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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


私は悲しい死神

オープニング

 碇・麗香さん、あなたの魂を三日後に冥界に連れて行きます。

 今朝、届いたハガキにはたった一言だけが書かれていた、
 郵便局のハンコがないところを見ると、直接アトラス編集部の郵便受けに投函したのだろう。
「…何よ!これは」
 碇・麗香はかなりのご立腹の様子でハガキをグシャと握りつぶす。怒るのも無理はない。
 三日後に碇・麗香は死ぬ、といわれているのだから。
 三下は自分に火の粉がかかってこないように昼食に行ってきます、と言って編集部から出ようとした。
 …………が。
「さんした君」
 ぎく、と肩を震わせた後に「な、なんでしょう?」とわざとらしく問いかけてみる。
「コレの件、調べてくれる…よねぇ?」
 どうやら拒否権はないようだ。
「え、しかし…ボクの手に負えるものでは…」
「…さんした君、もしこれで私が死ぬような事になってごらんなさい」
 碇・麗香は三下の肩に手を置きながら言う。
「あなたも道連れよ」
 分かった?と笑いながら聞いてくる碇・麗香に三下は拒否する事は出来ずに首を大げさに縦に振る。
「そ、じゃあよろしくね」
 三下は自分の安全のためにも何としてでもこの件を解決しなくては、と心に誓った。


視点⇒高木・貴沙良


「この死神さんは三流死神決定ですね」
「は?」
 三下から呼び出され、は暗視を聞いた後に貴沙良は小さく呟いた。
「だって、郵便受けになんて雰囲気が台無しじゃないですか。月のない夜、一人オフィスに残る碇さん。そして風と共に窓からそっと入り込む手紙。最低限、これくらいしてもらわないと」
 どこか遠くを眺めながら熱唱する貴沙良に三下は口をポカンとあけて絶句する。そういう問題じゃないと思う、と突っ込みを入れたいところだが、突っ込みを入れたら入れたで後が怖そうなのでやめておいた。
「ハガキから追跡する事はできるんですけど―…」
 貴沙良が言葉を濁しながら言う。その様子を不審に思ったのか「何かあるんですか?」と聞いてみた。
「ただ精度の問題で三日かけたら終わってました。になりそうなので…」
「じゃあ、打つ手ナシってことですか…」
 三下が下を俯きながら大げさな溜め息をついた。
「あら、打つ手ナシとは言っていませんよ?私が三日間、碇さんに張り付いてます」
 にっこりと笑いながら言われた言葉に「学校は…?」と三下が言葉を挟む。
「学校は大丈夫。成績さえ落とさなければ叔父夫婦は干渉してきませんから。三日間何もなければ悪戯…やってくるなら、私の鎌とどっちが強いか力比べ…してみましょうか」
 死神の弱点は魂を刈取る祭器。祭器を壊された死神は存在意義を失い消滅してしまうらしい。ただの噂らしいが今回の事でその噂が本当なのかウソなのかが分かる。
「しかし、大丈夫なんでしょうか…」
 三下は少し不安げな目で貴沙良を見た。どう見ても普通の小学生にしか見えないのだから少々の不安は当たり前かもしれない。
「大丈夫ですよ」
 そんな三下の考えを読み取ったように貴沙良は小さく笑みを浮かべて言った。
「本気の私は怖いですから」
 貴沙良はクスと怪しげな笑みを浮かべて言う。小学生にしては大人びた、というより何か寒気がするような台詞に三下は言葉を返す事ができなかった。
「碇さんのこれからのご予定は?」
「えっ?あ、編集長は原稿の見直しがありますから…多分泊り込みになりかと…」
「それは好都合ですね。私も泊まらせていただいてよろしいですか?」
 貴沙良の言葉に三下は「構いませんよ、寝苦しいところでよければ…」と自分が使う仮眠室に案内した。
「結構広いですねぇ。じゃ、何か起こったら呼んでください」
「は?ぼ、ボクもいなきゃいけないんですか!?」
 三下は慌てたように貴沙良に詰め寄る。
「当たり前でしょう?会社の上司を見殺しにするんですか?男として、それ以前に人間として最低ですよ?」
 貴沙良の言葉に「うぅ…」と呻きながら三下はアトラス編集部に居残りをするハメになった。


 それから三日目の夜。
 特に異常な事がないまま約束の三日目がやってきた。
「今日、何もなければいいのですが…」
 貴沙良は窓から外の景色を眺めながら小さく呟く。
「そうですね…」
 三下は特に何も起きないで欲しいと思っているようだ。
「……残念ですが、三下さんの思うようにはならないようですね…」
 貴沙良の言葉に「え?」と三下が間抜けな返事を返す。
「お客様です。碇さんのところに急ぎましょう」
 そう言って貴沙良は走りながら碇がいる場所へと向かった。

 −ガシャンっ!

 硝子の割れる音と共に碇の悲鳴に近い叫び声が耳に入ってきた。
「編集長!!?」
 悲鳴に慌てて三下が部屋の中に入る。中に入ると月の光に照らされるような銀色の髪を持った女性が大きな鎌を持っていた。
「…誰?」
 睨み付けるような目で貴沙良を見る。
「…三下さん、碇さんを連れて出て行ってもらえますか?」
 有無を言わさない貴沙良の言葉に三下は小さく頷き、碇を連れて外に出て行く。
 出て行ったのを確認してから貴沙良は自分の武器である鎌を取り出す。250cmもある鎌を見て死神の女性は少々驚いたように目を丸くする。
「同業者か…?」
「似た能力は持っていますけど、私は死神ではないです、冥界なんて何処にあるのかもしらないですし」
「じゃあ、なぜ私の邪魔をする?」
「…一応護衛ですから」
 貴沙良が言葉を言い終わらないうちに死神の女性は鎌を振り上げて攻撃をしてくる。
「わっ」
 貴沙良も自分の鎌で攻撃をかわす。
「所詮お前ごときなど私の敵ではないっ!お前も殺してあの女も―…」
 女性が言い終わると貴沙良は鎌を振り上げて攻撃する。
「お前“ごとき”?外見だけで判断するなんて死神失格ですね。相手の力量も読めないようでは先が思い知らされます」
 貴沙良の言葉にカチンときたのか「何を!」と叫ぼうとした時に女性は肩を震えさせる。
「…あら、今頃分かったんですか?でも」
 遅いですね、といいながら貴沙良は鎌を思い切り振りおろし死神ごと鎌を叩き折る。
 死神は悲鳴のようなものをあげながらすぅっと消えていった。
「噂、本当なのか確かめる事もできませんでしたね」
 ふぅ、と溜め息をついて部屋の外にいる碇と三下の所まで足を運んだ。


 死神はもういない。
 あの死神は決して弱くはなかった。
 どちらかといえば《強い》方に分類されるだろう。
 だけど―…


「私が護衛をしていた、という事が一番の災難でしたね」





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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


2920/高木・貴沙良/女性/10歳/小学生


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■         ライター通信          ■
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高木・貴沙良様>

初めまして、今回「私は悲しい死神」を執筆させていただきました瀬皇緋澄です。
「私は悲しい死神」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございます。
話の方はいかがだったでしょうか?
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^


              -瀬皇緋澄