コミュニティトップへ
高峰心霊学研究所トップへ 最新レポート クリエーター別で見る 商品別一覧 ゲームノベル・ゲームコミックを見る 前のページへ

<東京怪談ウェブゲーム 草間興信所>


聖家族



オープニング




小さな掌が、大事にくるんでいたたくさんの小銭達を机の上にそっと置いて、不安げに揺れる目で見上げられながら「足りませんか?」と聞かれた瞬間、零は耐えきれず目頭をハンカチで抑えた。
「おこづかいと、お年玉の残りと、あと、お手伝いした時にもらったお駄賃も一緒に持って来たんです」
武彦は小さな依頼人に、いつもの少し憮然とした顔つきで「足りないね」とにべもなく答える。
「大体、ウチは興信所であって、医者ではない。 無理だね」
冷たい言葉。
その言葉に、武彦の前に座る、坊主頭の子供の目からポタポタと涙が零れ落ちた。
「お…お、お願いします。 ば……ばぁちゃん…ずっと、俺の事、一人で育ててくれたから……、俺…どうしたら……いいか…」
そのまま、グシグシと泣き崩れる姿に、零は手を伸ばし、その小さな頭を胸に抱え込む。
「そうよね。 お婆ちゃんいなくなったら、独りぼっちになっちゃうものね……」
依頼に来たこの子の名前は、健司。
まだ、小学生だという。
両親が早くに死に別れ、祖母の手によって育てられたそうだ。
だが、その祖母も、かなりの高齢でこの夏、とうとう倒れてしまったらしい。
その間、健司は一人で家の中の事を切り盛りし、祖母の世話をし、学校にも通った。
だが、そんな健司の懸命な看病にも関わらず、医者の話では、祖母はこの夏一杯の命と考えた方が良いらしい。
「お、お婆ちゃんの事助けて下さい…。 何でもします。 お、俺、何でも…何でもします…」
彼は、この興信所が、不思議な事件ばかりを解決してきているという噂を聞き、藁をも掴む思いで尋ねてきた。
「お婆ちゃんの命…助けて下さい」
しかし、武彦は首を振り、諭すような調子で言う。
「決められた命の長さを、人の手では左右できない。 例え出来てもしてはならない。 お前の婆ちゃんは、立派に生きて、やっとお役ご免の時がきたんだ。 お前は、今、婆ちゃんが生きてる内に、もう一人で立派に生きてけるって見せて、安心してあの世へ行かせてやらなきゃ駄目だ。 有りもしない、命を永らえる方法を探すより、そっちの方がずっと大事なんだ」
武彦の言葉に、健司は首をブンブンと振る。
「ひ……一人で、なんて、無理です。 だって、だって、俺、ずっと婆ちゃんと一緒に……一緒に……」
そんな健司を見て、零は、沈痛な面もちで口を開く。
「一人でなんて、無理よね。 一人は、寂しいものね。 でもね、兄さんの言う通り、無理なの。 お婆ちゃんを助ける事はね、どうしても無理なの」
その言葉に、零と武彦、交互に視線を送った健司は、「う……うぅ…」と嗚咽を漏らしながら立ち上がり「分かったよ! もう、頼まないよ!」と叫ぶと興信所から走り出ていった。
零は、その背中に「あ!」と声を掛けて手を伸ばす。
そして項垂れると、「…どうしよう」と呟いた。
そんな零に、見透かすような視線を送りながら武彦は口を開く。
「あーあー、困ったなぁ」
「え?」
驚いたように顔を上げる零。
「あいつ、金置いてっちゃったな」
そう言いながら、ヒラヒラと一枚の紙を見せる。
「これ、健司が書いてくれた連絡先と住所。 んで、忘れ物の金」
「……え?」
「届けてくれるか?」
そう首を傾げられて、零は勢い良く頷く。
すると武彦は、少し笑って、「ホイ」と紙を渡してきた。
健司の家は、下町にある、古く、今にも倒れそうな姿をしていた。
零が、そっと中を覗き込めば、開け放した畳の部屋は、荒れ放題の様相を呈している。
どれ程頑張ろうとも、小学生一人では手入れが怠ってしまうに違いない。
祖母の世話だって、大変な筈だ。
ご飯はどうしているのだろう?
そう考え出すと、もう、駄目だった。
零は、トントンとドアをノックしながら決意する。
「お節介だって言われようと、私、この一夏、この家の家事を手伝ってあげよう」と。




