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<東京怪談・PCゲームノベル>


駅前マンションの怪〜ある日の掲示板・フリーマーケット開催!

●フリーマーケットへの誘い
 夏野影踏には、駅前マンション在住の友人がいた。
 きっかけは、その友人からの一言。
「そういえばさあ、今度うちのマンションでフリーマーケットあるんだよなあ」
 本人はそう意識もしていなかっただろう、他愛もない雑談の中の一言だった。
「へぇ、面白そうだな」
 駅前マンションの評判は、友人の口から時折聞いていた。
 草間興信所ではないが、怪奇マンションと呼んでも差し支えないだろうそこで売られる品々に興味が沸いた。
 せっかく行くんだし、自分も小銭を稼いでみようか。
 家にあったのはゲームソフトが数本と、冬でも生暖かかくて怪しい石。
 後者は売れるか怪しい気もしたが、そういう場所だしそういう物を持って行った方がいいかと思ったのだ。
「よし」
 一通りの準備を終えた影踏は、朝からフリーマーケット会場へと向かった。

●案外売れるもんだなあ……。
「あら、結構綺麗ね」
「いらっしゃい。どうぞ見ていってください」
 その日最初のお客様に、影踏みはにっこりと笑顔で応えた。
「手にとっても良いかしら?」
「もちろん」
 了承の意を得て、女性は石の一つを手に取る。
 と。
「…………」
「どうかしました?」
 何故か女性が沈黙した。
「ええ……」
「ねえ、これ……」
「ああ、不思議ですよねえ。冬でも何故か暖かいんですよ」
「カイロ代わりにちょうど良いかしら」
 売る自分も自分だが、こういう怪しい物をそんな見解であっさり購入できる思考も凄いと思う。
 やはりここは普通じゃないらしい。
「それじゃあ、これを一つ貰って行くわ」
「どうもありがとうございます」
 とりあえず、午前中はここにいて、午後になったら買い物にでるつもりだった。
 女性を見送ってしばらく経った頃。また別の女性が興味を示す。実質はともかく、ぱっと見は綺麗な石だから女性の興味を惹くのかもしれない。
「どうぞ、見てって下さい」
「どうもありがとう」
 にっこりと笑って言うと、女性は。社交辞令に軽く告げ、置かれている品々をぐるりと見る……と、石に触れてしばし沈黙。
「……何か封印でもされてるのかしら……」
「多分ね」
 いつの間にそこにいたのか、女性の隣に十二、三歳くらいの少年がいた。今時珍しく和装である。
「何か見つかった?」
「んーん。面白いのはいろいろあるけど、僕の探し物とは別みたい。まあ、せっかくだから見て周るけど」
 少年はじーっと石を眺めつつ、安いから買ってみようかなあなんてブツブツ言っている。
「ねえねえ、おにーさん。これ、どこで見つけたの?」
 にっこりと子供らしい無邪気な笑みで問う少年に、影踏は苦笑を浮かべた。
「弟が石を集める趣味を持っててね、俺が見つけたわけじゃないから、ちょっとわからないんだ」
「ふぅん、残念」
 しばらく考えこんだのち、少年はまた別の話題――と言ってもやはり石に関する話ではあるのだが――を振ってくる。
 女性は少年を待つつもりはないらしく、あっさりと離れて行った。
「いろいろお話してくれてありがとう。せっかくだから一個ちょーだい」
「はい」
 結構長い時間話し込んでいたらしい。少年が去ってから時計を見てみたら、もう正午を過ぎていた。
「そろそろ僕も買い物に回ろうかな」
 品の上にざっとビニールシートをかけて、影踏は他の店へと歩き出した。

