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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


草間興信所・大改造計画

1.当選
「兄さーん! 大変ですぅ!!」

ぽかぽか陽気に誘われてうたた寝をしていた草間武彦はそんな零の声に起こされた。
「・・なんだよ? 客か?」
「違います! 当たったんです!!」
「・・腹か? なら便所に・・・」
「お下品です・・兄さん」
かみ合わない会話。草間はとりあえず、順序だてて聞くことにした。

「で、何が誰に当たったんだ?」
「うふふ〜♪ 『お仕事場改造・美フォー&アフター探訪』に当たったんです!」
「・・・? それ何なんだ?」

「だーかーらー。テレビの番組です!
『番組から提供される200万円を使って仕事場を素敵に改造』って番組に当選したんです!」

「なにーー!! じゃあ、今まで買えなかったあんな物、こんな物をこの手にするチャンスなのか!?」
「そうですよ! そして興信所の宣伝にもなって大チャンスです!!」

かくて、草間兄妹はかつてない大チャンスに恵まれることとなった・・・。


2.打ち合わせ
『お仕事場改造・美フォー&アフター探訪』の打ち合わせに、テレビ局からプロデューサーとデザイナーがやってきた。
今回、この舞い込んできたリフォーム話に興味を示した者は4名。
「零さん。強運だね〜」と、感心するのは柚品弧月(ゆしなこげつ)。
「嬉しい・・んだけど、ちょっと・・何かが引っかかるのよね・・」と、微妙に悩むのはシュライン・エマである。
「任せとき!うちがきちんと見合った内装にしたるさかい!」
「なんてったって、このあたしが来たんだから心配なしだよ!」
と、いつもより数倍燃えている大曽根(おおそね)つばさと丈峯楓香(たけみねふうか)。
「・・俺、人選間違えたかも・・」
ポツリと、草間の心に嫌な予感がよぎっていた。

「ハ〜イ、皆さん! アタクシが今回こちらの事務所を改造させていただくデザイナー『マドモアゼル・都井』と申しマース♪」

パンパンと手を叩き歩み出てきたのは、春にもかかわらず毛皮のコートを着込んだ性別不明・国籍不明の人間である。

この人・・・大丈夫か?

一瞬にしてそこにいた全員の顔にそう書かれていた。
「・・そんな顔しナーイ! アタクシにかかればお手の物なんデスから〜」
マドモアゼルはそう言った。
どうやらこういった反応には慣れているらしい。
「まずは所員の方々、1人ずつ面接しマース。感性と感性のぶつかり合いこそ芸術・・・さぁ! 一番手は誰デスか〜!?」

・・誰一人、その言葉に手を上げるものはいなかった・・・。


3.柚品
「お話、聞かせてもらえマースか〜?」
臨時的に面接室とされたキッチンで、柚品はマドモアゼルと向き合った。
・・・見れば見るほど正体が分からない人物である。
というか、少々近寄りたくないタイプである。
相手に気圧されないよう、柚品は姿勢を正した。
「とりあえず、ヤニで汚れた壁を塗りなおすか、壁紙を貼るかして明るくしたいですね」
「・・・」
「・・・」
「それだけデスか〜?」
「あとは・・・応接セットを豪華にして、エアコンをいいのに取り替えて・・」
「・・・」
「・・・」
「それだけ? もっとこうイメージはありまセンか〜??」
「・・はぁ。イメージ・・ですか?」
続かない会話に、柚品もマドモアゼルもよく分からない冷たい汗をかく。

そもそもなぜ個別に面接? 俺は何を求められているんだ??

場の雰囲気に耐えがたくなり、柚品は重い口を開いた。
「うらぶれた興信所じゃなくて、見た目にもやり手の探偵事務所ですって風に見せた方が今後の為にもいいと・・思っています」
マドモアゼルがカッと目を見開いた。
「・・なるほどデス! つまり、この事務所は実は探偵事務所だったのデスね〜!? んん、スんバラシイ〜!!」

「・・あんた、ここを何だと思っていたんだ?」
柚品は思わず、マドモアゼルにそう突っ込んでいた・・・。


4.面接終了
草間、零、エマ、楓香、つばさ、そして柚品と全ての面接が終わった。
「今からアトリエ帰って早速皆さんの意見を形にしマース。また、数日後にお会いしまショー!」
マドモアゼルとプロデューサーは草間興信所を後にした。
「・・なぁ、アイツにまともな改造が出来ると思うか?」
帰っていく二人を見送った後、草間がポツリと訊いた。
「期待は出来ないわね」
エマはきっぱりといった。
「同感です。というか、信用できないですね」
柚品もエマと同様の感想らしい。
「そうかなぁ? 結構いい感じで作ってくれそうだけどなぁ??」
「そやな。いい感覚もっとると思うで?」
楓香とつばさはこれまた違う感想らしい。
「上手くいくことを願うばかりです・・」
零の希望的観測を込めたそんな台詞が、やけに耳に残った一日であった・・・。


