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<東京怪談ウェブゲーム ゴーストネットOFF>


芸能界スカウト

【遭遇】
 雫がネットカフェでいつものように自分のサイトに書き込まれる怪奇現象のチェックをしていた。
 その中で迷惑な書き込みもある物で、
「宣伝書き込み? まったく困るなぁ」
 と、大規模なサイトならこういう事あるわけだ。管理人も苦労する。
 不要な書き込みとして削除する雫。
 平和で、退屈なものだった。
 ――何か刺激が欲しいな、こう特ダネ並にビックリするぐらいの。そう宝くじに1等と前後賞全部当たっちゃうような〜
 そう思う雫。
 
 それから数日後のこと。混み合う通りで雫はある人物とぶつかってしまった。
「す、すみません」
「此方こそ済みません」
 お互いの荷物を片付けるとき目が合ってしまった。 
 葛城輝というタレント。かなり有名で、ジャンルに縛られず活躍している。
「え? まさか 葛城さんですか?」
「……あ、分かりますか」
 雫の質問に苦笑する葛城。
「あ、私……あなたをどこかで見た気がします」
「え?」
 葛城の不思議な言葉に雫は首を傾げる。
 後ろからマネージャーがやってきて、雫をみて驚いた。
「ちょっとまえ、君歌ってなかった? 学校で」
「……神聖都で一度歌いましたけど?」
「「やっぱり!」」
 マネージャーと葛城は確信して言った。
「捜していたんですよ。貴女を、瀬名雫さん」
「え? え??」
「是非、私の事務所に来てくれませんか?」
「え? ええぇ?!」
 いきなりの芸能界スカウトに流石に驚く雫。
 宝くじに本当に当たった気分だった。


【驚くもの、割り込むもの】
 雫だけではなく、丁度その場に居合わせた人物が居る。
 鹿沼デルフェスと伍宮春華は、雫は怪奇現象の捜査をするために一緒に歩いていたのだ。
「えーっと、げーのーかいでびゅーっていうんだっけ?」
 と、春華はぼそりと言う。
 彼は封印され目覚めたばかりの物の怪。故に目まぐるしい現在の文化などまだ理解できていないため、言い方が妙であった。
「ゲイノウジンにお会いできるとは……でも……」
 鹿沼デルフェスは驚きと不安がある。前に、ハリセン娘から、
「普通の女の子は芸能界に憧れているんだけど、其れをエサにして食い物にしている奴らが居るの。気を付けた方が良いよ」
 と、教わってから其れを鵜呑みにしているのだ。
 つまり、現在の仕組みをよく知らない2人。
 とは言うもの、雫はスカウトのことで呆然としているので、時間が止まったままである。葛城とそのマネージャーは、いきなりで驚いて居るみたいだと、苦笑しており、
「此処では何ですから、まず喫茶店に」
 と、葛城が提案する。
 案山子のように立っている雫をそのままにしておけるわけもいかないし、かといって葛城を知る人が寄って来るのは更に事が混乱するだろう。
「雫様、雫様! しっかりして下さい」
 デルフェスは、呆然としている雫を揺さぶる。
「あ、な? あれ? ここはだれ、わたしはどこ」
「妙な言葉になってますわよ」
 少しばかり記憶が飛んでいる。かなりビックリしたのだとデルフェスは思った。
「う〜、はい近くのネットカフェで」
 と、何とか意識を取り戻した雫は葛城の提案に賛同し、一緒にネットカフェに向かう。
 はずだったのだが、流石に誰かにこの遭遇場面を見られていた。
「あ、葛城輝!」
「見付かった!」
 ――マネージャーが高校生の声に顰めっ面をして、
「急ぎましょう、皆さん」
「え? は、はい」
 皆を走って逃げていく。
「あ、待ってくれ! 真面目な話をしたいんだ」
「大声で言ったら余計目立つ!」
 と、大声を出し合っての矛盾した逃走劇となる。それで余計葛城が目立つではないか? 幸い、高校生の大声やイントネーションが印象的だったのでそれだけは免れたようだ。
 結局の所、その大声を出して追っかけてきた高校生、志羽翔流も付いてくる形となった。
「俺の芸を見て事務所に入れて欲しいんだけどさ」
 彼にとっては自分の売り込みチャンスであるのだ。それなら追いかけられても仕方ないのかもしれない。


【まずはネットカフェで説明】
 葛城輝はお忍びで、知り合いのレコード会社の者と神聖都学園で行われた雫達のロックバンドライヴを見ていたこと、事務所の方も、レコード会社のほうも雫の歌に期待が持てるという事を話した。
 芸能プロダクションのことを偏見で信じていない顔をするデルフェスはずっと仏頂面だが、翔流はソワソワ、春華はワクワクしている。雫に至ってはまさかそんな有名人が居たなんて思ってもなく、赤面して聞いている。
「おわかり頂けましたでしょうか?」
 大体の説明を終えた葛城は、雫に訊く。
「うん。こ、此方こそ宜しく お願いします!」
 赤面しての雫が返事する。
「ではわたくしは保護者として参りますが、宜しいでしょうか?」
 デルフェスが葛城に尋ねると、彼は承諾してくれる。
「俺もいくぞ」
 春華、翔流も言う。
 この2人は嫌でも付いてきそうなのでマネージャーは渋々承諾している。葛城は笑っているようだ。

 そして、ゾロゾロと事務所に向かう一行。
 春華は雫に小声で、
「すたじおってのを見たいんだ」
 と、本音を語る。
「そうだよね。あたしも見たいな」
「いや、お前ならきっとげーのーじんになれるから期待している。もしでびゅーしたら俺を呼んでくれ」
「スタジオみたいため? でも今回向かうのは芸能事務所で面談だし、TV局とかレコード会社など別個だよ?」
「え? そうなの? ま、どのみちでびゅーしたらTV局とかいけるんだ」
 雫の話しを聞いて、お気楽な春華。

