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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


三滝の挑戦状


 雫は死臭で目が覚めた。
「ここは、どこ?」
 闇のなか何かが蠢いている。それは雫の今までの経験上……人ではないとわかり怯えた。 たしか、学校から帰って…いきなり眠たくなって……何かに囚われているのか……。
 周りは、頑丈な透明の障壁で阻まれている。
――気にする事はない、用事が済んだら帰してやる……。
 この声は聞いたことがある…
「ま、まさか…三滝尚恭…」
 自分が誘拐されたというなら……狙うのは、彼しかいない。しかし……携帯の電波は届かなかった。


 あなたは、織田義昭と遊んで帰っているところだ。その時、目の前にあの宿敵三滝が現れた。どうも生きている人間に取り憑いたらしい。
「決着を付ける為現れた…訳ではないようだな…他人の体を乗っ取るとはな」
「ああ、暫くゲームを楽しもうと思ってな」
「何?」
「瀬名雫…しっているよな?」
 その言葉に義昭は殺気を放つ。
「雫ちゃんに何をした!」
「あれだけの純真な魂と肉体は……我が屍術の研究に相応しい。そう言えばわかるだろう?」
「……さらったのか?」
「如何様にも取れる。さて、取引だ。お前の神格を我に渡すか、それとも見殺しにするかどっちだ?」
 と、いうと何かの地図を投げ、忽然と乗っ取った人間から離れた。被害者はそのまま気を失っている。義昭が支えて、回復させた。
「もう関係のない雫ちゃんを……」
 地図は東京からかなり遠いうち捨てられた墓場のようだった。義昭は拳を握りしめ、雫を探しに行く。

 貴方は彼の手伝いをするか? それとも?


【1B】
 三滝が陣地と決めた寂れた墓場。
 外人墓地であり、丁度廃墟となった教会がある。その中は完全に闇に包まれており、腐臭と亡者の叫びが木霊していた。亡者の殆どは日を浴びることは出来ない。日にあたると、塵になってしまう。影や、墓守の亡者、ゾンビがこの教会の防御を固めるために動いていた。
 三滝は既に不浄結界を張り、この地域を忌屍者の楽園に変えていた。全ては順調である。
一人客人が来たので、三滝は頃合いの霊鬼兵に取り憑き、話しをしている。その相手は、棺桶を担いだ奇妙な少年、飛桜神夜だった。
「手伝いたい? しかし貴公は万札しか興味が無いのでは?」
 三滝は彼の素性を前もって調べていたので、敢えて訊いてみた。
「人の肉を食べたくなった」
 動機は至って簡単だった。彼は人を喰う。
「人喰いか。まあよい。“報酬”は後々考えてやろう」
「……」
 飛桜はそれ以上何も言わず、この部屋から去っていった。
しかし棺桶だけは
“止めましょう。多分分が悪いです。いえ、絶対に無理ですよ”
と、反対の声を挙げている。
「うるさい」


【3A】
 一緒に墓地に向かう。三滝が陣地と決めた寂れた墓場。特に夕刻。日が落ちて闇の世界に入った。
 正面からデルフェスと義明が門をくぐると、異様な違和感で気持ち悪くなる。おそらく別の班も同じ感覚に襲われているだろう。
「気を付けないといけませんわね。義明様」
「はい。しかし、乗り越えなければならない障害が教会を守っている様です」
「ゾンビですか?」
「気配からして人間かな?」
「え?」
 デルフェスは驚いた。三滝に加担する人間がいるという事に。
「利害の一致かもしれない。話し合うことも……」
「出来れば、三滝だけと思いたかったですわ」
 2人は教会に向かった。
 義明が言った通り、人がいる。棺桶らしい物、いや棺桶を背負った少年だ。
「……来たか」
 彼はそれ以上何も言わず、包丁のような短剣を二振り構える。
「干将の贋作……」
「剣に詳しいな。悪いが、お前を此処で倒す」
「……何のために?」
「何、諭吉以上に欲しいモノがやってくるから」
 義明との会話に、たんちょうに答える飛桜。
「……利害の一致と言うヤツか。……デルフェスさんは後ろに」
 義明が、手から具現刀水晶を召還。デルフェスは、2人の戦闘範囲から離れた。
 一歩も動かない2人。
 身長差など様々な条件を想定して得られたのは、このにらみ合いだった。
 義明は最終的に三滝に出会うまでは神格を完全発動しない。今は水晶のみにて戦う。
 飛桜は、噂から織田義明のことは聞いている。神の力を殆ど解放していない状態でこの隙のなさに感心していた。棺桶の能力を使えば、義明も殺せるだろう。しかしながら、棺桶を発動する前に義明が自分を斬り殺す。結果、純粋な剣技で戦わなければならない。
“やっぱ止めましょう。相手は人間や魔物以上の存在ですよ”
ここで、棺桶が喋る。
「お前は黙れ」
“いいえ、言わせて頂きます。あなたはいつも無理をしている。確かに諭吉さんや大好きな食べ物が手に入るとは言っても無謀ですって”
「引き締まった筋肉は旨い」
“だから、其れで戦うこと無いじゃないですか”
「うるさい」
 隙を見せない状態で、飛桜と棺桶ヴォーグが話し合っている。この会話は実のところ3秒も経ってない。
 棺桶はため息をついて“どうぞ”と言わんばかりに黙り込んだ。
 そしてにらみ合いは続く。
 