5.そして・・・
「出来まシタ〜! アタクシの全身全霊、渾身の作デース! きっと皆さん気に入るデース!!」
見取り図とイメージボードを引っさげ、マドモアゼルは約束の数日後に草間興信所に現れた。
突然の来訪に、急遽電話で呼び出された柚品・つばさ・楓香は興信所へと飛んできた。
では、マドモアゼルの渾身作を静聴することとしよう。


「まず、開閉に耳障りな音が出ないお年寄りから赤ちゃんまで安心なバリアフリー扉(ピンク)にしマース。
 入るとすぐに来客用ブザーの人体模型『ツトム君』がお出迎えデース。
 『御用の方は僕の心臓を押して下さい』と書いた看板持たせて心臓押すと悲鳴で所員にお知らせデース」

イメージボード:1
ピンクの扉の奥に潜む看板を持った人体模型の絵。
引き戸になっており大きな窓がついたそれは、まるで趣味の悪い病院の様・・。

「ヤニで汚れた壁はシンプルなピンクの壁紙貼りマース。ほんわかラブリーデスね〜。
 応接室は重厚なソファ入れるデース。もちろん空調設備も防音設備も最新入れマース。
 あと、本棚置きマース。心霊探偵事務所として相応しい本をいっぱい入れるのデース。
 これで人からやり手の心霊探偵事務所としてきっと認められること間違いナーシ!!」

イメージボード:2
重厚な革張りソファーの奥にはこれまた重厚な本棚。
本棚に並ぶのは「怪奇大全集」「世界奇病百科」「呪い返しの返し方」などなど怪しげなタイトル。
最新モデルのエアコンに、やはりピンクの壁紙が特徴的。
 
「シンプル・ファンシー・うらぶれた感じではなく・恐怖と怪しさを前面に。
 皆さんの意見取り入れたスんバラシイ集大成にして、アタクシの渾身作デース!
 予算の200万も余裕のクリア! いかがデスかー!?」


次々と説明されながら、マドモアゼルが描いたらしいイメージボードを次々と見せられた6人・・。
目が点である。
誰がこのような事態を想像していたのであろうか?
誰がこのような事務所へと来るというのだろうか?
金縛りにあった皆を代表するように、草間は1歩前へと進み出た。
そして・・・

「この話、なかったことにしてください」

深々と誰も聞いたことのないような丁寧且つ冷静なお断りをいれたのであった・・・。


6.夢の跡
「・・やっぱり勿体無かったんじゃない?」
楓香は先ほどから繰り返していた言葉をもう一度繰り返した。
「まぁ、終わったこといつまでも言うててもしゃーないって」
つばさも先ほど言った言葉をもう一度繰り返した。
「・・おまえら、あんな事務所にされてここに来たいと思うのか?」
少々ウトウトとしていた草間が、そう訊いた。
「私がお客だったら絶対にイヤだわ」
「俺も遠慮しときたいと思いますね」
即答したエマと柚品。
先ほどから何度でも繰り返されている会話に、零は溜息をついた。
「やっぱり、人間地道が一番ってことですね」
そう言った零に、エマがニコリと笑った。
「そうね。少しずつでもリフォームのお金、貯めましょうか」
「壁紙なら自分達で張り替えることも可能ですしね。その時は俺、手伝いますよ」
「まぁ、そん時が来たらうちも手伝ったるわ」
「まずは草間さんにお仕事持ってきてもらわないと、貯まるもんも貯まらないよね♪」
笑い声が草間興信所から溢れた。

今の状態でも、充分お客は来てるわけだし無理して改装する必要もないのでは?
・・まぁ、空調設備はもう少し整っていた方が休憩によるにはありがたいけどな・・。

柚品はそんな事を考えていた・・・。


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■□   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  □■

【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

2152 / 丈峯・楓香 / 女 / 15 / 高校生

0086 / シュライン・エマ / 女 / 26 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員

1582 / 柚品・弧月 / 男 / 22 / 大学生

1411 / 大曽根・つばさ / 女 / 13 / 中学生、退魔師


■□     ライター通信      □■
柚品弧月様

この度は『草間興信所・大改造計画』へのご参加ありがとうございます。
今回は『3』章が完全個別となっております。
その個別部分を元に意見を総合した結果が『5』章になっておりますが、どれが誰の意見なのかは他の方の話を見て初めてわかる・・・といった形にさせていただきました。
他の方の分もお時間が許せば読んでみてください。
崩し具合がなかなか難しい所ですが、お許し(?)を頂いたので今回も少々崩させていただきました。・・少々?(^^;
柚品様はなかなか書けば書くほど面白みが出てくるというか・・・多面的で面白いです。
こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします。(^^)
それでは、またお会いできることを楽しみにしております。
とーいでした。