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<東京怪談ノベル(シングル)>


洗濯機の熊さん


『冷蔵庫を開けると、そこは不思議の国だった……』

                     ―宇奈月 慎一郎

■1・ある日――


 薄暗い部屋の中。ぽつんと置かれた冷蔵庫。
 そこに、一人の男が佇んでいた。

 ―がちゃり。

 男は、取っ手に手をかけ、ゆっくりと扉を手前に開く。
 とたん薄く開いた扉から、一条の黄色い光が、こうこうと漏れ出し、男の姿を浮かび上がらせる。
 痩せてひょろひょろとした体つき。背中まである長い黒髪。そして、病人かと思われるほどに青白い顔。
 ―宇奈月慎一郎。
 モバイルに召喚魔法を代唱させ、高速にて使徒を召喚させる現代の魔術師。
 それが男の正体だった。 
 冷蔵庫の明かりを受けた慎一郎の顔は、好奇の表情に満ちあふれていた。
(うふふふふふふふふふ……)
 きらり、と眼鏡が一瞬、鋭い輝きを見せる。
 そしてそれは、単に照り返しによるものではなかった。
(人の家の冷蔵庫チェックというものは、どうしてこうわくわくするのでしょう)
 突然、どこからか『隣の晩ご飯YEAH!』と書かれたプレートを取り出し、怪しげな笑みを浮かべる。
 ここは、草間興信所。怪奇探偵と名高い男が経営している。慎一郎は、そこにふらりと立ち寄ったのであった。
(おやおや、これは煮物ですか。……ふむ、かぼちゃとあつあげ。なかなか味が染みている。調理後、約2日、
といったところでしょうか)
 まるで某テレビ番組突撃キャスターさながらに、慎一郎は次々に冷蔵庫の中身をチェックしていく。
(おや、こっちは野菜炒め……ぶはっ!!? く、くくく腐ってますヨ!!)
 人の家のものだというのに、慎一郎はもりもり食べる。
(……うふふ、マーガリンと醤油で、マーガリンご飯ですか……。怪奇探偵も、なかなか、しけた食生活ですね)
 とはいえ、慎一郎とて、人のことは言えない立場ではある。しかし、もりもり食べる、食べ続ける。
 ―目くそ鼻くそ―そんな言葉が示すように、人間という生き物は、他人のことはお構いなしなのである。
 と。
(おおぅっ!? こ、これは……!!)
 6品目になろうという、ある鍋に手をだした瞬間、慎一郎の目の色が変わった。
 彼の目は、ある一点に集中していた。
(おーでぃーん……)
 それはまぎれもなく、おでんだった。慎一郎の大好物だ。というか、禁断症を起こす。おでんがないと手が震
える、というほどでもないが、かなりのおでん愛好家であった。
(も、もももももちろん、これはイタダキですっ!)
 三角こんにゃく、まん丸がんも、そしてま四角はんぺんといった、今時見ないベタなおでん。おでんとしかい
えないおでん。冷えているにもかかわらず、慎一郎はむさぼり食った。
 さらに、二串ネコババした。
(でも……)
 ふとおでんを食べる手を止め、ふぅ、と遠くを見つめる。
(あの世界には、やはりもう、つながらないのですね……)
 ぽろり、と串が手から落ちる。

 あの世界。前回行った夢の世界。突如つながった不思議な世界。
 
 ―熊の世界。

 それは、今目の前にある冷蔵庫。草間興信所の冷蔵庫が、すべての始まりだった。
 今回の冷蔵庫チェックも、もしかしたら、というほのかな期待もこめて行ったものだった。
 だがしかし、もう二度と、あの世界にはつながらない。慎一郎は、大きなため息をついた。
(さみしぃ……)
 手を組み、くすん、とあるはずのないお星様に向かって祈りを捧げる。
 目の前にあるのは、おでん。そうだ、おでん。おでんの神様でいいぢゃないか。
「神様、かみさま、どうかお願いです……ボクをもう一度、あの世界へ連れて行ってくださぃ……」
 そして、どこからか、うほうほとなく素敵な種族のぬいぐるみを取り出し、語りかけた。
(キミも、一緒にお祈り、してくれるよね?)
 慎一郎はうるうるとした瞳で、きゅうとそのぬいぐるみを抱きしめた。手作りであるのか、少々不細工に作ら
れていた。
(……でも、ボクのマイラブリィは行方不明……)
 慎一郎は、もう一度、はあ、と大きなため息をついた。前よりも、さらに大きなため息を。
 その時、突然薄暗かった部屋に、電気が点灯した。
「んなっ!? か、かかか勝手に冷蔵庫を開けないでくれ!!」
 驚愕した表情で、慎一郎を見やる男。草間武彦、その人だった。


