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新入生と一緒に肝試し大会
【はじまり】
春真っ盛りの神聖都学園。新入生や新しい学年に上がった者も又新しい学生生活を送る為に登校し数ヶ月、だいぶ慣れたようだ。
そこで、瀬名雫は何か思いついたようだ。
「なに?肝試し?」
織田義明が高校生になった雫のニコニコした顔にそう答えた。
「うんうん。だってこの広大な学校で絶好な肝試しできるポイントを見つけたの」
「どこだよ?」
「噂に名高い放浪の旧学舎♪」
「まてー!」
そう、放浪の旧学舎はこの学園の奥にある旧校舎なのだが……時空の歪みが酷く神隠しなどの事件が多かった所だ。
今では、単なるボロボロの校舎で(おそらく何者かが空間が安定するように封印したのだろう)実際事故があったかは噂か伝説になっているぐらい。
しかし、義昭が恐れているのは噂などが大きくなれば成る程……其れは具現される事だ。
「考え直そう、雫ちゃん」
「えー?どうしてよ〜織田さん達がいれば大丈夫〜」
義昭の手を握りしめる雫。
紅一文字事件から彼女の頼みを断ることも出来ないよっしー。
助けてくれそうな人物は、相変わらず嫉妬のオーラを発していらっしゃる。
若返り現象で17歳前後になった、アトラス編集部の三下君に救いを求めるのは無理のようだ(簀巻き状態だしなぁ)。もう1人(茂枝萌)なんて無関心でナマモノと一緒に読書をしているし……。
「あ、そうそう友達紹介するね♪」
「初めまして、沼影・ヒミコです」
「はい、初めまして、織田義明と言います」
義明は雫がつい最近友達になった沼影・ヒミコを紹介される。義明は彼女に何か強力な霊気を感じ取った。
――ヤバいんじゃないの?この肝試し……。
「どう?他の皆も誘って……当然学校の生徒じゃない人も……やろう!」
「うー」
「いいんじゃない?」
助けてくれる人はいなかったようだ。
結局、義明はため息をつきながら彼女の肝試しに付き合うことにしたのだった。
【集合】
雫が率先し神聖都学園外からも呼びかける。そして、茂枝萌、簀巻き状態の三下忠、沼影ヒミコの他に沢山の人が集まった。
神聖都学園内ではメイド高校生大曽根千春に神子の白里焔寿(猫2匹付き)、購買店員鷲見条・都由が雫に誘われて参加。かわうそ?が誘った銀野らせん。彼女はナマモノを抱っこして待っている。
そして、従妹からだまされてきた着物美人・天薙撫子。困った人がいるから助けてと言われてきたのだが、目の前に義明がいることに“してやられた”と苦笑している。
雫とよく面識がある鹿沼デルフェスは、既に彼女から聞いての参加。今は茂枝萌と仲良く会話している。
茜から愚痴混じりで誘われた田中裕介。彼は又不吉な予感を感じている。
デルフェスと義明と有る程度面識がある飛桜神夜が皆から少し離れて立っていた。義明が聞いてみると、何でも「棺桶がその旧校舎に興味ある」そうだ。
“初めましてヴォーグと言います。空間の歪みに興味があるんですよ”
今回、飛桜は戦う意志はなく、棺桶の我が儘に付き合っているだけのようだ。
そして、何がなんだか分からない状態で呆然と突っ立っている女子高生が一名、月見里千里。
何をするかも分からなく雫に連れてこられた。肝試しと聞いたときに急いで帰ろうとするも、雫とナマモノに取り押さえられる(しかも逃げたら祟られるとかおまけ付き)。半泣き状態の千春を助けるため、結城二三矢が“能力”を使って飛び入り参加してきた(言霊での空間転移)。流石砂糖カップル。
「これで、16名、っと……。では、此より旧校舎の肝試しにいきます!」
約2〜3名除いて、皆小さく「おー!」と答えた。
「声が小さい!」
「いや、懐かしいギャグは良いから。雫ちゃん」
義明が雫に突っこんだ。
――つか、そのネタって……かなり年代物なのだが……。
【くじ引き:神の悪戯? 故意?】
「くじひくよ〜♪ 何番目であるかで出発組が出来るから〜♪」
数字の着いたボールが入っている箱を振っている雫。因みに、4番目と最後(6番目)は2名らしい。
「二三矢〜」
「大丈夫、俺が守ってやるから」
半泣きの千春を優しく抱きしめている二三矢。
――“最後”は“俺”と“ちー”
二三矢は何かを呟いた。
皆はそれぞれ、クジを引く。
「ステキですわ♪ 萌様とヒミコ様と一緒だなんて」
と、はしゃいでいるデルフェスさん。
「宜しくお願いします」