●招き猫
 なんとなくというかなんと言おうか。
 目が合った。
「おや、この子に興味があるのかい?」
 じーっと招き猫の置物に視線を向ける影踏に、柔和な笑みの老人が話しかけてきた。
「……ええ」
 気のせい、だったのだろうか。
「この子は飼い主を探しているんだ。今は招き猫だけど、時々動くよ」
「は?」
 どう言う意味だかわからず、とりあえず、老人を見る。その瞳は嘘をついているようには見えない。
 再度、猫に目をやる。
 確かにさっき、目が合ったような気がしたのだが……。今見てみると、それはただの招き猫にしか見えなかった。
「こんにちわ〜」
 突然声をかけられて後ろを振り向くと、中学生か高校生くらいの少年が立っていた。人懐こい表情に、軽く笑って会釈する。
「おにーさんもこれ、買いたいの〜?」
「いいや。動くのを待ってるんだ」
「動くの?」
「そうらしい」
 答えると、少年も隣に座りこんでじーっと見つめる。
 と。
「ニャアン」
 招き猫のツルツルの表面がふわりと触りごこちの良い毛に変わって、碧の瞳がくるんっと動いた。
「うわあ、可愛い〜」
 ゴロゴロと擦り寄ってくる猫を、少年がぎゅと抱きしめた。
 ……なんで動くのかは知らないが、動くのが見れて影踏の好奇心は満足した。
「あれえ?」
 立ちあがろうとしたところに少年の声がかかる。
「ん?」
「いいの?」
「ああ、動くところが見たかっただけだから」
 にっこりと笑ってから、影踏みその場を立ち去った。

●黒服の人
 それを見つけた瞬間、影踏は思わず固まった。
「すげー……これってメン・イン・ブラックってやつ?」
 そう。
 明るいマンションの屋上にあまりにも場違いな、黒服黒タイ黒眼鏡の男が立っていたのだ。しかも様子を見てみたところ、彼はここで店を出しているらしい。
 売っているものもなんだか微妙。
 防霊弾チョッキとか、占術盤とか、黒服黒タイ黒眼鏡セットの洋服だとか。しかも品物のいくつかには何故か宮内庁なんて名称が印刷されている。
 ……一体どこから持って来たんだ、これ……。
 名前だけを見ると、政府組織っぽい感じだが、まさかそんなものをこんな場所で売ったりはしないだろう。
 とすると、ジョーク商品ってヤツだろうか?
 それならあの黒服も多少は頷ける。黒セットの宣伝とか。
「まあ、ネタにはなるかな」
 少し考えた後、影踏はなにか一品買ってみることにした。
 とはいえ、あんまり怪しすぎるものを買うのも微妙に気が引ける。
 一応普通でも使えそうな物といえば、あの中では一種類だけ。
「すみません、この黒セットください」
 黒服黒タイ黒眼鏡セットの洋服を指差して言うと、黒服の男は丁寧にお辞儀をして、しかも綺麗に袋に入れてくれたりする。
 ガタイや見た目のわりに案外細かい性格らしい。

●後日談
 フリーマーケットで買った黒服セットがとんでもない物品だったと気付いたのはそれから数日後。
 さすがに黒服黒タイを使う機会はあまりないが、サングラスくらいならば、気が向いた時に手軽にかけられる。
 が。
「うっそだろ……」
 眼鏡をかけた途端、何やら妙なブツが見える。
 よくよく観察してみると、それが所謂幽霊の類いであるらしい。
「……まさか」
 もしかしてもしかすると、他の品も妙な特殊能力がついていたりするのだろうか。
 今日『は』平和で過ごせますよーに、なんていう願いと正反対のブツを買ってしまった夏野影踏。
 それらの黒セットは、買って早々に押入れの奥に仕舞い込まれる事となった。

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   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  
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整理番号|PC名|性別|年齢|職業

0086|シュライン・エマ|女|26|翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員
2164|三春風太    |男|17|高校生
1449|綾和泉汐耶   |女|23|都立図書館司書
2163|藤井蘭     |男| 1|藤井家の居候
2098|黒澤早百合   |女|29|暗殺組織の首領
2309|夏野影踏    |男|22|栄養士
1431|如月縁樹    |女|19|旅人
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         ライター通信          
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 こんにちわ、はじめまして。日向 葵です。今回はご参加ありがとうございました。
 フリーマーケットはいかがでしたでしょうか?
 なにか面白い品をゲットできていればよいのですが……(笑)

 全NPC商品への反応を書いていただいたのですが、さすがに全部描写するのは無理でした(苦笑)
 せっかく書いてくださったのにごめんなさいっ。
 やはり駅前マンション、皆様謎のブツである石の方に興味を示した様子。
 少年だとか女性だとかで書かれている方々は、他の方の視点の文章を見れば名前が判明します(笑)

 それでは、この辺で失礼します。
 またお会いする機会がありましたら、どうぞよろしくお願いします。