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<東京怪談ウェブゲーム アトラス編集部>


ヤギがいっぱい!

【オープニング】
 突然ですが緊急事態。現在アトラス編集部に無数のどこかで見た妙な黒ヤギ、白ヤギがどこからともなくあふれ出している。

「うわーっ! 原稿がー!」
「其れを食うなぁ!」

 と、編集部の皆さん大あわて。
 原稿をまとめている碇は奪取で何とか今月発行分を死守し、退避できたが、他の良いネタの命も危ぶまれる。
 ナマモノ属性ももつどこかで見たヤギたち。強敵だ。
 碇は、携帯でこの謎の生物供をどうにかするよう頼んだ。
 後々、怪奇探偵にも頼む予定らしい。

 仮に、例の“箱”から出たとしても、ヤギが食ってしまっただろう。


【ヤギと言っても…】
 どこかで見たような、と言うが、あの牧場で見かけるヤギではない。ぬいぐるみのようで、そうでないヤギだ。デフォルメされたヤギは可愛いのだが、色々とアトラスにある紙を貪っている。数など数える気にもならないほどである。
「此は難儀だな。で? 俺にどうしろと?」
 草間は状況を把握するため編集部を覗いてみた感想だ。
「まったく、この所なにかがいっぱいになるから困りものよ」
 碇も原稿をしっかり持ってため息をついている。
「ああいう類は、飽きるまで放置がいい」
「其れは困るわ」
「説得しようにも、あれに知性あるが分からないぞ? 興信所(うち)にもナマモノが巣くっているが」
 草間はヤギを眺めながら煙草をふかした。
――零の土産にすると良いかもしれない。
 草間はふと、おかしな考えが頭の中をよぎった。


【らせん、はにゃーん】
「編集部が大変ですって?」
 と、碇と草間の前に現れたのは、銀野らせんだった。
「謎のヤギがいっぱいなのよ、何とかしてくれない?」
「分かりました」
 事情を聞いて、中に入るらせんだが、硬直している。
 一分ほどその状態だ。


……
………

「か、かわいい〜♪ はにゃ〜ん♪」
 と、近くに寄ってきたヤギを抱きしめて居るのだった。
……駄目ね、不安だわ。
 碇は偏頭痛に悩まされた。


【蒲公英】
 弓槻蒲公英は、白王社ビルを眺めていた。暖かい日差しにガラス張りのビル。コレといって変哲もない景色。しかし、今日は違っていた。
 アトラス編集部の窓からなにかが落ちてきたのだ。
「……? ヤギ……さん?」
 首を傾げる蒲公英。
 落ちてきたのは、確かにヤギ。ゆいぐるみのようだが、生きているヤギだ。起きあがって、ヤギはキョロキョロしている。ヤギはひと鳴きして、トコトコとビルの中に入っていった。
「あ、……まって、ください」
 蒲公英はヤギを追っていく。

 その後ろでは、落ち物パズルゲームのように、どんどんヤギたちが振ってくるのだった。


【さて、どうしましょう?】
 正気を取り戻したらせんと、事情を聞いた蒲公英。目の前にはあふれ出るヤギたち。
 ヤギヤギヤギヤギ……。
 頭の中はそれだけしか考えつかないほどだ。
 怪奇探偵草間武彦も呼ばれていることから、作戦を練ることにする。
「まず、没原稿を餌にしてまとめる方が」
「しかしそんなにあるのか? せいぜい三下の未完成記事だけじゃないのか?」
 と、三下も巻き込む勢いでらせんと草間は話しをしている。
 今のところ話しを聞く限り、未完成の記事原稿、片面だけ印字されている紙(後にコピー機で使うように保管)ぐらいらしい。完成原稿は何とか守り通せた模様。
 蒲公英は、ヤギが自分にやってくるのに気付く。
「ヤギさん?」
「?」
 彼女はヤギを抱っこし、優しい瞳で
「……みんなが困るから、……食べるの……止めてあげてね……?」
 と、訴えてみた。
 彼女は、1匹1匹ずつヤギの説得をするため、絨毯に向かっていく。
 彼女の努力が届いたのか、ヤギは紙を食べるのを止めた。
 まずは、一安心。
「……あの、空き部屋……ありますか?」
 と、蒲公英は碇に訊いた。
「たしか、会議室が2つあるわね」
 少し考えて、答える碇。
「じゃ、あたしが先導するすね」
 らせんが、ヤギたちを会議室に案内していく。
 面白いことに、黒ヤギと白ヤギは別々の会議室に別れて入っていった。
「いい子……」
 蒲公英は、ニコリと笑って掌サイズのヤギを優しく抱っこしていた。


