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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:アーリーサマーグラマラス
執筆ライター  :水上雪乃
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜4人

------<オープニング>--------------------------------------

 季節は夏に向け、気温もどんどん高くなっている。
 それに伴って、人間たちも薄着になってゆくようだ。
 にへらー、と、だらしなく鼻の下をのばし、草間武彦は喫茶店の窓か通りを眺めていた。
 女性の服は布地が少ないほど良い。
 というテツガクの、彼は信奉者なのである。
 怪奇探偵と呼ばれるこの男にとっては、冬など人間の生きる季節ではない、ということにでもなるだろうか。
 外からは喫茶店の内部は見えないのを良いことに、レディーウォッチングを楽しみ放題の草間。
「お待たせ致しました」
 声がかかる。
 女の声だ。
 耳がとろけるような甘い声。
 見上げた黒い瞳に映ったのは、黄金分割法で測られたような見事な肢体を持つ美女だ。
 溜息が出るほどエレガントな仕草で、椅子に腰掛ける。
 ミニスカートから伸びた太股が組まれ、
「俺は椅子になりたい」
 などと、くだらないことを草間が考えた。
 すっと差し出される名刺。
「あ、どもども」
 にこにこ笑って交換する。
 ジャパニーズソリューションというやつだが、草間が笑っているのは愛想ばかりではない。
 なにしろこの角度からは、胸の谷間が見えるのだ。
 じつに素晴らしい眺めである。
 笑顔だって出ますよ。
「こほん」
 美女――名刺には伊藤美奈とあった――が、咳払いする。
「おっと。これは失礼」
「いいえ。よろしいんです。それより依頼なのですが‥‥」
「あるモノを奪還して欲しい、ということでしたが?」
「はい。とても恥ずかしいのですが」
「モノは何ですか?」
「ブラジャーです」
「ぶらじゃあですかー」
 妙に平坦な声で感歎する草間。
 Eくらいかな、などとくだらないことを考えながら。
「下着泥棒に盗まれてしまって‥‥」
「ええまあ。下着泥棒以外が下着を盗むとは聞いたことがありませんからねぇ」
「‥‥‥‥」
「盗まれた下着なんかを、普通の女性は返して欲しいとは考えませんよねぇ」
「‥‥‥‥」
「ま、良いでしょう。それで、報酬ですが」
「前金で二五〇万円、用意しました。成功報酬でさらに二五〇万円」
 破格の報酬である。
 美奈が見た目通り(?)普通のOLだったとしたら、この額はあまりに異常だ。
「お引き受けしましょう」
 にやりと笑って手を差し出す草間。
 暑い夏を迎える前に、どうやら危険な仕事をひとつ片づけなくてはならないようだ。
 握手したその手に、戦士特有の固さを感じながら、内心で呟く怪奇探偵であった。