本編



「無伴奏チェロ組曲」
J.S.バッハ作曲の、言わずと知れた、すべてのチェロ奏者のためのバイブル的な名曲。
初瀬日和は、全六曲からなる組曲のクーラントを、レッスンの為に弾いていた。
長調の明るい調べを、奏でながら、初瀬の意識はゆっくりと音楽と同一化していく。
柔らかな波のような、低く暖かな調べ。
自分の身体が、音楽の中に溶けていく感覚に身を委ねようとした時だった。


明るい笑顔。
水浴びをする、子供達。
その中で一人、全開の笑顔を浮かべながらも、痩せ細った裸体を晒す少年の姿が思い浮かぶ。


健司君…。

お婆ちゃんが倒れてから、自分のご飯の事は二の次だったのよね……。


キッ…。


その瞬間意識が何者かに引っ掻かれたかのように硬直し、初瀬は指を止めた。
驚いたように、教師が此方を見つめ「どうしました?」と問うてくる。
初瀬は、そんな自分に驚き、慌てて首を振ると「申し訳ありません」と詫びて、再び演奏に意識を集中させた。
しかし、どうしても、先程浮かんだ少年の浮いたあばら骨の形が初瀬の意識から離れる事無く、その日のレッスン中で再び初瀬が音楽と溶け合う事はなかった。


「駄目だなぁ…。 私…」
落ち込みながら、初瀬は下を向いて歩く。
レッスン中に、脳裏に蘇り、初瀬の指を止めてしまった光景。
それは先日、興信所にて話を聞き、少しでも零の手伝いになればと、健司の家を訪ねた時に見掛けた、健司と健司の遊び相手になっている、子供達との水浴び風景だった。
健司の家は、大層古く、庭の裏手には井戸まである。
その井戸を囲むようにして、健司と健司とほぼ同い年で大人びた表情をした少女、飛鷹いずみ、そして都内にある鬼丸精神病院の院長の養女、鬼丸鵺が水を掛け合って遊んでいた。
他にも、彫りの深い端正な顔立ちをした男性シオン・レ・ハイや、初瀬の恋人羽角悠宇が鵺の用意した水鉄砲などで撃たれながら追いかけ回されており、それ自体はとても微笑ましい風景だったのだが、今まで、とりたてて不自由のない生活を送ってきた初瀬は、健司の体つきを見て、自分で考えている以上の衝撃を受けたらしい。


チリンチリンと、涼やかな風鈴の音が、初瀬の耳をくすぐった。
ふと、音のする方向を見れば、昔懐かしい駄菓子屋がある。
表には、アイスの入った冷却ケースがブンブン音を立てていて、初瀬は自分の額に浮き出た汗を拭うと「みんなに、アイス買ってってあげようかな」
と、呟いた。


どれだけ人がいるか分からないから、多めにアイスを選んで詰めたビニール袋を下げて歩く。
重い。
調子に乗って買いすぎたかも知れない。
「うー…、でも、ほら、残ったら、健司君がおやつにまた、食べてくれれば良いから…」と思い直すと、「うんしょ」と小さく呟きながら、アイスが溶けないよう道を急いだ。


家に着き、まず、冷蔵庫にアイスを入れる。
何日か通って、殆ど家の中の構造を把握していた初瀬は、迷う事無く、健司の祖母の寝所へと挨拶に向かった。
「お婆ちゃん。 こんにちわ」
そう言うと、布団の中にいた、老婆がキッと、初瀬を睨み「あたしの名前はお婆ちゃんじゃなくて、志之。 言っただろ? 婆ちゃん呼ばわりは自分が老けた事を思い知らせれるから、ヤだってさ」と、言ってくる。
初瀬は「あ、そうだった。 ごめんなさい、志之さん」と、言い直すと、「どう? 今日は、調子、悪くない? 痛いトコ、ないですか?」と問い掛けた。
これは、初瀬が来た時の恒例行事になっていて、志之が「大丈夫だよ。 そんな事より、二階の物置が汚れてんのが気になってね、あんた悪いけど…」という風に、用事を言いつけて貰うと、安心して初瀬は家事に専念できるのである。
今日も今日とて「零が、一人で頑張ってるから、掃除手伝ってやんなよ」と言われ、笑顔で頷くと、立ち上がり、部屋を去り駆けて、ふと足を止める。
「あ、アイス買ってきたから、後で食べましょうね?」
そう、思い出したように言うと、初瀬は零を探して、志之の寝所を後にした。


