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<東京怪談・PCゲームノベル>


『千紫万紅 ― 5月の花 カンパニュラの物語・庭園の風鈴に見る優しい想い出 ― 』

【オープニング】

 ちりーん。
 そこはひどく澄んだ音色が鳴り響く庭園という場所。
 僕はその光景に驚く。今はここにいない相棒ノイと一緒に色んな場所を巡りまわったけど、だけどこんな綺麗で神秘的な場所には未だかつて来た事は無い。
 瞼を閉じても自然と脳裏には空間に吊り下げられる色取り取りな風鈴が思い浮かべられる。それが奏でる音色もその数だけ。
 涙が自然に零れそうになった。どこか懐かしいその音色に。
「さあ、こちらだよ」
 ここまで僕を案内してくれた猫さんがそう言って歩いていく。
 その僕の肩に乗っている彼女も僕の耳に囁くように言う。
「さあ、縁樹さん。あっちでしよ♪」
「うん」
 僕はこくりと頷いて、銀色の髪の下にある顔に涼やかな微笑を浮かべる白さんと共に猫さんを追いかけた。
 だけどその僕の足取りがいつもと違うのは、耳に聞こえてくるかすかな息遣いや体に伝わる感触が違うから。そう、今スノードロップちゃんが乗っている肩にはいつも彼が乗っている。
 ――――――寂しいの?
「ううん、違う!!!」
「わぁ、でし」
「わわ、ごめん。大丈夫?」
「はい、大丈夫でしよ♪」
 にこりと微笑んだスノードロップちゃんにほっと一安心をついて、
 そして僕が想ってしまう事は、


 もう、ノイのせいで危うくスノードロップちゃんに怪我をさせちゃうところだったじゃないか!!!


 と、いうモノだった。そう、今僕とノイは喧嘩真っ最中なのだった。
 ――――――それもどれも全部ノイが悪いんだけど・・・。


 ――――――――――――――――――――
【擦れ違う想い】

 僕とノイ。
 僕はノイとは二人で一緒だと想っていた。
 彼は他人から見たらちょっと他とは変わったただの人形………
 ………というモノかもしれない。
 だけど僕にはとても大切でかけがえの無い相棒だったんだ。
 そう、だった。
 ――――過去形。
 僕とノイを結ぶ糸は滅茶苦茶にこんがらってしまって、それはもう元通りには直せない。


 そう、縁樹&ノイ、という名コンビは無くなってしまった。


 喧嘩の原因は些細な事で。
 ――――そう、他人から見たらすごく些細な事で、実に取るに足らない事だったのかもしれない………。
 だけど僕らにとってはそれはとても致命的な言い合いになってしまって………
 そう、とても致命的だったんだ、僕にとってあのノイの言葉は………


