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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


三滝の挑戦状

 雫は死臭で目が覚めた。
「ここは、どこ?」
 闇のなか何かが蠢いている。それは雫の今までの経験上……人ではないとわかり怯えた。 たしか、学校から帰って…いきなり眠たくなって……何かに囚われているのか……。
 周りは、頑丈な透明の障壁で阻まれている。
――気にする事はない、用事が済んだら帰してやる……。
 この声は聞いたことがある…
「ま、まさか…三滝尚恭…」
 自分が誘拐されたというなら……狙うのは、彼しかいない。しかし……携帯の電波は届かなかった。


 あなたは、織田義昭と遊んで帰っているところだ。その時、目の前にあの宿敵三滝が現れた。どうも生きている人間に取り憑いたらしい。
「決着を付ける為現れた…訳ではないようだな…他人の体を乗っ取るとはな」
「ああ、暫くゲームを楽しもうと思ってな」
「何?」
「瀬名雫…しっているよな?」
 その言葉に義昭は殺気を放つ。
「雫ちゃんに何をした!」
「あれだけの純真な魂と肉体は……我が屍術の研究に相応しい。そう言えばわかるだろう?」
「……さらったのか?」
「如何様にも取れる。さて、取引だ。お前の神格を我に渡すか、それとも見殺しにするかどっちだ?」
 と、いうと何かの地図を投げ、忽然と乗っ取った人間から離れた。被害者はそのまま気を失っている。義昭が支えて、回復させた。
「もう関係のない雫ちゃんを……」
 地図は東京からかなり遠いうち捨てられた墓場のようだった。義昭は拳を握りしめ、雫を探しに行く。

 貴方は彼の手伝いをするか? それとも?


【1A】
 楽しく遊んだ帰り途中の時、鹿沼デルフェスが、
「雫様をお誘いすれば良かったですね」
 と、彼女はと言った矢先に三滝が現れたのだった。
 急ごうとする、義明を御影蓮也が止める。
「今すぐは待て」
「分かっている! けど、これ以上無関係な雫ちゃんを巻き込むのは」
「今その状態で言ったら敵の思うつぼだ。せめて作戦を考えないと駄目だ!」
 蓮也は叱責する。
「そうですわ。あの方に以前のお礼も致しませんと」
 真剣な顔つきで榊船亜真知がいった。
「お二人方の言う通りです。義明様」
「……ああ、作戦を立てよう」
 暫く歩けば丁度、神聖都学園に戻る道がある。其処の図書室で、地図に記された墓場の見取り図があるかもしれない。“どんなことでも学べる”と言うことだけあり、図書館も大きいのだ。


【2A】
 神聖都学園。
 ここに来た理由は先に述べた通り、目的地の見取り図を探し出すためだ。此処なら手に入らない書物は無いだろう。
 時間はかなり費やす事はなかった。かなり昔の外国人墓地と教会とわかり、うち捨てられる迄の記録書が写本という形で見付かった。
 巻末に、見取り図の簡略版が載っていた。
「見取り図がある書籍があって助かった」
 そして、色々調べはじめる。
「何故、墓と教会を放って置いたのだろう?」
 蓮也は考える。
 この本を読んでいる亜真知は、
「大きな火事が起こって、再建のめどが立たず組織だけ止む得なく移動したそうです」
 と、答えた。

 見取り図を拡大して、どうするか話し合う。亜真知は何かにみられていると言う感覚を知ったので、念のため思念防御結界をその場に張った。
「わたくしの案は……義明様を裏切り、三滝に交渉して、雫様の安全を確実にしたときに戦うというのが良いと思うのですが」
 と、デルフェスが意見を述べた。
「錬金術師として、好奇心が勝ったと言うことでしょうか?」
 蓮也と、茜が訊くと、デルフェスは頷く。
「わたくしが、何とか雫ちゃんを空間転移できれば、ほぼ確実に安全になりますけど」
 亜真知が言った。
「ではこうしよう。二手に分かれて、瀬名を救い出すのは?」
「それは良い案だ。交渉と正面切って戦うのは俺とデルフェスさん、雫ちゃんの救出は亜真知ちゃんに蓮也で任せよう」
「その方が良いな。特に織田はリッチと戦い慣れしているからな」
 蓮也は同意する。他の者も異論はない。
「デルフェスさんの芝居にかかっています。三滝は本当の魂の“入れ物”を破壊しないことには倒せない」
 蓮也が言う。
「他は、皆に思考遮断の術をかけておかないと。此方の思考や作戦が読まれてしまう」
 義昭が言う。其れに亜真知は頷いた。
 と、義明はその作戦で決まったと頷く。