暫く零と二人で掃除に励んだ後、鬼丸鵺の家庭教師兼婚約者であるという魏幇禍の作った絶品中華料理で昼食を済ませ(この時不思議だったのは、何故か作った張本人が、諸理由により一緒に食べられなかったという事である。 折角美味しかったので、御礼を言いたかったのにと初瀬は少しがっかりした)午後からは、毎日泊まり込んで志之や健司の世話をしているという、今時珍しい位清い心を持った儚げな美少女、暁水命と、二人並んで、皿を洗いつつ、今晩の食事の相談を始める。
初瀬は、こうやって、レッスンの合間を縫って来ては、食事の用意など家事全般の手伝いを行っていた。
エマが、得意の里芋の煮っ転がしを作ってくれると言っており、既にメニューの材料は鵺に頼んでおいてある。
水命も、家事能力には長けているらしく、初瀬は志之に聞いた、大好物でもあり、健司の母が大得意だった茶碗蒸しとキュウリの酢の物。 それに、蛸飯を作ろうと二人で決めていた。
皿洗いの後は、洗濯物を取り入れて畳まねばならない。
夏だし、泊まり込みをしている人間の分のシャツなどもあって、庭の物干し竿に干してある洗濯物の量はかなりの物があった。
水命と二人、黙々と畳み続ける。
時折、お互いの話などしつつ、蝉の声を聞きながら、作業をしていると、とても心が落ち着く。
今日のレッスン帰りの鬱々とした気持ちは嘘のように晴れていた。
暫く経って、あらかた洗濯物が畳み終わる頃、「たっだいまぁ!」という、明るい声が、玄関から響いてきた。
鵺の声だ。
今日は、健司と一緒に今晩の夕食のおつかいを頼んであった。
昼食を外で食べてきたせいもあるだろう、お使いというにはなかなかの長旅だったが、だからこそ疲れているに違いない。
「健司君達帰ってきたみたいですね。 じゃ、そろそろアイスで休憩でもしましょうか?」
そう微笑んで立ち上がる初瀬。
水命も頷き「外、暑そうですしね。 シオンさんや、海月さん達もお呼びしましょう」と、答えた。


古い家なので、台所と畳の居間が襖と段差だけで区切られており、開け放って風を通しがてら皆で集まれるようにする。
家自体は広く、部屋数も二人で住むには充分すぎる程ある家なので、泊まり込みで来てくれている人達も銘々の部屋があてがわれていた。
と、いっても、水命は心配なので志之の隣で布団を敷いて寝ているし、時々泊まり込みで手伝いに来てくれている、飛鷹いずみや鵺等は泊まりにきた時は健司と一緒に並んで寝ていて、それぞれの部屋などあってなきが如しだった。
初瀬は、アイスの入った袋を下げて一人一人に、アイスを選ばせる。
「んーと、んーーーと…」
と、優柔不断な様子で悩む健司の肩を叩き、いずみが「ほら、早くしないと、他の人待ってるじゃない。 それに日和さんも重いでしょ?」と大人っぽい口調で注意する。
茶色の日に透けて光る髪が綺麗で、大きな少し吊り上がり気味の目も、いずみのチャームポイントといえるだろう。
「大丈夫よ。 健司君、焦んなくてもね? あと、いずみちゃんは、どれがいいかな?」
そう初瀬が問えば「コレ、頂きます」とクレープアイスを引っぱり出し「ご馳走になります」と頭を下げる。
大人でも礼儀がなってない人は多いのに、感心だなぁと感じれば、「じゃ、コレ!」そう言ってチョコレート味のアイスを選んだ健司。
ニカッとした笑みで「ありがとうっ!」と言われると、これはこれで、子供らしくて可愛いなと感じ、「いえいえ、どーいたしまして」と笑顔で答えた。