■2・洗濯機の中――

 
「にぢゅっ世紀の遺産がこんなところに……」
 慎一郎は、まじまじとその洗濯機を眺めた。
 それは、昔懐かしい二層式洗濯機であった。洗濯層と、脱水層がそれぞれ独立しているもので、今どきこんな
ものに巡りあえるのは、古道具屋と、ここだけであろう。
 やはり時の流れには勝てないのか、老朽化した洗濯機は時折、がたがたがたっとものすごい振動を起こし、
止まったり、動いたりを繰り返していた。
「……ふふふふ、でもこのボクにかかれば、オチャノコサイサイです♪」
 慎一郎は、最初は含み笑いで、徐々に笑い声を大きくした。最終的には腰に手を当て、ははははははと勝利の
笑い声を上げた。
 ―とはいえ、盗み食いの罰としての洗濯である。
 と。

 がこごががごごががごけごかごごごごっ!!!

「!!!!?」
 突然、洗濯機がとんでもない音をあげ、そのままぷしゅりと停止した。
 先程の勢いはどこへやらといった感じの慎一郎は、とりあえず、びくびくしながら脱水機のふたを開けた。
「―あ」
 そこには、見事なまでにひっからまった洗濯物が、あった。これが原因である。
 慎一郎は、脱水機に手を突っ込み、とりあえず手ごろなシャツのすそを引っつかむと、えいと洗濯物を引き上
げた。
「おおお……」
 慎一郎は、ごくりとつばを飲んだ。
 それは、昔縁日でおこなった宝釣りのようだった。シャツを基準として、パンツ、ズボン、靴下といったゲス
トの方々が、これでもかというくらいに喰らいついている。まさに、洗濯物版宝釣り。ただし、釣れても嬉しく
ない。
 そこに、輝くばかりに白いブリーフに、思わず目が留まる。
「草間さんは、ブリーフ派ですか……くすくす」
 なぜか、ほほを少女のように赤らめる慎一郎。
 と、その時、洗濯物の先に何かぶら下がっているのを発見した。
「これは……」
 それは、熊のぬいぐるみだった。やや、デフォルメされて漫画チックになってはいるものの、前足に光る鋭い
三本の爪は、本物のようだ。複雑に絡み合った洗濯物に、絡み取られて、だらりとしていた。
 それを見て、慎一郎はこのぬいぐるみの持ち主に関する考えを、瞬時にめぐらせた。
(その1、雫クンの私物)
(その2、草間クンの私物)
(その3、息をするぬいぐるみ)
 以上の三点に論点を絞る。ただ、明らかに3はないな、と慎一郎は苦笑した。
 2もまたしかりである。
 そう考えると、このなかでは1。雫は女の子であるので、これが妥当である。
「雫クンも、乙女チックな一面を持っていらっしゃる」
 ふふふ、とどこかあさってな方向を見ながら怪しげな笑みを浮かべる。
 と、その時ぱちり、と熊の目が開いた。
「!!?」
 一瞬、目が合う。そして熊は両手を挙げ、この世のものとは思えない奇声を発した。
「うげほーーひきょへぼぐげごおごご!!!」
 瞬間、どこからともなく、大量の熊が現れた。

