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『千紫万紅 ― 6月の花 茅(ちがや)の物語 ― 』
「何をやっているのですか、メーヴェ?」
――――かつて恋愛などにはまったく興味も持たずただ利害関係が一致する女性と肌と重ね合わせ、しばらくは共にいた頃があった。
彼女もまた私と同じ考えの持ち主で、
彼女もただ私の中に己の利を見て、
私にその肌を重ね合わせていた。
だけど彼女は本当は………
「鳥が逃げてしまったの………」
「鳥?」
「ええ。メルクリウスが」
彼女は空っぽの鳥籠を指差して寂しげに笑った。
――――普段はメイドに世話をさせて、その鳥籠の中の鳥にはまったく興味を持たなかったくせに。
その時の私は、
そんな人を哀れな種だと想った。
人はいつもそうだ。
すぐそこにあるモノはないがしろにして、
そして無くしてから初めてそのモノの大切さに気がつく。
鳥籠から逃げ出したのは小さなカナリア。
だけどそれは彼女にとっては小さな鳥、と言って切り捨てるにはあまりにも大きな存在で、
空っぽな鳥籠を見て、
彼女は初めてそれに気がつく。
「寂しいのですか? メルクリウスがいなくなって?」
「いえ」
彼女は泣き笑いのような笑みを浮かべて顔を横に振った。
「私は冷たい女だから。だからちょっとセレスにかわいい女の部分も見せてやろうと想っただけ。ただそれだけ」
――――それは嘘だ、とは口には出さなかった。
それが嘘である事には気がついていた。
私は・・・
私はクールな男だ。
人を切り捨てられる。
唇を重ね、
肌を重ね、
心臓の音色を重ね合わせる彼女だって、
ただ利害関係が一致するからそうしていただけ。
そして彼女もそう言っていた。
だけど本当は彼女はとても寂しい女性であった。
幼い頃に両親に虐待され、それが理由で人の愛情に飢えているくせに、
でも嫌われる事が怖くって、それを見せられないで、
クールなフリをしている。
私は知っている。
彼女が気の無いフリをしてメルクリウスを心の奥底から愛していた事を。
だけどただの鳥すらにも怯えてそれを見せられなくって、
彼女がメルクリウスに触れられなかった事を。
不器用なのだ、彼女は。
徹底的に・・・。
そして彼女は私の胸に顔を埋め、
そのまま背伸びをして、
私の唇に自分の唇を重ね合わせる。
お洒落な大人の女を演じながら。
―――――だけど本当は独りが怖くって体を丸めながら震える小さな女の子のくせに。
そして私は彼女をそのままベッドの上に押し倒し、そっと唇を彼女の唇から肌にずらすのだ。
彼女が私に求めるのは救い。
不器用すぎて愛情表現のできぬ彼女は私に無言で救いを求め、
――――――――――――――そして私は・・・・・
第一章 メルクリウス
久方ぶりにあの頃の夢を見た。
私の胸には軽い疼きがあった。
小さな硝子の欠片が突き刺さったような軽い疼き。
あの頃の私は人の恋愛感情など信じてはいなかった。
だけどもしも今の私ならばあの人を愛する事に不器用な女性を救う事が出来たのであろうか?
―――――――――そう、人を愛する喜びを知った私はだから・・・
前よりも強くなれたし、
弱くもなり、
それだけ優しくなれたような気がするから。
私はリムジンの窓を開けて、青い空を見た。
そこに広がるどこまでも透き通るほどに青い空は私に懐かしい海を思い起こさせた。
「どうもいけませんね。昔の夢を見た後は。ひどく心が感傷的になる」
私は小さく口だけで笑うと、座席にもたれて小さなため息を吐いた。
そしてそのまま背をシートから離し、運転手に声をかける。
「すみませんが止めてください。少し歩きたい」
「わかりました。総帥」
リムジンは静かに止まって、そして私を下ろすと、そのまま私が携帯電話で呼ぶまで駐車可能な場所まで移動していった。
窮屈な車の中から出た私は大きく息を吸い込んだ。
そんな時、すぐそこの木の枝に一羽の小鳥がとまった。その小鳥はとても綺麗で美しい声で鳴いた。
「カナリア?」
私はその鳥の鳴き声の方に視線を向ける。
そこにいたのは間違いなく一羽のカナリア。
彼女の夢を見た後にカナリアに出逢うなんて・・・。
「メルクリウス」
私がその名を呼ぶと、まるでそれを待っていったようにそのカナリアは翼を羽ばたかせた。
空に飛び上がったカナリアはひと鳴きして、私の頭上を飛び越えて、飛んでいく。
私はそれを不自由な足で追いかけた。
――――どうかしてる。あのカナリアがメルクリウスな訳が無い。
あのカナリアが飛んでいく先に一体何があるというのだ?
