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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:消えた給料
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜4人

------<オープニング>--------------------------------------

「ないっ! ないっ! ないぃぃぃぃぃ!!!」
 草間武彦の絶叫が、この世の果てまで響き渡る。
 白昼の往来で、なかなか豪気なことである。
 道行く人々が可哀相な人を見る目で黒髪の三〇男に視線を投げる。
 まあ、事実として彼は可哀相なヤツだった。
 意味はちょっと違うが。
 受け取ったばかりの給料を、そっくりそのまま紛失してしまったのだから。
 彼は草間興信所という小さな探偵事務所の所長である。しかし、むろんそれは事務所の会計を欲しいままにできるという事にはならない。
 自分の取り分は、給料という形で受け取っている。
 そうしないと税金の問題とか、いろいろ厄介なのだ。
「そんなことはともかくっ!」
 いきり立つ怪奇探偵。
 明後日の方向に向けて怒っている。
 気持ちは判らなくもないが、難儀なことであった。
「もしかしたらあの時か‥‥」
 ぶつぶつ。
 フラッシュバックする記憶。
 つい数分前にぶつかった、小さな人影。
 抜かれたのかもしれない。
「けど‥‥この俺が気づかないなんて事があるのか?」
 やや自信過剰な台詞を吐く。
 たしかに普段いくらぼーっとした昼行灯でも、推理力と感覚の鋭さでは誰にもひけをとらないのが怪奇探偵である。
 ただ、現実問題として、給料袋を無くしたのだから、何の説得力もない。
「ほっとけっ!!」
 得体の知れない怒りにかられて、大空を睨む草間。
 突き抜ける蒼穹。
 どこまでも続く青が、何故か目に染みる。





※もちろん、コメディーです。
 参加キャラクターは草間氏の給料袋を、一度は手に取る機会があります。
 どうするかは、ご本人次第です。
 たくさん使うと、草間氏が泣きます。
 泣かせてあげてください☆
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。

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消えた給料

 善行には善果がある。
 仏教の言葉だが、ようするに、良いおこないをすれば良い見返りがある、という意味だ。
 まあ、見返りを求めてやるのが善行かどうかはしらないが、
「俺の人生、すぺて営利が目的だっ!」
 と、断言する人間も少ない。
 とはいえ、よく日本の会社がおこなっているように、企業利益の追求を、あたかも社会奉仕のようにいうのもいささか胡散臭い。
「おお‥‥おおお‥‥」
 守崎北斗が、天下の往来でかがみ込む。
 おなかが痛い、わけではない。
 拾い食いをしたわけでもない。
 もちろん、蟻の行列を観察しているわけでもない。
「これは‥‥」
 封筒を拾い上げる。
 どこにでもありそうな茶封筒だ。
 中には、なんと紙幣が入っているっ!
「おおおおっ!! ひぃふぅみぃ‥‥おおおっ!!!!」
 大金だ。
 思わずきょろきょろと周囲を見渡す北斗。
 それからおもむろに、封筒をポケットにねじ込む。
 とっても自然な仕草だが、もちろんこの封筒は北斗のモノではない。
 拾得物横領。
 判りやすくいうと、ネコババというやつだ。
 脱兎の如く駆けてゆく少年。
 見事な俊足である。
 目指すは、当然のように焼肉屋。九八〇円くらいで食べられるオススメコースなんて食べない。
「待ってろ松坂っ! 今日はホームランだっ!!」
 意味不明なことを言っているが、日本語に翻訳すると、松阪牛の特上ロースを食ってやる、それも三人前くらい、という感じである。
 むろん意訳だ。
 意気揚々と驀進した北斗が、焼き肉屋ののれんをくぐった。
「いらっしゃい。北斗ちゃん。いつものかい?」
 出迎えてくれた顔なじみのおばちゃんに、ちっちっちっと指を振ってみせたりしている。
 わりと馬鹿な仕草だが、まあ、北斗だから。
「今日の俺はひと味違うぜっ! 特上ロース定食三人前っ!!!」
「はいはい」
 にこにことオーダーを伝えるおばちゃん。
 北斗のひと味など、しょせんはこんなもんである。
 特上といっても、大衆店だ。
 天文学的な金額になるはずはない。
「うめーっ!! やわらけーっ!!」
 出された定食をさっそく頬ばっている。
 うるさいことこの上ない。
 それだけ感動したということだろうが、普段の食生活がばれてしまう。
 けっこう安上がりな舌だ。
 もしこのシーンを兄の啓斗が見ていたら、ほっとしたか哀しんだか、さて、どちらであろう。
 やがて、すっかり満腹した北斗が、会計を済ませて店を出る。
 ちなみに金額は七五〇〇円であった。
「さーて、次は何をしようか〜」
 おおきく伸びをする少年。
 その懐から、封筒が風に乗って滑り落ちる。
 そんなに軽くもないはずなのに。また、明敏な感覚をもっている北斗にすら気づかれずに。
 ふわふわと飛んでゆく封筒。
 怪奇探偵という異名の男の給料をのせて。


