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<東京怪談・PCゲームノベル>


駅前マンションの怪〜ある日の掲示板・フリーマーケット開催!

●招き猫
 駅前マンション十七階在住の三春風太はその日、マンションの屋上にやってきていた。
 風に当たりに来たわけではなく、高層階からの風景を眺めに来たわけでもない。
「うわ〜面白そうなものいっぱいあるねぇ」
 風太はきょろきょろと屋上を見まわしてほやんっと笑う。
 さすがに妙な人々が集まる駅前マンションだけあって、集う品々も普通じゃないっぽい物が多い。
 場違いに目立ちまくる黒服黒タイ黒眼鏡の人とか、動く招き猫とか――。
「あぁぁねこさん!」
 ぱぱっと駆け寄ったのは、白い毛並みに鈴付きの赤い首輪。碧の瞳の招き猫。
「すごーい、可愛いなあ〜」
「買って行くかい?」
 大家の老人の台詞に、少し悩む。
 ものすっごく惹かれているが、風太の財布の中には小銭しか入っていない。
「ん〜……もうちょっと見て回ってから決める〜」
 もしかしたらもっと惹かれるのがあるかもしれないと考えて、風太は先に他の場所も回ってみることにした。

●科学読本
 なんとなく目についたのは、妙な科学本……ではなく、それを売っているおじさん。
 そのスペースの前には、鮮やかな緑の髪の少年が、大きな瞳をさらに大きく煌かせてわくわくと何かを待っていた。
「それじゃ、行くよ?」
「うんっ」
 おじさんはビーカーの水に何やら加えているらしい。と、水が綺麗な虹色に変化した。
「綺麗なの〜っ」
「すごぉいっ!」
 風太がパタパタと駆け寄ると、先にいた少年がこちらに気付いてにっこり笑う。
「面白かったね〜」
「おじさんおじさん、もっとやって欲しいの」
「うん、ボクももっと見たーいっ」
 少年二人のリクエストに、おじさんは何故かふっとなにやらポーズを付けて、今度はフラスコと試験官を取り出した。
 色付きの二種類の水を混ぜると、なんでか予想とはまったく違う色になる――と。
 ぼんっ!!!!
「うわあっ?」
「……びっくりしたの……」
 ちょっと騒がしい音と煙。そのあとにはヒビの入った試験官。
 どうやら何か失敗したらしい……が、緑の髪の少年は逆にそれがいたくお気に入りの様子。
「この本、欲しいのー。僕もできるようになりたいの〜」
 言いながら、ちらとこちらを見る。
「ボクはいいよ〜。まだ他のところも見るし」
「ありがとうなのっ。じゃあこれ、くださいなの〜〜っ!」
 上機嫌で本を買って行く少年を見送って、風太は次なるお店に行くことにした。

●人形の店
 そのビニールシートのところには、誰もいなかった。
「あれえ?」
 もしかして店主が買い物に出てしまっているのだろうか。
 仕方がない、別の場所に行こうとした時。
「ちょっと待ちやがれ。来たならなんか買って行け」
 声が、聞こえた。
 見てみる。
 ……誰もいない。
「おいこら、どこ見てる。ここだ、ここっ!」
 声のしたほうを辿ってみると、人形が一体。
「きみがここの店主さん?」
「おうっ」
 店には古書やアンティーク、小物に食器、手作りらしいあみぐるみまで、様々な物が置かれていた。もしかして一番品揃えが良い店かもしれない。
「うわあ、いろいろあるねえ〜」
 日常ではあまり見掛けないデザインの小物に目を惹かれ、可愛らしい手作りのあみぐるみについつい手が伸びる。
「さあー、安いぞ、買え」
 普通お客にそんな強要はしないだろうと思うが、残念ながら風太はそんなコトには気付かなかった。
「うんっ」
 素直に頷いて、一番興味を惹かれたあみぐるみを手に取った。
「100円だ」
「はい、どーぞ」
 いくら中身が少ない財布でも、100円くらいは入っている。
「それじゃあ、またねー」
 抱きごこちふわんふわんのあみぐるみを買って上機嫌の風太は、次なる品を求めて別のスペースに向かった。

