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<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


調査コードネーム:とんでもレストラン
執筆ライター  :階アトリ
調査組織名   :草間興信所
募集予定人数  :1人〜


------<オープニング>--------------------------------------

 外では、雲ひとつない空のてっぺんで、太陽がギラギラ輝いている。先日、梅雨明け宣言が出たばかりだ。
 冷たい水を飲み干して、草間武彦は息を吐いた。灼熱の屋外と違い、ファミレスの中は快適に冷房が効いている。雑用で事務所を出たらちょうど正午になったので、帰り道の途中にあるこのファミレスに、これ幸いと立ち寄ったのだ。
 季節限定のトマトと茄子のパスタを頼んで、ウェイトレスを見送った後、ふと、草間は奇妙なことに気がついた。
 客が少ないのだ。店内を見回すと、座席が半分も埋まっていない。通りに面しているし、有名チェーンの店であるし、店舗もまだ新しい。流行らない理由は見当たらないというのに、昼食時でこの空席は異様だ。
 頼んだメニューが届き、それを口に入れた時、その理由がわかった。
「ぶほっ」
 聞き苦しい音を立てて、草間は麺を吹いた。マズイ。どころの騒ぎではなかった。あまりに刺激的な味に咳き込んでいると、
「申し訳ありません!」
 水差しを持って、中年の男が飛んできた。名札を見ると、店長の肩書きがついている。
「あの、おかしな味が?」
「……ええ、まあ」
 水で喉を宥めながら、草間は涙目で頷いた。 
「お取替え致しますので」
 深々と頭を下げ、店長は皿を引いた。何故か、処置に慣れている様子を草間が訝しんでいると、立ち去りぎわ、小さく呟くのが聞こえた。まただ――。
「また?」
 首を傾げたとき、鈴を転がすような笑い声がした気がして、草間はそちらを見た。
 誰も居ないテーブルの上で、タバスコの瓶がカタカタと揺れている。その隣に、白い影があった。半分透けているその影は、小さな人の形をしていて、体の丈と同じくらいの瓶を、まるでダンスのパートナーのように抱えて、ステップを踏んでいる。その背中には、光る粉を撒き散らす羽がついていた。
 いわゆる、妖精の姿をしている。
 草間が見ているのに気が付くと、妖精はタバスコを放り出して身を翻した。泡が弾けるように一瞬で消えてしまった後に、くすくす、笑い声だけが耳を擽った。
 目を凝らしてみると、店の中のあちこちで小さな光が瞬いている。その下で、時折上がる客の悲鳴と、店員の謝罪。奇妙な出来事に遭っても冷静でいられるほど、慣れっこになっている自分が嫌だった。
 どうやら、さっきの激辛パスタはあの連中の仕業だ。一体何匹居るのか――。よほど勘が良くなければ気配さえ感じられないだろうから、店側も客も、わけがわからないだろう。
 これは立派な怪奇事件だ。
「…………」
 今度こそまともな味がする、出し直された皿を腕で囲ってガードして食べながら、草間はあまり良くない予感を覚えていた。


 そして、予感は数日後的中する。
「すっかり、怪奇事件専門相談所ですね、うち」
 舞い込んできた依頼の内容を文書に整理しながら、零が苦笑した。
 先ほど、草間にとって見覚えのある顔が事務所にやってきた。噂を聞いてきたという依頼主は、草間興信所近くのファミリーレストランの店長。ここしばらく、ちょっと目を離した隙に、出来上がった料理に大量のタバスコや塩や砂糖を放り込まれ、酷い味にされてしまうと事件が多発している。誰も犯人の姿を見たことがなく、人間技とは思えない(草間は黙っていたが、実際犯人は人間ではない)。依頼主は原因の解明と、事件の解決を希望している。
 紫煙混じりの溜息を吐いて、草間は煙草を揉み消した。
「……一応、ここは普通の興信所のはずなんだがなぁ……」
 しかし、事件を解決できそうな人物に、心当たりはある。また一つ怪奇事件解決の実績がついてしまうことを内心で嘆きながら、草間はその人物を呼び出すべく、受話器を取った。


