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<東京怪談ウェブゲーム 界鏡現象〜異界〜>


逆転庄二


 ○月×日 午後2時1分
 ゴーストTV アナウンサー部前廊下

 恵局長は人間である、人間は二足歩行する生き物である、だから、歩いている。
「さてと、今日の会議で通す企画はこれぐらいやな」
 そう言って資料を通す目は、仕事に生きる女の目。ただ、番組の内容が全て筋肉である事から、会議においては恵み局長のWHYと他のスタッフの常識が今日もまたぶつかるのであろうが。――滞りなく時が進めば、慣例的に。
 予想外が起こったのは、自販機が立ち並ぶ休憩スペースに通りがかり、ふと、目を横にやった時。
 最初は、見慣れた人影だったのだ。椅子に座って氷で極端に薄められた、紙コップのメロンソーダーをこくこく飲む様さえいちいち可愛い男の子が、居る。さぼりの一つに叱りをくらわせようとも思ったが、めんどくさいしショタが近くによるとどうにも恐怖が生じるのでここは遠めで楽しみって楽しんでどうするねん、てな感じで通り過ぎようと、した、時、
 一体何時変わったのだろうか。目を伏せた一瞬か。
「あれ、どうしたんねーたん?」
 こちらに話しかけてくるのは、子供、であるが、
「お、おのれ誰やぁぁぁぁっ!?」
 そう叫ぶ程に別人だった。言われて、当人もその事に気づき、最初の姿に戻る。
 だが目撃の事実はけして消せなく――

 ○月×+1日 午前9時15分
 ゴーストTV 第二スタジオ 《行列の出来る裁判所》のセット

 ざわ……、ざわ……、の文字が空中で行き交うような錯覚を覚える喧騒が、木槌の音でぴたりと止まる。鳴らしたのは裁判長席、音が止んだのは傍聴席。残る席は、弁護、検察、そして被告のトライアングル。
 そうここは神聖なる法廷、……をほどほどに再現したセット。法律の知識をトークをメインにしながらも解説する、ゴーストTVの番組の一つだ。
 だが、偽物であるはずのこのセットが、本来の役割を果たそうとしていた。偽りの正義が行使されるという暴挙の原因は、被告席にある。やんだ喧騒の中、静寂において、そこには彼。裁判席から名前と職業を聞かれ、
「神楽庄二12歳、職業はGTVのアイドルやってま」
 異議ありぃっ!
「……おのれのどこかアイドルや! たく、雑用が増長しおって」
「そ、そ、それは謝るけどねーたん、なんで異議にミックスジュース投げてくるん!?」
「それが恵ブレンド28号やし」「鉄人なんや」
 ともかくそんなやりとりのとばっちりであるみっくちゅじゅーちゅを顔面で受けた傍聴席の人が退場する様はほっておくとして、被告席に居るのは神楽庄二なる、恵局長の下僕に甘んじている綺麗なおねーたん大好きなショタ。
 そして今、検事席に居るのはGTVの局長である鈴木恵だ。この女、ショタ好きなのにショタ恐怖症という矛盾を携え、ショタコンでしょと言ったら烈火する癖、いざショタを見つけたら怯え震えつつ一瞬我を忘れかける事で有名である。
 要約すると恵局長、このマセガキには一方的に使役してる癖に一方的に恨みがあったりするのだが、今回の裁判は、その仕返しとでも言うべきか。
「ともかくや裁判長、始めさせてもらうで」
「ワカリマシタ」
 裁判長席に居るのは全自動洗濯機あたりを改造して作られたロボット。いや、けして登場人物が足らない訳で無いし、大空に浮かぶ恵の兄ちゃんだと収集がつかなくなるからでは無い。
「まずはこっちからの冒頭弁論やな。とりあえずこの写真から見てもらおう」
 そう言って見せたのは、今まさに被告席に居る庄二の写真。コスプレなのかもしか地なのか、黒いネコミミを生やしつつ、媚びっと笑うその顔は、全国の綺麗なおねーたんもめろめろであろう。くわしくは看板を参照した方が早いと思われる。
「これがにっくきこいつのショタ顔やな。ほんまちょっとは髭はやせっちゅうねん」
「とかいいながらその写真大事に持ってるんちゃいや嘘ですごめんなさいねーたん暴力反対! ラブアンドピースッ!」
 目じりに涙をたっぷり溜めて、ミックスジュースをなげつけようとする局長をなだめる庄二。ともかく、思惑は通って恵はミックスジュースを収めた。
 そして、もう一枚の写真を取り出す。「そして、問題の写真がこれや」
 そうやって裁判長ロボに差し渡したそれ、
 青い髪で、青い大きな瞳、服も青の、青の子ども。
 最初の写真と比べれば。
 髪、耳を隠していた黒い髪が、短め、そして蒼い銀のような色。
 瞳、きゃるんとした女の子みたいに大きな瞳が、更に大きくなってグレイを思わせるくらい。黒目こそ微かにあるが、造形的にグレイを思わせる。
 服、女装やどこかの学園の服であるはずが、やはり明らかに違う。
 普通は、別人の写真だと思うだろう。だがしかし、
「聞いて驚け見て叫べ、」いや、もう見てはいます。「庄二とは全くの別人と思える、この写真の宇宙人は」
 そこで局長は指をビシィッ! 硬直する神楽庄二を睨み付け、
「このショー吉の正体やあぁぁっ!」
 ……な、
 なにぃぃぃぃぃぃぃぃっ! という声が合唱する。ざわざわを静めようと木槌をロボが何度も叩く中、恵は押し黙る庄二を見て微笑み、
「そして検事側の主張はこうや、そこの被告人のショー吉は、自分を人間であるといいながら、実際は宇宙人。このGTVを乗っ取る気があったんや!」
「ってええそんな何処をどうとったらそうなるん!」
「どっちにしてもおのれが宇宙人であるのに間違いあらへんっ! なぜなら某漫画編集員のめがねかけた人にも確認済みやさかいなッ!」
「いやそっちの方が疑惑の種やん!? か、かんにんしてなぁねーたん、僕、そんな言われたらさびし」
「むやみにショタ光線を撒き散らすなぁっ!」
 ジョッキに注がれたミックスジュースが、紙一重で庄二を擦り抜けていった。そして、無人の席にぶつかる。
 そう、検事側の向かいである弁護士席には、国選すら不在なのである。いや本当の裁判所じゃないんだから国選も何も無いのだが。――味方が一人も居ない状況、真実は意見によって固められて、このまま、決着しようとしていた。
 宇宙人は視聴率を稼げる格好の素材だ。局長の欲望がうずまく。こうして一方的に、庄二は庄二である事が無くなる、直前、

