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<東京怪談・PCゲームノベル>


駅前マンションの怪〜ある日の掲示板・フリーマーケット開催!

●準備万端、さあ行こう!
 背中には熊さんリュック。リュックの中にはお財布とハンカチとティッシュと、マンションへの地図。
「えへへへ〜、楽しみなの〜!」
 朝も早くから張り切っている藤井蘭に、現在蘭と同居中――というより、蘭が居候していると言ったほうが正しいか――持ち主さんはまだベッドの中だ。
 カレンダーを確認すると、そこには赤い文字の日。持ち主さんのお休みの日だ。
 一緒にいってくれないかな〜? とちょっと期待もしているのだが、そもそもこのフリーマーケットを知ったのが昨日。持ち主さんにフリーマーケットのことを話すタイミングが掴めなかった。
「おはようなのー!」
 元気よく声をかけると、持ち主さんは寝ぼけ眼を擦りながらおはようと言葉を返してくれた。
「ねえねえ、僕、持ち主さんと一緒にここに行きたいの〜!」
「……フリーマーケット?」
 チラシを見て中身を確認してすぐに、持ち主さんはすまなそうに微笑んだ。
「ごめん、今日は先約があるんだ」
「残念なの……。じゃあ、僕、お土産買ってくるから、楽しみにしててなのっ!」
 場所はそう遠いところではないから一人でも充分に行ける距離。それを確認したからか、持ち主さんは笑って蘭を送り出してくれた。

●科学読本
 フリーマーケット会場である駅前マンションの屋上は人がたくさん来ていて賑やかだった。
 置いている品も様々で、どれも面白そうで興味を惹かれる。
 のんびり順々に歩いていって、まず一番最初に目を惹かれたのは子供向けの化学の本だ。
「これ、すごいのー。どんな本なの?」
 わくわくと瞳を煌かせ、子供特有の無邪気さで問い掛けると、おじさんはすっと手元にビーカーを取り出した。
「どんなことができるのか実践してみようか」
 魅力的な申し出に、蘭は何度も頷いて見せる。
「それじゃ、行くよ?」
「うんっ」
 おじさんはビーカーの水に何やら加えているらしい。と、水が綺麗な虹色に変化した。
「綺麗なの〜っ」
「すごぉいっ!」
 賑やかな声とともにパタパタと駆け寄ってくる足音に振り向くと、蘭より少し年上のお兄さんがこちらに向かってくるところだった。
「面白かったね〜」
 お兄さんの言葉に頷いて、おじさんの方へと向き直る。
「おじさんおじさん、もっとやって欲しいの」
「うん、ボクももっと見たーいっ」
 少年二人のリクエストに、おじさんは何故かふっとなにやらポーズを付けて、今度はフラスコと試験官を取り出した。
 色付きの二種類の水を混ぜると、なんでか予想とはまったく違う色になる――と。
 ぼんっ!!!!
「うわあっ?」
「……びっくりしたの……」
 ちょっと騒がしい音と煙。そのあとにはヒビの入った試験官。
 どうやら何か失敗したらしい……が、蘭にはそれもまた楽しくて。
「この本、欲しいのー。僕もできるようになりたいの〜」
 言いながら、ちらとお兄さんを見る。
「ボクはいいよ〜。まだ他のところも見るし」
「ありがとうなのっ。じゃあこれ、くださいなの〜〜っ!」
 上機嫌で本を買って、蘭は次なる興味を求めて会場巡りを再開した。