●謎の日用品
「あれー、なんか、普通のもあるんだね〜」
 見つけたのはメモ帳とか万年筆とかハサミとか……つまりは文房具である。その脇には漢方薬っぽいものがちょこちょこと置いてあったりもする。
「いらっしゃい」
 ヒョロっとした雰囲気のお兄さんがニッコリ笑う。
「いやいや、普通に見せて実はちょっと違う」
 お兄さんが手に取ったのは万年筆。さらさらっと適当な紙に文字を書いて見せる――途端。
 ぐにょぐにょぐにょんっ。
「うわあ、おもしろーいっ」
 書かれた文字が動き出す。
「面白いだろう?」
「うん、面白い〜」
 にこにこと笑顔で文字を眺める。
「それからこっちのハサミは……」
『はぁ〜い。紙を切ります。おにーさんっ、ちゃんと歪まないように切ってくださいよー。あっしは曲がったことが大っ嫌いなんですよぉ』
 切ろうとした瞬間、何故か喋る。
「うわあ〜」
「どう、買ってみる?」
 言われて、悩む。
 面白そう。面白そうだけど……。
「考えてくる〜」
 答えた風太が向かったのは、招き猫のところであった。

●やっぱり最後は招き猫
 ぐるんっと一周した結果。
「あああっ、やっぱりあの猫さん欲しいなあ〜」
 ペット禁止ではないこのマンション、ウサギやカラスや犬やら蛇やらを飼っている人がたくさんいる。
 なんだか見てて羨ましくなったのだ。自分に根気がないことはよく知っているが、招き猫ならごはんとかトイレもいらずで、楽だろう。
 が。
「あれ?」
 招き猫をじーっと見つめている男性が一人。
「こんにちわ〜」
 声をかけると、男性は風太の方に振り返って軽く笑って会釈する。
「おにーさんもこれ、買いたいの〜?」
「いいや。動くのを待ってるんだ」
「動くの?」
「そうらしい」
 隣に座りこんで、風太もじーっと待ってみる。
 と。
「ニャアン」
 招き猫のツルツルの表面がふわりと触りごこちの良い毛に変わって、碧の瞳がくるんっと動く。
「うわあ、可愛い〜」
 ゴロゴロと擦り寄ってくる猫を、思わずぎゅと抱きしめる。
 ああ、やっぱり欲しいっ!
 だけど……。隣を気にしてみると、さっきまで一緒に招き猫を眺めていた男性は、ちょうど立ちあがる所だった。
「あれえ?」
「ん?」
「いいの?」
「ああ、動くところが見たかっただけだから」
 にっこりと笑ってから立ち去る男性の背中を見送って。
「大家さん、この招き猫さん、いくら〜?」
「そうだなあ……」
 大家のじーさんは柔和に笑って、しばらく考えこむ様子を見せた。
 どうやら値段を決めていなかったらしい。
「いくらが良い?」
 聞くその視線の先は、風太ではなく猫のほう。
「ニャンっ」
 猫は元気に鳴いてから、すりすりと風太に身体を寄せる。
「ふむ……。大切にしてくれればそれで良いそうだ」
「でも、売り物じゃないの?」
 さすがにただで貰うのはちょっと悪い気がして尋ねると、大家のじーさんはにこにこと上機嫌に笑う。
「構わんよ。元々猫の落ちつき先を探すのが目的だったしなあ」
「そーおなの?」
「ああ」
 じーっ。
 猫を見てみる。
 猫はじーっと風太を見つめ返して、にゃんっと嬉しそうに鳴いた。
「どうもありがとう〜。大事にするね」
 抱きかかえた猫を再度ぎゅっと抱いて、風太はほやんっと楽しげに笑った。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

0086|シュライン・エマ|女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2164|三春風太    |男|17|高校生
1449|綾和泉汐耶   |女|23|都立図書館司書
2163|藤井蘭     |男| 1|藤井家の居候
2098|黒澤早百合   |女|29|暗殺組織の首領
2309|夏野影踏    |男|22|栄養士
1431|如月縁樹    |女|19|旅人
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         ライター通信          
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 こんにちわ、日向 葵です。今回はご参加ありがとうございました。
 フリーマーケットはいかがでしたでしょうか?
 なにか面白い品をゲットできていればよいのですが……(笑)

 招き猫お買い上げありがとうございましたっ。
 招き猫さんは見事風太くんに懐いておりますので、今後プレイングの際に書いて頂ければ一緒に登場OKです♪
 名前はついておりませんので、好きに決めてあげてください。

 それでは、この辺で失礼します。
 またお会いする機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。