 異議ありぃっ!

 その正義の声が響いたのと、弁護席に現れたのは、同時。「な、なんやこの展開、まさに危機直前からの逆転劇ッ!?」「うわーめっちゃ説明口調」
 今度のミックスジュースは見事庄二につきつけられた。ともかく、弁護士はやって来たのだ。こんなおちゃらけた異界に、こんなふざけた道化の芝居に。
 時は今。
 戦いの火蓋が落とされる!
「……ていうか、仮に僕が宇宙人やとしても、なんで有罪になるんかが」
 世の中はハッタリとノリだと学校で習いなさい。

【証拠品一覧】
1.通常時の庄二の写真
 女の子の服を着てちと髪型を弄れば、女の子として成立する程の可憐。
2.庄二の写真Act2
 普通の庄二よりも、ともかく色は青、そして髪が短く目が大きい。なお写真はバストアップのため、全体像はちと解らない。


◇◆◇


「来おったな」
 うちの敵は一体誰か、そう脳裏で呟きながら、顔にかかったミックスジュースをタオルで拭いている少年が居る被告席越しに弁護席をみつめる。
 未だ空白のその場所であるが、すぐに敵で満たされ――ひゅるるるる〜――ん?
 ドゴォウッ!
「あべしっ!?」
 その時、恵局長の脳天に100メガの衝撃! 威力は彼女を床に腹ばいにさせ、暫くその激痛に反比例して沈黙に陥ったが、再起動、
「な、な、なぁっ!」
 何が起こった何がぁと言いたいのだろうが言葉は不明瞭、しかし、ここは法廷、証拠品のみが真実を語る世界で、

 くらえぇっ!

 それが目前。「ア、」、「ピンク色のもこもこアフロ?」「いやねーたん、初音と続く言葉あってへん」
 ちゃちい突っ込みは悠久の彼方へ流れ去った所で説明、このピンクアフロは前回のアフロンジャーで鈴木恵が被ったもの、更に説明を連続するならアフロンジャーとはGTVの戦隊物特撮番組、ただしバラエテ異界で起きる実際の出来事である。
 ――以上より、この証拠品を突きつけたのは察せられる、
「脱着式など地毛と比べれば、屋台とコンビニのおでんくらいの差があるが、それでももし被っておれば、それが恵殿の身を守っておったはずじゃ」
 アフロンジャーなる海に深く沈み、己の命を促進力にして闊達に泳ぐ、この童女、そ「即ち、」
 この件はそちらに非がある――
「つまり、わしは綺麗さっぱり無罪確定じゃ!」
「お、おでん屋ぁ!?」
 そう言うた恵の眼にはしかとそのおでん屋、花柄も可憐な着物に身を包む本郷源である。だが、腕組をしたまま源は指摘を鼻を鳴らして否定した。
「確かにわしはにっぽんいちのおでん屋であり、触れたら火傷するガンマンでもあるが、今は違う。……と言っても問われて名乗るのは英雄の約束じゃからな」
 いや、聞く前にその巨大な紫アフロで解るんですが。「雅の色とは人が言うッ! 命を爆ぜて駆け抜ける! 聞くが良い、あの声を、アフロの聖地より響く奏でを! 今その幸をAPに変えて、エクセレントチェェンジィッ! アフロパープルここに見参じゃあっぁっ!」解ってるってば。
 という訳で、アフロパープルというか本郷源、検事席の上でポーズを決める。そんな少女に、アフロピンクもとい局長は、「いや今のつっこみは屁理屈やろっ!?」と今更ながら異議を申し立てても、アフロパープルはにやりと笑い、
「そもそもアフロの心が持たぬ癖に、アフロンジャーになるとは言語道断。つまりおぬしは前科一犯、他人を訴えるなどお門違い」「んな」
 訳のわからぬ言葉に、
 異議ありぃっ!
「……へ?」「ぬ?」したのは恵で無く、そう、
「恵ちゃんは、アフロ魂で繋がった仲間だ。今の証言は却下してもらうぜっ!」
「ああ、おのれはぁっ!?」「よ、恵ちゃん元気?」
 対面の弁護席に現れそう挨拶したのは、「……なるほど、久しいのう」
 イエロー殿―――その黒いスーツをきちりと着こなした男は、今はアフロを被ってないけれど、かつてアフロパープルと戦ったアフロパワーの戦士、藍原和馬であった。
「あ、なんか騒がしいなぁと思ったら源ちゃんじゃん、元気してた?」
「イエロー殿も元気のようじゃな、さてと、まぁその話はおいといて、」
 源はそう言って検事席のテーブルから本来の位置へと降り、そして、両手を机の上に乗せ、ようとしたらタッパが足りない事に気づき、スタッフからみかん箱を借りて踏み台にして、やっと手を乗せてから、藍原和馬を、同じように手を机についた藍原和馬をみつめて、言った。
「始めるとするかのう」呼応する対面、「ああ」
 さながら撃鉄が引かれるよう。