 ――――――――――――――――――――

 事件はまあやさんが持ってきた。
「流れ星への願掛けって知ってるかしら、縁樹さんとノイさんは?」
「流れ星の願掛け?」
 僕とノイは顔を見合わせる。そして同時にまあやさんを見て、顔を縦に振った。
「はい、知ってます。流れ星が消えるまでに願い事を3回唱えればいいんですよね?」
『って言うか、流れ星が消えるまでに3回も言えないし、そもそもが流れ星なんか、塵でしょう? 願いを叶える力があるわけが無いよ』
 そんな身も蓋も無いような事を言う相棒に僕とまあやさんは顔を見合わせあって、苦笑いを浮かべる。
 そして彼女は肩にかかる髪を後ろに払いながら、こくりと頷いた。
「そうね。流れ星はたかが宇宙の塵。それに人の願いを叶える力なんかあろうはずもない。だけどね、この世にはジンクスと言うモノがあるのよ」
「ジンクス、ですか?」
「そう、ジンクス。ジンクスとはこうすれば、こうなる、という言わば人が作りたもうた世の法則。ルール。それは何時誰がどのようにして作ったのかはわからない。だけどそれが世に広まり、人に知られ、信じられる事で、力を増す。わかるかしら、この世の因果が?」
「なんとなく」
 僕は頷いた。
 ――――そう、だって僕も………あの暗闇の中でノイに呼ばれた事で、僕は僕と言う明確な意志や形を成したように感じられるから。
 そう、つまりはそれと同じことだと想う。ノイが僕を呼ぶ。それによって僕のスイッチが入る。
 流れ星の噂が広まり浸透し、そして信じられる。それが力となり、流れ星のジンクスのスイッチが入る。そう、そう言う事。
「はい、わかります、まあやさん。人の想いがジンクスに力を注ぎ込んだ。だから流れ星が願いを叶えるのではなく、流れ星のジンクスを信じる人の想いが、その願いを叶えるのですね?」
「YES。さすがは縁樹さんね」
『って、そこでどうしてボクの縁樹の頭に触れるかな、まあやさん?』
「あら、親友同士のスキンシップは大切よ? だからこんな事もしたりして」
『って、あーーーーー、ボクの縁樹に頬擦りしないで!!!!』
 僕に頬擦りしてふふんと笑うまあやさん。そんな彼女にムキになって怒るノイ。あーあ、そんなにムキになるから、まあやさんだって面白がってやるのに。
 ―――――だけどそんな風にぴょんぴょん飛び跳ねる相棒がものすごくかわいい。
「さてと、ずれた話を元に戻すわね」
 充分にノイを怒らせて、その反応で楽しんだまあやさんは、くすりと笑うと、鞄から一枚の写真を取り出した。それに映っているのは小さな女の子だった。
「この子は五十鈴麻衣ちゃん。10歳の女の子よ」
「この子がどうかしたのですか?」
 僕は小首を傾げる。いたって普通の女の子だ。ただ少しその表情に暗い陰があるのが気になるけど。
「ええ。この子にはね、母親がいないの」
「お母さんがいない?」
「そう。母親がね。それでこの子はすごくお母さんがいる子が羨ましくってしょうがなくって、そしてそれを願ってしまった。願い星にお母さんをくださいって」
「・・・」
『お母さんをくださいって、そんなのが叶う訳が無いじゃない』
 だけどまあやさんは顔を横に振った。
「彼女は道端に転がっていた木屑などを家に持ち帰ってはそれを寄せ集めて、一体の人形を作り上げたのよ。その人形に魂が宿ってしまった。流れ星のジンクスによって」
「・・・」
『・・・』
 僕もノイもお互い顔を見合わせあったまま言葉を無くした。そしてそろって彼女を見る。まあやさんはその視線に答えるように耳の後ろに髪を流して、唇を動かした。
「その子も最初はそれを喜んだ。だけどその人形の母親はやはり異常すぎた。彼女は麻衣ちゃんを欲した。誰にも渡そうとはしなかった。麻衣ちゃんの友達でさえ傷つけた。それは独占欲と言う名の愛情。わかって?」
「・・・」
「今回のミッションはその人形の撃破。だけどちとそれはあたしだけではキツイのでね。それであなた方に頼んだと言う訳。今回の相手は人形と言うよりも人の想い。あたしはその想いの調律に集中せねばならないの。だからその間のあたしの守護をあなた方に頼みたいのだけど、やってもらえて?」
「はい、まあやさん。任せてください」
『あー、まあ、ぶっちゃっけボク自身まあやさんの依頼ってのは正直どうでもいいんだけど、だけどボクとしては同じ人形と言う立場で、その人形の撃破をせねばならいのだよね。うん、本家本元のしゃべって動ける不思議でかわいい人形として。だからボクもまあやさんに協力しましょう。なによりも縁樹も協力するのだしね』
「OK。ならば商談成立という事で、やりましょうか。お願いね」
 そう、そうやって、僕らはまあやさんの仕事を手伝う事になったんだ。


