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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


荊姫:第二夜

荊姫 荊姫 荊姫
四ツ夜の間は醒めてはならぬ

四神治める東南西北を荊で包み
王子の助けを妨げよ
月が東西四ツ夜を渡るまで
風が北南四ツ夜を渡るまで

白虎治める大道を
玄武治める丘目指し
青龍治める流水を
朱雀治める窪地に貯めよ

荊姫 荊姫 荊姫
四ツ夜の間は醒めてはならぬ


廃墟の中で、自称魔女は言った。
「人間も魔女も、愚かだわ」





 季節はもう暖かくなる頃、再びアトラス編集部に封書が届いた。
 文頭は以前と同じで予言のような、御伽めいたそれ。
「四ツ夜って言うから、てっきり数日後に二晩目が来るかと思っていたけど」
「違うみたいですねえ。以前このテの手紙が来たのは…まだ寒かったですからね」
 碇編集長と三下は不思議に思う。 オフィスの窓の外では既に満開の桜がその欠片をはらはらと風に漂わせていた。
「まあ何はともあれ、依頼は前と一緒よね。荊姫を守れって話」
「ですよねえ。えーと、日にちは…ううん、また微妙ですねぇ…」


「眠る荊姫を中心に東西南北を守護してくださる方を探しております。南北を守護する方はその場から動かないで下さい。東西を守護する方は荊姫と守護範囲の間を行き来しても構いません。たった四晩だけで良いんです。北から吹く風から荊姫をお守り下さい。どなたでも構いません。そんな方を集めてくださいませんか。どうぞ、次の満月に町外れの大きな洋館までお越しください。それ以上のことは人が集まってからお話いたします。 魔女より」






 具体的な時刻の指定もなく、とりあえず月が出るまでに、と二人は洋館に着いた。
 龍神吠音(たつがみ はいね)とセレスティ・カーニンガム両氏は、車でそこに向かった。
 
ここの所続く、悪天候のせいですっかり落ちた桜をぼんやり眺めながら歩いていた吠音は洋館までの一本道の途中で声をかけられる。
「こんばんわ、良い月夜ですね」
 黒塗りの豪奢な車の窓から顔を出した人物は少し靡く髪を押さえながら、吠音に言った。
「…そうですね」
 突然の呼びかけに戸惑いつつも吠音は答えた。
「ここから先は一本道ですよ。この先に何か御用がおありですか?」
「ええ、まあ…ちょっと」
 乗っている車や人物の雰囲気からして、この人間もあの洋館に関係のある人間なのだろうか。あんな屋敷なら、外車が出入りしていてもおかしくないのかもしれない。
「それはそれは。私もこの先のお屋敷に用事がありましてね。どうです?ご一緒しませんか?」
「あ、いや…でも…」
「車内で一人食事と言うのもなかなか寂しいものがありましてね、よろしければ一緒に召し上がりませんか?」
――そういえば、何も食べてなかったな――
 食い物に釣られるのは何とも情けない気がしたが、吠音は車に乗り込んだ。
「はじめまして、セレスティ・カーニンガムと申します」
「龍神吠音です…どうも」
「龍神さんはお屋敷に何を?」
「えーと…」
 名前以外の素性が知れない相手に目的を言うのが憚られて、吠音は口ごもった。それを知ってか知らずかで、セレスティが言う。
「私はこれから荊になりに行くのですよ。面白そうでしょう?」
「…は?」
「眠り姫を守る荊になるんです。魔女にも会いに行く予定ですよ」
「あ、ああ!俺も、俺もそうだ。この先の洋館に魔女がいて、眠い姫がいて…」
 今夜一晩共に過ごす相手だと分かって、吠音はまくし立てるように言った。
 屋敷までもう少し距離のあるその道を車で走りながら、二人はティーカップを片手に軽食を口にしつつ、会話した。