 少女は、不条理妖精と呼ばれている。
 愛称というには、あまり好意的なニックネームではない。
 名付けたのは、かの草間武彦氏である。
 現代日本に、体長一〇センチほどで羽のある人間はそぐわない。
 まったくもって不条理だ。
 というのが、ネーミングの由来である。
「でも、妖精ではないんでぇすよ?」
 少女、つまり露樹八重はそう主張するが、怪奇探偵どのは取り合ってはくれない。
 したがって、いつもいつもいつもいつも不毛な戦いが繰り返されるのである。
 もっとも、草間の細君であるシュライン・エマに言わせれば、
「トムとジェリーみたいなものだから、なま温かく見守っていてあげましょう」
 ということになる。
 その八重の前に封筒が降ってきたのは、散歩しているときのことだった。
 さすがに町中なので、羽をしまって小学生くらいの大きさまで脹らんでいる。
「ふくらむって表現はなんとなくイヤなのでぇす」
 どうでもいい苦情を垂れながら拾った封筒には、
「おおっ 大金でぇすねっ」
 驚愕の声。
 なんの躊躇いもなく回収される封筒。
 てくてくと商店街に向かう。
 何故って?
「くさもちの美味しい季節なのでぇす☆」
 ほかに、なにか理由がいるだろうか。
 そして一時間後。
「ぷふー 食った食ったでぇす」
 ぽむぽむと自分のおなかを叩く八重。
 とっても満足そうである。
 草餅を二〇個と、たこ焼きを二〇皿食べて、まだ満足してないとしたら、そりゃもう大騒ぎなのである。
 ちなみに、たこ焼きは一皿三五〇円。草餅は一個二〇〇円だった。
 締めて一一〇〇〇也。
 道端のベンチでぼへーっとする八重
 ポケットからするりと滑り落ちた封筒が、ふたたび風に舞う。