 戦いはすごく大変だった・・・
 相手はただの人形じゃない。言わば人の思念。形の無いモノ。だけどその殺意は僕とノイを戦慄させる。
「大丈夫?」
「はい」
『なんとかね。それよりもちゃっちゃっとやってくれないかな? ちとキツイ』
「あら、珍しい。ノイさんから弱音を聞けるなんて」
 くすっと笑うまあやさんに僕は苦笑。案の定・・・
『誰が弱音なんて吐いた? ん? 何年何月何時何分何秒、地球が何回回った時にボクが弱音なんて吐いた? 失礼な事を言わないでもらいたいね』
「上等。じゃあ、あと5分だけ時間を稼げて?」
「はい」
『ふん。5分どころか5日、時間を稼いであげるよ』
 リュートの音色が旋律を変える。
 相手の人形から触手のように伸びていた黒いオーラは消えて、そのオーラによる攻撃は潰え、そしてその攻撃を封じられた人形は真っ直ぐにまあやさんに突っ込んでくる。人形はわかっているんだ。彼女が自分に致命的な攻撃をせんとしている事を。
 ―――――だけど・・・
「させないよ」
 僕はコルトを奏でさせる。
 連射。
 連続で撃ち出された弾丸は、
『やった!!!』
 人形の右ひざの繋ぎ目を撃ち抜いた。
 すごい勢いでこちらに走ってきていた人形はそれでバランスを崩して前のめりに転ぶのだけど、
『わわ。しつこい』
 ……それでも人形は残った左足と両手を使って、こちらに突っ込んでくる。
「冗談じゃない」
 僕は空の回転弾倉を捨てて新たな弾丸が装填された回転弾倉をコルトに再装填する。白い煙を糸のように空間に引きながら落ちた空の回転弾倉が僕の足下に落ちて、その渇いた音色を奏でさせた時、僕は僕のコルトに歌を詠わせる。
 ―――――そう、コルトの歌はレクイエム。その鎮魂歌は人形のために。奏でられた銃声の余韻が響き渡る中で、その両手両足を失った人形はその場に沈んだ。
『やったね。5分もかからなかった。さすがはボクの縁樹。ささ、後はまあやさんがあの人形を…って、あぁー、麻衣ちゃんが!!!!』
 叫ぶノイ。僕もそれを目撃していて、それでどうすればいいのか咄嗟に判断がつかない。麻衣ちゃんが両腕両足を失ってそれでもまだ自分をこの世から調律の音色で消さんとするまあやさんに立ち向かう人形に駆け寄って、そしてそれを抱きしめたのだ。
 ―――――その姿に僕は頬に一滴の涙を流した。そう、だってそれは僕とノイの姿に重なるから。違うのは母親か、相棒かという違いだけ。心の繋がりは一緒。
 だけど徹底的に違う部分もあった。それは……
「いけない。あの人形の音色が変わった。あの人形、麻衣ちゃんを殺す気だわ」
 まあやさんが焦った声を出す。
 僕の体はその声を聞く前になぜか無意識に動いていた。
 人形の口がかぱぁっと開いて、そこから覗く針金で出来た歯が麻衣ちゃんの首筋を狙う。
 それが泣き笑いの表情を浮かべる麻衣ちゃんの首筋に穿たれんとした時、


 だけどそこにノイが突っ込んだ!!!


「ノイぃー」
 ノイは両手で人形の顔を押している。だけど人形の力の方が上で、その人形はノイごと麻衣ちゃんの首に噛みつかんとして、
 ――――――だけど僕はその前に………


『縁樹ぅーーーー』


 そこから後は何がどうなったのかわからない。
 急速的に真っ暗な闇の底に沈んでいく僕はノイの声を聞いたような気がした・・・。


 目覚めるとそこには知らない天井があった。
 おでこには濡れたタオルの感触。
 それを手にとって気だるい感じに苛まれながらも僕は上半身を起こした。
 ベッドの横に置かれた椅子の上ではまあやさんが眠っていた。
 僕は一体自分に何が起こって、どうしてこんな状態になっているのかわからない。とにかく僕はまあやさんが椅子から落ちてしまわないかとそれが心配で、それで手を伸ばそうとして、
「痛ぁ」
 急激に左手に走った痛みに僕の記憶の糸は繋がる。
 そうだ。うん、僕はあの時、人形がノイごと麻衣ちゃんに噛み付こうとするのを阻止するために、人形の口の中に左手を突っ込んだのだ。そして針金が僕の手を貫いて、その傷口から血が溢れ出る代わりに人形の思念が僕の中に入り込んできて、それで僕は闇に囚われてしまったのだ。うん、わかる。思い出した。
「気付いた?」
 前髪の奥にある切れ長な紫暗の瞳を柔らかに細めてそう言う彼女に、僕は頷いた。
「はい。すみません、まあやさん」
 そう言うと彼女は肩をすくめて、そして吐いたため息で前髪を浮かせながら苦笑を浮かべた。
「あたしに言うよりも前に彼に言うべきかな?」
 彼女の視線の先、ベランダの手すりに腰をかけて、そこから望める風景を見ているのであろうノイの背中はだけどものすごく寂しそうに見えた。
「あ・・・」
 大切な相棒にあんなにも心配をかけた事に僕は罪悪感に苛まれる。
「麻衣ちゃんとあの人形が自分たちに重なって見えた?」
 まるで幼い子どもを宥めるような声でそう言う彼女に僕は頷く。
「はい。だから…あの人形に麻衣ちゃんを殺させたくなかったんです」
「だったらそれを彼に伝えてあげなくっちゃね」
「はい」
 僕はベランダに出た。
「ノイ、おはよう」
『もう、こんばんはの時間だよ』
 ノイの声はものすごく不機嫌そうだ。
「あの、えっと、ごめん。ノイ。だけど僕はね…」
 どうやって今胸にあるこの想いを彼に伝えようか、それを考えていたのだけど、しかし結局はそれを口にする機会は僕には与えられなかった。
 ――――ノイはまるでバネ仕掛けの人形のように僕を振り返って……
『なんであんな真似をしたのさ、縁樹???』
「あ、あんな真似って?」
『だからあんな真似…何で人形の口の中に左手を突っ込んで、怪我をしたんだよ??? ボクがどれだけ縁樹の事を心配したと想っているの??? もしもまあやさんがいなかったら、そしたら縁樹は完全に人の闇に飲み込まれて死んでいたんだよ??? そうだよ、縁樹はボクと違って、生きている人間なんだからそこをちゃんと考えて!!! そうだよ。あの時に縁樹があんな真似をしなければ…そしたらボクはボクの体をクッションにして、麻衣ちゃんを守れたんだ。ボクなら噛まれても構わなかったんだ。だってボクは人形なんだからぁ!!!!』
 ―――――ものすごくショックだった。ノイの言葉が・・・