 ―わらわらわらわらわらわらわらわらわら。

「おぅわぁぁぁぁあああああああああああ?!!」
 物質的には無理であろうという空間から、熊はさらに湧いてくる。脱水機の中からのみならず、洗濯層の中の
ふたを、ばっこう!と弾き飛ばして飛び出してくる輩もいる。
「は、はわわわわあわわわわわ……」
 思わず、腰が抜ける。
 いつのまにか、熊達は慎一郎の周りを、ぐるりと取り囲んでいた。
 そして。
「うへぁぁぁあああああああああああ……!」
「うんばらまぎぼーいかまぎぼー!!」
 慎一郎は、奇声を発する大量の熊達に担がれ、洗濯機の中へと姿を消した。
 ぶぅぅぅんと、洗濯機は鈍い音をたて、再び動き始めた。
 あとには、絡まった洗濯物のみが残されていた。

 ―おでんの神様は、慎一郎の願いを聞き届けた。


■3・熊さんに―


『洗濯機を開けると、そこは不思議な世界だった……』

                       ―宇奈月 慎一郎

 夢かもしれない。
 多分、夢なのだろう。
 むせるような花の香りが、あたり一面に立ち込めている。
 涼しげな風が、ふわりと吹き抜ける。
 春かもしれない。
 春なのだろう。

「う……ん……」
 慎一郎は、小さくうめくと、徐々に意識を取り戻す。
 気を失っているあいだ、微妙に変な方向に足を曲げて倒れていたのにもかかわらず、驚異的な回復を見せた。
「ここは……?」
 慎一郎は、改めて今いる自分の場所を確認した。
 そこは、小高い丘の上であった。
 なだらかな丘が続いている。
 時折吹き抜ける風は、爽やかで暖かい。
 花が咲き乱れている。見知らぬ花だ。しかし、どれもこれも、美しかった。
 ふと、空を見上げる。
 ぽっかりとうかんだ雲が、大地にいくつもの影を落とし、草々に深みのある色を与えていた。
 雲がゆっくりと移動するにつれ、緑の境界線も様々に変化する。
 その遙か向こうには、輝く沼が見受けられた。
 澄んだ水をたたえて、静まり返っている。
 海かもしれない。
 海なのだろう。
「……はっ、も、もしかしてここは、あの世界っ?!」
 慎一郎は、小躍りした。その表情は歓喜に満ち溢れていた。
「うふふふふふはははははははははははははははあははあはははははははは♪」
 突然、慎一郎はくるくると回りだした。
「ありがとう神様、ありがとう。おでんの神様ばんざいありがとう」
 踊りながら今度は、手を組み祈りだした。
「行ってみましょうか、マイハニー? うんうん」
 またもや慎一郎はどこからか、ウホウホとなくステキな種族のぬいぐるみを取り出し語りかけた。
 うんうんとぬいぐるみは頷いた。
「そうですね、じゃあ行きましょうか、うふふふふふ♪」
 自分で、ぬいぐるみの首を動かした一人二役だったが、それでも慎一郎は幸せだった。
 と、その時、うみゅ〜……という声が聞こえた。
「?」
 慎一郎は、ゆっくりと振り返る。
 そこには、あのぬいぐるみ熊が、いた。
「ををををっ!?…………?」
 慎一郎は、ずざざと飛び退った。しかし、熊の様子がなにやらおかしい。
 うつぶせに倒れ、鳴き声も、しぼりだすかのように弱々しかった。
 熊は、もう一度、うみゅ〜……と鳴くと、お腹を押さえた。
「も、もしかしたら、お腹がすいているのでわ……?」
 その時、慎一郎の頭にあるものが浮かんだ。
 ―おでん。
 確か、ネコババしたおでんがまだあったはずだ。
 慎一郎は、激しく自分の身体検査をし、おでんをとりだした。
「ささ、熊さん、おでんですよ! これを食べれば元気もりもりををを!?」
 ばっと、一瞬のうちにおでんは取られる。そして熊は物凄い勢いで、おでんを食べ始めた。
 はぐはぐはぐはぐ。
 そして、満腹した熊は、おでんの串を持って、ぶんぶんと手を振った。
「う〜ん、元気になってよかったですね」 
 慎一郎は、熊を見送ると、大きく深呼吸した。
 そして、なだらかな丘をおりて、海を目指した。