次に、銀髪の長髪を一括りに結び、頭にタオルを巻いた無愛想な青年、諏訪海月が氷小豆のカップアイスを選び、鵺、シオン、水命と巡って、最後に興信所の事務員兼武彦の公然の恋人、シュライン・エマにアイスを選んで貰う
「どれにします?」
そう言いながらアイス達が入ったビニール袋を広げて見せれば「ありがと」と、エマが御礼を言いつつ「じゃ、私はこの、苺アイス貰うね。 それから、こっちのバニラアイスいいかな?」と首を傾げた。
(二個も食べるのかな?)と、内心初瀬は驚き、「いいですけど、二個も食べるとお腹壊しますよ?」と、心から心配して言う。
エマは苦笑を浮かべると、「や。 志之さんにもね、暑いから、こういうの美味しいんじゃないかなと思って。 バニラだったら、食べやすいだろうし」と言った。
その言葉に、自分の勘違いを恥ずかしく思う初瀬。
(そうじゃない。 私、志之さんに、アイス食べましょうねって言っておいて…)
そう落ち込んでいると、水命が「志之さんにアイスお給仕するんでしたら、私もお手伝いします」と言いながら立ち上がった。
初瀬は気を取り直すとニコリと笑って「そうですね。 冷たいもの少しでも召し上がりになれば、少しは涼しくなれますから」と言い、ゴソゴソとバニラのカップアイスをエマに差し出す。
エマと水命は台所からスプーンを借りると、志之のいる部屋へと向かっっていった。


「おりょりょ? どうしたの、初瀬さん。 空気がどよーんってなっちゃってるケド?」
鬼丸鵺が、顔を覗き込んで問うてくる。
現在中学一年生だという銀髪、赤目の美少女は、チョコミントアイスを舐めながら、首を傾げた。
思わず、「うえーん」と鵺に泣きついてみる初瀬。
「もう、今日は、色々失敗ばっかりしてるのよねぇ。 ほんっと、私、駄目だなぁ」と愚痴れば、「キャハハッ!」と鵺が明るい笑い声をあげて、「アイスは美味しいし、天気は良いし、みんなで一緒にいられるし、失敗なんて、大した事ないっていうか、むしろ、失敗してない!って感じじゃない? ほら、初瀬さんもアイス食べる、食べるー!」と、初瀬の唇に自分のアイスを押し付けてくる。
仕方なく、小さく口を開いて、パクリとチョコミントアイスを頬張れば、冷たく、爽やかな甘さが口に広がって少し気分が軽くなった。
「…ま、そうかな」
初瀬が呟けば、鵺が「そうだよ」と頷く。
何だか、鵺が言うと、どんな問題でも些細なものに思えてきそうな気がして「落ち込んだら、鵺ちゃんに話そうかなぁ」と初瀬はぼんやり考えた。