 ボクは人形なんだからぁ!!!!


 そして僕はその感情のままに言葉を口にして、
 ノイもさらに言葉を口にして、
 僕らは互いに言葉と言う剣で斬りあって、
 どうしようもなくお互いが意地になってしまって、
 ボタンを掛け間違えたような感じを否めないまま僕は、まあやさんの家を飛び出した。
 ・・・。

 
 ――――――――――――――――――――
【相談】

 怒っている?
 ――――うん、僕の気持ちも知らないで、言いたい放題言ってくれたノイにはすごく腹が立つ。
 だけど………
 ―――――心がとても空虚で、すごく泣きたい想いで一杯だった。
 川原に座って、ただ僕はそこらに落ちている小石を拾って、それを投げていた。
 ただ流れる水を見ながら手に小石を取って・・・
「ひゃぁ!」
 って、あれ、なんか妙に柔らかくって、温かい小石だな?
 と、僕はその妙な小石を顔の前に持っていって、
「こんにちはでし♪」
「って、うわぁー、虫がしゃべったぁー」
 僕は思いっきりそれを投げた。
「あーれぇーでし」
 遠くに聞こえていく声・・・
 声?
 僕は背けていた顔を虫を投げた方向に向ける。そしたら投げた物体はひゅんと弧を描いて戻ってきて、再び僕の顔の前で空中停止して、右手をあげる。
「虫じゃないでし。スノードロップでし♪」
「あ、スノードロップちゃん。わわ、ごめんなさい」
「いいでし。いいでし」
 そして後ろからも声をかけられる。
「こんにちは、縁樹さん」
「あ、こんにちは、白さん」
 ぺこりと頭を下げる僕に白さんは不思議そうな顔をした。
「おや、今日はノイさんは?」
「ノイさんは? でし」
「・・・」
 そして僕は白さんたちに話を聞いてもらい・・・
 その末にとても不思議な空間へと旅立つ事になった。
 ――――猫さんに導かれて、【庭園】へと。


 ――――――――――――――――――――
【想い出の風鈴】

「少女よ、お客さんを連れてきたよ」
「あら、猫。どこにもいないと想ったら」
 そこにいたのはまるで日本人形かのような少女だった。とてもかわいい娘だ。
 彼女は僕を見て、にこりと静かに微笑む。
「こんにちは」
「あ、こんにちは。如月縁樹です」
「はい。白さんもスノードロップさんもこんにちは」
「ええ、こんにちは、少女さん」
「こんにちはでし、少女さん」
 そして猫さんは少女さんに何かを話し、彼女は僕を見て少し哀しげに微笑して、言った。
「お話はわかりました。それではこちらにどうぞ」
 そう言って少女さんが僕を案内してくれた場所は、想い出を封じ込めた風鈴が吊り下げられた場所だった。
 人の想い出の分だけ存在する風鈴。その柄、その音色。数え切れないほどのそれらをだけど僕はちゃんと認識していた。一個一個の風鈴の柄、その音色がわかるのだ。それはとても不思議な事だけど、だけど僕はそれを納得できていた。
 そして百花繚乱と呼ぶに相応しいその美しき色取り取りの風鈴の中で、だけどそれはあった。真っ暗な夜の闇のように黒で塗り潰され、そしてその音色を奏でない風鈴が。
「これがあなたの風鈴です、縁樹さん」
「これが僕の?」
「はい」
 ―――――これが僕の想い出を封じ込めた風鈴。
 なんだかとても哀しい気分になった。そう言えば猫さんがそんなような事を言っていた気がする。
 とても哀しい気分に胸を痛める僕に、少女さんも一緒に哀しんでくれる表情を浮かべ、だから僕は彼女に微笑んだのだけど、しかし彼女はそんな僕を見て、また哀しげな顔をした。
 僕はどうすればいいのかわからなくなる。
 ―――――こんな時、ノイだったらどうするのだろう?
 脳裏に浮ぶノイの姿。
 そう、ノイ。とても大切な僕の相棒。
 きっと僕らという存在はピースでしかない。
 僕というピースと、
 ―――そしてノイというピースとが組み合わさって、それで初めて僕らは僕らになれるんだ。