「お待ちしておりました」
 自称魔女は二人を静かな物腰で迎え入れた。
「龍神さんはお久しぶりです。そちらの方は…初めまして」
「初めまして魔女さん、セレスティ・カーニンガムと申します。粗方の事はお聞きしておりますので、重複説明は結構ですよ」
「ありがとうございます」
 以前より落ち着いた雰囲気の自称魔女に多少違和感を感じながらも、吠音は寝台の上に目をやった。それを見て、セレスティも倣う。
 上弦の月のときと同じように、そこには老婆が横たわり、細い息を吐いて眠っていた。
「老化が早いってホントなんだな」
「ええ、以前より皺が深くなっているでしょう?」
 自称魔女は穏やかに笑い、老婆の皺だらけの手を握った。その眼差しは以前と変わらず穏やかに慈しむような雰囲気を持っている。
「さて、お二人の守護方角をお聞きしましょうか」
「東西で東」
 二人の声が重なった。
「え…」
「おや」
 吠音とセレスティは顔を見合わせて間抜けな声を出した。自称魔女一人がおかしそうにくつくつ笑っている。
「わかりました。お二人ともご一緒ですね」
「でも二人とも一緒じゃあ南北の守護はどうするんだ?」
「大丈夫ですよ。既に一人、アトラス編集部様から派遣されてきた方が北の方角にいらっしゃいます。お二方よりかなり早めに来られたんですよ」
 自称魔女は二人を安心させるように言うと、少し話した。
「本当言うと、今日の場合は南北よりも東西の方が重要かもしれませんわ」
「どういうことです?」
「北から吹く風による信号を受けてしまうのは勿論危険なことですが、今日は満月です。この方は風にのみ反応するよう作られていますが…。満月は生命の誕生、生き物の目覚めを左右します。そう考えると満月の光が危険なもののように思えませんか」
「なるほど」
 セレスティは自称魔女と同じように穏やかな笑みで返した。
「でも実際は月の光が危険、なんてことないんだろ?」
「ええ、恐らく」
 吠音の問いにも、自称魔女は柔らかく笑って答えた。
「さぁ、第二夜を始めましょうか」





 吠音は一日目と同じように水鏡を設置する為に一旦寝台の傍を離れた。
「何事もないのが一番だけどね」
 一人ごちて、東の方角で一番離れた場所から中庭の中央、寝台のある方向を見た。
 うっすらと寝台のもとに置かれたランタンが姿勢良く立っている自称魔女と横たわる老婆、そして車椅子に座っているセレスティを映し出した。
 足がそう強くはないらしく、片手にステッキを持ったまま車椅子に座るセレスティの姿は人間ではないように見える。その絶世の容姿のせいかも知れないし、もしかしたら一緒に居る、どこか不思議な自称魔女の雰囲気との相乗効果かもしれない。
 どちらにしても、離れた場所からはそれ以上感じることも出来なかった。
 異様に大きな満月が不気味に顔を出し始める。
――あんなこと言うから、本当に月の光がやばかったりして――
 だとすると早々に姫の傍にいるのがいいだろう。車椅子の美丈夫と、か弱そうな自称魔女では流石に何かあった時に心強いとは言えまい。
 この季節特有の生温い風が吹き始めた。
 アトラス編集部から派遣されてきた人間は北をどうやって守るのだろう。魔女の言い方からして、どうも第一日に目に会った奴とは別の者のようだった。
 吠音はつらつら考えながら、寝台の元に戻った。