 異議ありぃっ!

「アフロピンクに魂があるじゃと? 恵殿がいやいやアフロを被っていたのは、第七話で立証済みじゃ!」
 異議あり!
「いやよいやよも好きの内だ! 声では嫌がっても、心では愛してる。じゃなきゃアフロンジャーの番組を作ってないだろ!」
 異議あり!
「その割には打ち切りを考えておったのでは無いか! わしの日曜朝の楽しみを奪う気まんまんじゃろう!」
 異議ありッ!
「視聴率が取れなきゃそうするしかない! 恵ちゃんだってつらいんだろうけど、私情を挟んじゃ局長なんてやっていけないんだよッ!」
 異議あり!
「そもそも脱着式のアフロなぞ邪道の外道!」
 異議ありっ!
「一番大切なのはアフロの心だ!」
 異議あり!
「サラサラ団と協力する輩が何を言う、このカレー好きめっ!」
 異議ありっッ!
「争う馬鹿野郎達の時代は終わったんだよ、これからは手をとりあうべきだ!」
 異議ありっ!
「アフロとは人類が選択した未来なのじゃ、それを否定するというのかッ!」
 い、異議あり!
「……ぬ?」
 春の嵐とばかりに巻き荒れる異議あり合戦が、ふと停止する。理由は、今の異議ありが、
「誰じゃ今言ったのは?」という、二者を変質させるのは第三者の法則ゆえ。「俺が言ったんじゃないし、傍聴席か?」
「いや、僕やねんけど……」
 そう言っておずおずと手をあげるのは、被告席に納まってる庄二。そして間省き、
「さっきから、全く僕の話が出てへんような気が」
「………」
「………」
 えっとまぁ、
「それはおいといてじゃ」「置いとかんといてなっ!? いや、ちゃうやん今回の主役僕! なんで全く関係ないアフロ話で」
「こら被告人、騒ぐようやったら法廷から追い出すで」
「って恵ねーたんなんで裁判長席にッ!」
 冒頭に出てたロボから、無機物には任せておけぬと役目を奪ってる恵さん、「や、せやかて弁護士と検事もう揃ってるみたいやし、うち必要無いかなぁと」
「……ちゅうか、もともと一人しか出演者募集してへんかったけど、手違いで二人になっただけちゃうん?」
 木槌の音が、返事でも無く響く訳である。じと目の庄二を省みず、恵裁判長は議事を進行して、「ほんなら源検事、冒頭弁論を」
「了解じゃ」
 そう言って紫アフロふさらせながら、何処からか取り出した資料を手の甲で軽くはたらきながら、
「さてそこにおる神楽庄二じゃが、まず始めに言っておくとけして宇宙人では無い」
 傍聴席の者達がざわめく、戸惑いは裁判長も同じである、「ちょ、こら検事っ!? 何をまっこうからうちの意見を否定して、これやったら弁護側に有利に」
「慌てるでない裁判長、それよりもビッグな真実があるのじゃからな」
 そう言ってから源は――視線を被告席に居る庄二へ向けた。五秒ほどの時はみつめられてる者に、「え、何?」と口から零させるには充分だった。そして、それに源は言葉を返す。
「久しいのう、神楽庄二。……いや、したら」
「――はへ?」
 間抜けな声をあげる少年だけでなく、疑問符は源以外の者達の頭上に浮かぶのである。「したら、って。ていうか久しい?」
しかし周囲に構わず源は、「聞くのじゃ皆の者っ!」
やにわ歌うように叫び、そして、猛烈なA太郎な程に叫ぶ!「こやつは、こやつはぁっ!」

 同窓でモダンバレー部!