------<グッドタイミング>------------------------------

 誘われて、みなもは学校帰りにその店に立ち寄った。入った瞬間、奇妙な気配に、あれ、と思う。
「なんか空いてるね」
「待たなくていいじゃん。ラッキー」
 一緒に来た友人達は呑気なものだが、みなもは眉を寄せて目を凝らした。悪い気配ではないが、何か……小さなものが、店の中を飛び回っているようなのだ。姿は見えないが、後に残る、きらきら光る軌跡ははっきりと見えた。
「何……?」
 呟いたみなもの頬を、薄い羽の感触が、からかうように掠めてゆく。一瞬だけ、気配がわかった。
「……妖精さん??」
 きょろきょろと店内を見回して、みなもは隅の席に目を止めた。見知った女性の姿を見つけたのだ。艶やかな黒髪に、切れ長の目。スーツの胸元は豊かで、実はみなもはちょっぴりそれが羨ましい――シュライン・エマ。草間興信所で知り合った年上の友人だ。一緒に調査依頼を受けたこともある。
「みなもちゃん?」
 むこうもみなもに気付いた。シュラインは店員らしき男性と、テーブルを挟んで向き合っている。彼女がここにいる理由は、きっとこの奇妙な気配に関係があるだろう。
「みんなゴメン。ちょっと用ができちゃった」
 手招かれ、みなもは友人達に断わってシュラインの居る席に向かった。
「ごめんなさいね、お友達と一緒の時に」
「いえ。どうせ後で興信所のほうに寄るつもりでしたし」
 お手伝いできますか? 問うたみなもに、シュラインは形の良い唇に笑みを浮かべて頷いた。
「助かるわ。一人じゃ難しいと思っていたところなの」
 シュラインと向かい合って座っているのは、依頼主で店長だと紹介されて、みなもはぺこりとお辞儀をした。

------<調査開始>------------------------------

 アンダースカートと、スタンドカラーのシャツはクリーム色。その上に着る、スモーキーピンクのエプロンドレスは、機能的な形ながらも、肩紐部分にはさりげなくフリルがついていいる。長い髪は、エプロンとおそろいのピンクのリボンで纏める決まりだ。
 件のファミレスのウェイトレス服は、可愛らしいと評判が高い。もちろん、みなもだって密かに気になっていた。
 実際着てみると、大きく開いたエプロンドレスの襟ぐりが胸を強調するのが少々恥ずかしかったが、やはり可愛い。
(いや、けしてこの制服が着てみたかったからというだけでは)
 控え室で着替え終わったみなもは、ふるふると頭を振って雑念を払った。
 昨日、シュラインと依頼主の話を聞いて、みなもは現場にアルバイトとして店に入ることを申し出た。
 実害を沈静しつつ、可能ならば特殊能力を使用してピクシーを捕縛する、というのがみなもの役割だ。シュラインはその間、具体的な対策を別行動で準備することになっている。
 みなもは、エプロンのポケットに上から触れて、そこに小さなガラス瓶の感触があるのを確かめた。瓶の中身は、家から用意してきた霊水だ。妖精なら、物理干渉が無効になるかもしれないが、霊的な力を帯びた水ならば大丈夫だろう。
 ポケットにはそれともう一つ、シュラインから渡されたものが入っていた。四つ葉のクローバーである。事務所で、何かの本の間に挟んで押し花にしてあったのを、わざわざラミネート加工してくれた。姿を消している妖精を見つけるのに役立つそうだ。 
 先輩アルバイトから、ウェイトレスとしての仕事内容も大体聞いたし、準備は万端。よし、と拳を作り、みなもは店に出た。そして、目を丸くした。
「うわ、ぁ…………!」
 昨日は気配しかわからなかったものが、はっきりと目に見えた。背中に光る羽のある、小さな人影が飛び交っている。これがクローバーの効果だろう。驚いたのはその数だ。数え切れないと言ったら大袈裟かもしれないが、どう少なく見積っても10より多い。
「あ……、コラ!」
 すれ違ったウェイトレスを見ると、運んでいる途中のピザに何かしようと隙を覗っている一匹がいる。小さな両腕いっぱいに、塩か砂糖らしい白い粉を抱えていた。みなもは早速霊水の蓋を開けた。
 瓶を傾け、流れ出てきた水に指を浸す。水を操作する時の、慣れた感覚。冷たい雫の隅々にまで、自分の神経が通っていくような。
 重力に逆らい、水はみなもの指に絡みついて留まる。ひゅっ、と小さく風を切る音をさせて、みなもはその指を振った。水が空中に踊る。
 足を取られ、ピクシーがつんのめった。ピザは無事、テーブルへと運ばれてゆく。みなもは胸を撫で下ろした。
「駄目ですよ、イタズラしちゃ」
 ちょうど目の高さにいるピクシーに、みなもは子供にメッとやるような口調で言った。足首に巻きついた水の糸を、ピクシーは不思議そうに見ている。
 しばらく、逃れようともがいていたが、やがて、水を操っているのがみなもだとわかったのだろう。ピクシーは両腕一杯に抱えていた白い粉を、みなもの顔に投げ付けてきた。
「きゃっ!」
 目に入りそうになって、思わずひるんだ隙に、逃げられてしまう。口の中に入った粉は甘かった。
「お砂糖……」
 飛び去り際、振り向いて舌を出された。
 妖精のイタズラ好きは古来からだという。力も弱く、悪意のある存在ではないことは気配でもわかったので、できるだけ傷つけないように解決しようという意見は、シュラインと一致していた。しかし、力ずくで追い払うよりも、実はそっちの方が実はずっと難しい。
 服にかかった砂糖を払って、みなもは溜息を吐いた。とりあえず、シュラインの準備が終わるまでに、見つけた端から捕縛していくしかないだろう。みなもは覚悟を決めた。 
 
