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<東京怪談ノベル(シングル)>


仲間を求めて、約三秒の旅


■1・始まりの時


 そこは、闇の洞窟。死者達の集まる世界。
 どんな明かりも、ここには届かない。
 ここは、闇の洞窟。黒の光が支配する世界。
 闇の中で、ちらちらと怪しくうごめく、青の炎。それは、この世のものではないもの達の、瞳。
 落ち窪んだ眼光から、発せられる絶望の眼差しは、何十何百にも及ぶ。
 どこを見ても、目、目、目。
 あるものは、カタカタと歯を鳴らし、またあるものは、ゆらゆらと揺れる。彼らが、見つめるものは唯一つ。
 美女。
 石台に寝かされた、金髪の美女。
 そしてまわりには、いくつものろうそくが美女をとり囲んでいた。邪悪な気を発する怪しげな魔法陣と共に。
 美女の表情は、恐怖のために歪んでいる。
「や、ヤメテ……」
 美女は、絞り出すような声で懇願する。しかし、願いは聞き届けられない。
 美女のすぐ脇に、黒装束に身を包んだ男が立っていた。
 男は、熱心に詠唱を続けていた。その言葉は、この世のものではなかった。
 ―邪悪な神への祈りの言葉だった。
 男は、にやりと不敵な笑みを浮かべる。そして、ばっと両手を挙げるとこうつぶやいた。
「我が神の御元へ、旅立つのだ………!」
「い、イヤアァァァァァァァ!!!」
 美女は、あらん限りの声で叫んだ。しかし、その言葉は届かない。逃げようにも、体は枷で固定されていた。
「はーっはっはっはっはっはっは……! 神に、栄光あれ!」
 男は、狂気の表情を浮かべた。
 と、その時。
「そこまでだ!!」
 突如、洞窟内に響きわたる力強い声。そして流れ込む、複数の影。
 突然の状況に、動揺する男。
「なっ、何者だ!!」
 お決まりのセリフを吐いたその先には―。
 
 ――頼もしき熱きアフロの戦士。

「どうやら間に合ったようだな!」アフロレッドが言った。
「待ってろ、今助けてやるぜ!」アフロブルーが言った。
「なんてひどい仕打ちなの!」アフロイエローが駆け寄る。
「いくら太陽が許してもっ」アフロピンクが指をさす。
「アフロの神は許さない!!」アフロホワイトが叫んだ。
「覚悟しろ!!」5人の声が、同時に重なる。

「ダンス戦隊、アフロンジャーーー!! ここに参上ッ!!」
 色とりどりのアフロの戦士達は、雄叫びを上げて黒装束の男と死者達に、熱き魂で襲い掛かった。
「ぐ、ぐわぁあぁああああああ!!!」
 男は、断末魔の声を上げ、がっくりと地面にくずおれた。
 戦いは、終わった。
「みたか、悪は滅びるのだ!」
 アフロレッドが言い放った。
「勝利のポーズ! いぇい!」
 5人は、あさっての方向を指差してポーズを決める。そして、大声で高らかに叫んだ。
「ダンス戦隊、アフロンジャーーー!!」
 ―正義は、常に勝つのである。