※奪還ものです。
 下着泥棒をとっつかまえてください。
※水上雪乃の新作シナリオは、通常、毎週月曜日にアップされます。
 受付開始は午後8時からです。

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アーリーサマーグラマラス

 何にでもそうだが、対費用効率がある。
 コストパフォーマンスともいう。
 一〇〇円の金銭を稼ぐのに三〇〇円の投資をするのでは意味がない。
 これは、むろん即物的なものだけでなく、将来まで視野にいれてのことである。
 たとえばアメリカでは、一グラムの小麦を採取するために二グラムの土壌を消費するという、とんでもない略奪農法が長年おこなわれてきた。
 その結果として、砂漠化という現実が突きつけられることとなった。
 アメリカ人は誰かを恨むべきなのだろうか。
「とまあ、グローバルな話はともかくとして、盗まれたブラジャーに総額五〇〇万ってのはおかしな話さ」
 草間武彦が言った。
 顔は相変わらずにやけっばなしだ。
 もしかしたら、依頼人の伊藤美奈の豊満なバストに装着されているブラジャーを想像したのかもしれない。
「つーかさ、草間。仕事の話よりも、まずはその顔を何とかしたらどうだ? 奥さんに怒れるぞ?」
 丁寧に指摘してくれたのは守崎啓斗。
 事務所に出入りする双子のかたわれで、まあ、アルバイトスタッフのようなものである。
「大丈夫っ! シュラインは買い物に出てるっ!」
 勢い込んでガッツポーズを決める怪奇探偵。
 鬼の居ぬ間に洗濯、という心境なのかもしれない。
 まあ、結婚してもうすぐ五ヶ月。そろそろ甘々ムードに一段落ついても良さそうな時期ではある。
「女の胸がそんなにいいかねぇ。ありゃ脂肪のカタマリだから、でかければでかいほど垂れるぞ。年取ったら」
「夢がないねぇ啓斗は。男たるもの、もっとこうオッパイ星人じゃないとなっ」
 草間の力説だが、残念ながら緑瞳の少年はまったく感銘を受けなかった。
 冷たーい目で年長の友人を見る。
「もしかして、シュラ姐と結婚したのは胸がでかかったからなのか?」
「それもあるっ! だが! 胸だけでなく俺のシュラインはすべてが最高だっ! 抱き心地だって最高どぅわー」
「せからしかっ!!」
「ぐどほふむっぽっぁ!?!?」
 突然の跳び蹴り。
 奇天烈な悲鳴を発して壁に叩きつけられる怪奇探偵。
 目を点にしている啓斗の前で展開されたのは、一〇〇メートルを〇.〇五秒くらいの速度で走り込んできたシュラインによって撃退される変態三〇男の図、である。
「はぁはぁ‥‥言うに事欠いてなんてこと言うのよ。この宿六は‥‥」
 ぜーはー息を弾ませている黒髪蒼眸の美女。
 まあ、この人こそ草間細君であり、この探偵事務所の会計を預かる大蔵大臣、シュライン・エマだ。
 ちなみに戸籍上は草間シュラインという。
「よ」
 シュラインにやや遅れて、男が入ってきた。
 巫灰慈。
 かなり古くからこの事務所に関わっている紅い瞳の青年だ。
「そこでシュラインとばったりあってな。一緒にここまで来たんだが、急に走り出したからびっくりしたぜ」
 訊かれもしないのに解説してくれる。
「なるほど‥‥」
 かくかくと頷く啓斗。
 蒼眸の美女の特殊能力は超聴覚である。
 したがって、ここでの会話はすべて筒抜けだったと考えるべきだろう。
「なんまんだぶなんまんだぶ」
 巫が合掌した。