------<対決>------------------------------

 一日目以降の成果は0だった。
 みなもが、彼らを捕まえるつもりでいることを、知られてしまったのが、まず悪かった。
 警戒して、みなもがいるときは物陰に隠れるようになってしまったのだ。もともと、小さくて素早いピクシーである。視界の端で羽が光った、と思ったらもういない。その繰り返しだった。
 それに、ピクシーが見えているのがみなも一人だという都合上、イタズラされずに料理を運べるのもみなもだけだった。自然とみなもに任される皿が増え、忙しくなり――結局、二日目は普通のウェイトレスさんをしただけになってしまい――。
 三日目である。
「今日こそは、捕まえます!」
 多少は被害が治まったことで顔色が良くなった店長に、みなもは宣言して店に出た。
 ひそひそこそこそ、ピクシーたちは隠れながらみなもを覗っているのがわかった。
 しかし、基本的に好奇心の強い種族なのだろう。遠巻きにしている者が多いが、みなもの死角をついて、すぐ近くをうろつく者が中にはいる。
 後ろに気配を感じて振り向くと、居なくなるといった調子だ。
 今も、背後に居る。みなもは水の入ったグラスを乗せた丸盆を席に運ぶ途中だった。
(要するに、逃げられる前に、動けなくしてしまったらいいんだわ)
 霊水は昨日切らしてしまった。代りになる水を作らなければならない。何食わぬ顔で足を止め、みなもは胸の名札を外した。安全ピンの針で、指先に傷を作る。流れ出た血を、コップの水に一滴、落とした。
 赤い雫が、透明な水の中に拡散してゆく。つい、とみなもが指で招くような仕草をすると、コップの水面が波立った。
「行って!」
 振り返らず、みなもは背後の気配に向かって水の塊を飛ばした。いや、途中で塊ではなくなった。空中に広がったのは、水の網だった。
 ピクシーが飛び去って避けるよりも、網が広がる速度のほうが速かった。キャァッ、と甲高い悲鳴が上がった。
「すみません、草間興信所にお電話してください! 捕まえました、って!」
 みなもの声で奥から出てきた店長が、慌ててポケットから携帯を出した。
 テーブルの上に、一匹のピクシーが捕えられていた。羽に、細い腕に、水が絡み付いている。もがいている……というよりは、水の網の不思議な感触を楽しむように、手足をばたつかせていた。まるで水遊びをしている子供だ。
「……さて、と」
 捕えたピクシーの前に、みなもはしゃがみ込んだ。心配しているのか、それとも単に興味を引かれているだけなのか、数匹のピクシーたちが寄ってきた。
 店長及び他のウェイトレスたちは、固唾を飲んでみなもを見守っていた。ピクシーたちに姿を消す気がなくなったのか、最早店長たちにも、テーブルの上の妖精は目に見えているようだ。
「ここは、おいしいものを食べる場所なんです。だから、ピザにお砂糖をかけたり、ジュースに胡椒を入れたりしちゃダメなんですよ。わかりますか?」
 諭す口調でみなもは言ったが、網の中のピクシーは首を傾げるばかりだ。意味が通じていないのだろうか。
「ここじゃなきゃダメですか? 賑やかな場所が好きなら、神聖都学園なんかどうでしょう」
 噂では、あの学園には怪しい現象てんこもりだと聞く。あそこなら、ちょっと妖精が増えたくらい、どうってことないのではないだろうか? ふと思いついて提案してみたが、やはりピクシーは口を開かなかった。
「ピクシーさんたち、答えてくれませんか? どうしてイタズラばっかりするんですか?」
 目線を合わせ、みなもは更に問い掛ける。答えはない。透けた羽から光る粉が散るだけだ。
「お疲れ様、みなもちゃん」