「さて、こうも溢れるとなると、犯人は“箱”だな」
「そうよね」
 草間と碇は腕を組んで、ウンウン頷いている。
「“箱” ですか?」
「“箱”だよね〜」
 |Д゚) ……
「いつの間にかコイツもいるから、9割そうだな」
 草間が、いつもの小麦色を見つけたので、断定している。
 |Д゚) ←関係ないと思っている小麦色
「あ、……かわうそ? さん……」
 蒲公英は、怯えてこの小麦色から離れる。
 |ДT) ←悲しい顔のナマモノ
 因みに、ナマモノは二足歩行でなく、四足でこの会話に参加しているようだ。結局はらせんに抱っこされるわけであるが。
「……ヤギさんたち、“箱”食べてない……ようです……」
 蒲公英が、掌サイズのヤギに聞いてみたそうだ。
「じゃ、探すか」
 腕まくりする草間、
「頼んだわ……」
 |Д゚)ノシ ……
 碇とナマモノはヤギたちの監視に着くらしい。

 らせんと蒲公英、草間が“箱”を探す。見付かってもどうするわけではないが、原因だけはハッキリしておきたい。それでも、“箱”が見付かっても意味はないだろう。何しろ、どこから現れるか、わからない代物なのだから。
「あ、見つけました……」
 一時間に及ぶ捜索の末、蒲公英が“例の箱”を見つけた。
 ASTCGの1カートンが12個は入るぐらいの大きさ。ラベルには……

“シュレッダーにどうぞ”

 と、書かれていた。
「冗談にも酷い話……」
 らせんは苦笑する。
 たしかに、紙をあのヤギ達に食わせて良いだろうが、それはありがた迷惑じゃないかと思ってしまうらせんだった。

 あとは、残った沢山のヤギだ。流石にらせんも蒲公英も草間も困り果てる。
「ワームホールを作って、どこか住み心地が良いところに飛ばすしかないかな」
 らせんは、魔法のドリルを持って言った。
「……かわいそう……」
「しかし、このまま放っておける分けでもない。生き物なのかよく分からないからな……」
 草間はらせんの行動に賛同している。
 蒲公英は黒ヤギ白ヤギの頭をなでる。ヤギは嬉しそうに擦り寄っている。
 結局の所、箱があっても中に入れるほど大きいわけではなさそうで、らせんに一任することになった。
 ワームホールの穴が出来、その中にヤギたちはゾロゾロ中に入っていったのだった。
 彼らは何処に向かうのだろうか……。其れは誰も知らない。


【無事? 解決 と後日談】
 さて、平和的にヤギたちを立ち去らせた事(?)でアトラス編集部に一時の平和が訪れた。三下のデスクには腹巻きをしている謎のヤギだけ残っている。名前は敢えて言うまい。
 蒲公英は小さい掌サイズのヤギを抱いて、お辞儀し帰っていく。
 らせんは、白黒2匹をお持ち帰りして帰っていった。
 草間は碇にこの事件解決の報酬について話し合っているらしい。

 数日後のこと。
 らせんがドリルガールとして敵対している大企業に沢山のヤギが降ってきたという噂が流れていた。また、彼女のライバルの部屋に1匹かわいい黒ヤギが行儀良く座っているそうな。前者はおそらくワームホールを“食べた”先がそこだったと推測されるが、ライバルのほうにも、1匹黒ヤギが送られてきたそうだ。

 蒲公英は、朝には小さなヤギと一緒に小鳥たちに餌を与えている。ヤギは、要らない古新聞や雑誌などを美味しく食べている。父親は其れをまぶしそうに眺めて
「おい、蒲公英。朝飯出来たで」
 と、娘を呼んだ。
「はい……とーさま……」
 ヤギを連れても、彼女にとっていつもの日常であった。

 更に1ヶ月後あとだが、有名玩具店シルバーフィールド社から例のヤギをモチーフにした玩具ができて、なかなかの人気が出たらしい。
 しかし、腹巻きヤギは一部カルトな集団に人気が出たそうだ。


End


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1992 弓槻・蒲公英 7 女 小学生】
【2066 銀野・らせん 16 女 高校生(/ドリルガール)】

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■         ライター通信          ■
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 滝照直樹です。
『ヤギがいっぱい!』に参加して下さりありがとうございます。
 ヤギネタは古かったのかな? ……と、少し考えてみたりした事件でした。

 また機会が有ればお会いしましょう。

滝照直樹拝