私はそこに何を望むというのだ?
だけど………
感じてしまう。
願ってしまう。
『何をやっているのですか、メーヴェ?』
『鳥が逃げてしまったの………』
『鳥?』
『ええ。メルクリウスが』
―――――――――――人とは哀れな種。
人はいつもそうだ。
すぐそこにあるモノはないがしろにして、
そして無くしてから初めてそのモノの大切さに気がつく。
そう、私の手の中にいたメーヴェという鳥。
その鳥は永遠に私の手の中から飛んでいき、
ただ私の手にはその鳥が残していった一本の羽根が残ったのみ。
―――――――――――――すぐそこにあるモノはないがしろにして、そして無くしてから初めてそのモノの大切さに気がつく。
「メーヴェ」
カナリアはすぅーっと白昼夢であったように空間に掻き消えた。
そしてそこに白さんとスノードロップの花の妖精がいて、老婦人の幽霊がカナリアのように消えたところであった。
「あっ、セレスティさんでし」
ひらぁ、っと私の方に飛んでくるスノードロップ。
彼女は上に向けた手の平の上に舞い降りて正座して座る。
にへらーと笑う彼女に私は微笑んで、
そして白さんにも微笑んだ。
白さんは私に頭を下げて、
そして私の方へやってくる。
「こんにちは、セレスティさん」
「ええ。ところであなた方は何を?」
――――――――――ただの偶然では無いはずだ。
「はい。実は・・・」
そして白さんは私に事の経緯を話してくれた。新垣ちかの事を。
「なるほど。人とは無くさねばそのモノの大切さがわからないのでしょうか?」
―――――――――それは私も一緒。
「セレスティさん、何か悲しい事があったでしか?」
「え?」
「なんか哀しそうに見えたでし。違っていたらすみませんでし」
ぺこりと頭を下げたその愛らしい妖精に私は微笑んだ。
「いいえ。さてと、それでは私も一肌脱ぎましょうか。新垣家族の幸せのために」
「本当でしか?」
「はい」
「すみません、セレスティさん。僕も協力します」
私は白さんとスノードロップににこりと最上級の微笑みを浮かべた。
第二章 セレスティ・カーニンガム
風がさわさわと吹いていた。
6月ももうそろそろと終わり、やがてやってくる夏を思わせる気温を私は疎ましく想い同時に憧れ、
その空に咲く大輪の向日葵のような太陽の下で、祖母の墓の前に立ち尽くす少女の後ろに立った。
「私もお参りをさせていただいてもかまいませんか?」
ちか嬢は私を振り返った。
「お兄さんは誰?」
「セレスティ・カーニンガムと申します」
「セレスティさん?」
小さく小首を傾げた彼女に私は頷いた。
「はい」
「おばあちゃんのお友達なの?」
「いえ。会った事はありません。ただ…ただちらりと見た事があるだけです。それではいけませんか?」
穏やかに微笑みかけると、ちか嬢もにこりととても嬉しそうに笑った顔を横に振った。
「ううん。ありがとう。おばあちゃんも喜ぶわ」そしてそう言った彼女はぐっと下唇を噛み締めると横にどいた。
私は杖をついて前に足を一歩踏み出そうとして、
そしてそこに差し出された一本の小さな手。
その手の主は優しく微笑んでいた。
「大丈夫、セレスティさん? 歩き辛かったらあたしの手を貸すわ」
私は一瞬驚きに瞳を見開き、そして次に微笑んだ。私の目は光には弱い。視力はほとんど無い。それでもちか嬢の目が眩むような輝きはとても愛おしく尊い光に思えた。
「ありがとうございます。ちか嬢」
そして私はちか嬢の手に支えられて墓石の前に立ち、水をかけ、線香を供えて頭を下げて両手を合わせた。
(ちか嬢のお祖母様。あなたの願いは私が叶えようと想います。ですからどうかご安心ください)
墓石からちか嬢に視線を移すと、彼女はまたぺこりと頭を下げた。
「ありがとう」
「いえ。ちか嬢、あなたはお祖母様に何を語りかけていたのですか? あのようにも長く」
私がそう訊くと、彼女は私から目を逸らし、ほんの数秒逡巡して、そして心を決めて私にまた視線を戻し、口を開いた。
「覚悟してたの。独りで生きていく」
――――それが8歳の女の子の言葉。
「あたしは家を出て独りで生きていくの」
――――彼女は頑なにそれを言い張る。
「おばあちゃんにそれを言って、それで決心が揺らがないようにって・・・」
――――飛べない鳥だ、彼女は。
自由に空を飛びまわりたいのに、