 人は、財布にさまざまなものを隠す。
 怒り、哀しみ、喜び、嘘。
 それらを抜いて食べてゆく女がいる。
 如月縁樹。
 人形を連れたスリ‥‥。
「ちょっとノイ。変なナレーションを入れないでよ」
 やや憤慨したように、黒い服を纏った女が口を開いた。
「僕はスリじゃないよ」
「まあまあ。いいじゃねーか。オマージュだよ。オマージュ」
 応えたのは、彼女の肩に乗った人形である。
 縁樹とは対照的に、白い服を着せられていた。
 顔立ちは生意気そうな男の子といったところか。
「オマージュねぇ」
 やれやれと肩をすくめる縁樹。ちなみにオマージュとは、敬意を表してのパクリと訳すのがちょうど良いだろうか。
 たとえば香港で作られたサッカー映画が日本のサッカーアニメをオマージュしていたり、
奇才タランティーノ監督の作品に、あちこちからのオマージュがあったり。
 黒澤作品とそっくりのシーンが、ジュージ・ルーカスのSF大作の中で再現されているのも有名である。
「もうちょっと有名なヤツの方が良いと思うよ。僕、元ネタわかんないし」
「いーじゃねーか。ボクは好きなんだよっ」
「はいはい」
 くだらない事を言い合いながらそぞろ歩く。
 ふたりは旅人だ。
 この東京の街だって、終の棲家にするわけにはいかない。
 あるいは、終わらない旅なのかもしれない。
 ただ、どうして旅をするのかと訊かれれば、縁樹もノイも答えられないだろう。
 と、ふたりの目の前に、封筒が落ちてきた。
 なんとなく手を伸ばしてキャッチする縁樹。
「あ‥‥お金だ」
「おおー けっこー入ってるなー」
「えっとたしか、この国の法律だと、拾った人が一割くらいもらえるんだよね」
 紙幣を数えながら、鉄灰色の髪の女が言った。
「けけっ☆ そんな悠長なこと言ってねーでネコババしちまおーぜっ☆」
 善良な農民をたぶらかす下級悪魔みたいに、ノイがささやく。
 なかなか心温まる関係である。
「ダメ。べつに僕たちはお金に困ってないでしょ」
 あっさりきっぱり誘惑をはね除けた縁樹が、すたすたと歩き出した。
 当然、肩の人形も一緒だ。
「どこに行くんだ?」
「京王プラザホテル」
「なんでそんなところに?」
「そりゃあ、デザートバイキングやってるから」
「結局つかうんだな」
 からからと、男の子の人形が笑った。
「いいじゃない。金は天下の回りものってね」
 くすりと縁樹も微笑する。
 まったく口は重宝なもので、いろんな理由が泉のように溢れ出るのだ。
 こういうときは特に。
 さて、バイキングといってもいろいろある
 慎み深い縁樹は、エステとセットになったバイキングを楽しんだ。
 ささやかな幸福のひとときを過ごしてホテルを出たとき、一陣の風か吹く。
 ひらりと宙に舞う封筒。
「あっ」
 といってノイが手を伸ばすが、間に合わなかった。
 みるみるうちに、天高く舞い上がってしまう。
「ふぇ〜〜」
 感心して見あげる縁樹。
 初夏の風。
 暑い季節の到来を告げるように。