 さて、草間と啓斗に対するお仕置きが終わったころ、今回の依頼に加わるメンバーが参集した。
 蒼王翼、桜塚金蝉、桐崎明日である。
 初対面の者ばかりだが、
「ま、仲良くしてやってくれ」
 まるで小学校の教師のように草間が言う。
 じろりと、非友好的な視線を注いだのは桜塚だ。
 おそらく一行のなかで、最もモチベーションの低いのが彼であろう。
 生来の面倒くさがりに加えて、仕事の内容が気にくわない。
 何が哀しくて、陰陽師が女の下着探しなんぞをしなくてはならないのだ。
 だったら家に引きこもって、出てこなければ良さそうなものだが、友人である翼に引っ張り出されてしまったのである。
「まったく。お前の持ってくる話はロクにもんがねえ」
 と、こういうことになる。
「良いじゃないか。どうせ暇で困ってたんだろ?」
 とは、金髪のレーサーの言い分だ。
 事実その通りだったので、桜塚としては黙り込まざるをえない。
「まずは情報収集ですかね」
 シュラインの煎れたお茶をすすりつつ、桐崎が提案した。
 常識的というか、無難なラインである。
 問題は、どこから情報を集めるかという部分だろう。
「まともに考えて、五〇〇万って報酬額は異常さ」
「だな。相手が稲積のダンナとかならともかく」
 啓斗の言葉に巫が続く。
 五〇〇万円といえば、一般的なOLの年収を凌駕する。
 たかが下着一枚に、そんな額を提示できるわけがない。
 普通のOLだったとすれば。
「つまり、相手は普通の人じゃないってことか?」
 訊ねる翼。
 まあ、ここに集まっている面々も普通とは言い難い連中ばかりなのだが、それはいいっこなしである。
「握手したときの手の固さ。ありゃ訓練を受けてる人間だな」
「へぇ‥‥握手なんかしたんだ」
 すぅっと目を細める奥さん。
 危険な兆候。
「あ、いや、なんというか」
「ふーん」
「じゃぱにーずそりゅーしょん?」
「ふーん」
 どんどん室温が下がっていくようだ。
「いいから先を話せ。武さん」
 ぽこっと軽い音を立てて、巫のチョップがシュラインの頭に当たる。
 すごく珍しい、大蔵大臣が突っ込まれるシーンだ。
 感動の面持ちで、啓斗と桐崎が黒髪の浄化屋を見る。
 むしろ尊敬の眼差しといっていいだろう。
「もぅ」
 ぷーっと頬を脹らますシュライン。
 すげー可愛いぞ!
 という、内心の声を押し殺して、草間が解説を続ける。
 提示された金額と訓練された手、ということを単純に結びつければ、依頼人の美奈はなんらかの組織に属していると考えるべきだ。
 さらに、盗まれたブラジャーには五〇〇万円以上の価値がある、ということも自明だろう。冒頭で言っていた対費用効率の話である。
 もちろん、金銀で作られたブラジャーがあるはずもない。仮にあったとしても、美術館なり博物館なりに保管されているだろう。
 となれば、
「ブラの素材自体が企業秘密だとか」
 シュラインが言う。
「マイクロチップかなにかが隠れているとか」
 啓斗も言った。
 なんだかスパイ映画みたいな話だが、可能性としては充分にある。
「じゃあ、盗んだのは対立する組織か企業、ということかな」
 結論づける翼。
「理の当然だな」
「いったい何が隠されてるのか、気になりますねぇ」
 桜塚と桐崎も同意する。
 しかし、
「そいつはありえないぜ」
 さらりと、巫が否定してみせた。
 目を丸くする三人。
 もちろん浄化屋はちゃんと説明するつもりだった。
 もしその下着になにか秘密があったとして、それが対立組織に奪われた場合、奪還に探偵を使うだろうか。
 然らず。
 諜報機関でも暗殺組織でもいいが、そういう連中はそれなりの情報網を持っている。
 個人経営の探偵事務所など比較にならないレベルの。
 任務の途中でモノを奪われたなら、それはすぐに上司に報告され、組織そのものが奪還に動くだろう。
 これは既定の事実である。
 ミス隠し、というのも良くある話ではあるが、諜報機関の内部においてはまずありえない。まあ、平和な仕事をしているわけではないから当然だ。
 となれば、美奈は単独で動いていない、という結論に達する。
 つまり彼女の背後の組織も、奪還のために動いているのだ。
「だから、対立組織からとりもどすんだろ?」
 やや苛立った声を翼が発する。
 ゆっくりと首を振ったのはシュラインだった。
「だったら調査を依頼したりはしないわ」
 諜報機関が調べても特定できない犯人。
 よほどの隠蔽能力を持つ相手、ではない。
「ようするに畑が違うってことか」
 ぽむ、と、手を打つ啓斗。
「正解だ」
 年少の友を、巫が軽く賞賛した。
 この件は、本当に単なる軽犯罪なのである。
 盗んだ人間は、その下着の価値などまったく知らずに、ただの性欲の対象として盗んだのだ。
 だからブラジャーは、どこかの研究所に搬送されることもなく、市場に出回ることもない。
 諜報機関としては、完全に足下をすくわれるカタチとなったわけである。
「CIAだって、下着ドロの情報なんぞ持ってないわな」
 失笑する桜塚。
 まったく、笑うしかないとは、このような事をいうのだろう。
「つまり、街の情報屋を当たるしかないってことですね」
 やれやれと桐崎が肩をすくめた。
 結局、最も迂遠な方法を採らざるをえない。
 盗まれた場所、つまりホテルなりアパートなりを中心に、そのあたりで活動するコソ泥を洗って特定する。
「面倒な話だな」
 憮然とする翼。
 なんと地味でつまらない仕事だ。
 華やかなフォーミュラの世界とは似ても似つかない。
「ま、それが探偵の仕事ってやつだやな」
 やたらと爺くさい動作で、啓斗が席を立つ。
 その後ろに、同年の切り裂きが続いた。
 シュラインと翼、巫と桜塚も、それぞれコンビを組む。
 ベテランと新人が組むのは当然だし、単独行動をしない、というのも探偵の鉄則である。
「‥‥俺は?」
 心から情けなさそうな表情で、草間が泣きついた。
 気分的には、花いちもんめで最後まで残されたようなものだ。
「はいはい。武彦さんは私のチームね」
 助け船をだしてやる細君。
「甘い。甘すぎるぜ」
 啓斗と桜塚が期せずして同じ感想を抱いたが、むろん口に出しては何も言わなかった。
 賢明な彼らは、匹夫の勇という言葉を知っているのである。


