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<東京怪談・PCゲームノベル>


★ステキな人の来訪と……肉じゃが

 〈門屋心理相談室〉。
 立地条件が悪い故、来客数が少ない貧乏クリニック。此処の所長の性格か格好のせいか、それとも土地以外に何があるか、今月の家賃が待っているため、カップ麺で暮らしている。
 「神聖都学園での給料日まで……あと……」と、ある事情で転がり込んでいる、似非息子に何日も言われながら門屋将太郎は、黙々とカップ麺を食っていた。
 門屋の家計簿はいつも火の車だ。月末になると殆ど食費がない。流石に、他の仕事を請け負いなどをしても安ビルの家賃や光熱費を払えば、娯楽費なんか無いほどの生活基準となる。いっそのこと、今の借りているビルを止めて、怪奇探偵の隣に居を構えれば、色々とお得ではないかと思わないでもない。その時の代償は結構高く付くが(怪奇カウンセラーという、実に嫌なあだ名がついてしまう)。

 
 FAXがなった。
「なんだ?」
 受信された紙をとると、門屋は少し固まった。
 憧れの女医、加登脇美雪からだった。
 彼女らしい綺麗な字で、こう書かれていた。
  
  お時間ありましたら、駅前に来て下さい。  
                        ――加登脇美雪

「何の用だろう?」
 と、彼はいそいそと、食事の後かたづけを(カップ麺や割り箸など濯いで、捨てる)して、いつもの着流し白衣で出ようとすると、息子に、
「その格好で行くのはあかんやん」
 と、突っこまれた。
「別に良いだろ?」
 将太郎は言い返すも、似非息子の視線に何故か逆らえず、
「ああ、分かった、分かった!」
 と、彼は渋々着流しではなく、極普通の服に(ジャケットとか)着替え、此は妥協線だと言わんばかりにサンダルを履いて出かけた。

 
 駅前にたどり着く、門屋。
 彼女は直ぐに見付かった。
 初恋の人の顔を直ぐ忘れるほど馬鹿じゃない。あの綺麗な長髪と、飾らない容姿を。
 加登脇は、両手に駅前のスーパーで買い物をしていたらしく、4つ袋を下げている。
 まあ……突っこむところを敢えて挙げてみるなら……、

 何故か謎生物、かわうそ?がいるのだ。

「ま、些細なことだ」
 門屋は加登脇に向かっていった。
「先生〜」
「将ちゃん」
 いつもの笑顔だ。
「ど、どうしたんですか? 先生?」
 少し、会話がぎこちなくなるも話しをする将太郎。
「呼び出してゴメンね将ちゃん。肉じゃがや夕ご飯作ろうかなぁって思って買い物したらこんな状態に」
 苦笑している加登脇。
「其れでね、丁度将ちゃんの家が近いと思ったから……ごちそうを作ろうかしらと思って……。いきなりだけど良いかしら?」
 と、加登脇は上目遣いで訊いてきた。
 すでに門屋を見上げるほど身長差のある2人。

 |Д゚) ←何をするんだあんたって言う顔の例のナマモノ。

 門屋の判断は1つしかない。
「あ、そうだったんですか!」
 と、赤面しながらスーパーの袋をひったくる様に持ち、
「男所帯でむさ苦しいところですが……」
 と、カチコチになりながら、家に案内する将太郎。
 加登脇は、かわうそ?と顔をあわせ、笑って一緒に付いていく。

 |Д゚)……青春。

 と、ナマモノの言いたい事は放っておくとして(かわうそ?「Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)」)、2人とこの1匹が並んで、〈門屋心理相談所〉に向かっていった。
 夕焼けにのびる、3つの影(1つだけ不定形に色々変わるのだが)。他の人から見れば、恋人同士か若い夫婦に見られるのかもしれない。



 そして、自宅に到着。甥っ子は、目を丸くした。何故、こんな不甲斐ない似非親父に、こんな美人の知り合いがいるのかと。
「なんで? なんで?」
「昔の恩師だって!」
 小声で訊いてくる甥っ子、小声で言い訳する叔父。
 人の目の前で、似非親子漫才をするのもどうかとおもうが、加登脇はにっこりいつもの印象的な笑顔をしていた。
「台所、借りますよ」
「あ、はい! ど、どうぞ、此方です!」
「おっちゃん、固まっている〜」
「う……うるさい!」
 赤面して、似非息子の頭をげんこつで小突く、将太郎。