 教会の屋根に留まっている烏の鳴き声が戦闘開始の合図となった。
 同時に動く2人。僅かに飛桜が先だった。
 懐に入った飛桜は、右の包丁が義明の心臓に狙いをさだめ突き出される。しかし、義明は刀で受け流す。第二刀・左の包丁が首を切ろうと襲いかかる。義明は紙一重で其れをかわした。
 義明はその瞬間に飛桜を蹴り飛ばす。彼は流れに従い、その蹴りのダメージを軽い物にした。
 また、間合いが開く。
 にらみ合う2人。そして再び向かっていく。
 剣戟が激しくなる。
 しかし、飛桜は何かを感じた。生存本能かそれとも棺桶の小言か。今の三滝と手を組んでも、勝ち目はないと分かったのだ。三滝は己のみを重視すると考える飛桜。死者には生者の都合など考えてはいまい。
 こっちも本気を出してはいないが、織田義明も本気を出していない。体力勝負となる。そうなれば、年齢からしてまだ12歳というまだ肉体成長段階の飛桜には分が悪い。おまけに棺桶付きだ。棺桶の重量を感じた時点で自分は倒されかねないのだ。
 飛び退いて、彼は何も言わずにその場から逃げる。
「逃げたか」
 義明は、刀を消し、デルフェスと教会の中に入っていった。


【5B】
 結局の所、人の肉を食いたかったが、遠くで様子を見てみれば、雫を助け出した者は殆ど人外だった。ゴーレムに半神半人、投影体の超生命体、一人だけ人間男。
“だから止めようと言ったじゃないですか、分が悪かったんですよ”
「うるさい」
 棺桶に言われて拗ねる飛桜。
「む? 誰か来る」
“ああ、本当に誰か来ますね”
 まだ、何か来ると感じたらしく暫く身を潜めた。
 黒いコートに黒いサングラスの男が堂々と、中に入っていった。
 それから10分ぐらいで、黒いコート男が教会から出て行く。
“何だったのでしょうね?”
「其処まで知らん。帰る」
 飛桜は黒コートのことは気にもとめなかった。ただ、何故、あの日本刀の使い手達は、あそこまで必死に人を助けようとするのだろう? 飛桜にとって人というモノは不便な存在で食べ物。今回三滝側に参加したのは戦い倒し、その手で体を解体し、喰らうつもりだった。
 しかし、今となってはその望みを叶えることは出来なかった。棺桶が言っている事は確かに正しかった。棺桶に諭されるのはむかつくが、自分は一応生きているので何も言わないでおく。其れに、彼には今回のことで疑問を残すことになる。
――人を無償で助ける意味。
 12歳で冥府魔道に堕ちた彼には答えが見付からなかった。
“今度は無茶しないで下さいね”
 棺桶の小言を聞き流しながら、飛桜はその場を去っていった。
 
 End
 
 
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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1593 榊船・亜真知 999 女 超高位次元知的生命体・・・神さま!?】
【1865 貴城・竜太郎 34 男 テクニカルインターフェイス・ジャパン社長】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2276 御影・蓮也 18 男 高校生 概念操者】
【3035 飛桜・神夜 12 男 旅人(殆ど盗人)】

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■         ライター通信          ■
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滝照直樹です。
「三滝の挑戦状」に参加していただきありがとうございます。

飛桜さま、初参加ありがとうございます。
もう少し棺桶と三滝との会話を書ければよかったかなと思っております。
喋る物体は私として好きな部類です。

又機会が有ればお会いしましょう。
滝照直樹拝