 ……その発言は、疑問符を解除するどころか更に色を増す
「待った!」
素早い反応が弁護席、
「同窓って事は、源ちゃんは庄二君の事を知ってるのか!?」
「あ、そ、そうや庄二! おのれ確か記憶喪失やないか!」
「え、え!? いや確かにそやけど、じゃあ僕、この子と会った事あるん!?」
 そもそも神楽庄二がこの異界に迷い込んだのは、とある青年の不思議な鞄からひょっこり現れたのが切欠である。その時には局長が語るとおり、名前以外の一切は記憶から零れてるとの事であったが、寧ろそれは演技ではないかとも怪しんでいた。しかし、今のこの庄二の反応は、
「……ぶっちゃけ、わざとらしい所もあるような」
「なんでや!? いやそこは信じてーなねーたん、僕ってかわいい記憶喪失!」
「記憶喪失って可愛いものなのかね?」
 弁護士の至極まともなつっこみも庄二には聞こえやしない、そして、
 源検事にも聞こえていなかった。それよりも彼女には感情があって、「かぁぐぅらぁしょおじぃ」「え、なんでそない恨みがましい声?」
「お主は忘れたというのか! 常に商売繁盛と書かれた扇をあおいだ事、」
 いや別にそれはいいじゃん、
「しかも罠部といういかがわしい場所に出入りし、」
 いや……まぁそれも別に、
「挙句の果てに、お主はぁ、ショタどころかホモショタで、」
 え?
「さ、さらに隙あらば公然と、ストリップショーを行い……」
 え?
「裸で踊り、だれかれ構わず抱きつき、そして……ああ今思い出しただけでもぉ!」
 え――という声が人々の心の中で、生まれて、三秒後、
「えぇぇぇええええぇぇぇええっっ!!!」
 心から飛び出したえは行列を成し、大絶叫となって法廷を満たした。ただ一人、その声の群れの中呆然としてるのは神楽庄二、しかし、
「ねぇねぇ聞きましたあの子、かわいい顔してきっとヤルもんだねと」
「聞きました聞きました、色々と私達を騙してたんですわ、恐ろしい子ッ!」
「いやほんま言われてみるとやる事なす事変態仮面もまっさお」
「いやちょっと待ってぇ!?」
 世間から、というか身内からさんざ言われ思わず叫ぶ神楽庄二、だがしかしすっかりレッテルは貼られたのである。孤立という漢字を身をもって知った彼、ああ人が遠ざかる。
 更に駄目押し、「しかも関西弁のくせに教師の前では優等生口調! 全く、猫をかぶるにもほどがあるのじゃ」
 そう言ってビシィと庄二に指をつきつける源である。当然、ここで黙秘権は間違い。「い、いやめっちゃ無茶苦茶や! だいたい同窓のモダンバレー部って時点でつじつまが」
 本郷源六歳、神楽庄推定十二歳ゆえ。ただ同窓というのは同じ学年で学んだ、でなく、同じ学校で学んだという意味なので、小中高一貫だとか、秀才ゆえに繰り上げになったとかなら説明がつく、それに、
「お主が着てる制服はその学園の物じゃろ」
「な、なんやってー!」
「……せやからそのわざとらしい驚きはやめい」
 未だ記憶喪失が演技でないか疑ってる恵。そして、それとは別に、
「待った!」
「ぬ?」
 思惑を巡らせていた者が居た。世界の果てでも無いのに一人ぼっちになった少年の最後の味方、
「だけどそれじゃ、恵ちゃんが言った事と矛盾するじゃないか」
 一夜限りの弁護士、藍原和馬である。
「恵ちゃんの、いや、裁判長の主張は、庄二君が宇宙人だって事だよ? この写真、」そう言って例の青い星よりの使者風な写真を取り出して、「庄二君が遠い星の住人だったら、学園なんて通ってるはずないね。仮に来たとしてもこの姿じゃ学園生活送れる訳ないし、今の姿に化けてたとしても今回みたいに何時かはバレる」
「そんな断言せんでもにーたん」
 そうは言うが一応味方であるので、それ以上は口を挟まぬ庄二。さて、一見この論破できそうにない証言であるが、
 それへの答えは、「用意しておる」
「な、何っ!?」
 わざとらしく身を後ろにのけぞらせる弁護士和馬、それを更に圧すように、検事源は身を乗り出した。「良いか、今から言う真実に、今の証言ははっきり矛盾しておる!」
「真実だって? 一体なんなんだ?」
「簡単な事じゃ」
 偉大なるアフロを揺らしながら、本郷源は、開口し。
「宇宙には宇宙人などおらぬからじゃッ!」
 ――裁判長が口あんぐりする、傍聴席が沈黙する、神楽庄二の顔が引きつる、そして、弁護士和馬はすぐさまそれに突っ込もうとするが、
 先手に先手を重ねるのは、検事。
「そして、その証拠もある!」
「なんやてッ!?」流石にその一言には、裁判長も例の言葉を出さなければいけなかった。つまり、「そ、それやったら示してもらおうやないか、おのれが言う宇宙には宇宙人がおらへん証拠をッ!」
「よし、では次の中から選ぶのじゃっ!」
 1.切り裂かれたスーツ
 2.アンティークドール
 3.バナナ
「って俺達が選んでもしょうがないだろ! その前に、このラインナップ俺が関わった事件と被ってるって! バナナは売ってるだけだけどッ!」
「おお! 見事につっこみきるとは、流石イエロー殿、アフロンジャーの名は伊達じゃないのう」
「いや、余計なボケもツッコミもいらへんから続き」
 関西人の癖にノリが悪いのうとぼやきながら源検事は仕切りなおし、「その真実とは、」今、全ての思いを人差し指に込めて!
「宇宙には、絶対無二のアフロ神とその妻なるアフロディーネしかおらぬからじゃ!!」
 全員、どっかの新しい喜劇風に、こけた。
 いの一番に立ち上がったのはやはり和馬で、「選択儀の中に無かっただろ!」「そこつっこみどころちゃうにーたん!」「だって、ここでそうボケとくのは関西のお約束なんだろ?」「ここはバラエテ異界やって」
 ともかく、
「アフロ神とアフロディーネ? ……同じアフロンジャーの仲間を疑う訳じゃないけど、それは本当なのか?」
「所詮脱着式のアフロには、聖地を目指せぬと同じで知る事も敵わぬ知識。しかし、やはりこれにも《証拠品》はあるのじゃ」
 そう言って、これで裁判は決着するとばかりに、本郷源、
 最後の証拠品を用意する。
 指二つで持ち上げられる物、それは写真。だが、庄二の写真ではない、彼女は全身全霊を込めて――これが、
「代々伝わるアフロ魂じゃああぁぁっ!」