【3A】
 一緒に墓地に向かう。三滝が陣地と決めた寂れた墓場。特に夕刻。日が落ちて闇の世界に入った。
 正面からデルフェスと義明が門をくぐると、異様な違和感で気持ち悪くなる。おそらく別の班も同じ感覚に襲われているだろう。
「気を付けないといけませんわね。義明様」
「はい。しかし、乗り越えなければならない障害が教会を守っている様です」
「ゾンビですか?」
「気配からして人間かな?」
「え?」
 デルフェスは驚いた。三滝に加担する人間がいるという事に。
「利害の一致かもしれない。話し合うことも無いかも……」
「出来れば、三滝だけと思いたかったですわ」
 2人は教会に向かった。
 義明が言った通り、人がいる。棺桶らしい物、いや棺桶を背負った少年だ。
「……来たか」
 彼はそれ以上何も言わず、包丁のような短剣を二振り構える。
「干将の贋作……」
「剣に詳しいな。悪いが、お前を此処で倒す」
「……何のために?」
「何、諭吉以上に欲しいモノがやってくるから」
 義明との会話に、たんちょうに答える飛桜。
「……利害の一致と言うヤツか。……デルフェスさんは後ろに」
 義明が、手から具現刀水晶を召還。デルフェスは、2人の戦闘範囲から離れた。
 一歩も動かない2人。
 身長差など様々な条件を想定して得られたのは、このにらみ合いだった。
 義明は最終的に三滝に出会うまでは神格を完全発動しない。今は水晶のみにて戦う。
 飛桜は、噂から織田義明のことは聞いている。神の力を殆ど解放していない状態でこの隙のなさに感心していた。棺桶の能力を使えば、義明も殺せるだろう。しかしながら、棺桶を発動する前に義明が自分を斬り殺す。結果、純粋な剣技で戦わなければならない。
“やっぱ止めましょう。相手は人間や魔物以上の存在ですよ”
ここで、棺桶が喋る。
「お前は黙れ」
“いいえ、言わせて頂きます。あなたはいつも無理をしている。確かに諭吉さんや大好きな食べ物が手に入るとは言っても無謀ですって”
「引き締まった筋肉は旨い」
“だから、其れで戦うこと無いじゃないですか”
「うるさい」
 隙を見せない状態で、飛桜と棺桶ヴォーグが話し合っている。この会話は実のところ3秒も経ってない。
 棺桶はため息をついて“どうぞ”と言わんばかりに黙り込んだ。
 そしてにらみ合いは続く。
 
 教会の屋根に留まっている烏の鳴き声が戦闘開始の合図となった。
 同時に動く2人。僅かに飛桜が先だった。
 懐に入った飛桜は、右の包丁が義明の心臓に狙いをさだめ突き出される。しかし、義明は刀で受け流す。第二刀・左の包丁が首を切ろうと襲いかかる。義明は紙一重で其れをかわした。
 義明はその瞬間に飛桜を蹴り飛ばす。彼は流れに従い、その蹴りのダメージを軽い物にした。
 また、間合いが開く。
 にらみ合う2人。そして再び向かっていく。
 剣戟が激しくなる。
 しかし、飛桜は何かを感じた。生存本能かそれとも棺桶の小言か。今の三滝と手を組んでも、勝ち目はないと分かったのだ。三滝は己のみを重視すると考える飛桜。死者には生者の都合など考えてはいまい。
 こっちも本気を出してはいないが、織田義明も本気を出していない。体力勝負となる。そうなれば、年齢からしてまだ12歳というまだ肉体成長段階の飛桜には分が悪い。おまけに棺桶付きだ。棺桶の重量を感じた時点で自分は倒されかねないのだ。
 飛び退いて、彼は何も言わずにその場から逃げる。
「逃げたか」
 義明は、刀を消し、デルフェスと教会の中に入っていった。
 
