コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


ゼロ

オープニング

投稿者:ゼロ
題名:私の事を教えてください
本文:私は何も覚えていません。
    身体が透けているから多分死んだんでしょうが、なぜ死んだのか
    なぜ何も覚えていないのかが分からないのです。
    誰か私の事を調べてくれる方はいらっしゃらないでしょうか?
    誰も私に気がついてくれないので、自分で調べる事も適いません。
    調べてくれる方がいらっしゃったらこの書き込みに返信をお願いします。


 ゴーストネットに新しく書き込まれた文章、それは自分を調べて欲しいという依頼文章だった。
 自分の名前も、なぜ死んだかも分からないその人間をあなたはどうやって調べる?



視点⇒楷・巽


「私の事を教えてください、か…」
 巽はネットカフェで覗いた掲示板に書かれていた不思議な書き込みを口にした。
 自分の事が分からない、悪戯目的ならばこんな書き込みはしないはず。この書き込みをした人物が本当に困っているのならば何とか力になってやりたいと巽は考えていた。
 死んだ事が分かっていないで書き込みをしたのならば、分からせて成仏をさせてやりたい。
「…このままじゃ、可哀想過ぎる…」
 そう言って巽は返信をするためにキーボードを叩き始める。

 投稿者:楷
 題 名:あなたの事を教えてください
 本 文:はじめまして、楷と申します。ご自分のことがわからないとのことですね。詳しい話を聞かせてくれませんか?あなたが覚えていることの全てを、些細なことでも構いませんので教えてください。ご返答、お待ちしています。


 そう書き込んだ後にエンターキーを押した。
 そして巽の書き込みに対する返信を待った。数十分ほど待ったときに返信がされている事に巽は気がついた。

 初めまして。このような怪しい書き込みに返信をくださって、ありがとうございます。覚えているといってもあまりお役に立てるか分かりませんが…。
 左手首に疼くような痛みがあることと、何か嫌なことがあったんだと思います。
 思い出すことはできないのですが、何か頭の中で誰かが「思い出すな」といっているような気がするんです。
 あと、私が目が覚めたというか、彷徨うようになってから三日くらいだということです。

 書き込みを見て、巽はふぅ、と小さな溜め息を漏らす。
 どうやら、この書き込みをした人物は書き方からして女性のようらしい。それと、彷徨うと書いているところからして自分が普通に生きている人間ではないという事を自覚している事が分かった。

 調べてきますので、暫く待っていてください。
 今日中に終わらないようであれば、また書き込みをしにきますから。

 巽はそう書き終わると、最初にネットで調べ始めた。
 だが、ネットで検索をかけても関係のない記事だけがピックアップされてくるだけだった。
「…この分じゃ、図書館で三日間の新聞を見た方が早いかも…」
 巽は小さく呟いて、図書館に行くためにパソコンの電源を切ってネットカフェから出て行く。
 外は快晴、洗濯をしたらきっとすぐに乾いてしまうだろうというくらいだった。


「…結構な量だな…」
 巽は目の前に置かれた分厚いファイル数冊を見て溜め息をついた。ここ一週間の記事を調べて本棚から持ってきたものだ。
なぜ一週間前のファイルから見ているかというと、自覚したのは三日前でも死んでしまったのは三日前以前という可能性もあるからだ。
「…ん?」
 三冊目のファイルを読んでいたところである記事が目に入る。
「篠原鈴、三日前に自殺…?左手首を切って…まさか…」
 嫌な予感がして、その記事をよく読んでみる。
 自殺した篠原鈴という女性は高校を卒業して社会人になったばかりの19歳だった。恋愛関係のもつれにより自殺をしたのだと遺書に書いてあったとか…。
「…自分の命を自分で…絶ったのか…」
 巽は少し悲しそうに呟いてファイルをもとあった場所に戻して、先ほどのネットカフェへと戻る。
 巽はパソコンの電源を入れて、先ほどの掲示板まで行く。そして、「今、戻りました」と一言だけ書き込みをした。
 ―何か分かりましたか?
 ずっと待っていたのか返事は思ったより早くに返ってきた。
「あぁ、あなたが待っていた答えが分かりました」
 ―本当に?ありがとうございます!それで…私は誰なんですか?
「あなたの名前は篠原鈴、19歳という若さで亡くなられた女性です」
 ―やっぱり死んでいたんですね。それで私は何で死んだんですか?
 篠原鈴という女性の言葉に巽はキーボードを叩く手をピタと止めた。それから本当のことを伝えていいのか、それとも別のウソをついたほうがいいのかと迷う。
 ―あの、どんな事実だろうと驚きませんから教えてください。
 手を止めた巽に篠原鈴は不審に思ったのか掲示板に書き込んでくる。
「…あなたは自殺したんです。左手首が痛むのはその時の傷だと思われます」
 巽は率直に答えた。本人が聞きたいといっているのだし、何よりどんなつらい事実でも受け止めるべきだと考えたからだ。
 驚かない、そう言っていた篠原鈴もやはり驚きを隠せなかったのだろう。
 ―自殺、したんですか。私…。そう、ですか
 掲示板の書き込みなのだから相手の心理状況など分かるはずもないのだが、篠原鈴という女性がショックを受けているのだということは巽にはすぐに分かった。
 ―私のわがままにつき合わせてしまい、すみませんでした。自殺したということは公開が残りますけれど、自分の事が分かっただけでもよかったです。
 本当にありがとうございました、そう書き残して篠原鈴という女性は書き込みをしなくなった。恐らく『自分の事が分からない』という未練から開放されて成仏したのだろう。
 書き込みのなくなった掲示板を見た後に巽は窓から見える空を見上げた。
 空はとても青くて、新しい一歩を踏み出すには良い日だなと心の中で呟いた。


□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】


2793/楷・巽/男性/27歳/サイコドクターの卵


□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

楷・巽様>

初めまして、今回「ゼロ」を執筆させていただきました瀬皇緋澄と申します。
「ゼロ」に発注をかけてくださいまして、ありgsとうございました^^
話のほうはいかがだったでしょうか?
少しでも面白かったと思ってくださったらありがたいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします^^


            −瀬皇緋澄