「はぁはぁ‥‥」
「ふぅふぅ‥‥」
「いったいどこいっちまったんだ‥‥」
 男女三人が、東京中を駆け回る。
 草間武彦、シュライン・エマ、守崎啓斗。
 三〇歳から一七歳までのトリオである。
 なにが哀しくて、こんな心地よい日差しの中、失せもの探しなどしていなくていけないのだろう。
 あのとき、街で見かけた草間夫妻に声などかけなければ。
 心の底から啓斗は思ったが、まあ、運命の巡り合わせというやつである。
 巻き込まれ人生街道まっしぐらの少年が、この手の事件に巻き込まれないはずがないのだ。
 いっそ、神の采配といっても良いくらいである。
「‥‥嬉しくありません‥‥」
 ぼそぼそいって地上に視線を走らせる。
 草間が文無しになったところで、さほど良心がいむわけではないが、仲の良いシュラインに迷惑をかけるのはいただけない。
 それに、草間興信所が貧乏になりすぎると、バイト代だって払ってもらえなくなる。
 草間興信所の依頼は、けっこう死活問題なのだ。
 守崎家にとって。
「もぅっ。どこに落としたのよっ。武彦さん」
 奥さんが怒ってる。
 わりと当然だ。
 給料全額をもって出掛けたと思えば、無くしたといって泣きながら戻ってくる。
 今月の生活費だって、まだ入れてないくせに。
 甲斐性なし。
 馬鹿。
 おたんこなす。
 シュラインにしては珍しく何のひねりもない悪口をいってから、
「とにかく、武彦さんの分の生活費だけは、きっちり払ってもらいますからね」
 しっかりと現実を見つめ直す。
「しくしくしくしく」
 泣き真似をする怪奇探偵。
 もちろん、一〇分の一グラムの同情すら買えなかった。
「なあシュラ姐」
「どしたの? 啓斗」
「草間分の生活費っていくらなんだ?」
 プライベートな質問をしてみる。
 草間の給料の額も気になるが、その中から払っている生活費も気になるのだ。
 興味本位というか、守崎家の家計を預かる身としては。
「‥‥八万円‥‥」
 ぼそりと答えるのは草間だ。
 けっして小さい額ではないが、ひとり暮らしならもっとかかるだろう。
 シュラインや義妹も生活費を出し合って、それが草間家の家計を支えているのである。
「思うんだけどさ。シュラ姐」
「あによ?」
「生活費って、天引きしたら良いんじゃないかな?」
 とってもとっても有効なことを言う啓斗。
 あまりに有効すぎて、
「そうね。来月からはそうしましょう」
 シュラインの微笑が、ちょっと怖い。
 まあ、今のこの事態を解決する役には立たないから。
 啓斗の背筋を冷たい手が這い回る。
「えっとその‥‥」
 泳ぐ視線。
 と、その中に見知った顔が現れた。
「兄貴じゃん。こんなとこでなにやってんの?」
「草間のおじちゃ。なんで泣いてるでぇすか?」
「怪奇探偵の皆さん。お揃いでどうしたんです?」
 三方向からかかる声。
 北斗、八重、縁樹である。
 つまり、草間の給料を使い込んだ連中だ。
 慌ただしく情報が交換され、
「ふふふふ‥‥」
 不気味な笑いを浮かべながら、シュラインがなにか手帳に書き込んでいる。
 食べた分は報酬から引かれそうですね‥‥。
 苦笑を浮かべながら、考える縁樹であった。
「じゃあ、今はいったいどこにあるんだろう?」
「うーん」
 守崎兄弟が首をかしげる。
「もはやこの世のどこにもないのでぇす」
「縁起でもないこと言うな」
 余計なことをいう八重に、草間が脳天チョップ。
「やりやがったでぇすねっ」
「やったがどうしたっ」
 そして不毛な戦いへと突入する。
 とりあえず、こいつらは飽きるまで戦わせておくとして。
「困ったわねぇ」
 シュラインが嘆息した。


 草間の給料袋がどこにあるか。
 それは、ひとりの男の懐の中である。
 彼の名は巫灰慈。
 とっても機嫌良さそうに街路を歩く彼は、怪奇探偵とも馴染みの深いフリーライターだ。付き合いの長さでは、シュラインとほぼ同じくらいだったりする。
 ところで、どうして機嫌が良いかというと、
「いやー 夢見も良かったしなー やっぱ正夢か? こんなもん拾うなんてなー」
 と、いうことだ。
 ちなみに夢の内容は、こんな感じである。

 競馬で大勝ちした巫。
 その金を使って南の島へと旅行。もちろん恋人と二人っきりだ。
 夕暮れのオンザビーチ。
 見つめあう瞳。
 恋人の白くしなやかな手を取り、リングフィンガーに指輪を通す。
「はいじ‥‥」
「もう離さないぜ。俺の大切な綾‥‥」
 交わされる情熱的な口づけ。
 そして、ゆっくりと砂浜に倒れ込んでゆくふたりの身体。
 サンセット。
 家路を急ぐ海鳥たちが鳴いていた。
 祝福の鐘のように。