「結構大変なんですよ。寝台とこの方を移動させるのって」
「なるほど?だったら最初からお屋敷の中で寝かせてあげれば良いのでは?」
 セレスティと自称魔女は何やら会話していて、戻ってきた吠音はしばらく聞き入った。
「最初はそのつもりでした。ですが洋館は南南東という微妙な方角に立っています。入り組んだ建物の中では方角感覚が狂いますし、確実性を増すためにもこの中庭のように広く、はっきり方角が分かる方がいいでしょう?危険性は増しますけどね」
「その辺は”荊”に任せようってか」
「お帰りなさい吠音さん。その通りです」
 セレスティも戻ってきた吠音に会釈して笑いかけた。
「本当は…第二夜は室内でやろうとも思ったんですけどね…」
 自称魔女はぽそりと呟いた。
「どうして室内でやらなかったんだ?」
 聞き逃さなかった吠音が言った。
「考えを、改めてしまって」
 自称魔女の答えが真実でないことぐらいは二人ともすぐに分かったが、その表情があまりにも自戒に満ちていたので、問い詰めることはしなかった。
「じゃあもう一つの質問ですが」
「はい、何でしょう」
「あなたはこの方が起きているのを見たことはあるんですか?」
 自称魔女は少し意外そうな顔をしてから答えた。
「ありませんよ。爆発の事件の以前も、以後も、目を覚ましたところは見ておりません…というより、私は魔女ですから、目覚めさせることができません。最も、それが目的なのですけどね。一度目覚めてしまったら終わりですもの。研究所の中ではこの方のような"姫たち”がたくさんおりました。私は実験段階にある彼女たちが目覚めないように監視・制御する役目を負っていました。あえて魔女としてのトクベツな力を挙げるとしたらこの点でしょうか」
「どうやって制御するんだ?何かボタンでも押しちゃいけないとか?」
「それとも本当に何か特殊な能力があなた自身にあられるとか…」
「企業秘密です」
 それ以上踏み込むな、という笑顔で、自称魔女は笑った。
 自称魔女は黒い服を着ていた。ハイネックの上着に長袖で、スカート丈は足元まで覆うような、殆ど肌を露出しない井出立ちは魔女そのものと言ってもよかったかもしれない。
 第一夜の時は季節に逆らったように寒そうな素肌をさらけ出していたのに。

 風は吹いてこなかった。ランタンの炎も揺れず、寝台の敷き布も靡かなかった。セレスティが、南北にいらっしゃる方が頑張っておられるようですね、と言った。
「全く、お国の考えることはよく分からんね」
 吠音は寝台に背を預けて座り込み、うーんと伸びをした。自称魔女も足を畳んで座る。石畳に黒いスカートの裾が広がり、それをランタンの炎が橙に照らした。
「ねえ、あんた自身は研究所でやってたこととか、不審に思わなかったわけ?世間様はどう考えるだろうとかさ。こういう依頼頼むくらいだから、多少は研究所の方針に、反感とかあったんじゃないのか?」
「そりゃあ、ありましたよ。何て非人道的な、って何度も思いました。だから私は自ら制御の役目を買って出たし、もし爆発の事件が起こらなくて、そのまま実験が続行されたとしても、私は最後の最後まで彼女たちの目覚めを引き伸ばそうとも思っていました」
「必要とあらば、何らかの訴訟も起こせたでしょうし、メディアにだってもっと積極的に情報公開することも出来た筈ですが」
 セレスティが車椅子の上から、地面に座る二人を見下ろして聞いた。
「私にそんな権限はありませんでした。と言ってもその気になれば、セレスティさんの仰るように行動も起こせたでしょうね」
「どうしてやらなかったんだ?」
「”姫”として選ばれた人間は、社会的に抹消を受けた者です。戸籍も住所登録も存在しない、現実にはいないことになっている人間です。そんな者たちの人権を訴えても勝ち目はありませんし、何より上層部がそう言った訴えを全部食い止めてしまうでしょうね」
「国が絡むと大変だなぁ」
「全くですね」
 二人は反撃しようがないほどの自称魔女の答えに閉口してしまった。
 相変わらず風は吹かない。遠くで微かな轟音が聞こえるだけだった。それが一体何の音なのか、予想は朧にしかつかなかった。
「じゃあ、所内でやってた内容ってのは何か話せることはあるかい?」
「安心してくださいね。秘密は絶対厳守しますから」
「そうですね、ええと、何があるかな…。専らの内容は全部生物学を応用した内容です。ねずみ一匹のクローンから、人間一人のクローンまで。個々の運動能力から神経回路の発達、環境適応能力、とにかく、生き物としてのあらゆる可能性を追求していた、とでも言いましょうか。"姫”に関して言うならば、元は数人の人間だったんです。各々の身体能力の使える部分だけを搾取し、造り変えて、希望に適う"一人”が出来上がったら、今度はその一人を量産して、その過程で出てきた失敗作や不良品に改良を重ねて」
 自称魔女は台本でも読むように淡々と話す。どこも見ていないような、落ち着いた呼吸。
「人間は…モノじゃないのに」
 吠音が呟いた。
 その通りだと思います、と自称魔女は立ち上がり、姫の髪を梳いた。
「見たところ、大変愛着を持っておられるようですね」
 セレスティは眠る老婆の掛け布を整える自称魔女に言った。
「そうですね。付き合い、長いですから」
「まるでご姉妹のようにもお見受けいたしますが」
「そんなところかもしれませんし、実のところはもっと近しいようにも思えます」
「と、言うのは?」
「毎日毎日、眠るこの方に話しかけていましたから」
「親や、子供のように思えると?」
「そうかもしれません」
 煮え切らない答えに、セレスティはやれやれ、と苦笑した。
 