 一方、墓場の裏手から蓮也と亜真知が入る。見取り図から調べだした。ただ、相手のことだから既に分かっている可能性はある。亜真知は念のため全員に探知遮断術をかけていた。
 周りは風化しただの岩になった墓標の群れ。そして、邪悪な気配の重圧感。2人とも冷や汗をかいてゆっくり進む。
 廃墟の教会の裏手に容易に着いた。すでに正面の班は、何者かと戦っている。
「門番がいたみたいだ」
「そうみたいですね」
 2人は義明なら門番と戦っても問題ないと考えた。
 教会の地下に行くには、教会内の地下階段に向かわないと行けない。もしくは小さな通気口からだ。
 亜真知は、雫がどうなっているか探知開始。蓮也は音を立てずに通気口を探す。
「雫ちゃんを見つけましたわ」
「そうか、中に入るにはどうする?」
 蓮也は地下聖堂様の通気口を指さす。
「わたくしたちは小さくなりましょう」
 理力によって、2人はネズミ並の小ささになって、通気口から侵入をした。


【4A】
 デルフェスと義明は三滝がいる地下聖堂まで向かう。中には怨霊が恨みの叫びの合唱をするが、義明の気に気圧され、襲いかかることはなかった。流石に、各地にはった魔法のトラップをこじ開けて行くのには骨が折れたが。
 やっと地下聖堂の螺旋階段を発見し、降りていく。
 
 薄暗くじめじめとした地下。腐臭に満ちており、生に対する憎悪の叫び後が辺りに木霊する。常人だと発狂するだろう。しかし、雫を救いに来た者全員は其れに耐えることが出来た。
 そして、目が慣れると沢山の石棺が並んでいると分かった。常に闇……。闇の先も闇。
「早い到着だな」
 と、聞き慣れた邪悪な声がする。丁度、松明程度の灯りがともって周りが見える。
 其処には、霊鬼兵に取り憑いている、三滝が立っており、その奥の祭壇には雫が何かの“力場”で身動き取れない状態で寝かされていた。
「三滝か!」
「もう少し遅かったら、門番をしていたヤツにこの女を喰わせようと思っていたが」
「そうはさせませんわ! 雫様を返しなさい!」
「条件は前に言ったのだがな? 其れを忘れた訳ではあるまい?」
「……」
 沈黙。天井からしたたり落ちる水滴の音、亡者の叫び声と蠢く音、闇で全てが見えた場合、流石に気が狂うだろう。この大きな闇が平常心を保ってくれるのも複雑だった。
 この部屋の隅に、すでにネズミ2匹が忍び込んでいる。しかし、三滝は其れを探知できていないが、まだ仲間が来ていることには分かっている。
「分かりました。約束通りに」
 とデルフェスがいきなり義明のみぞおちを力一杯殴った。
「……うっ! で、デルフェ……」
 そして、当て身をするデルフェス。義明は気絶した。
「? なんだ?」
「あなたが求めている、神格保持者の肉体と魂でしょう」
「……」
 三滝はまさかこのゴーレムが裏切ると思っていなかった。
「そうだな、早速」
「いいえ、先に雫様を此方に渡してからです」
――成る程な。
 三滝はデルフェスの取引で何かを感づいた。今のデルフェスは前の素体ミスリルより良いもの。神の肉で作られている。硬度はミスリルに劣るが、高速治癒や魔術耐性が桁外れになっている。まともに肉弾戦に持ち込まれると、勝ち目はない。おそらく芝居だろうと勘ぐる。
「よし、いいだろう」
 発音が全く分からない言葉を呟き、雫を捕らえている結界を外す三滝。
 雫は、起きる。しかし、デルフェスの方には行かなかった。
 其れもそのはず。目の前で裏切り行為をしたのだ。好意を持っている義明がいなくなる何て考えたくない。
「雫様……此方に……」
「いかない! いかないもん! 織田さんが居なくなるなんて嫌!」
「し、雫様……」
「ふはははは! 滑稽だ。楽しいよゴーレムよ、裏切ってまで救いたかった者に拒否されるとはな!」
「っく……」
 三滝の笑いが地下聖堂に木霊する。