 くらえぇっ!

「……な、」
「なんや、の、」
「まさか」
 裁判長、被告、弁護士の三者一様の反応へ、検事、
 言葉を。
「見ての通りこれが証拠、古に降臨されたアフロ神は、この者」
 写真にある姿は――
「仏陀にアフロを授けたのじゃ!」
 神々しき奈良の大仏様であった。もう何度目か解らない沈黙の後に、また何度目か解らない喧騒が怒った。この現象のコンボに、最早戸惑わなくなった和馬は、落ち着いて、だが声は大きく異議ありと叫ぶ。
「奈良の大仏の頭はパンチだ、けしてアフロじゃない!」
 異議ありッ!
「何を言う、目を閉じれば感じるであろう! この大仏よりこんこんとAPが溢れている事を!」
「いや、そんな訳あら」「ああ、なんかそんな感じがしなくもないな」「待てにーたんッ!?」
 弁護士自ら、検事の言い分を認める発言が出て、そしてそれを見逃すアフロパープルでは無い。「裁判長! 今の一言が全てを立証しておる! 今すぐその木槌をワニを叩くように振り落とすのじゃ!」
「はぁい、ほな判決言い渡すでー」
 最早全てを投げやりになった恵裁判長、被告席からの異議申し立てをハリセンを投げて潰してから、「被告人神楽庄二、宇宙人でない事は判明したが、それよりも、したら庄二としての猥褻物陳列罪が発覚、よって!」

 有罪

「い、いやちょっと! 待ってえなぁねーたんッ! だいたい僕ほんまこの子の事知ら」
「くくく、正義は必ず勝つのじゃ!」
「ほんなら、本日はこれにて閉廷」





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
 1108/本郷・源/女/6/オーナー 小学生 獣人
 1533/藍原・和馬/男/920/フリーター(何でも屋)

◇◆ ライ

 待った!

「はぁ!?」
「えッ!?」
「な、な、な、」
 全てが終わりへと向かう時の流れを、強引に塞ぐ壁は、心の強さを持った一言。その発射した主は、
「イエロー殿ぉっ!?」
「悪いが源ちゃん、いや、アフロパープル? まだ弁護側の攻撃が終わってないね」
 そう言った藍原和馬の背後に、《バーン!》という擬音語が見えるのは、けして幻視では無い。「ああ! うちの局の巨大プロジェクターがスーツのにーちゃんの後ろにっ!?」「うわーまた説明口調」
「裁判長!」
 机が飛び上がる程、手の平で叩きながら恵の方へ向きにやりと笑い、
「これから弁護側が立証してみせるよ、神楽庄二の真実を」
「し、真実? それはわしが既に言っておる! こやつはホモでショタで女装好きで」
 源にまくしたてられる和馬、今度は視線を彼女に向けて、「悪いがその判決、引っくり返させてもらう!」
 そして、背後のモニターに映ってた擬音語が消える。バラエテ異界の景色が流れる、和馬、モニターの横へ移動する。
「これが庄二君を救う、俺の証拠品だ!」
 言った時には画面、『藍原和馬の調査パート』の文字が、浮かんだ。