 僕はノイがいるからこそ、如月縁樹になれて、
 ――――そしてノイは僕がいるからこそ、ノイになれる。


 あの初めて出逢った空間で起こった出逢いの奇跡はそういう事。


 思えば色んな旅をした。


 出逢ってすぐに一緒に助けた人魚さん。


 海賊さん。


 まあやさんとの初めて出逢った時のミッションではノイが活躍してくれて、


 それにあの同じ日が何度も繰り返される村でだって僕らは協力して事件を解決したんだ。


 または一緒にあの奇怪な雑草にきゃーきゃー言って、
 ―――ポチ子ちゃんをかわいい♪だなんて言うまあやさんに二人して驚いて・・・


 そう、そうだ。僕らの想い出って、今まで二人一緒に過ごしてきたその時間すべてなんだ。それがとても大切で、愛おしくって・・・


「うん。だから僕はいつまでもノイと一緒にいたい」


 ちりーん。


 僕がそう呟いた瞬間、それは起きた。真っ黒だった風鈴が輝き出し、その柄はとても綺麗な二羽の鳥で、色は暖かな橙色だった。


 そしてその音色は二人の笑い声のようで・・・・


「ああ、これが・・・」
「はい。縁樹さん、あなたとノイさんの想い出を封じ込めた風鈴の音色です。とても暖かで、そして優しい音色ですね」


 ――――――――――――――――――――
【ラスト】

 猫さんに送り届けてもらった先はまあやさんの家の玄関の前だった。
 僕はドキドキと鳴る心臓の鼓動に負けそうになる。
「どうしよう、ダメだ。やっぱりダメだよ、白さん」
 弱音を吐くと、白さんはそんな僕ににこりと優しく微笑んでくれた。
「大丈夫ですよ。さあ、【庭園】で聴いた風鈴の音色を思い出してください。あの風鈴の音色をノイさんと一緒に聴きたいのでしょ? だったらがんばらなくっては」
「なくってはでし♪」
「うん」
 僕は深く深く何度も深呼吸をして、そしてあの風鈴の音色を思い出しながらまあやさんの家のチャイムを押した。
 そしてそのチャイムの音色の余韻が消える前に、扉の向こうから僕を呼ぶノイの声が聞こえた。


 ― fin ―



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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


 1431 / 如月・縁樹 / 女性 / 19歳 / 旅人



 NPC / 白


 NPC / 風鈴売りの少女


 NPC / 猫


 NPC / スノードロップ


 NPC / 綾瀬・まあや 


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■         ライター通信          ■
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こんにちは、如月縁樹さま。いつもありがとうございます。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。



まず最初にお礼を!!!
プレイングにてものすごく嬉しいお言葉をありがとうございました。^^
本当にライター冥利に尽きるお言葉をもらえて嬉しかったです。



今回も素敵なプレイングありがとうございました。
ものすごく書いていて楽しかったです。
ちなみにより縁樹さん&ノイさんの喧嘩のリアルさ、どんな状況だったか、
二人の想いを感じて頂けるようにと、今回の事件も一緒に添えておきました。^^
そちらも楽しんでいただけていたら幸いです。

寄せていただけたプレイングがすごく素敵で、優しさに満ち溢れていたので、
今回はもうそれをいかに上手く活かすか、という事だけを念頭に書かせてもらいました。
あのプレイングにあった優しさ、二人の友情を、ちゃんとPLさまにお返しできていたらと想います。^^


そして今回のノイさんはどうだったですか?
毎回書かせていただける度にノイさんが僕の中で出来上がっていくのが、嬉しくって。^^
今回のツボは小学生のように何時何分何秒・・・とまあやに言うノイさんです。
すごくここは書いていて楽しかったです。


あとはこれまで書かせていただけた内容もほんの少し書けた事が嬉しかったです。^^
やはり僕にとっても思い出深い二人の旅ですから。
それとポチ子ちゃんの事も。^^


それでは今回も本当にありがとうございました。
失礼します。