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草間武彦に隠し子の疑惑アリ
オープニング
草間興信所の前に一人の少女が蹲っていた。見るところ、まだ１０歳前後の少女だろう。
「…何をしてるんだ？」
外は雨、少女もずぶぬれ。長い時間をこの玄関先で過ごしたのを物語っている。
「パパ」
「………は？」
少女が発した言葉に草間武彦は思わず口にくわえていた煙草を地面に落としそうになる。
「…おじさんが草間武彦でしょ？だったらあたしのパパ」
−バサ
続いて草間武彦は手に持っていた新聞を地面に落とす。
よほどパニック状態に陥っているのか新聞を落としたことにも気がついていないようだ。
「パパ、新聞落としたよ」
「あ、あぁ…ありがとう、そうじゃなくて！キミの母親は？」
「ママ？ママは今お仕事なの。前にパパの事を聞いたから遊びにきたのよ」
偉いでしょ？と少女は得意気に微笑む。
「中に入れてね。パパが出てくるの待ってたらすごく寒かったんだよ」
そう言って少女は勝手に事務所の中に入っていく。
「おいっ！勝手に―」
「おい、じゃなくてあたしは白雪だよ」
白雪はそれだけ言い残して事務所の中の冷蔵庫に手をつけた。
「……何なんだってンだ…。全く身に覚えがない…」
こんな事が発覚したら事務所の信用問題にかかわるためにあなたにこっそりと依頼が来た。
草間武彦の娘だと言ってきかない少女白雪をどうやって調査しますか？
視点⇒蒼王・翼
「最悪だな」
翼は開口一番で溜め息と共に呟いた。事の始まりは草間武彦を「パパ」と呼ぶ少女が現れた事から始まる。
「キミは白雪、だったよね？これを食べるといい。途中で買ってきたから」
そう言って翼はケーキの入った箱を白雪に渡す。
「わぁっ、ありがとう！食べていいの？」
白雪は箱を開けて目に入った色々なケーキに目を輝かせて翼に問いかける。
「もちろん。それはキミの為に買ってきたものだからね」
白雪は暫くケーキを眺めて、視線を翼に移した。
「？」
ジィッと見てくる白雪に「何か僕の顔についているかい？」と聞く。
「おねーちゃん。パパのアイジンさん？ダメよ。パパにはママがいるんだから」
その白雪の言葉に出されたコーヒーを飲んでいた翼がむせ返る。
「……そんなことは全く全然ないから心配しなくていいよ。いい子だから向こうでケーキを食べていなさい」
そう言って翼は白雪を隣の部屋に行かせた。疲れたように翼は頭を抱えて目の前の草間武彦を見る。すると笑いを堪えて苦しそうな草間武彦が目に入った。
「随分と疲れた感じだな」
クックッと笑いながら言う言葉に少々ムッとした表情で草間武彦を見る。
「武彦、誰のせいだと思っているんだ。内密の依頼があるからと来てみれば…隠し子騒動か…」
ハァと溜め息と一緒にジロリと怪しむような視線を送る。
「…武彦、まさかとは思うけど単に覚えてないだけだったりしないだろうな？」
「ち、違う！俺は本当に知らないんだ！」
翼の言葉に慌てて否定する草間武彦に「焦っているところが余計に怪しいね」と付け加える。
「まぁ、女の子は父親に似るって云うけど確かにとてもキミの血を引いてるとは思えないね。さっきの白雪って子、可愛かったしね」
「そ、そうだろ」
何かとても失礼な事を言われたような、と草間武彦は一瞬考えたがここで翼の機嫌を損ねたら大変な事になるような気がして何も言わなかった。
「それで何とか調べてくれるか？」
「そうだね、何とかしてみるからあの子の相手でもしてやれば？」
あはは、と笑いながら草間興信所を出る。
「さて、どうしたものかな」
草間興信所を出て暫く歩いたところで立ち止まり、どうやって調査をするかを考える。
人々に聞いて回っても構わないのだが、多かれ少なかれ噂になりそうなのでその方法はやめた。
そもそもなぜ白雪と言う少女は草間武彦のところまでやってきたのだろうか？
母親はなぜ「草間武彦」を父親だと言い聞かせたのか。あるいはなぜそんな「ウソ」をつかねばならなかったのか。
「嘘をついているのは母親の方か、白雪と言う少女なのか…」