◇◆◇


 そもそも藍原和馬、この裁判が取り扱ってる事件を知ったのは、開廷するよりもずっと早い、恵が、庄二の蒼い姿を見た一時間後である。
 バラエテ異界へは、うっかりアフロを被ってしまうと召還されるのだが、その日の藍原和馬もそうであった。とりあえず横断歩道を渡れず困ってるおばあさんの手を引くという正義っぽい事をして、アフロを外した藍原和馬。このままKAN-JOU-SENに乗って帰るのも冬の木の葉のように寂しいので、折角だからと、ゴーストTV放送局であるTWO-TEN-KAKUに寄った訳で。そして、局長は居るかと尋ねる受付。
 裁判の準備でで手一杯だと。
 詳細を知るのも、写真を手にするのも時間はかからなかった。情報だだ漏れのテレビ局、がそれを問題として指摘する事無く、宇宙人という決め付けに疑問を持って、何でも屋は弁護士をする為に、探偵を開始した。
「という訳で、良かったら色々聞かせて欲しいんだけど」
 そう言って収録の終わったスタジオのADに、片っ端から声をかけていく。彼ら曰く、
「庄二君っていったら、やっぱりお姉さんに人気ある事かしら」
「一回女装してそのまま生放送の歌番組でてね、あの時は問い合わせが凄かったなぁ。電話が鈴虫みたいなんだよ。ま、歌ってる最中に局長が乱入して、流血沙汰になったから放送は途切れたけど」
「青い姿? いや、一度も見た事無いけど」
 と諸々集めはしたのだが、
(どの証言も決め手にかけるな)
「ああ、ミックスジュースうまー」
 テレビ局にある休憩プレス、局長の好みで一台まるごとミックスジュースが並ぶ自動販売機からミックスジュースを買ってベンチに坐りミックスジュースを飲む藍原和馬。
 彼の予想が正しければ、庄二の正体は――だがそれを確定させる言葉に出会わないのである。
 そこでふと思った、内側にばかり目を向けて、外へ意識を向けてなかった事に。恵との出会いを明日の法廷に回し、GTVから出立する。もう一度断っておくが情報収集が目的なのであって、
「そういえば、串カツまだ食った事無かったな」
 と漏れた言葉が理由で無く、


◇◆◇


「ほんならなんで即効串カツ屋行っとるねん! 人に話し聞くんちゃうんか!」
「へぇ、やっぱバラエテ異界ってどこでもカメラ着いてるんだな。ちゃんと俺映ってるじゃん」
「いやにーたん、延々と食べてる所見せられても」
「ふむ、チーズも揚げておるの。おでんのタネにするのもまた粋かもしれぬな、餃子の皮で包めば出汁に溶けぬじゃろうし」


◇◆◇


 ソースを二度漬けるという愚行を犯す事無く、美味しく食事を終えた藍原和馬は再びGTVに戻ってきた。ちなみにここで恵さんがせやから情報収集は!? と突っ込んでいるのを補足しておく。
 はっきり行って事態はちいとも進展していないのだ、足を棒にして歩き回って、ミックスジュースや串カツを食べたというのに、未だ集まった証拠品はこの写真だけ――
「って待てよ?」
 考えが回転する。「恵ちゃん、庄二君が青い姿になってるのを目撃したって言ってたよな? 庄二君が青くなったのはその一回だけで……」
 ―――、
 閃光が脳裏に走る、そしてその白い軌跡は虫のように飛び、一つの像を結実する。
 真相が、見えた。
 となると残される問いかけ、神楽庄二は何者か?
 相原和馬は、この時点ではまだ探偵であった。ゆえに、現場検証をする。
 そして転がっていたものは、


◇◆◇


 そのナレーションを最後に、ぶちりと音をたててモニターが消える。すぐさまなのは本郷源、
「こ、転がっていた物とはなんなのじゃ!」
 先程まで対決的にも、なにより出番的にも勝っていた者の天気が曇り空、雨すら降りかねぬ状況ゆえに童女は焦る。さて、それをいなすように、
「まぁそう慌てるなって、物事には順序があるしな。さて、」
 身体なる矛の先を、裁判長席に向けて、
「恵ちゃん」「え、うち?」
 すっかり蚊帳の外であったので、急に引っ張り出されると慌て。そして、
 青い庄二が映ってる写真を翳す和馬の次の一言で、その様態が加速する事になる。

「あの写真、偽物だろ?」

「……」傍聴席の静寂、「……」被告席の静寂、「……」検事席の静寂、
 そして、
「なにをぉやぶからぼうにゆうぅ!?」
 裁判長席の絶叫である。その慌てぶりと言ったら、まるで死者が蘇生するのを目撃するかのよう。言葉はゴム鞠のように跳ねて聞き取るのも一苦労、なんとか耳で拾える単語を繋げれば、無実無根という事だろうか。
 しかし反応は正直者。確信をもちつつも、更に今の発言を決定付けようと、資料を取り出し、
「この記録によると、恵ちゃんは青くなった庄二君を目撃したら。これは間違いないね?」「そ、そや、天地神明に誓って嘘ゆわへんわい!」
「けど、その後庄二君はどうした?」
「へ?」
「だから、恵ちゃんに目撃された後庄二君はどうしたかって」
「そ、それは、」
 口ごもる恵に、弁護士である源、性格に言えばアフロのもこもこの部分が気づく、「まさか、イエロー殿」
 冷や汗を垂らして童女が心の中で浮かべた事を、目の前のスーツは快活に言った。
「その後庄二君はすぐ、元の姿に戻った、だろ? それにさっきのVTRで」
 ――青い姿? いや、一度も見た事無いけど
「と。……つまり恵ちゃん、庄二君が青くなったのは恵ちゃんが目撃した時だけ、つまり、恵ちゃんことアフロピンク」和馬、
 右手をゆっくりとあげ、小指と薬指と中指と親指を折り、選出されし一本槍、即ち、
 人差し指を恵へ、真実に反する物、矛盾へつきつけ!
「君は写真を撮れる訳が無い!」
「ぐはぁっ!?」
「こ、こらぁ! どういう事じゃアフロピンク殿!」
「い、いやいやちょっと待ってって! 確かにこの写真はうちの記憶を元にして作ったCGや、裁判をスムースに進めるには必要やろ! まぁ確かに偽物はまずかったかしらんけど、それでもッ! 庄二がこの姿になったんは紛れも無い事実や!」
 そう言って彼女の人差し指は庄二君へと。本人もそれは否定出来ないのか、ただ黙するのみ。しかし、和馬は厳しかった。
「だけど偽物が証拠品に並んだ裁判は有効になるかな? いや、主張させてもらうよ。今回の裁判はノーカウントだっ! 庄二君が宇宙人かどうかなんか、どうでもいいっ!」
「えぇっ!?」
「異議する? けど、どう考えても恵ちゃんが悪いんだぜ? いくら証拠品が無いからったって、捏造は――」