 月が随分高くなったころ、吠音は漸く腰を上げた。
「寝台に陣を張ろう」
 退くように言われた二人は少し寝台から離れる。
 自称魔女はセレスティの車椅子を押しながら問う。
「陣?どうしてですか?」
「なんとなく、始めに聞いた時から、月の光が怖いような気がしたから、備えあればなんとやらって言うだろ」
「水の陣ですね。系統が違うかもしれませんが、お手伝いできますよ」
「ありがとう、助かるよ」
 月はゆっくり天頂に向かう。遠くで聞こえるゴオという音が少し強くなった気がした。
 ランタンの光さえも弱々しく感じられるほどに今夜の月は大きく明るい。薄雲を突き抜けてその光は4人を青白く照らした。
 二人掛りで一つの寝台に陣を張るのはとても簡単で、セレスティが自分は素早く動けないことを詫びたが、吠音は
「良いよ。同じ水系統の能力者ってだけで、随分心強いし助かるから」
 と言った。
 印を切ると、引いた陣から青白い光が輝き出した。正確には、一定の間隔をあけて置いた吠音の水鏡が光ったと言うべきなのだが。
「時間です。今が丁度月の天頂時刻です」
 自称魔女が懐中時計を見て言った。
「ここのところずっと悪天候だったからこんなに綺麗な月夜は久しぶり。風が吹く夜と月齢が重なっていないと編集部様には封書を送る必要が無いから」
「ふうん」
「さあ、陣は完成しました。離れておきましょう」
 三人は寝台を囲む水鏡と呪陣から離れた。
 月の光が真上から寝台を照らす。陣がそれを跳ね返すように光る。
「なんか、自分で張っといて言うのもアレだけど、怖いな。その、綺麗過ぎてっていうか、風は確かに吹いてないけど、光に当てられて起き上がったりしそうで」
「大丈夫でしょう」
 言う吠音の横に立ったセレスティが元気付けるように言った。
 自称魔女は寝台の方向を見て、呟く。
「このまま、息を引き取ってくれたら良いのに」
 悲痛さをこめたそれに、二人は何も言わなかった。

 誕生、生まれ、目覚めに影響する満月は大きく、青い光を寝台に振りかざす。まるで人間が死ぬ時の迎えのように。
 その光を、迎えを拒むように、水鏡は静かに光った。無風状態にあるその場所で、そんな光だけが、煌々と時間を攫っていった。

「そう言えば」
 不意に口を開いたのはセレスティだった。
「魔女さんは普段はどうしてらっしゃるんですか?例えばお食事や、睡眠などは全部お屋敷で摂ってらっしゃるのでしょうか?荊姫を置いて?」
「……いいえ」
 少し沈黙を置いたあとに自称魔女は答えた。自称魔女の体は細かった。
「摂ってないんです。食事も、睡眠も」
「それで生きていると言うのはどういうことですか?」
「……魔女ですから、という答えではいけませんか」
「いずれ明らかになることと捉えてよろしいですか?」
 セレスティの問いに、自称魔女は静かに頷くだけだった。