●人形の店
 次に見つけたのは、可愛いあみぐるみが置かれているお店。
「うわあ、これ可愛いの〜」
 しゃがみこんでいる蘭の前には雑多な品々――アンティークの小物に食器、手作りらしいあみぐるみ。それに、古書。
 あみぐるみももちろんだが、アンティークの小物とかをお土産にしたら持ち主さんは喜んでくれるだろうか?
「このあみぐるみ、可愛いの〜」
「だったら買うか?」
「うーん……」
 蘭の前で喋っているのは一体の人形。とはいえ、蘭自身も元は人外、植物である。本来喋らない、動かない物が喋るという事実はたいして驚くようなことでもなかった。
「誰と話してるの?」
「うわあっ!?」
「あら、ごめんなさい。驚かせてしまったかしら」
 振り返るとそこには知った顔――綾和泉汐耶が立っていた。
「んーん、大丈夫なの。こんにちわ、汐耶さん」
 きちんと立ち上がって、蘭は礼儀正しくぺこりと頭を下げた。
「お人形さんと話してたの〜」
 にこっと笑った蘭が指差した先には……ぱっと見には、誰もいないように見えただろう。
「え?」
 汐耶は不思議そうに目を瞬かせる。
「ったく、どこ見てんだよ。ここだよここ!」
 気付いてもらえるまで待てなかったのか、人形はムッとした口調で主張した。
「人形?」
「ノイさまだ」
「ここのお店の店番さんなんだってー」
「わかったか? わかったらなんか買ってけ」
 何故か胸を張って、ノイは何故か命令口調で偉そうに言う。
 体が小さいせいだろうか、その仕草がなんだか可愛い。
「そうねえ……」
「これ、いくらかしら?」
「本は全部100円だ」
「そう? なら全部お願い」
「すごーいっ。汐耶さん、お金持ちなの!」
 古書は全部で10冊程度。全部買ってもそうたいした額にはならないからこそのまとめ買いなのだが、子供である蘭には充分お金もちに見えた。
「蘭くんはどうする?」
「ん〜……僕はこのあみぐるみを買うの〜」
「そっちも100円だな」
 お互い欲しい物を手に入れた二人は、それじゃあまたと軽く言葉を交わして別方向へと歩き出した。

●癒しの音楽
 どこからか流れてきた音楽に、蘭は足を止めてその音源を探した。
「あそこなの〜」
 ぐるっとしばし周囲を眺めれば、音源はすぐに見つかり、蘭はぱたぱたと小走りに駆けて行く。
 そこには店の主らしいお姉さんと、お客さんらしきお姉さんがいた。
「こんにちわなの〜」
「いらっしゃい」
 蘭の元気な声に、店のお姉さんはにっこりと笑う。
「この曲、素敵ですね」
 お客のお姉さんは、小型の持ち運び用スピーカーから流れるMDの音楽を聞きながら柔らかい笑みを浮かべる。
「なんだか落ちつく感じがするの〜」
「そう? どうもありがとう」
 二人の賞賛を受けて、お店のお姉さんは嬉しそうな笑顔を見せてくれる。
「それじゃあ、僕はこのMDを買おうかな」
 独り言のように呟いて、お客のお姉さんは『癒しの音楽』とラベルがついているMDを手に取った。
「ありがとうございます」
 歩いて行くお姉さんを見送って、蘭は再度MDのほうに向き直る。
 植物が元気になる曲、なんて自分向きのような気もしたが、今は自分のものよりも持ち主さんへのお土産の方が重要課題だった。
 さっきの人形のお店では結局あみぐるみしか買わなかったし。
「持ち主さんがのんびりできそうな曲が欲しいの」
 自分では音楽のことはよくわからないと思って、お店のお姉さんに聞いてみる。
「持ち主さん?」
 不思議そうな顔をするお姉さんに、蘭は持ち主さんのことを話して聞かせた。
 するとお姉さんは、穏やかな笑みで一つのMDを勧めてくれた。
「これなんかどうかしら」
「どうもありがとうなのーっ!」
 ラベルに書いてあったのは『のんびりしたい時に聞く音楽』という一文。
 持ち主さんは結構忙しい人だし、時々ならこういうのを聞いてのんびりするのも素敵かもしれない。
 そんなことを思いつつ。
 持ち主さんへのお土産を手に、蘭は上機嫌で帰路に向かった。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

0086|シュライン・エマ|女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2164|三春風太    |男|17|高校生
1449|綾和泉汐耶   |女|23|都立図書館司書
2163|藤井蘭     |男| 1|藤井家の居候
2098|黒澤早百合   |女|29|暗殺組織の首領
2309|夏野影踏    |男|22|栄養士
1431|如月縁樹    |女|19|旅人
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         ライター通信          
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 こんにちわ、日向 葵です。今回はご参加ありがとうございました。
 フリーマーケットはいかがでしたでしょうか?
 なにか面白い品をゲットできていればよいのですが……(笑)

 蘭くんの元気で可愛い様子は、書いていてとても楽しかったです。
 管理人さんと話すタイミングが掴めず……せっかくプレイングに書いてくださったのにごめんなさい(汗)

 それでは、この辺で失礼します。
 またお会いする機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。