 誰もが予想していたことだが、調査は遅々として進まなかった。
 泥棒のリストなどがあるわけでもない。
 警察から前科者のリストを見せてもらい、街の情報屋から情報を買う。
 どちらも無料ではない。それどころか前者などははっきりと違法行為である。
 違法なのだが蛇の道は蛇。こういう時のために、どんな探偵でも警察にコネクションを持っておくのだ。
 草間興信所のケースだと、最大のパイプは警視庁の稲積警視正ということになる。
 こういうものを活用しつつ、堅実な調査を続けるのである。
 華やかさとは無縁の世界だ。
 実際問題、特殊能力など使う余地などない。
 ひたすら足で稼ぎ、聞き込みをおこない、集まった情報を整理し整合させてゆく。
 警察のやっていることを、絞ってやっているわけだが、非常な忍耐力が要求される作業である。
 この作業を続けること四日。
「どうもこいつは、常習犯っぽいな」
 桜塚が腕を組む。
 なんとか、真相らしきものが見えてきたのだ。
 美奈の自宅マンションに忍び込んだ下着泥棒は、脱衣所の籠から下着をちょろまかした。
 盗んだのはそれだけである。
 泥棒にしてみれば、入浴中の女の脱ぎたて下着が欲しかったわけだ。
 常に肌身離さずもっていたことが、この際は仇になった。
 そして下着だけを盗まれたことによって、美奈は大きな誤解をする。
 つまり、対立組織によって奪われたと思い込んだ彼女は上司に報告し、報せを受けた諜報機関は、そちら方面での調査を始める。
 初動捜査において、完璧にミスをしてしまったのだ。
「ま、内調だってミスをするってヤツね」
 苦笑するシュライン。
 美奈の所属する組織は内閣調査室だということを、巫が調べてきてくれたのだ。
「結局、初動捜査が遅れたことでトレースできなくなったわけか。笑うに笑えない状態だな」
「ちなみに盗まれたブラジャーにはどんな秘密があったんです?」
 翼が肩をすくめ、桐崎が瞳を好奇心に輝かせた。
「マイクロチップさ」
 あっさり応える巫。
「何が入ってたんです? そのマイクロチップに」
「なんだっていいさ」
 身を乗り出して訊ねた同年の男を、啓斗がたしなめた。
 彼らは探偵である。
 頼まれたことを頼まれた通りに実行するのが仕事だ。
 それ以上を求めれる筋合いはないし、また、余計な詮索をしてはいけない。
 基本中の基本である。
 仲間内ですら、過去や生い立ちについて根ほり葉ほり訊くのはタブーとされているのだ。
「ブラジャーを取り戻して依頼人に返す。俺たちがやるのはそこまでだよ」
 淡々とした態度。
 場合によっては犯人と交渉を持ち、窃盗を見逃すかわりに下着を返せ、という事になるかもしれない。
 彼らは警察ではないので、べつに犯人検挙などする必要はない。
 目的のものを手に入れられれば問題ないのだから、いっそのこと盗んでしまってと良いのだ。
「盗人の、上前はねる、探偵団」
 俳句にも川柳にもなっていないようなことを巫が言った。
 苦笑する一同。
 たしかに泥棒から盗むというのは、おかしな話ではある。
 常習の下着ドロ。
 そこまで判れば、あとはスクリーニングで篩い落として、特定するだけである。
 またしても地道な作業だ。
「地味地味地味地味」
「もうちょっと派手でも良いと思うんですけどねぇ」
 翼と桐崎が文句を垂れている。
 理想と現実というやつだろう。きっと。
「でもまあ、やっと終わりそうだな」
 積み重なったファイルから、桜塚が数枚をはじき出した。