「でへへへー」
 すっかり顔が緩んでいる。
 この状態でいっても信じてもらえないだろうが、普段は猫科の肉食獣みたいに精悍な顔立ちなのだ。
 体つきだって鍛え上げられたサーベルのように鋭い。
 だがしかし、口を半開きにしてにまにま歩く姿は、
「良くいって変質者ってところねぇ」
 背後からかかるシュラインの声。
 たるみきった顔のまま、巫が振り返る。
「やぁ☆」
 そして爽やかな挨拶。
 切り替えの速さに、怪奇探偵一行の肩ががっくりと落ちた。
「どうしたんだ? お揃いで」
「それがねぇ」
 代表する形でシュラインが説明した。
 ぽむ、と、手を打つ黒髪赤瞳の青年。
「それなら、俺が持ってるぜ。さっき拾ったから」
「ほんとかっ!?」
 草間の目が輝く。
「ああ、この通り」
「ありがとうっ! 灰慈っ! ありがとうっ!」
 感涙を浮かべながら、怪奇探偵が封筒の中を覗きこんだ。
「‥‥‥‥」
 沈黙。
 とっても気まずい沈黙が、一行の間をたゆたう。
「なんで五万円しか入ってないんだ〜〜〜〜〜〜っ!!!」
 探偵の悲痛な叫びが、宇宙の彼方まで響いた。
 念のために説明すると、小さな幸福の恩恵を受けたのは、縁樹や北斗や八重だけではない。
 何人かの人たちがこの封筒を拾い、少しだけ幸せを味わった。
 当然、その間に中身はどんどん減っていき、
「シュライン〜‥‥」
「知らないわよ?」
「生活費はらえにゃい‥‥」
「でも払ってね?」
 にっこり。
 笑顔の圧力がのしかかる。
 草間だけでなく、一同が生唾を飲んだ。
「大丈夫だ。任せろっ」
 年長の友人の手から、ひょいっと封筒を奪った巫を除いて。
 奇妙な自信をたたえた浄化屋を、皆が見つめる。
「俺さ。昨夜、競馬で大勝ちする夢を見たんだっ」
 大いばり。
 縁樹とノイが頭を抱え、ツインズが地面に崩れ、八重がけらけらと笑った。
「待ってろっ! 一〇倍にして帰ってくるからっ!!」
 脱兎の如く駆け出す巫。
「待てっ! それだけはやめてくれっ!!!」
 必死に追いかける草間。
「任せとけってー」
「任せられるかっ! 競馬で家建てたヤツはいないんだっ!!」
「ギャンブル人生大好きじゃねーかよ」
「これ以上減らしたら俺はシュラインに殺されるんだーっ」
 馬鹿ふたりの掛け合い漫才が、次第に遠ざかってゆく。
 疲れたような顔を見合わせる一同。
「どうも、またまたご迷惑をかけたようでございますな」
 穏やかな声が、後ろからかかった。


  エピローグ

「お久しぶりです。嘘八百屋さん」
 振り向きもせずにシュラインが言う。
「気づいておられましたか」
「風の悪戯。そんなことをできるのはシルフィードくらいですからね」
「相変わらず、鋭くていらっしゃいますな」
 くすくすと笑う着流し姿の青年。
 シュライン以外、全員が初対面な男である。
「どうやら、風雲、急を告げて参りましたので、まかりこしました」
「また、なにか始まるわけね‥‥」
 溜息をつく蒼眸の美女。
 北海道に住むこの男が動くということは、そういうことなのだ。
 また、覚悟が必要かもしれない。
 そう考えながらも、シュラインが口にしたのは別のことだった。
「封筒の中身。ちゃんと補償してもらいますよ」
「これは、一本とられましたな」
 突き抜ける蒼穹。
 燦々と太陽が降りそそいでいるはずなのに。
 北斗も、縁樹も、啓斗も、八重も。
 一様に背筋の寒さを感じていた。
 もちろん、シュラインのがめつさに対してではない。
 灼熱の季節に、何が起ころうとしているのか。
 思いを馳せていたからである。














                       おわり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
1009/ 露樹・八重    /女  /910 / 時計屋主人兼マスコット
  (つゆき・やえ)
0568/ 守崎・北斗    /男  / 17 / 高校生
  (もりさき・ほくと)
1431/ 如月・縁樹    /女  / 19 / 旅人
  (きさらぎ・えんじゅ)
0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)
0554/ 守崎・啓斗    /男  / 17 / 高校生
  (もりさき・けいと)

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。
「消えた給料」お届けいたします。
コメディーでしたが、次に繋げる終わり方をしてみました。
またまた、少し大きな話をやってみようかと思っています。
楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、またお会いできることを祈って。