 異議ありぃ!

「!」「!?」「あ、ア、」
 アフロパープルゥッ!?
「ふっふっふ、あやうくわしの存在が忘れかけられる所じゃった」「いや、そんだけアフロ揺らしてたら嫌でも目につくけど」
 確かに一つ笑うたび、もこもこは素敵に弾んでいる。が、それはおいといて、
「イエロー殿、大事な事を忘れておるぞ」
「大事な事?」
 そう――と言って本郷源、今度はこちらが人差し指をたて、獲物を狙うが如く彼につきつけ!
「わしの主張はこやつが宇宙人という事ではない、こやつが《したら》という事じゃ!」
「あ、そ、そうや! よう考えたら今の証明なんもならへんやないかい!」
「その通りじゃ! そもそも、この裁判は一度わしの勝ちが決まっておる、揺るがない物を無理矢理動かそうとするのは、アフロの戦士にあるまじき行為じゃぞ?」
 源は己を信じて疑わず、まるでそれを賛歌するような快活な笑みを見せ付けた。けして悪ではない、これこそが彼女の信じる真実なのである。そして、それを胸に抱けるのは、強さ。
 だが、その極上の笑みに対して、
 和馬は笑い返す。「ぬ、何がおかしい?」
「悪いけど源ちゃん、もう証明してるんだよ」
「な、なんじゃと、今なんて言った」
「だから証明してるんだって、神楽庄二がしたらでない事は」
 源の表情を鏡で写したかのよう、自信を溢れさせた顔を、被告席の庄二へ向ける。信頼。
「さて、検事側の主張は《神楽庄二はストリップ好きのしたら君である》という事だろ」
 、
「しかし、今から語る真実に、それは矛盾する」
 、
「神楽庄二がしたらではない決定的な証拠」
 、
「それは」

 庄二君、シャイだから。

 ………、
「……は?」
 その一音を最初にひねり出したのは鈴木恵、そして、疑問をぶつけるのは検事である。つまり源、「シャイじゃと?」
「その通り、庄二君は恥ずかしがりって事だ、だって」
 今まで一度も、この青い姿を人に見せた事が無かったのだから。
「え、い、いやそれ別に恥ずかしがりとかちゃうやろっ! だいたいこいつ、女装して歌番組に出たりするんやで!」
「けど、青い姿は一度も見せた事が無かった。それだけは誰にも知られなくなかったんだよ」「せやかて」
 そう言いながらも、恵は神楽庄二を見る。
 確かに普段は色々ずばずば言うこの腐れガキが、黙して自分から語ろうとしていない。まるで青い姿について触れられるのを恐れるように。
 いや、それは考えすぎか? だとしても、
「ええい、仮にこやつがシャイだとしよう!」
 恵の思考を遮ったのは、源であった。心なしかアフロが怒りで膨れてるように見える。
「だが、それが《したら》の何に矛盾するというのじゃ! 確かに学園でもあの青い姿は見た事がなかったが、こやつがストリップをやって周りから視線を」
 ………あ、
「あ、あぁぁぁぁっぁあっ!?」
「……気づいたようだなパープル検事」
「イ、イエロー弁護士、まさか、そうか、そういう事なのじゃな!」
 突如合点がいったような目をしたパープル、戸惑いの中、声をかけるのは渦中の人物である庄二、「あのう、気づいたって一体何が」
「青い姿は庄二君の真の姿」
「え、いやそんなん一言も」
「そして裸も真の姿」
 、
「つまり」

 真の姿を隠してきた庄二が、したらであるはずが有り得ないッ!