だけど悲しみという欠片にその翼を撃ち抜かれて、
墜落してしまった鳥。
地に落ちた鳥は、
ただ恋焦がれるように頭上に広がる青い空を見上げる。
もう一度空を飛びたくって。
空に抱かれたくって。
そしてそれはそのまま彼女と一緒。
親の愛情を感じられぬ彼女は親の腕の中に飛び込んでいけない。
だから彼女は親の手の指先すらも触れられないような場所まで逃げようとする…逃げる事で理由付けをしている………親の手が自分に触れられない事を。
強いのではない。
弱いのでもない。
強ければ自分から飛び込んでいく。
弱ければただ哀しんで、その場で蹲る。
彼女はそのどちらでもない。中途半端な場所で浮上する事も出来ずそれ以上に沈む事も出来ず彼女は、ただどうしようもなく不器用で、その不器用な感情が彼女の視界を一つにして、そしてだから何も見えなくって、彼女はぶら下がっているのだ。祖母というモノに。
そしてそれは・・・・・
―――――メーヴェと一緒。
私は彼女の頭を撫でた。
この手が触れるのは彼女の心?
それとも私の心の傷?
――――――――――かまいやしない。
偽善な想いに浸る自分を罵るような不毛な真似はしない。
私はセレスティ・カーニンガム。
それ以上でも、
それ以下でもなく、
私が私の全て。
だったら・・・・・
全ては心のままに。
「それではあなたは私の養女となりなさい」
「・・・セレスティさんの養女?」
「そう、養女です」
「・・・・・いいわ」
こくりと頷いた彼女に私も頷く。
「でも」
「でも?」
「簡単な宿題はやってもらいます」
「宿題?」
彼女はとても嫌そうな表情をした。それは私が見る初めての彼女の年相応な子どもらしい表情。
私はくすりと笑いながら顔を横に振る。
「宿題はちか嬢にではなく、ご両親に。そして宿題を作るのはちか嬢です」
「あたしが?」
「ええ」
「あなたとご両親の思い出深い場所をクイズにして出しましょう。それでご両親がそこがわかれば、そうすればもう何も不安な事は無いでしょう? でももしもダメな時はその時は私の養女となりなさい」
「うん」
こくりと頷き、そうしてようやっと大粒の涙を零し始めて肩を震わせ始めた彼女を私は抱きしめた。
第三章 クイズ
「僕たちもお呼ばれして本当によかったのですか?」
「ええ、構いませんよ、白さん。それにスノードロップがいるおかげで子どもらしい表情を彼女もしているのだし」
「それにしても想い出の場所をクイズにして出すとは良い案ですね」
「ええ、私の知り合いにクイズが好きなお嬢様がいまして。ちなみに白さんはボタンにはあって、ファスナーには無い物はわかりますか?」
「ええ?」
「では、それはダルマにもあります。こけしにはありませんが」
「えっと・・・」
私はついつい困った顔をする白さんを見てくすくすと笑ってしまった。
そして白さんに答えを教えてあげる。
「答えは雪ですよ。ちなみに夏<紫<○<福・・・○の中身は?」
「や・・・」
「こんな具合に彼女は私にクイズを出してくるので、すっかりと私もクイズ好きになってしまって」
軽く肩をすくめた私は、ソファーに座り美味しそうにスノードロップと一緒にケーキを食べるちか嬢を眺める。
「ちか嬢は本当は自分が家に居ない事をすぐに気付いて欲しい探し出して欲しいと想っています。当然です。親を嫌う子どもはいません。そしてそれは親の方だって一緒、ですよね?」
白さんはこくりと頷き、そして私も頷き、
「ただご両親はちか嬢の事にかまってあげる心の余裕がないのでしょう。時間は自ら作る物だと想います。だから互いに仕事をしていて自分の好きな仕事でも、時間を作りちか嬢と少しでも良いから話をする時間を作ってあげられなかったご両親にはクイズで今一度再確認していただきましょう。自分たちにとって何が一番大切なのかを」
「そうですね」
+
「ああ、旦那様、奥様、ちかお嬢様が」
新垣ちかの父親である新垣礼二と母親である新垣ゆりえは車から飛び出すと、真っ青な顔で玄関の前に立っていた家政婦の田中さんに詰め寄った。
「ちかがいなくなったって、どういう事なんですか?」
「何のために君を雇っていると想っているんだ?」
「す、すみません」
顔を真っ青にして田中さんはぺこぺこと頭を下げた。
「すみません。すみません。すみません」