 ――しかし大丈夫なんでしょうか。
 と、デルフェスは考え込んでいる。
 見たところ、葛城側に悪意はないようだ。しかしハリセン娘の話を鵜呑みにしているし、実のところ、彼女は芸能人番組を見ないのだ。あやかし荘の座敷童子のようにTVショッピングさえ見ない。
 ――雫様が、げいのうかいでどう食べられるのでしょう……心配ですわ。
 何か違う気もする。
 
 そして、翔流は黙っているが事務所は未だかと付いてきていた。


【大騒ぎ:翔流暴走】
 葛城の所属する芸能プロダクション事務所に着いた。普通のビル1件丸々プロダクションである。芸人、歌手、アイドル、またはネット関係と多岐にわたる故大きいのである。中には多少スタジオに似たものや、オーディション開場のような広い場所もあるのだろう。
「此方でおまちを」
 と、アイドル部事務室前にある応接室で待つ。
 しかし翔流は、
「社長に会わせてくれよ!」
 と、交渉に出る。
「君が売りに来たのは分かりますけどね、そう言う人はいっぱい居るので、個別でどうこうはできないですよ」
「そこの何とかしてくれないか」
「そこまではねぇ」
 と、押し問答。
 しかし、彼の運がよかったのか、それとも使い果たしたのか、応接室のドアがノックされ、開く。
「社長!?」
 葛城とマネージャーが驚いた。
 社長とアイドル部の部長、葛城と親しいレコード会社の者が入ってきたのだ。
「え?」
 雫一行。
「何か面白い話があるそうだね? 他に芸能界に入りたい若い子が」
 と、社長が興味を示しているらしい。
「え、まあ、それは」
「チャンスだ」
 翔流は、身を躍らせて、大道芸人の演説を行い、愛用の鉄扇を広げる。
「では、十八番の水芸を!」
 と、何もないところから水を出す。
「わーっ! 場所をかんがえてー!」
 雫が叫んだが時既に遅し。
 大体水芸をなにも水芸用防水のセットをしていなければ、びしょ濡れになる。当然部屋は濡れてしまい、社長はこめかみに青筋を立てている。
「積極性はいいだろう。しかし、場所を考えたまえ!」
 と、その場にいる事務所関係者は翔流を怒鳴った。
「うう、すみません」
 一気にしょぼくれてしまう高校生大道芸人翔流。

「雫ちゃん……」
「な? なに?」
「俺の代わりに絶対有名になってくれよ……俺帰る」
 と、彼は影を落としながらその場を立ち去った。
 後に彼の家に弁償請求書が来るだろう。

|Д゚) 濡れたところ掃除。
 応接間がびしょ濡れになったので掃除業者がくるのだが、何故か(というかヤッパリ)小麦色のナマモノ、かわうそ? が清掃会社の作業着(?)姿でやってきたのだった。
|Д゚) 掃除する。


【手続きとか】
 ――あたしでホントに良いのかなぁ。面白そうだけど。
 雫はヤッパリ不安になっていた。
 今まで不思議現象体験で培った心臓の強さだが、やはり予期もせぬ出来事には驚く。
 此は彼女の心の中で思っていることだ。

「では、神聖都のライヴを見ていらっしゃったのですか」
「そうです。それで……」
 怖いぐらいに、事がスムーズに運ぶ。
 デルフェスが臨時付添人および、ライヴ時バックコーラスを務めていた事を打ち明けると、
「おお、それは。良い声ですね。デルフェスさんこれを機に……」
「雫様とご一緒であれば」
「瀬名さんは一人という形で計画しておりまして……しかし、貴女のご要望であれば……」
 と、細部にわたって話が進んでいった。

 今回は、スタジオを見られない事で春華はそそくさと帰っていった。当然、ロケなどあるなら読んで欲しいと約束しておいて。


 数日交渉の上、雫自身の両親からの了承を得て万事解決となった。
「何かありそうですわ……雫様の身が心配です」
 うまくいくことに、不安がるデルフェスだが、
「大丈夫だよ、デルフェスさん。これからは学校生活に怪奇調査、それからアイドルとしての基礎訓練で忙しくなるよ〜」
 と、うきうきしている雫。
「雫様がそうおっしゃるのでしたら、わたくしも頑張りますわ」
「うん!」
 雫はデルフェスの手をしっかり握り、ブンブン振った。


【運命の歯車】
 そのあと、発声練習、ダンス、様々な訓練をする雫とデルフェス(訓練量は雫が多い)。たまにセットを作ったTV局のスタジオ見学をするので春華が加わるのだった(彼はスタジオの機材などに興味を持っているだけ)。
「すたじおってこういう風になっているんだ」
 と、満足している。
 で、彼にはスカウトの話は全く無かったのは、スカウト対象としてみていなかった事務所側にある。デルフェスのスカウトは予定外であったが、雫の知り合いならば多少便宜を図ってくれただけに過ぎない。

 歯車は更に回り続ける。

 このころから雫は自分の名前を何か変えていこうかと考え始めていた。

End

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【1982 伍宮・春華 75 男 中学生】
【2181 鹿沼・デルフェス 463 女 アンティークショップの店員】
【2951 志羽・翔流 18 男 高校生大道芸人】

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■         ライター通信          ■
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 滝照直樹です
 『芸能界スカウト』に参加して頂きありがとうございます。
 これから雫がどうなっていくのか……ゆっくり考えようと思っています。

 志羽翔流様、初参加ありがとうございます。

 では、機会が有れば又お会いしましょう。

 滝照直樹拝