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私は悲しい死神
オープニング
碇・麗香さん、あなたの魂を三日後に冥界に連れて行きます。
今朝、届いたハガキにはたった一言だけが書かれていた、
郵便局のハンコがないところを見ると、直接アトラス編集部の郵便受けに投函したのだろう。
「…何よ!これは」
碇・麗香はかなりのご立腹の様子でハガキをグシャと握りつぶす。怒るのも無理はない。
三日後に碇・麗香は死ぬ、といわれているのだから。
三下は自分に火の粉がかかってこないように昼食に行ってきます、と言って編集部から出ようとした。
…………が。
「さんした君」
ぎく、と肩を震わせた後に「な、なんでしょう?」とわざとらしく問いかけてみる。
「コレの件、調べてくれる…よねぇ?」
どうやら拒否権はないようだ。
「え、しかし…ボクの手に負えるものでは…」
「…さんした君、もしこれで私が死ぬような事になってごらんなさい」
碇・麗香は三下の肩に手を置きながら言う。
「あなたも道連れよ」
分かった?と笑いながら聞いてくる碇・麗香に三下は拒否する事は出来ずに首を大げさに縦に振る。
「そ、じゃあよろしくね」
三下は自分の安全のためにも何としてでもこの件を解決しなくては、と心に誓った。
視点⇒五代・真
「おわっ!!」
今日は仕事が休み。しかし暇だ…というわけでアトラス編集部の三下で暇つぶしをしよう!と言う事で来てみた。
「……来てみたじゃないですよ…遊ばれる僕の事も考えてくださいよぉ」
はぁ、と三下は溜め息をついて真を見る。
「そういや、何でそんな浮かない顔してんの?」
まことのその言葉を待ってましたといわんばかりに三下は真に泣きついた。
「聞いてくださいよぉぉ、編集長が!僕がぁぁ…」
うわあぁんと人前だと言う事にも構わず三下は真に抱きつく。
「うぉあっ!
真は驚きで大声を上げる。回りは何事?と言う様な冷たい視線で二人を見ている。
「どうしたんだよ…いきなり泣きつくなよ…とりあえずメシでも食いながら話さない?俺、腹減ってんだよね」
そう言って真は三下と共に白王社内の社員食堂に連れて行った。
「おばちゃん、俺、今日のスペシャルね」
真はメニューから1500円のスペシャルメニューを食堂のおばちゃんに頼む。
「へぇ、豪華なの食べるんですね」
それ、社員でも中々手が出ない高級定食ですよ、と三下も珍しそうに渡された定食をじっと見ている。
「代金はよろしく」
真はニカッと笑って三下を置いて一人テーブルに着く。
「え、えぇぇ!?」
三下は真を追いかけようとするが「代金は」とおばちゃんに睨まれて仕方なく1500円を払った。
「酷いですよ、もう。あんまり給料良くないんですからね」
「はは、わりーな。ここのスペシャルは一度食べたくってさ」
「自分のお金で食べてくださいよ…」
「まぁまぁ、何か事件があるんだろ?聞いてやっからさ」
真のその言葉に三下は思い出したのか「コレを見てくださいよ!」とハガキを取り出し、真に渡す。
「えーと、なになに…碇・麗香さん、あなたの魂を三日後に冥界に連れて行きます。…へぇ、あんたんとこの編集長…死神に狙われてんのか。物好きなヤツもいるもんだな」
ははっと笑いながら言うと三下は恨めしそうに真を睨む。
「じょ、冗談だって。そんな目で睨むなよ、ソイツ何とかすりゃ問題ねぇだろ!」
「何とかしてくれるんですか!?」
三下は真に掴みかかりそうな勢いで叫ぶ。
「おぅ、俺も一度は死神とやらに会ってみたいしな」
「好奇心は身を滅ぼしますよ…」
三下は呆れ気味に呟くと「ふっ…俺を甘く見ちゃいけないよ」とどこからその自信がくるのか、自信満々で答えた。
「碇編集長にオトリになってくれるように頼んでおいてくれよ、彼女がいないと死神が来ないような気がするからさ」
それだけ言うと真はスペシャル定食を食べ終わり、器を厨房に返してから帰っていった。
三下は「大丈夫だろうか…」と小さく溜め息と共に言葉を漏らし、編集長のところまで行く事にした。
三日後
「本当に大丈夫なの?」
麗香は訝しげな目で真を見た。
「任せてくださいって」
「とても自信があるみたいだけど…なにか作戦でもあるのかしら?」
「やだなぁ、そんなの…力任せに立ち去らせる!に決まってるじゃないですか」
ははと豪快に笑う真に麗香は頭を抱えた。
「会社を壊したらあんたを連れて行くわよ」
ジロッと睨むと真は「大丈夫ですって」と結界呪符をポケットから取り出す。
「何?それ」
「知り合いからくすねてきた結界呪符だ。これで編集部大破は免れると思いますよ」
真はそういいながらペタペタと結界呪符を至る所に貼っていく。
「さて、麗香さんは適当にしててよ。俺の仕事は死神が現われてからだし」
「それも―」
そうね、と続くはずの麗香の言葉は遮られた。目の前にいきなり現われた人物に真は視線を向ける。真っ白な髪、普通のカジュアルな服を着ていても普通には到底思えない人物。
「碇・麗香、お前の命を頂く」
真は待ってましたと呟いて退魔宝刀『泰山』を片手に持つ。
「…よぉ、姉ちゃん、いきなり命を頂くとか言って『はい、渡します』なんて返事する人間いると思うか?」
真はドスのきいた声で死神を脅す。死神は別に恐怖することなく言葉を紡ぐ。
「私は強い負の感情に呼ばれてきた。お前に邪魔をされるいわれはない」
「強い、負の感情?」
そう、と死神が指差したのは三下だった。三下は「は?」と間抜けな声を出して真を見る。
「ぼ、ぼく!?」
「そう、お前だ」
「…………さんしたくぅん…私が死ねばいいと思っていたのね」
ちょっときなさい!と大きな声で叫んで三下の首根っこを掴んで奥へと引っ込んでいった。
「逃がすわけにはいかん!」
死神が追おうとした所に真が割り込む。
「おっと、行かせるわけにはいかないねぇ」
真はニッと笑って退魔宝刀『泰山』を思い切り振り回す。
「っ!?」
死神はサッと避けるが次の一撃に間に合わずにダメージを食らう。
「これ以上するってなら本気で相手になるけど?」
刃の先端を死神に向けて、低い声で言う。死神はチッと小さな舌打ちをして立ち上がる。
「今日は引いてやる。だが、また私は狙いに来るぞ、それが私の仕事だからな」
言い終えると死神の姿はすぅっと空気に消えて溶けた。
「さて、あっちは当分近寄れそうにねぇなぁ…」
真が視線を送る先は三下と麗香の二人。たまにパシンと頬を叩かれる音が響く。
「あんたって人は!!!!」
「ご、誤解ですぅ!へんしゅうちょ〜〜〜っ…」
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
1335/五代・真/男性/20歳/便利屋
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■ ライター通信 ■
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五代・真様>
いつもお世話になっております、瀬皇緋澄です。
今回は「私は悲しい死神」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
「私は悲しい死神」はいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったと思ってくださったらありがたいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくお願いします^^
-瀬皇緋澄
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