と、しかしそこに・・・
「あら、家政婦さんが謝る事はないんじゃなくって?」
新垣夫婦はばっとはじかれたようにその軽やかで嫌みったらしい声がした方を見た。
そこに立っていたのは長い黒髪の少女であった。
「な、なんだね、君は?」
「そうですよ、何を偉そうに。この人にはちかの一切の面倒を頼んでいるのよ。そのお給金だって払っているの。なのにこの人は、ちかから目を離してぇ!!!」
「す、すみません」
ヒステリックな新垣夫妻にただただ顔を真っ青にして謝る家政婦。そしてまあやは肩をすくめた。
「くだらない。それって責任転換もいいところなんじゃないの?」
「な、に?」
「そうじゃない。結局はその人は他人で、そしてあなた方は両親よね? 一番責任があるのはあなた方じゃない。一切の面倒を頼んでいた? はっ、恥ずかしげも無くよくそういう事が言える。他人に自分の娘の面倒を頼む前にあなた方ご夫婦はちかちゃんと一緒にいる時間を作ろうとした?」
それまで小娘に怒っていた新垣夫婦はしかしはっとしたような顔をした。そして気まずそうにまあやから顔を逸らした。
「ちかちゃんは家出をしました。そしてその彼女をリンスター財閥総帥セレスティ・カーニンガムさんが養女にしたいと申しております」
夫妻は両目を見開く。
「ち、ちかを養女にって何を馬鹿な事を」
「そうですよ。あの娘は私達の娘です」
そう言う夫婦にまあやは薄く笑った。
「では、ゲームを」
「ゲーム?」
「ゲームってなんですか?」
そして彼女は懐から一通の封筒を取り出した。
「この封筒にはちかちゃんが書いたクイズが入ってます。そのクイズの答えが彼女がいる所ですので」まあやは愕然としている礼二に封筒を渡すと、にこりと笑った。「それではご健闘を祈っております」
まあやは二人に頭を下げて、そこから立ち去った。
+
「もしもし、まあや嬢。上手く行きましたか?」
『はい、ちゃんと渡しておきました。上手く行くといいですよね』
「ええ。それにしても今回はメッセンジャー役を頼んですみませんでした」
『あら、その分後でまたセレスティさんが美味しい紅茶とお菓子をご用意してくださるのでしょう? 楽しみにしています』
「はい。それではまあや嬢のために最高級の紅茶とお菓子を用意してお待ちしております」
『はい、楽しみにしてます』
【ラスト】
忘れられた宝は眠る。
熱帯の密林が東に、
灼熱の砂漠が西に、
北に南極がある場所に。
忘れられた宝は待っている。
その場所で・・・
遠き記憶を夢見ながら。
私はその場所でちか嬢と一緒にずっと新垣夫妻が来るのを待っていた。
だが空は橙色と紺色のコントランスを描き、夕日はあと少しで完全に沈もうとしていた。
そこで遊んでいた子どもたちはひとり、またひとり、と、次々と迎えに来た母親や父親と一緒に手を繋いで帰っていく。
ちか嬢はその光景を私の手を握りながら見つめていた。
ここはちか嬢がまだそうは仕事が忙しくはなかった頃のご両親に毎週日曜日に連れてきてもらっていた場所だそうだ。
私の手が掴むのは小さな手。
ほんの少し力を込めただけでもそれは脆い硝子細工のように壊れてしまう。
かつて私のこの手の中にいた一羽のか弱い小鳥。
その小鳥は愛を求め、
その愛の歌を歌いたいと思っていたのだけど、
だけど怯える心が鎖となって、
そのくちばしを拘束してしまって、
そして私の手の中に一枚の羽根を残して飛んでいってしまった。
手の中から逃げていってしまった小鳥はとても小さくって、
だけど私にとってはそれはとても大きなモノであった事に、
飛び立つ小鳥を見て初めて気がつかされた。
失って初めて気がつくそのモノの大切さ。
人はその失った穴を求めるようにまた新たなモノを目指し、
手に入れようとし、
それに救われるという見果てぬ夢を夢見る。
「ちか嬢?」
私は隣に座るちか嬢に声をかける。
彼女は私の手をぎゅっと握って泣いていた。
子どものようにただ声の限りに、
感情のままに、
泣くことはせずに、
ただ感情を押し殺そうとするように、
声を押し殺して泣いていた。
握りられた手から伝わる小さな震えが、
心にとても痛くって・・・・
「セレスティさん。あたしを、あたしをほんとにセレスティさんの子どもにしてくれる?」
しゃくりをあげながら彼女はそれだけを押し出すように言った。