「ここか‥‥」
 オンボロアパートの前に立った探偵たち。
 調査開始から一二日。
 ようやく、ここまで辿り着いた。
 たいして期待もしていなかったが、盗んだのはべつに大泥棒というわけではない。
 ちんけなコソ泥である。
 多少、ピッキングと隠密行動が得意なだけで、素人に毛が生えた程度のものだ。
「ちなみに、毛が生えたって表現はかなり下品なんだぜ」
 どうでも良いことを指摘する巫。
「なんでだよ?」
 興味もなさそうに、啓斗が問い返した。
「よーするに、下の毛のことなのさぁ」
「ふーん」
「つまらんっ! お前の反応はつまらんっ!」
 なんか怒っている。
 天下の朴念仁、冷凍野菜忍者の異名を持つ啓斗に、いったいどんな反応を期待していたのだろう。
「はいはい。漫才はそのくらいにして、乗り込むわよ」
 さらっと流すシュライン。
 ちなみに啓斗は、漫才をしていたつもりなど全くない。
 友達は選んだ方が良い、という良い証左であろう。
「なあ?」
 翼が怪奇探偵に声をかけた。
「いっつもこんなことばっかりやってるのか?」
「ま、たいたいな」
 不器用なウィンクとともに応える草間。
「馬鹿ばっかりだ」
「まあまあ。慣れると楽しいですよ。きっと」
 嫌そうに溜息をついた陰陽師の肩を、桐崎がぽむぽむと叩いた。
 むろん、たいした慰めにもならなかった。


  エピローグ

「どうもありがとうございました」
 紙袋を受け取った美奈が頭をさげる。
 下着ドロにはきつくお灸を据えた上で、目標物は奪回した。
 どんな秘密があるのか桐崎や翼などは最後まで知りたがったが、結局、探偵たちはブラジャーを分析したりせず、そのまま依頼人に返した。
「これは、約束の後金です」
 差し出される分厚い封筒。
 一同を代表したシュラインが、うやうやしく押し頂く。
 感謝の表情で事務所を後にする美奈。
 秘密は、秘密のままだ。
 好奇心が首をもたげないわけではないが、余計なことを知らないに限る。
 下手に関わって、内閣調査室と事を構えることにでもなったら目も当てられない。
 国家権力というものを侮ることはできない。少なくとも彼らは、その実力を正確に理解しているのだ。
「君子危うきに近寄らずってな」
「この金には口止め料も含まれてるんだろうしな」
 巫と啓斗の会話。
「口を止めるには、やっぱり美味いものが一番だろう。ぱーっと打ち上げするか」
 ものすごく珍しく、建設的な提案をする草間。
 盛り上がる一同。
「寿司っ!」
「焼肉っ!」
 次々と提案される。
 なんだか普段の食生活がバレてしまう。
 くすりと笑ったシュラインが、
「じゃあ折衷案。バイキングでもいきましょ」
 と、いった。
 なんだか安上がりに片づけられそうである。
 顔を見合わせる仲間たち。
 初夏の太陽が、困ったような顔で輝いていた。













                       おわり


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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

0086/ シュライン・エマ /女  / 26 / 翻訳家 興信所事務員
  (しゅらいん・えま)
0554/ 守崎・啓斗    /男  / 17 / 高校生
  (もりさき・けいと)
2863/ 蒼王・翼     /女  / 16 / レーサー 狩人
  (そうおう・つばさ)
2916/ 桜塚・金蝉    /男  / 21 / 陰陽師
  (さくらづか・こんぜん)
0143/ 巫・灰慈     /男  / 26 / フリーライター 浄化屋
  (かんなぎ・はいじ)
3138/ 桐崎・明日    /男  / 17 / 護衛屋 元解体師
  (きりさき・めいにち)

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■         ライター通信          ■
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お待たせいたしました。
「アーリーサマーグラマラス」お届けいたします。
久々に内調がちょろっとだけ絡みました。
はてさて、何が隠されていたかは、そのうち明らかになる‥‥。
かもしれなせん☆
楽しんでいただけたら幸いです。

それでは、またお会いできることを祈って。