜研にて詳しい鑑定を試みるが、指紋、その他の証拠物は発見されず。
    その後の調べにより、川本は名古屋に本社を持つ会社の社長であると確認された。

    死亡推定時刻は午前2時〜3時。
    重要参考人と目されて取調べを受けていた依頼人だが、その時刻、都内のカラオケスタジオにいたことを、
    店舗スタッフを含めた複数の人間が目撃しており、また、同カラオケスタジオから殺害現場のホテルまでは
    往復で40分程度かかることから、依頼人は容疑者から除外された。


  依頼された通報者の素性について :
    警察に残されていたテープから声紋鑑定した結果、間違いなく女性の声と確認。
    変声機等を使っていた痕跡は確認できないことから、肉声と思われる。
    警察の聞き込みに同行していたシュライン・エマも同一の声と明言している。
    また、通報者本人と接触し、携帯から警察に事件を通報する現場にいた葛生摩耶がテープの声を確認した
    ところ、声の他、話し方のアクセントや特徴がよく似ているとの判断を得た。

    数分後、通報者と思われる女性は、海原みなも、草間零を襲っているが、理由は不明。
    銃の種別は特定できなかったが、その場に残された弾丸から28口径の銃と判明。
    少女2人が襲われる現場にかけつけた、志賀哲生、夏野影踏の両名だが、女性の年齢は20代後半、髪を
    長くのばした、売春婦にも見えかねない格好であったと証言している。
    志賀哲生が強く主張したところによれば、少なくとも女性は数十名を殺した経験があるはずとのこと。

    海原みなも、草間零を襲ったあとの女性の行動については、確認ができていない。

    襲われた海原みなもは恐慌状態に陥っており、シュライン・エマも止血に集中していた。
    通報者と接触した葛生摩耶は、その際に銃で撃たれており現場を引き上げている。
    志賀哲生は、女性と接触した直後から酩酊状態に陥り、3日間、二日酔いの症状が続いた。
    血中からアルコールの検出されなかった志賀哲生が酩酊状態に陥った理由は解明できていない。

    女性を注視していた綾和泉汐耶、夏野影踏の両名は、女性が水面にでも沈むようにアスファルトの路面へ
    沈んで消えたと証言しているが、こちらも他の目撃者はなく確認はとれていない。
    尚、女が沈んだとされている場所の地下数メートルに、廃棄された地下道があることが判明。
    警察では現在、両名の証言との関連性を調べている。


    これらのことから、通報者の女性=犯人である可能性が高いと思われるが、銃を所持していながら、殺害に
    銃を使用していない理由は、未だ不明である。





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     登場人物 (この物語に登場した人物の一覧)
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 【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

 0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
 1415 / 海原・みあお / 女 / 13 / 小学生
 1449 / 綾和泉・汐耶 / 女 / 23 / 都立図書館司書
 1979 / 葛生・摩耶  / 女 / 20 / 泡姫
 2151 / 志賀・哲生  / 男 / 30 / 私立探偵(元・刑事)
 2309 / 夏野・影踏  / 男 / 22 / 栄養士

 NPC  / 有志・時哉  / 男 / 19 / 大学生/【禍と幸の揺籠】の店主
 NPC  / 桔梗 (仮名) / 女 / 年齢不明 / 職業不明

 ※ 整理番号順に並んでいます。

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     ライターよりのひとこと   (ライター通信)
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 那季・契と申します。
 遅延となっておりましたチェスゲームをお届けします。
 長らくお待たせして申し訳ありませんでした。

 起こっている事件自体は、他の方のものと変わっておりません。
 全く同じです。
 興信所依頼らしく、最後に報告書(らしきもの)も付けさせていただきました。

 桔梗の作ろうとしたチェスの版面と殺した順番の理由については、
 異界、【禍と幸の揺籠】内において、2・3日中に詳細を掲載させていただきます。
 もし宜しければ、御覧になってみてください。

 ちなみに、時哉が事件に巻き込まれたのは3月16日。
 時哉の依頼を受けて、皆様が行動を起こしていたのは3月22日。
 そして、エンディングの事件が起こったのは、3月29日です。
 どうして通報が18時12分なのか気になる方は、月齢を調べてみてください。
 ―― 蛇足ですが、時哉の事件の通報は12時35分でした。

 最後に。
 私個人の都合が重なったとはいえ、納期から10日以上お待たせする形になってしまいまして、
 綾和泉・汐耶さまと夏野・影踏さまには、この場をお借りして深くお詫び申し上げます。

 本当に御参加いただき有難うございました。


---◆ 夏野・影踏 さま ◆---

 改めて、御参加ありがとうございました。
 そして、非常に遅くなってしまったことを改めてお詫びします。

 パートを大きく2つに分けるとすれば、
 シュラインさま、みあおさま、摩耶さまの興信所側パート。
 汐耶さま、哲生さま、影踏さまの、【揺籠】パートとなるのですが、
 【揺籠】パートでは、何の情報も能力も持っていないながら、
 一番のキーキャラクターとなっております。
 こちら側での、ムードメーカーといったところでしょうか。

 ええ、すっかりケーキ好きなイメージができてしまっている影踏さまですが、
 ソルティドッグがお好きということは、
 もしかして、意外と辛いものも好みなのでしょうか。

 今回は本当に申し訳ありませんでした。
 次回がありましたら、改めて宜しくおねがいします。
 アイリッシュコーヒーも美味しいので、
 ぜひ、いつか、お飲みになってみてくださいませ。





        那季 契