だけど私はそんな彼女に顔を横に振る。
「いいえ、それは残念ながらダメです。私はちか嬢を養女にはしません」
ぴくりと大きく震える彼女。
そのちか嬢に私は優しく微笑しながら言う。
「だってちか嬢にはお父様とお母様がちゃんといらっしゃるのですから」
私がそう言った瞬間、ちか嬢がはじかれたように顔をあげて、そしてまた大きく見開いた瞳から大粒の涙を流して、
今度は声のままに感情のままに、
声をあげてわんわんと大泣きした。
心の奥底から安心したように。
「どうもすみませんでした」
ちか嬢の父親は私に頭を下げた。
私はその彼に微笑む。
「それはちか嬢に。そしてその感情は行動で彼女に示してあげてください。もう二度と彼女が独りに泣かなくってもいいように」
「はい。必ず約束します」
泣き疲れたのと安心したのとで眠っているちか嬢を抱く母親も私に頭を下げて、微笑んだ。母親らしくとても優しげに。
――――――――――その彼女に私は心の中で呟く。今度こそ、貴女(メーヴェ)が幸せになれるように、と。
そして私は新垣家族の乗った車が見えなくなるまで見送ると、公園のベンチにずっと座ってちか嬢を見守っていた祖母に顔を向けた。
彼女はその視線に応えるように私ににこりと微笑むと、頭を下げて消えていった。
「さてと、私も帰りますかね。もう直まあや嬢も来る事ですし」
くすりと笑いながら私は肩をすくめ、友人である彼女に出す紅茶のレシピを考えながら家路についた。
見上げた夕方の空は本当にとても美しく、
そしてその空を飛んでいくカナリアはとても綺麗な声で鳴いていた。
新垣家族の幸せを祈る歌を歌っていた。
― fin ―
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■ 登場人物(この物語に登場した人物の一覧) ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
【 1883 / セレスティ・カーニンガム / 男性 / 725歳 / 財閥総帥・占い師・水霊使い 】
NPC / 白
NPC / スノードロップ
NPC / 綾瀬・まあや
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■ ライター通信 ■
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こんにちは、セレスティ・カーニンガム様。いつもありがとうございます。
このたび担当させていただいたライターの草摩一護です。
いかがでしたでしょうか、今回の『千紫万紅』は?
前回とは少し雰囲気を変えていつもシチュノベ当で出させていただいている草摩が大好きなセレスティさんの雰囲気・世界観でやってみました。
長生種ならではのかつての知人の生まれ変わりと関わる物語。
でもそれがちかではなく、その母親というポイントがなんとも天邪鬼な僕らしいですが。^^;
今回のこの雰囲気気にいっていただけていたらなーと想います。
そしてクイズ、という字を見てすごく面白かったです。
そうですよね。セレスティさんは姫との触れ合いによってクイズに目覚めたのだから、
そのセレスティさんなら言うに違いない、そんな楽しいプレイングで、
本当に読んでいて楽しかったです。
前のシチュの設定を活かしてもらえたのかな?と考えたらすごく嬉しくなってしまいました。
本当にありがとうございます。セレスティPLさま。^^
またそう言うセレスティさんの雰囲気も本当にいつもながらに素敵だなーと想っていたのですよ。^^
クイズを考えるのも本当に楽しかったです。^^
ちなみにちかのクイズは公園で、○の中に入るのは新です。
熱帯の密林はジャングルジム、砂漠は砂場、南極はペンギンの滑り台、という感じで公園を連想していただければ。
○は新、お札に描かれた人物の名前の一番最初の漢字ですね。^^
すべてにおいて楽しんでいただけていたら本当に幸いでございます。
それでは今回はこの辺で失礼させていただきますね。
今回も本当にありがとうございました。
失礼します。
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