ヒミコは萌とデルフェスに挨拶する。
「うん、宜しくお願いします」
萌も挨拶して、まず3番目が決まったようだ。
撫子は、4番のボールだ。そして、義明も4番のボールだ。4番は2名しかいない。
「一緒ですね、撫子さん」
「え、は、はい! そうですね! 義明くん」
背中に鋭利な槍が突き刺さるが如くの視線が痛い撫子。我慢しなければならない。
「わぁ! 一番手ですかぁ!?」
三下はいきなり先発隊という事で愕然としていた。
「あらら、一番手ですぅ♪」
「始めに行くと何か良いらしいですね♪」
いつも幽霊や自縛霊と会話している千春と肝試しを楽しみにしていた焔寿も一番手のようだ。焔寿は早く中に入りたかったので嬉しそうだ。
5番目は嫉妬の焔を燃やしている茜と彼女を宥めている裕介、そして棺桶を担いでいる飛桜だ。
「……」
飛桜は何も言わない。
なんとも、ぎこちないメンバーだろう。
“皆さん宜しく〜”
と、棺桶が茜と裕介に挨拶した。
6番目は、二三矢と千里と決まったので、自動的に2番目が都由とらせん、雫となった。
「うまく別れたなぁ」
と、感心しているよっしー。全く幼なじみの視線を無視している。着物のお姉さんと一緒という時点で周りが見えてないのか?
|Д゚) ……危ないヤツ。
ナマモノはそう呟いて、旧校舎に向かっていった。
旧校舎に着いたメンバーのうち、霊視が出来る物は一度“見て”見ると、思念・怨念が強く渦巻いている事が分かり、少し警戒した。
【砂糖カップル】
最後は千里と二三矢の通称“砂糖カップル”である。しかし今回はかなり千里の顔色が悪い。
其れは何故かというと、彼女は怪奇現象を実際見ることは何の恐怖を感じ無いが、「肝試し」や「怪談」は大の苦手なのだ。その時に何かが切れて、暴走するかもしれない。
恋人の二三矢はその事を知っているため、ずっと彼女を抱きしめていた。
「大丈夫だよ、ちー。俺が守るから」
「二三矢〜っ! こ、怖いよう。参加しなくちゃ行けないの?」
「みたいだね……」
噂であの中に入ろうと決めた場合必ず入らなければ、祟られるという「噂」もあるらしく、霊能者達の念視で「噂の現実化」現象が起こりえると聞いた。この話を今、怯えている彼女に言うと更に怖がるだろう。
よって、二三矢君はちーちゃんから離れない。
其れを、羨ましそうに眺めているハリセン巫女さんと雫ちゃんが居るが、無視の方向だ。
「行ってきますね」
「離れないで〜二三矢―」
と、怯えている千里と同じ歩幅で旧校舎に向かっていった。
1階に入ったとたん、千里が叫ぶ。
「きゃあ!」
何に遭ったのか暫くして気付く二三矢は、
「蜘蛛だよ。大丈夫だって」
「ふにゅ〜」
蜘蛛を取ってあげ、蜘蛛を逃がす二三矢。
「ヤッパリ怖いよう〜」
と言いながら、やはり雫とナマモノの脅し「祟り」を鵜呑みにしているため、渋々参加している。本当なら、二三矢と一緒に甘い、甘いデートをしたかった。その甘さは、バニラコーラ以上と思われる程いちゃつくことだ。
どうも空間歪曲が強いらしいので、実際体験しないと何が起こるのか分からない。
その例として、トイレの花子さんの主が居ると聞いていたが、今は出かけているのか花子さんの霊を感じないのだ。どこかに出かけているようである。
何も映らない鏡の場所は避けて、別の階段に登る2人。
たどり着いたのは、何故か3階だった。二三矢が窓から見て確認。
「ワープ?」
二三矢は恋人を強く抱きしめ警戒する。
「いやぁ……全部回らなかったら……はう〜」
おそらく、階段の空間が歪になっているのだろう。
いきなり3階に移動したならば、一度降りてみる。すると次は4階にたどり着いてしまった。
何よりの証拠が、小麦色の謎生物が妙な踊りをしているからだ。
「迷宮になっている……」
二三矢は焦り出す。ちーちゃんは無口。
|Д゚)ノ… いようちーふみ
呑気に挨拶するナマモノ。
しかし、二三矢は何も答えず、階段を降りていく。
そして何とか、目的の2階にたどり着いた。
2階にある、科学室を少し覗く二三矢。闇の中には誰もいないし気配もない。
「大丈夫だよ」
「ふみゅ〜」
常に励まして、彼女を守る二三矢。年下の騎士様はよく働くようだ。
次の教室を空けて調べてみる。
コレといって何もないと思ったのだが、此処は音楽室のようだ。
壊れたグランドピアノに様々な作曲家の肖像画。如何にも“匂う”雰囲気がある。
「早く帰りたいよう〜」
千里は涙目で訴える。
