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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ゼロ

オープニング

投稿者:ゼロ
題名:私の事を教えてください
本文:私は何も覚えていません。
    身体が透けているから多分死んだんでしょうが、なぜ死んだのか
    なぜ何も覚えていないのかが分からないのです。
    誰か私の事を調べてくれる方はいらっしゃらないでしょうか?
    誰も私に気がついてくれないので、自分で調べる事も適いません。
    調べてくれる方がいらっしゃったらこの書き込みに返信をお願いします。


 ゴーストネットに新しく書き込まれた文章、それは自分を調べて欲しいという依頼文章だった。
 自分の名前も、なぜ死んだかも分からないその人間をあなたはどうやって調べる?

視点⇒榊杜・夏生

「私の事を教えてください、かぁ」
 うーん、と夏生はパソコンの前で唸りながら呟いた。
 幽霊からの書き込みというだけで皆が怪しんでいるのかこの書き込みに対する返信は一件もなかった。それもそうだろう。幽霊の、しかも記憶がないものをどうやって調べろと言うのか…。
「どうしよっかな、面白そうだから返信してみよっかな」
 そういって夏生は「連絡ください」の書き込みをした。返事が来るのに時間がかかるかと思ったが意外とすぐにきた。
『返信をありがとうございます。ここでお話してもいいのですか?』
 その返事に少し悩んだ結果チャットを借りてくるといってそこまでもアドレスを提示した。幽霊人間は「分かりました」という返事を返してきて夏生もチャットまで行く。
「ほんとはチャット借りなくてもいいんだけどねー。ホストアドレスがどうなってるか興味あるし」
 もしかしたらそこから何か分かるかもしれない、という理由もあったのだが。


「こんにちは、あたしは榊杜・夏生だよ、あなたは?」
 夏生がチャットに参加して書き込みをすると、すぐに『ナナシさんがチャットに参加されました』という表示がパソコンの画面に表示された。
「はじめまして、かな。さっそくだけど、色々聞かせて。まずはいつ頃から自分の身体が透けてる=死んでるって気がついたの?あとあなたは女性?男性?それくらいだったら分かるよね?」
 夏生は慣れた手つきでキーボードを叩いていく。
『気がついたのは本当に数日前です。人に話しかけても何も応答もなく、鏡にもうつらないんです、あと私は女です』
 文字が並べられ、夏生は相手の女性のホストアドレスを見る、が異常な事に気がついた。
「何コレ、?の羅列が並べられているだけじゃない…」
 今更ながらに今、夏生とチャットをしている人物が普通ではないことを再確認してしまう。
「身体に痛みを感じる部位はある?」
『痛み、激痛というわけじゃないけれど、左手首に疼くような痛みを感じます』
「左手首?」
 夏生はその言葉を聞いてキーボードを叩く手を止める、そして嫌な予感が頭を過ぎる。
「左手首か…そんなところが死んでまで痛む理由は一つしかないよね…」
 夏生は溜め息と共に小さく呟いて「図書館で調べてくるから一時間後にまたこのチャットでお話しましょ」と書いてからパソコンを切った。
 そして、向かう先は図書館。
「あたし一人じゃ無理かもしれないからクラブの面々にも頼んでおくかな」
 夏生は持っていた携帯電話から電話をかけて援助を頼む。



「ふぅ」
 夏生は大きな溜め息を漏らして、最近の新聞が載せてある分厚いファイルを見る。図書館にきて早くも三十分。ファイルも三冊目に入ったところだ。だが、それらしい事件は載っていない。
「多分、事故じゃなくて…自殺なんだろうな…」
 少し休憩、と呟いてから机に突っ伏す。
「あ、」
 首を机に預けたまま横に向けてファイルをパラパラとページを捲っていると、小さな記事が目に入った。
「…三日前の記事だ。篠原鈴、19歳、自宅で自殺…」
 そこまで記事を読んだ時にメールが届いた。図書館の管理者にジロリと睨まれたが、そこは気にしないでメールを読む。メールには先ほど夏生が読んだことと全く同じことが書いてあった。
「間違い、ないみたいね」
 はぁと言ってファイルをパタンと閉じ、元の場所に直しに席を立った。
 そして、調べた事を女性に教えるためにチャットまで戻る事にした。
「教えて、いいのかな…」
 事故で死んだ、ということなら躊躇うことなく教える事ができたかもしれない。だけど、篠原鈴という女性は「自殺」という最も罪深い死に方をしているのだ。
「やっぱ、本当のことを教えたほうがいいよね…」
 パソコンの電源を入れて、先ほど借りたチャットまで飛ぶ。
『どうでしたか?』
 チャットに参加すると同時に表示された言葉。
「う、うん。あなたのこと、分かったよ…」
『どんな事実でも構いません、教えてください』
 女性はそう文字を表示させる。夏生は少し躊躇ったが意を決したようにキーボードを叩く。
「あなたは篠原鈴という名前で…年齢は19歳、そして―…三日前に自殺したらしいの」
 その言葉ショックだったのか返事は暫く返ってこなかった。
『調べてくださってありがとうございます。あなたに聞いて全てを思い出しました』
「…なんで自殺したの?あ、言いたくなかったら別に答えなくていいから」
『理由は簡単です。付き合っていた人を親友に盗られてしまったからです。今思うと何て馬鹿なことをしたんだろうと悔やまれてなりません。あなたにもご迷惑をおかけしました。ほん、と、う、にゴ、メンナサ−…』
 言葉の途中で『ナナシさんは退室しました』という文字が表示された。恐らく「自分の事が分からない」という未練から開放されて俗に言う天国とやらに言ったのだろう。
「行っちゃったか。今回は結構きつかったなぁ…」
 パソコンの電源を切って窓の外を見る。
 外はとても晴れていて、新しい一歩を踏み出すのには最高の日だな、と夏生は思いながら欠伸をした。




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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0017/榊杜・夏生/女性/16歳/高校生

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■         ライター通信          ■
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榊杜・夏生様>

初めまして、今回「ゼロ」を執筆させていただきました瀬皇緋澄と申します。
「ゼロ」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました。
ゼロ、はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^


           −瀬皇緋澄