 徐々に海が近づくにつれ、慎一郎はあるものに気がついた。
 ―タマゴ?
 傍らに、丸いふわふわしたものが生えていた。
 風船のようなそれは、風に吹かれてゆらゆらとゆれた。
「これは、いったい……」
 慎一郎は、不思議に思う。
 どれもこれも、そのタマゴは揺れるだけで、場所を移動しない。
 だが、あきらかにその数は増えていく。
 たどり着いた砂浜は、すべてそれに支配されていた。
 そして、そのタマゴはあるものを中心にして集まっていた。
 それは。
 ―ジュウジカ……?
 それは、まさしく十字架だった。木で組まれた簡素なものではあったが、人一人余裕で縛り付けられるほどの
大きさがあった。
「なにか、儀式でも行うんでしょうかね」
 慎一郎は、しげしげとその十字架を見上げた。
 と。
 ぽむ。
 突然、誰かに肩を叩かれる。
 慎一郎は、慌てて振り返る。
 するとそこには、きゅるんとした可愛い熊が、慎一郎を見つめていた。
「やあ、可愛い熊さん。ボクに何の用でしょう?」
「きゅるるん、きゅるるん♪」
 熊は両手を挙げて、くるりと回る。まるで、一緒に踊れといわんばかりに。
「をを、僕を歓迎してくれているのですね?」
 無邪気な熊の様子に、しばし心奪われる慎一郎。
 その時、背中に大量の視線を感じた。
 ―殺気。
「はっ!?」
 そこには、大量の熊達がいた。
 いつのまにか、砂浜は、熊で埋め尽くされていた。
 ぽこり、ぽこり、とタマゴから、熊が生まれ出てくる。それは、とどまる事を知らない。
 ―熊の海。
 そんな言葉が、脳裏をよぎる。
「じゃ、んな、こ、こここれは……ままままさか……」
 慎一郎は、改めて十字架を見やる。
 ―ボク用、デスカ……?
「ひぇえああああああ!??」
 叫び声をあげたが、時既に遅し。熊達は、じりじりと慎一郎に詰め寄ると、一斉に襲い掛かった。
「をををををををををを!!」
 あっというまに拉致されて、十字架に縛り付けられる。
 そして熊達は、再び叫びだした。
「うんばらまぎぼーいかまぎぼー!!」
「ややややーめてくくくくーださささーーいいいー!」
 しかし、もちろんそんな慎一郎の声など聞き入れてもらえるはずもなく、儀式はどんどん進む。
「や〜がたみがた〜〜いらまぎぼー!!」
 掛け声は、徐々に音量を増し、熊たちの手拍子も早くなっていく。
「うんば、うんば、うんばーーー!!」
 そして、儀式は最高潮に達した頃。

 ―ぐごごごごごごごご……。

 海中から、巨大な何かが、姿を現した。
「みらー!みらまぎぼーー!!」
 熊達は、一斉に喜びだす。
「うんばーーーーーーーーーーー!!」
 そしてそれは、突如雄叫びを上げた。


■4・出遭った―!!


「うんばーーーーーーーーーーー!!」
 突如現れたそのクリーチャーを、慎一郎は意外にも冷静に見つめていた。
(巨大熊……)
 それは、天をつくほどの巨大な熊だった。
(んな……なんか、かわいいですね……)
 そんなことを思っていたのもつかの間。
 きらーん、と巨大熊の目が光った。
 そして。
「うんばばーーーーーーーーーー!!」
 一声あげ、鋭い爪を振りかざし、慎一郎めがけて一気に打ち下ろす!
「ひょえええええええええ?!」
 ―もうだめだ。逃げられない。
 慎一郎は、ぎゅっと目をつむった。
 絶体絶命、だった。
 ――その時、ふと体が、自由になった。
「お……や……?」
 慎一郎は、そのままどさりと倒れ込む。ロープは、ずたずたに切れていた。熊の一撃は、彼に当らなかった。
 ―いや、止められていた。
 それは。
「あ、キミは……!」
「うみゅ〜〜〜〜〜!!」
 そこには、一匹の熊が、懸命に巨大熊と戦っていた。
 そして手には、おでんの串。
 ―あの時、慎一郎が助けた熊だった。
「あ、ありがとう……」
 このロープも、あの熊が爪で切り裂いてくれたのだ。人助け……いや、熊助けはしておくものだ、と慎一郎は
思った。
「うみゅっうみゅ〜〜〜〜!!」
 おでん熊は、ぶんぶんと必死に串を振る。どうやら、行けと言う事なのか。
 ―そんな、キミを置いてはいけないさ!
 昼ドラだったら、よくありそうな展開だ。
 しかし、慎一郎は。
「ぢゃあ、お言葉に甘えて早速逃げさせていただきますっ!!」
 普通に、逃げた。
「うみゅっ?! うみゅ〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 悲痛な熊の声が、辺りに響きわたった。