 背後から声をかけられて、みなもは振り向いた。そこに立っていたのはシュラインだった。連絡を受けてすぐ来てくれたようだ。みなもは心細くなりかけていた胸を撫で下ろした。
「シュラインさんこそ、お疲れ様です。あの、お話してみようと思ったんですけど、さっきからこのコたち何も言ってくれなくて」
 新たにやってきたシュラインを、ピクシーたちは不思議そうに首を傾げて見上げた。
「あなたたち、悪気はないみたいだけど、イタズラをやめてもらえないかしら? でないと、このお店が潰れてしまうの」
 シュラインにも、ピクシーたちはやはり答えない。少し考えた後、シュラインは同じ内容を英語で繰り返した。
「あ。そうか。外国のコたちなんですね」
 みなもは胸の前で手を打った。もともとピクシーはヨーロッパ生まれのはずだ。そういえばシュラインから、彼らは店員の一人のイギリス土産にくっついて来たらしいと聞いていた。
 が、やはり答えはない。
 くすくす、と水の網の中のピクシーが笑った。くすくす、くすくす、その笑いが他のピクシーたちにも伝播してゆく。小さな唇から次々に、甲高い声が上がった。
「ピクシー、にほんごワカルーヨ」
「キャハハ! ピクシー、おぼエタ」
「ピクシー、あたまイーイ!」
 一同がっくり、である。
「ネエネエ、ピクシー、えろイ?」
「えろイ?」
 人間たちをよそに、ピクシーたちはくるくると踊っている。日本語を覚えたといいつつ、まだ少々怪しいようだ。
「……ええ。偉いわね、偉い」
 顔の近くを飛び回られて、シュラインの頬を羽が掠めた。みなもは脱力のあまり、机につっ臥している。
「偉いから、教えてくれないかしら? あなたたち、ここが気に入っているの?」
 気を取り直して、シュラインは訊ねた。歌うように、ピクシーたちは答える。
「ココ、すずシイ」
「ココ、たのシイ」
 気に入っている、ということだろう。みなもも気を取り直して、問いを重ねた。
「じゃあ、どうして、お客さんのお皿に勝手に調味料を入れちゃうんですか?」
「ピクシー、あじツケ」 
「シゲキテキ!」
「ニンゲン、ビックリ!」
「ピクシー、ゴキゲン!」
 くすくすけらけら、まだ姿を隠しているピクシーたちの笑い声があちこちから聞こえてきた。この上もなく、楽しそうだ。伝承の通り、根っからの悪戯者らしい。
 シュラインは無言で、紙袋から小さなドレスを一着取り出した。
「!」
 反応は顕著だった。ピクシーたちの視線がシュラインの手元に釘付けになる。
「フク!」
「クレルノ?」
「ネエネエ、クレルノ?」
「ソレ、チョウダイ!」
「順番に、好きなのを一着ずつどうぞ」
 シュラインは机の上に紙袋をひっくり返した。どっさりと出てきたのは、様々な色柄のドレスだった。
 シュラインの言っていた「準備」とは、これのことだったのだ。そういえば、事務所の応接机の上が賑やかな様相を呈していたと、みなもは思い出した。
 わぁっ、と店中から歓声が上がった。押し寄せてくる。
 目を丸くするみなもの前で、次々と小さな洋服が消えていった。テーブルの上は、まるでバーゲンのワゴンセールのようだ。みなもの網に捕らわれている一匹が、精一杯腕を伸ばしてもがいている。気付いて解放してやると、群れの中に飛び込んでいった。
「ピクシー、カワイイ?」
「ピクシー、カワイイ!」
「ピクシー、ゴキゲン?」
「チョーゴキゲン!」
 しばらく、店内は大騒ぎだった。中空で光の粒を撒き散らしながら、色とりどりの洋服を着たピクシーたちが輪になって踊ったのだ。
 店長以下、店員たちはぽかんと口を開いてその光景を見上げていた。わずかにいた客たちは、店のアトラクションか何かだと思ったようで、やんやの拍手。
 やがて、光の輪だけを残して、ピクシーたちはどこかに消えてしまった。