「えぇぇぇっぇっ!?」
 神楽庄二から放たれる声、それが、本日最後の絶叫であった。
「うかつであった、わしはあまりに青の姿を無視してしまっておった! 本郷源一生の不覚じゃあーーーーーーっ!」
「なんでそれで敗れた事なるん!? そんなんで心が折れるもんなん!?」
「なんとも痛ましい事件やったな、せやけど、これで被告人の罪もはれた」
「って恵ねーたんまとめ入ってるぅ!? てかねーたんが原因やん今回の裁判、ちょっとちゃうやん、てか別に僕あの青い姿隠した訳ちゃうから! てかもっと弄って」
「これにて一件落着だな、庄二君!」
「納得できひんって! もっかい最初からやり直し」

 無罪

「ほな、今度こそこれにて閉廷ー」
「投げやりに終わらすなぁ!」


◇◆◇


 ○月×+1日 午後1時15分
 串カツ屋

「ほんなら軽い打ち上げやけどお疲れさーん、ギャラの方はここの串カツのおごりで」
「それとこれとは別じゃ、アフロンジャーグッズをくれるんじゃったらまだしも」
「もらえる物はきっちりもらうよ? そこを不真面目にしちゃ、いい人生送れないし」
 所変わって人変わらず、やってきたのは串カツ屋。VTRにも映った、和馬が昨日来た店である。二日連続で食べてもうまいものはうまいらしい。
「ふむ、タネはともかくとしてこのソースが美味じゃな。どれもうちょい」
「こらぁ! ソースの二度漬けは禁止やって入る前に言うたやろっ!」
 女性達の喧騒が響く隣の、相原和馬と、神楽庄二の男子勢、
 こちらは対照的に静かな物である。その原因は一人なのだが。「どうしたんだ庄二君、さっきから黙りこくって」
 頼れるお兄さん風に聞く彼、するとラムネを飲みながら庄二は語りだした。
「いやだって、僕が記憶あらへんってのはほんまの話やし。裁判で、僕の過去とか色々見つけてきてくれるんかなぁとか思ったから。せやけどにーたん達、僕が何者かって事結局いわへんかったし……」
「ま、案外本当に《したら》君かもしれないしな。……ところで、結局あの青い姿は?」
「………」
「語りたくないんだったら別にいいけど、何時かはバレるよ? まぁ、自分でも解らないかもしれないけど」
 結局、庄二は何も答えない。つかみ所の無い人物というか、中途半端なキャラというか。
 ――だからふとひらめいたのだ、藍原和馬には悪気は無い。悪ふざけはあったかもしれないが。
 それは、突然、やにわに、
「ん? あれ、なんか頭があったかいような、って」
 人類全ての頭上に到来して、「まさか」
「お、良く似合ってるな庄二君」
「何アフロ被せてるんやにーたんッ!?」
 そう言って立ち上がる。己の頭上にそれが咲いたのを知ったのは、溢れ出るAPというか単純に感触である。
 だが、灯台下暗し、色は見えなかった。
 ……ぉぉぉぉ「ん、なんやこの腹の底からなるような音」ぉぉぉぉぉおお「どこから、」おおおおおおおお!「聞こえてッ!?」
「おおおおおっおおおおっっおっ!」
 地鳴りのような響きを出したのは人間である、しかも童女、つまりは本郷源であった。あげたてのシュウマイも思わず零す程の衝撃を、彼女は受けていた。だって、
「アフロの聖地に伝われるオレンジアフロじゃあ!」
「え、は、わ!?」
「そうか、オレンジアフロの持ち主じゃったら、したらのはずがあるはずは無い! という訳でゆくぞオレンジッ! わし達の力で、伝説の巨人を動かすのじゃあっ!」
「一体どういう訳ぇっ!? って、どこへ連れて行くん!? むしろちっちゃな身体にこれだけのパワー、引きずられるぅぅぅぅ……」
 そうして流れ星のように、串カツ屋から去っていった二人、その後姿を見て、相原和馬、
「やっぱAPって凄いな……」
「てか、うちの異界アフロだけかい」
 裁判の番組だったのになぁ。





◇◆ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ◆◇
 1108/本郷・源/女/6/オーナー 小学生 獣人
 1533/藍原・和馬/男/920/フリーター(何でも屋)

◇◆ ライター通信 ◆◇
 短くまとめる方法を誰かモア。
 ……いや、二人だけの依頼やったらシチュノベと同じ感覚でいけると思ったら、何故か。単にプレイングがステキングだったってぇのが理由ですが。
 というかこちらのなんちゃらで、一人だけ募集のはずが二人になってもおてごめんなさい、しかしそれにしたってアフロが被るっちゅうのはどういう事ですか。おいらはアフロだけしか書いちゃいけないっちゅうんか!(自分から書いてるだろ
 という訳で何時もご贔屓にしてもらってほんまおおきにです、今回の裁判ですが、青い姿の写真について触れていたので、藍原和馬PL様のプレイングを判決にさせていただきました。
 ただ予想だにせーへんかったのは、本郷源PL様のプレイングに、神楽庄二の元である人が浮かび上がってきた事で。確かに元キャラ、もともと名前もじったんは、あちらの管理をこちらに移行させるんは問題あるさかいの処置やったんですが、結局巡り巡って。……相談っちゅうか、テラ的にはどうかわかりまへんが、なんらかの形で今回の結果を引っ張るやうな。……ちゅうかそんなキャラやったんですね彼(こら
 いやせやけど、青い姿は結局なんやったんやと(をい)ある意味全く意味の無いっちゅうのもそれはそれで美味しいでっけど。
 とにもかくにもアフロにも、今回のご参加おおきにでした。よろしければまたお会いしませう。
 PS.源PL様、アフロ紫ピンナップ噴きました。びっくらだ。