■5・オトシモノ


 慎一郎は走った。走って走って、走りまくった。全力疾走だった。
(こんなに肉体を使ったのは小学校以来かもしれません……)
 ふふふ、とどこか遠くを見つめながら、彼は丘を目指して、走った。
 途中、多くの熊達が慎一郎を捕まえようと、攻撃を仕掛けてきたが、彼は驚異のフットワークで次々にかわし
た。
「はははは、効きません! 効きませんよ〜〜〜!! はーっはっはっは!」
 日光忍者村一日忍者体験、皆伝免許取得者の実力ですよ。
 そんなの持っているはずもないのだが、今の慎一郎はそれほど華麗な身のこなしだった。
「はぁっ!」
 たんっと大地を踏みしめ、大きくジャンプする。
 なぜかぱぁと、慎一郎のバックに花が咲いた。
「ははははははは!」
 多くの熊達を飛び越えた時、彼は鳥になった。


 すたり、と丘に到着した時には、もう熊達は追って来なかった。
(勝利、ですね)
 慎一郎は腰に手を当て、思う存分深呼吸した。
 
 ―うんばば〜〜〜〜〜…………。

 遙か彼方で、巨大熊が叫ぶ。
 その声は、呼びかけているようなもの悲しげなものだった。
「おや?」
 そこで慎一郎は、あることに気づいた。
 ―何か、手に持っている。
 巨大熊が、じたばたと動くなにかを握っているのだ。慎一郎は、全神経を目に集中させ、まじまじと眺めた。
 そして。
 ぐは、と慎一郎はうめいた。
 ――ウホウホと鳴く、ステキな種族、だった。
「な、なななんで……」
 その時彼の脳内で、すべてのピースがかちりとはまった。

 ―熊は、これを渡したかったのだ、と。

「……あはは、うふふ、あはははははは!」
 慎一郎は、回る。回る。
 回り続ける。
 そしてどこからか出した、ウホウホと鳴くステキな種族のぬいぐるみと共に、くるくる回る。


●熊さんに捧げる詩:宇奈月慎一郎●

ボクは くまさんに であったのです

洗濯機の中に 連れ込まれ くまさんに であったのです

花咲く丘の上 くまさんが 言いました

お兄さん おにげなさい さあさあ はやく おにげなさい

ボクはにげます ダッシュダーーシュッ

やった やった ふりきった

ところが あとから おとがする

ずんずん ずずん ずんずずん

くまさん なにやら さけびます

お兄さん まって まってまて ほらほらりん ちょっとみてみて おとしもの

ウホウホと鳴く ステキな 種族

あなたのでしょう そうでしょう

おやおや くまさん そうですか そういうことだったのですか

やあやあ どうも ありがとう お礼に 歌を うたいましょう

―ランララ ラララン ララ ランラン……♪

 
 歌は、風に乗り、どこまでも遠く、響きわたった。
 
                                       了

■■ライターより■■

大変お世話になっております。今回は、シチュエーションノベルの発注どうもありがとうございました。
宇奈月さんは個人的に、かなりツボなキャラクターなので、再びお会いすることができて大変嬉しかったです。
―ていうか、家燃えてるし。
びっくりしました。(笑)
日々成長なさっていますね宇奈月さん……。(苦笑)
さて今回のノベルですが、ご期待にそうことができましたでしょうか。
こっそり、いろんなところで伏線を張る、という試みをし、個人的には楽しく書かせていただきました。 
―もちろん、あのお方もさりげなく登場してます。(笑)
もし感想、ストーリーのツッコミ、雅への文句など、ありましたらテラコンもしくはHPから、お聞かせ願いたい
と 思います。(感想は……頂けると嬉しいですv)
それでは、今回はどうもありがとうございました。