------<後日談>------------------------------

 翌日、アフターケアに訪れたみなもとシュラインに、店長は機嫌よくデザートを振舞ってくれた。
「じゃあ、あのコたち、妖精の世界のお友達にお洋服を見せびらかしに行ったんですね」
 パフェのプリンをスプーンで掬いながら、みなもが言った。
「ええ、多分ね。自慢し飽きた頃に、またこっちに戻ってくるんじゃないかしら」
 同じくスプーンで、白玉入り宇治金時のカキ氷を崩しながら、シュラインが言った。
「戻ってくるんですか?」
「イギリスに帰るんじゃないかと思うわ。結局、彼らはお土産にくっついて日本に来ただけだから」
「その時は、イギリスの方の誰かが、また人数分のお洋服を作ってあげるんでしょうね」
 みなもはプリンを口に入れて、幸せそうに目を細くした。甘い。
 頭上には、まだピクシーたちのダンスの軌跡がきらきらと光っている。妖精の輪――それだけが彼らの名残だ。昨日のショー(?)が話題になったのかどうかわからないが、店内はそこそこ込み合っている。平和だ。やがてあの光の輪が消える頃には、誰もがこの店にピクシーが居たことなど忘れてしまうだろう。
 そして多分、もう東京に彼らが現れることはない。と思ったが、ふと、みなもはあることを思い出した。
「あの。そう言えばあたし、賑やかなところが好きなのなら、神聖都学園に行ってみたらどうかって……」
「言ったの?」
「言っちゃいました」
 もし、彼らがそれを憶えていて、なおかつ興味を持っていたとしたら。二人、スプーンを止めて、顔を見合わせる。
「…………」
「…………」
 気まずい沈黙の末、パフェと氷が溶けてしまう前に、シュラインが口を開いた。
「だ、大丈夫よきっと。あそこなら、ピクシーがちょっと増えたところで」
「そ、そうですね。悪いコたちじゃなかったですし、ね」
 シュラインの手元に残った服は10着。作ったのは25着だそうで、引き算すると、彼らは15匹居たことになる。……ちょっと、だろうか。少々引きつった笑いを交わし合って、二人は再びデザートに向き合った。
 労働への報酬は、疲労の残った体に沁みるように甘かった。



                              END

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■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
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【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】

【0086 / シュライン・エマ(しゅらいん・えま) / 女性 / 26歳 /翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1252 / 海原・みなも (うなばら・みなも) / 女性 / 13歳 / 中学生】

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■         ライター通信          ■
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 お世話になっております、こんにちは。階アトリです。
 少々お時間頂いてしまい、申し訳有りませんでした。
 今回、前半は完全に個別の文章になっております。お二方の作品に入った情報を全てつなげると、一つの物語になるように仕上げました。お時間があるようでしたら、両方にお目通しいただけますと嬉しいです。

 ウェイトレスさんの服は、某ア○ミラ系を想定しました。みなもさんの能力についても少し描写させていただきましたが、何かカンチガイしていましたら申し訳ありません;;

 無駄に描写が多く、ゲームノベルとしてはどうかという出来だと思います。無駄を楽しんでいただければ良いのですが、ハナハダ不安です。もっとシンプルなほうが良い、など、ご意見ご感想頂けますと幸いです……。
 
 では、またお会いする機会がありますことを。
 いよいよ暑さも本番ですので、お気をつけ下さいませ。
 ご参加、誠にありがとうございました!