■2・あふろんじゃー


「あふろんじゃーなのぢゃっ!!」
 こたつの上に足をかけ、唐突に叫びだす少女。
「やはり、正義は勝つのぢゃ! ひゃーっはっはっはっはっは!」
 少女は、あさっての方向をびしぃっと指さし、高らかに笑った。肩のところで切りそろえられたおかっぱの髪
が、ふわりと風に揺れる。
 ―本郷・源。小花模様がちりばめられた古風な着物をまとった童女。
 奇妙な人々が多数生息する、あやかし荘の住人の一人である。
 折しも源は自身の部屋【薔薇の間】で、『ダンス戦隊☆アフロンジャー:ファースト』なるビデオ(完全保存
版)を見ている最中であった。
「くうぅっ〜〜〜〜!! やはりかっこいいのぅ、あふろんじゃー!」
 源は、ぷるぷると体をふるわせて、ぐっと拳を握る。
 ―なぜここまで、彼女がアフロンジャーにこだわりを入れているかというと、それは過去の出来事にあった。
 彼女は、かつてアフロンジャーの一員だったのだ。アフロンジャーセカンドバージョン。
 その姿からは到底想像できないが、真実だ。しかもリーダーという大役を任されていた。
 それ以来、源はすっかりアフロンジャーにハマっていた。
「やはり、アフロパワー略してAP二万はすごいのうっ!! 地毛アフロ最高ぢゃ!!」
 時折意味不明なことを口走るのは、アフロパワーがまだ体内に充満しているからであろう。
「……しかし……」
 突然、源はふうぅ、と大きなため息をついた。
「もう、アフロンジャーは復活せぬのかのう……」
 源はふと遠くを見つめた。
 依頼が終わってからというもの、仲間達はまたそれぞれの日常に戻っていったのだ。
 事実上、アフロンジャーセカンドは解散だった。
 しかし、ソウルフルなアフロの魂は、源の心に今でも宿る。それは、消えるどころか、どんどん熱く燃えさか
っていた。
「ぬぬぬぬぅ、やはりここは……」
 ぶるぶると肩を震わせる。
「仲間を集めに行くしかないぢゃろっっ!!!!」
 その直後、ごごうっと源の背後に炎が燃え立った。どこからか、荘厳な音楽も聞こえてくる。
 ―どれみ〜れど、どれみれどれ〜〜♪
 いや、思い切りラーメン屋だったが、源は気にしない、気づかない。
「まだ見ぬ仲間達よ、わしが今いくぞ! まっておれ! とうっ!!」
 源はこたつから勢いよく飛び降りると、がらりとふすまを開けた。
 運命の歯車は音をたてて回りだした。こうして源の仲間探しは、今始まったのだった。


■3・あけて三秒


「ぬぉぉっ!?」
 がらりと開けたふすまの中は、押入れだった。
 普通に方向を間違えた。
 ―おそるべし、アフロ魂。
 だがしかし、もっとおそるべきことがこのあと待ち構えていた。
 ―押入れの中に、人がいる。
 そいつは、布団やら何やらが押し込まれた押入れのすみっこに、うずくまるようにして座っていた。
「ぬっ! とりあえず、第一町人発見ぢゃ!」
 いや、町ではなく正確には部屋。しかも押入れだったりする。
 しかし、やはり源は気にしない、気づかない。
「とりあえず、わしの仲間候補ぢゃ! さっそく儀式を開始するのぢゃ! よいか、これをみよ!!」
 そう言い放つと、源は突然どこからかはげヅラと白衣を取り出し、着こんで見せた。
「おんしはこれぢゃ!」
 源は押入れの住人に、くるくる眼鏡とおなじく白衣を投げてよこす。
「それを着るのぢゃ! さあはようせい!!」
 押入れの人物は、驚いたようだったがやがてしぶしぶと着込む。
 ―準備完了。
 そしてそこには、見事なまでの怪しい博士と助手の姿があった。
「ふっふっふ。準備完了ぢゃな! ならばいくぞ!ていっ!」 
 源はしばらく腰に手を当てたからかに笑っていたが、突然、どこからか演目紙を取り出して、めくり始めた。
 最初の紙にはこう書かれていた。
【仲間ゲットコント:人生はバクハツヂャー!】
「人生は、バクハツぢゃーーーーー! ふーはーはーはーなのぢゃっ!!」
 ぐっと親指たて、押入れの人物にも求める。
「さあ、おんしも一緒に! 人生は、バクハツぢゃぁぁぁーーー!」 
「ば、ばくはつじゃぁぁ……」
「そんな小さな声では、バクハツできんぞ!! もっとこう! バクハツぢゃあぁぁぁぁーーーーーー!!」
「ば、ばくはつじゃぁぁーーー!!」
 源は、うんうんと頷き、ぐぐっと拳を握りしめる。
「そうぢゃ! その調子ぢゃ!! 頑張るのぢゃ! せぇーの! ばくはつぢゃーーーーーー!!!」
「ば、バクハツじゃあああああーーーーー!!!」
「よいぞっ!その調子じゃ!!」
 いつのまにか、源のひたいに汗がにじむ。それは窓から差し込む太陽の光をうけて、きらきらと輝いた。
 押入れの人物もまたしかりであった。二人は、手に手を取り合い、なぜかくるくるとまわりだした。
「あはははは〜〜うふふふふ〜〜ひゃははははは〜〜〜なのぢゃーー!」
「青春バンザイ〜〜♪」
 意味が分からない。しかし、その後も二人は何度か意味不明な絶叫を繰り返す。
 そして。
「よーーーっし、最後のいっぱつなのぢゃーー!!」
 突如、源はどこからかフラスコと試験管を取り出した。
「よいか、おんしはこれを持て」
 そういい、試験管を押入れの人物にぎゅっと握らす。
「しっかり持てよ……」
 そして、源はフラスコをゆっくり傾けた。
 ぽたりとひとつのしずくが試験管に入った瞬間。