 夜明けと共に北の方角から一人戻ってきた。既に陣を片付け終えたその場所に現れたのは、男であった。
「初めまして。アトラス編集部から派遣されてきました」
 米川と名乗った男は切り裂かれた右手に包帯を巻きながら簡単に自己紹介した。
「お疲れ様です」
 自称魔女が包帯を巻くのを手伝ってやる。
「どうやって風を?ここは一晩全くの無風状態だったが…それにその傷は…」
 石畳に滴り落ちる赤黒い血が痛々しく、吠音は見慣れた筈のそれから目をそむけつつ聞いた。
「俺は風を使うことが出来ます。でも、今回のアレはどうにも暴れ馬みたいな風でね。捻ることも止めることも出来なかったから、こっちも風を起こしたんです。それで跳ね返したようなもんですよ。この傷はその時の衝撃というかしっぺ返しと言うか、まあそんなところですか」
 米川はアッサリ答えると、手首で白い包帯をきゅっと結んだ。
「跳ね返し…」
「私たちと同じようなことをやってらしたんですね」
 吠音とセレスティはさっきまで自分たちが見ていた光景を思い出していた。こちらでは光を光で跳ね返し、北の方角では風で風を跳ね返していたなんて。
「あ、でも風は跳ね返せたけど、信号はどうか分かりませんよ。風と信号が一体化してるのか、それとも風に乗って信号がやってくるのか」
「大丈夫でしたよ」
 自称魔女がランタンの火を吹き消しながら答えた。
「備えあって良かったな」
「全くです」

 東から顔を出した太陽には満月のような覇気がなく、分厚い雲がどんよりと漂っていた。
「夜中は晴れてたのに、今日はまた雨みたいですね」
 自称魔女は溜息混じりに言って東の空を見た。
「どうするんだ?寝台もアンタも、この場所に居るままなのか?雨が降るのに」
「米川さんの言うとおりだよ。なんなら屋敷まで運ぶの、手伝おう」
「私も、ランタンくらいなら手に持つことも出来ますし、室内にお入りになった方がよろしいですよ」
 三人の申し出に、自称魔女はちょっと驚いた表情の後、白い頬を少し色づかせて笑った。
「ありがとう。頼んでもよろしいですか」

 寝台も姫の体も思いのほか軽かった。それは大の男が運びにかかったからかもしれない。男性の力なら軽く感じたのかもしれない。
 だが、組み立てた木の上に何枚か敷き布を敷いただけの簡単なものだったから、もしかしたら一人で移動させるのだって可能かもしれない。
 この自称魔女くらいの女性であれば(体は細いが)少し頑張れば無理ではないはずだった。
 広い中庭を突っ切って、洋館へ入った、そのすぐの場所で、自称魔女はもういい、と言った。
「ここで結構です。雨にさえ濡れなければそれで充分すぎるほど充分なんです」
 不可解な物言いではあったが本人がここで良いと言うなら仕方があるまい、と三人は持っていたものを全部その場所にきちんと置いて整えた。
「じゃあ今回はこれで終了です。お疲れ様でした」
 自称魔女は深々と頭を下げる。
 三人は洋館を出て、それぞれの帰路につく。
 米川はこの後まだ用事があるからと、早々に吠音とセレスティを置いて立ち去った。
「跳ね返した風のせいで、街がどうなってるか分かりませんが」
 などと無責任なセリフを残して。

「車でお送りいたしましょうか」
「いや、トレーニングがてら、走って帰ることにするよ」
「ボクシングを、やってらっしゃるそうですね」
「まあね。一発受けてみるかい?」
「遠慮しておきます」
 苦笑するセレスティは車に乗り込んだ。
 吠音はゆっくり、車の後を追うように走り始める。
 セレスティの乗る車の、バックミラーに映る吠音の姿がやがて遠くなって消えていった。



第二夜 終




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【2619 / 龍神吠音 / 男 / 19 / プロボクサー】
【1833/セレスティ・カーニンガム/男/725歳/財閥総帥・占い師・水霊使い】



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■         ライター通信          ■
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相田命です。
荊姫:第二夜にご参加くださりありがとうございました。
プレイングをお読みしまして、設定してある部分のどこまでを公開してしまおうか、どこまでを茶化してしまおうか、と考えてしまいました。
どうも納得のいかない自称魔女の言い方は全て伏線だと思っていただいて結構かと(笑)
今回は全体的に会話文中心のお話になってしまいましたね。
のんびりゆっくり、四夜まで進めていきたいと思いますので、また気が向かれましたらご参加下さると嬉しく思います。


それでは今回は同一のライター通信にて失礼いたします。