どちらにせよ草間武彦が「父親」という事はないだろう。
「これで実の父親だとか言ったら本当に怒るぞ…」
近くにあった公園のベンチに座って『風』に母親と父親、そして白雪と言う少女の事を聞くことにした。
「何だって…？」
風に今回の事を聞いて驚きの声をあげる。
「……白雪の父親は存在する！？母親も…？」
風は翼の質問にこう答えた。
白雪の父親と母親は存在しており、仕事でほとんど家にはおらずに、白雪は使用人の数人と都内の邸宅に住んでいるとの事。
「…ほとんど家にいない両親、か」
翼はなぜ白雪がこんなことをしたのかが分かったような気がして草間興信所に足を進めた。
草間興信所の手前で二人の男女がモメているのが翼の目に入った。
「どうするんだ！白雪の身に何かあったら！」
「で、でも直接乗り込むなんて…警察に任せたほうが…」
「ばかやろう、白雪は俺たちの娘だぞ！」
女性は高そうなスーツを着てはいるものの何か急いできたらしくセットされていたであろう髪の毛もぐしゃぐしゃになっている。それは男性にも言えることだ。
「…白雪の、両親？」
翼の言葉に二人はバッと勢いよく向き直る。
「あ、あなたが白雪を誘拐したのね！」
女性の突然の言葉に「はぁ？」と翼は間抜けな声で返事を返す。
「白雪はどこだ！金ならいくらでも渡す！白雪を返してくれ！」
「…ちょっと待て。白雪は誘拐なんかされてないぞ。どちらかといえば勝手にここに押し入ってきたんだから…」
「な、何で…」
「仕事、娘のために仕事を頑張っているんだろうけどその分…白雪が淋しい思いをしているの分かっているのか？」
翼の厳しい言葉に二人は顔を見合わせる。
「娘のためというなら…たまには休みを取って遊びに連れて行くことも考えてやるんだね」
そういい残し翼は草間興信所の中に入っていく。
「おかえりー……」
草間興信所の中には白雪と遊んでいたのか、疲れ果てた草間武彦の姿があった。
「今、パパに遊んでもらってたの！」
「…………本当にパパとママが外に迎えに来てるよ」
「…え…？」
白雪は笑っていた顔を一変させて窓から外を覗き込む。
「…パパ、ママ…お仕事でいないはずなのに…」
そう言って白雪は外まで駆け出していく。
「どういうことだったんだ？」
草間武彦が窓から三人の様子を見ながら翼に問いかける。
「…別に。いつも忙しい両親に悪戯したくなったんだろ」
翼がフッと笑ってソファに腰掛ける。
「でも何で武彦だったんだろうな」
「…あの女、見た事がある…一回旦那の浮気調査で依頼してきた女だ…」
草間武彦の言葉で翼は「あぁ…」と納得した。恐らく白雪は草間武彦の名刺かなにかを見つけて今回の悪戯劇を実行したのだろう。
「…疲れた…」
「お互い様だろう。何か美味いものでも奢ってくれるんだろう？」
翼の言葉に草間武彦は乾いた笑いのみを残したとか…。
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■ 登場人物（この物語に登場した人物の一覧） ■
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【整理番号 ／ ＰＣ名 ／ 性別 ／ 年齢 ／ 職業】
2863/蒼王・翼/女性/16歳/Ｆ１レーサー兼闇の狩人
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■ ライター通信 ■
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蒼王・翼様＞
お会いするのは二回目ですね＾＾
今回は「草間武彦に隠し子の疑惑アリ」に発注をかけてくださいまして、ありがとうございました。
「草間武彦に隠し子の疑惑アリ」はいかがだったでしょうか？
少しでも面白いと思ってくださったらありがたいです。
それでは、またお会いできる機会がありましたらよろしくおねがいします＾＾
−瀬皇緋澄
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