 雫の寝ている祭壇にネズミサイズの蓮也と亜真知がよっこいしょと言いながらはい上がってきた。
「安心して下さい、雫さん」
 と、小声で言う亜真知。
「芝居なんだ」
 同じように蓮也が小声で話す。
「う…うん」
 状況があまり分からないが、そうなのだろうと納得し始めている雫。

「雫様……」
 このままでは、バレてしまう。焦り始めるデルフェスと、ワザと気絶している義明。
「ま、仕方ない。裏切り者の末路とはこういう物よ。ゴーレム」
 彼は一言『破壊』と唱えようとした時、後ろの雫が光を発して消えたのだ。
「ふむ……救助班がいたのか」
 その隙をついてその光から黒い傘が三滝にぶつかり爆発する。
 祭壇には、雫はいなく、亜真知と蓮也が立っていた。
「侵入成功って所だな」
 煙の中で三滝が笑っている
「流石、義明や亜真知がいると救出は楽だな! 此で囲んでいるとは思うな」
 三滝は、まだ笑っている。まだ勝利と織田義明をモノにする気なのだろうか。
 忌屍者となった三滝にとって焦り悲しみなど、人間が持つマイナス要素を持つことはない。生への執着と魔法を極めるため、殆どのモノを失ってきたのだ。人質の一つ二つ無くても、結果求めている物が釣れただけでも十分である。
 「さて、貴公らの足かせが無くなった……。が、このまま生きて帰す訳にはいかない」
 三滝が、杖を呼びだし其れを掲げた。すると、石棺が勝手に開き、闇の中から亡者達が三滝以外の者に襲いかかった。
「天空剣四神剣奥義・青龍・昇竜閃」
 気絶していた義明の声。
「奥義の極・絶刀」
 運命を斬る能力を持つ“運斬”の担い手、蓮也の技。
「天聖弓・奥義その一・矢之雨爆裂」
 亜真知のカチューシャが弓となって広範囲に霊力の矢の雨を降らせた。
「我望む…!」
 三滝は何かを唱え始めたが、轟音で皆には聞こえなかった。
 地下聖堂から外に向かってに光の柱が立ち上り、周りの邪悪な気配を浄化させたのだった。
 

【5A】
「救出は成功ですわ」
 ネットカフェの個室で雫を看病するデルフェスと亜真知。
 雫は事の事情を聞いて安心したのか、気を失ったのだ。
「なんとかして本体〜魂の入れ物〜を壊さないと又襲ってくるぞ? どうするんだ義明」
「蓮也、俺も其れは考えている。しかし、アイツの行動範囲が全く分からない」
「厄介ですね」
「物品探知などの術は、その代物の形状など細かく知っていないと無理ですから……」
 義明はため息をつく。
 今回は何とかけが人を出さずに済んだが、次はどうなるか分からない。
 まだ、三滝との戦いは続くだろう。


End



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【1865 貴城・竜太郎 34 男 テクニカルインターフェイス・ジャパン社長】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】
【3035 飛桜・神夜 12 男 旅人(殆ど盗人)】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
「三滝の挑戦状」に参加していただきありがとうございます。
三滝の最大の弱点が分かっていても其処まで行き着くことが出来ない状況です。
それでも、雫を救おうとする皆さんのおかげで、無事救うことが出来ました。

さて、三滝は今度どんな行動を出るのでしょうか?

又機会が有ればお会いしましょう。
滝照直樹拝