中に入ったとたん、ドアが勝手に閉まり、人魂がいきなり現れた。
「※§@#ΗΖΡ□▲★↑←〓!!!!!」
悲鳴らしき千里の声。
其れに共鳴してか、壊れたピアノから「新世界」が奏でられる。さらには肖像画の目がギロリと2人を睨んだのだ。
そこで千里の意識は動力スイッチをオフにした様に気絶する。
「ち、ちー!」
二三矢は千里が倒れたので今の怪奇現象に目もくれず、千春をこの中から脱出するために横抱きして入り口に向かう。しかし、出入り口「無い」事に気付く。
「ど、どうしたら良いんだ!」
二三矢君、大混乱。
このときに、自分の“言葉”で法則を書き換えればいいものを、その手段を頭からすっぱり無くしている。
「新世界」から「運命」に変わった。
しまいには、オーケストラに必ず出てくる管弦楽器や打楽器が現れ、コンサート状態。
二三矢は千春を強く抱きしめ、背中で前まであった「出口」の部分に背中で体当たりする。すると、そのまま壁をすり抜けて転がるように廊下に出ることが出来た。
「あ、危なかった……」
安堵する二三矢。すこし千里のスカートがめくれたところを見てしまい、一寸赤面。
しかし、まだ千里は気を失っている。
このままではと思った二三矢は、不本意ながら、かわうそ?の元に何とか向かって事情を説明する。
|Д゚)ノ わかった。
死者や怪我人を出すのは気が引けるらしく、リタイアを許可した。もちろん、ナマモノも同伴だ。
こうして、旧校舎から出てきたとき、千里が目を覚める。
「あ、ど、どうなったの?」
「もう肝試しは終わりだよ、ちー」
「そ、そうなんだ……よ、よかった〜」
「!ち、ちー!」
|Д゚) …… 又気絶
安堵感で、又気を失う千里だった。
|Д゚)…… 千春と正反対
こうして、砂糖カップルの肝試しは終わったのであった。
【無事(?)終了】
色々な事があったが、無事肝試しは終了した。
飛桜はそそくさと帰っていくなか、棺桶は上機嫌で皆に別れを告げる。撫子と義明は、なかなか良いムードで会話しており、裕介は茜を宥める事に必死だ。萌とヒミコ、デルフェスもまだぎこちないが他愛のない会話して良い雰囲気を出している。千里が二三矢に抱きついたまま、安堵感で気を失っているので、彼は急いで宿舎に向かった。鷲見条は、らせんと焔寿と一緒に、どこからともなくカレーパンやら購買食品や飲み物を皆にあげていた。三下は、幾ら17歳になってしまっても、アトラスの社員である。この旧校舎のことを記事にまとめようと必死に考えていが、イベント中いつも気絶ばかりしていたため、なんにもネタが思い浮かばない。
さて、……ナマモノはというと、このお祭りで起こった“面白い”出来事をデジカメに収めて、整頓しているのだろう。
後日、決定的瞬間写真を校内中に貼られ、赤面してはがしまくった生徒や参加者の姿を見かけるのだった。
|Д゚) ……平和はよい。
――お前が言うな。
End
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【0165 月見里・千里 16 女 女子高校生】
【0170 大曽根・千春 17 女 メイドな女子高校生】
【0328 天薙・撫子 18 女 大学生】
【1098 田中・祐介 18 男 孤児院のお手伝い兼何でも屋】
【1247 結城・二三矢 15 男 神聖都学園中等部学生】
【1305 白里・焔寿 17 女 天翼の神女】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2066 銀野・らせん 16 女 高校生(/ドリルガール)】
【3035 飛桜・神夜 12 男 旅人(殆ど盗人)】
【3107 鷲見条・都由 32 女 購買のおばちゃん】
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■ ライター通信 ■
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「新入生と一緒に肝試し」参加ありがとうございます。
殆どの方は、肝試しにかなりの耐性をもっていましたが、愉快な異空間教室を楽しんでいただけたらよかったと思います。他の方々の怪奇体験(?)も微妙に違っていますので♪。
又機会が有ればお会いしましょう。
滝照直樹拝
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