 ―かっ。
 ―ちゅどごおおぉぉぉぉぉぉむっっ!!!!

 強烈な閃光と轟音と共に、大爆発が起こった。
「ぬぉおおおおおおおおっ!?」
「きゃぁぁぁぁぁぁ!?」
 二つの叫び声が同時に上がる。
 あたりはもくもくとした白い煙に包まれ、何も見えない。
「げ、げほんげほんなのぢゃ……!」
「けほけほ……」
 むせかえる二人。しかし、あんなすごい爆発であったにもかかわらず、部屋の中は平然としていた。
「ぬ、おんし無事であったか!」
 少しずつ、煙が引いたのか目が慣れてきたのか、源が一足早く気づく。
 そして。
 源は、見た。
「お、おおおおをおおおおお……」
 すっかり煙が引いたその先に、それはいた。
「い、いまここに、【あふろばいおれっと】誕生じゃ!!」
 その少女は、源と同じく古風な藤色の着物をまとった赤い瞳の持ち主。
 ―嬉璃。
 あやかし荘に住む座敷わらしだった。
 ただひとつ、銀髪のさらさらした髪は、今やバイオレットなアフロに変化していたが。
「ふーはーはーはーはぁぁぁ!!」
 源は、腰に手を当て高らかに笑った。自身の髪の毛もまた、アフロになっていた。そのアフロは目にも鮮やか
な紫色。アフロパープルだった。
(……アフロンジャー、ここにまた検算ぢゃ!)
 検算→見参なのだが、そのへんは気にしない。
「じゃあよいか、嬉璃! わしと一緒にまたあらたなる仲間を求めて旅立とうぞ!」
 源はびしぃっと嬉璃の鼻先に指を突きつけた。嬉璃もまた、うんうんと楽しそうに頷いた。
「さあっ、悪をぶち倒す冒険の始まりぢゃ!!」
 源の顔は、歓喜に満ちあふれていた。


 ―その後、この仲間探しは半日であっけなく幕を閉じた。
 理由は、あやかし荘の管理人が心配するから、だそうである。
「しかし、いつかきっとわしは、仲間を見つけてみせるぞ! まっておれ! ふーはーはーはーはっ!!」
 源のアフロ魂は、まだまだ燃え続ける様である。

                                          了


■■ライターより■■

初めまして。今回はシチュエーションノベルの発注どうもありがとうございました。
源ちゃんは、とっても可愛らしい女の子なのに、しゃべりがジジイというその渋さに惚れてしまいました。(笑)
か、可愛すぎる……。
今回は、依頼を踏まえてのシチュエーションということでしたが、どうでしょうか? 合っていますでしょう
か? ちょっとどきどきです……。(笑)
アフロンジャー、個人的にはかなりツボです。むしろ、私がやりたかったかも。くくぅ、そのステキな企画を
考えられる脳みそが欲しい!!
いつか、やってやります。(えぇ!?)
このPCでは、と依頼文にありましたが、以前どこかで違うPCでお会いしているのでしょうか?
ちょっと気になってしまいました。(笑)
もし感想、ストーリーのツッコミ、雅への文句など、ありましたらテラコンもしくはHPから、お聞かせ願いたい
と 思います。(感想は……頂けると嬉しいですv)
それでは、今回はどうもありがとうございました。