 台所から、心地よい包丁の音、良い匂いがすることで、甥っ子も状況を理解できた。しかし、将太郎にあんな美人の知り合いがいるというのが未だに信じられないでいる。其れと同時に、実母を恋しくなるのだった。
 一方将太郎は、カチコチになっており、どうしようか落ち着かない。加登脇からすれば些細なことか、面白いので気にしていないようだ。前にあやかし荘の事件で再会してから、会うたびにいつもそうだからである。
 加登脇は意図的に沢山買い込んだのだ。計画的だ。自分の務めている病院でふと、“将ちゃん、そろそろ火の車かも”と思ったのだ。彼女なりの心配の仕方だ。強引で直球な感があるが。
 かわうそ?はちょこまかと、彼女の手伝いをしていた。

「出来ました。お待たせ」
 と、ご飯に肉じゃが、野菜具だくさんのみそ汁にほうれん草のおひたし、白菜と大根の浅漬けとたくあんが付いている。
「わぁ、すごいわぁ」
「……」
 驚く、似非息子に沈黙する将太郎。
 この家族にとって久々の手料理、加登脇が救いの天使に見えると言っても過言ではない。
「どうぞ、召し上がって」
 と、加登脇が茶碗にご飯をよそって言う。
「「いただきます!」」
 味を確かめるながら、久々の暖かい手料理をかっ込んでいく、似非親子。それを、ニコリと微笑んで眺めている加登脇。隣では、かわうそ?も器用に箸を持って食べている。
「加登脇、食べる」
「そうですね」
 親子漫才もでる賑やかで、楽しい夕食が続いた。


「あ〜美味しかった、ごちそうさんです」
 手を合わせ、感謝する将太郎たち。
「いえいえ、お粗末様でした」
 また印象的な笑みを浮かべ、答える加登脇。
 ちなみに、甥っ子とかわうそ?が何か面白い話しをしながらか、後かたづけをしている。気を利かせたのかもしれない。
「数日分のお魚の煮付けや、漬け物、お米もあるから、暫く大丈夫よ」
 と、加登脇が冷蔵庫の中に何があるか言う。
「あ、はい! あ、ありがとうございます」
 カチコチの将太郎を見て、手を口に当ててクスクス笑う加登脇。
「もう、どうしたの? 将ちゃん」
「い、いえ、なんでも……ないです」
 将太郎は自分が凄く赤面しているだろうと思うと、とても彼女を見ていられない。
 幼いときに出会ってからずっと変わらない若さでいるし、それ以上に、彼女に惹かれてしまう。恩人でもあり……
初恋の人だから……。
「片付けおわり〜★」
「緑茶にお茶請けの羊羹〜♪」
 と、かわうそ?と甥っ子が登場し、和やかに食後の一時を過ごした。


 そして、時間。
「じゃ、あまり無理しないでね」
 と、遊び疲れて眠ったナマモノを抱いて、加登脇は将太郎の家を後にしようとする。
「先生、ありがとうございます」
「いえいえ、困ったときはお互い様よ」
 ニコリと笑顔。
「あの……」
「なに?」
「あの……また、肉じゃが……作ってくれすか?」
 将太郎は駄目元でも訊いた。
「良いわよ、私で良ければ♪ またね、将ちゃん」
 いつもの明るい笑み。
「あ、ありがとうございます!」
 深くお辞儀する将太郎。勢いで礼をしたものだから視野から加登脇が見えない。
 そこで、すこし頬に軽い感触。
「え?」
 硬直する将太郎。
 またね、と言って門屋家をあとにする、不思議な女性・加登脇美雪。
「おっちゃんなにしてんのー?」
「あ、……いま、いく……」
 何だったのか……分からないが、何か良いことが続きすぎ、考えられない若い臨床心理士だった。




End



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1522 門屋・将太郎 28 男 臨床心理士】


【NPC 加登脇・美雪 ? 女 精神科医】
【NPC かわうそ? 年齢性別不詳 かわうそ?】

※加登脇さんからコメント。+ナマモノ
将ちゃん、ガンバってね。
|Д゚)…… 春?