休憩後、初瀬は水命と並んで野菜の皮を剥いていた。
今夜の茶碗蒸しの具材と、それから酢の物にするキュウリ。
蛸も、鵺に頼んで、水命が行きつけの魚屋でのとびきり新鮮なものを買ってきて貰った。
水を張ったタライにつけてある姿はグロテスクだが、とても良い味である事は確信している。
いつの間にかエマも台所に立って、夕食に出す予定の煮っ転がしに使う里芋の皮を剥き始めた。
「健司君、嫌いな物ないですよね」
そう言いながら、水命が奇麗な手付きで皮を剥いているのを感嘆したようにで眺め、エマも負けず劣らずの手付きで、里芋の面を取る。
「嫌いでも、食べさせなきゃ。 大きくなってから、たくさん偏食のある人ってみっともないわよ? それに、栄養のあるものは、今の時期なんでも食べた方がいいの」
エマの言葉に、水命が頷いた。
「そうですね。 とにかく、お野菜だけは、ちゃんと食べなきゃ。 健司君に聞いたけど、志之さんが倒れてから酷い食生活を送ってたみたいだし、うんと、栄養があるものを食べて貰いたいんです」
初瀬も、二人の言葉に同意する。
「過剰な同情というのは、軽蔑にしかならないとは悟っているんだけど、初めてここに来た日、外で鵺さんやいずみちゃん達と水着で水浴びして遊んでいる時にね、健司君が凄く痩せてる事に気付いたら、なんだか、こう…凄く悲しい気分になっちゃって。 その後、家に帰ってチェロのレッスンをしていても、気になって気になって仕方ないんです。 で、結局、こうやって暇を見付けては通っちゃってるんですけど……」
ペロリと舌を出して、そう言う初瀬に、水命は「でも、初瀬さんが来て下さって本当に助かってます。 零さんも、私も……」と言ってくれれば、エマも「私もね」と笑いかけてくれた。
そんな三人の後ろに、ハタキを持った零がパタパタと現れ、足を止めると、期待に満ちた声で尋ねてくる。
「わ! 今日の夕食はなんですか?」
零の問いに、水命が「今日は、エマさんの絶品煮っ転がしに、私と初瀬さん合作の蛸飯と、茶碗蒸し。 それからキュウリの酢の物です。 お婆さんには、蛸飯の代わりに茶粥を持っていこうかと考えてるんですけど…」答えれば、「きゃぁv」と嬉しげな歓声があがった。
振り向けば、見知らぬ日本美人が、「今日和!」と言いながら、紙袋を掲げて立っていた。
「あら? 凪砂ちゃん?」
知り合いなのか、驚いたようにエマが、女性の名らしきものを呼び、里芋を一旦流しの中へと置くと、凪砂という女性の側に寄る。
「どうしたの? 武彦さんから、ここの事聞いたの?」
エマの問いに、凪砂は頷いた。
「私にとっても他人事じゃないって感じのお話だし、少しでもお手伝い出来ればと思ったんです。 あ、それで、玄関で、零ちゃんに会って…」
その言葉を次いで、零が口を開く。
「で、お土産をお持ちだという事で、とりあえず此方へご案内しました」
「この時期だし、冷蔵庫入れた方が良いかな?って、思いますしね」
そう言いながら、差し出した紙袋の中には、東京銘菓の「ひよこ」と「鳩サブレー」が入っていた。
(あ! ひよこだv)
と、思わず喜んでしまう初瀬。
実は、初瀬、あの、ふわふわの生地の中の、カスタードクリームが大好きだったりするのだ。
凪砂が、嬉しげにその紙袋を机の上に置いた。
「沖縄土産ですv」
凪砂の言葉に、「うあ」と呻くエマ。
純粋に驚く初瀬。
「わぁ! 私、コレ、東京駅でも見掛けた事ありますよー? 凄い! 『ひよこ』や『鳩サブレー』って、沖縄のお菓子だったんですね!」
そう言う水命に、初瀬も何度も頷いて、「私、東京タワーで見ました。 へー、沖縄の銘菓だったなんて知らなかった」と、びっくりする。
零がとどめとばかりに頬を染めながら「恥ずかしい…。 私も、東京のお菓子だと思ってました。 ずっと、こちらでの暮らし、長いのに…」と呟いた。
(駄目だ。 この人達)と言わんばかりに、がくりと項垂れ、「や、まごう事なき東京銘菓だし…」エマは突っ込んだ後、「何故に、沖縄で、ひよこ? そして、鳩サブレー?」と問い掛ける。
(やっぱり、東京のお菓子だったんだ)
と、安堵する初瀬だが、問題は多分、ソコじゃない。
「えー? 美味しいですよ? ひよこ」
凪砂の言葉に、コクコクと微かに同意を示す初瀬。
「あー、うん、美味しいわ。 それは知ってる。 結構美味しい、ひよこは」
エマが、頷けばポンと手を合わせて「だったらいいじゃないですかー」と、凪砂は明るく結論を付けた。
水命も、「良かったぁ。 やっぱり、東京のお菓子でしたね。 ひよこと、鳩サブレー」喜び、初瀬は「うん。 何か、記憶違いだったのかな? って、不安になってたけど合ってたねぇ」と、嬉しげに言う。
零も、ホッと胸を撫で下ろしており、その時点で何か言う事を諦めたらしいエマは、冷蔵庫を指差し、「悪くならないように、ソコ入れといて。 あと、健司君は、庭、健司君のお婆ちゃんの志之さんは、寝室にいるから…」とそこまで言って、手を台所で洗い、「えーと、志之さんとこから最初、挨拶行こう。 この家、広いし、案内するから私も、一緒に行っていい?」と言った。
凪砂は、頷いて「私もエマさんも加えて、お婆さんにお聞きしたい事あったので、どうぞお願いします」と答える。
「あ、じゃあ、里芋、こっちで剥いておきますね?」
そう初瀬が言いうと「頼むわ」と手を合わせ、エマは凪砂と連れだって、家の奥、志之の寝室へと向かっていった。
水命が、そんなエマの先程のテキパキとした指示ぶりに、憧れの視線でその背中を見送ってる。
「格好良いですよね。 大人って感じで…」
うっとりとした口調でそう言う水命に、何度も頷き、同意しながら初瀬も「どうしたら、ああいう大人になれるんでしょう…」呟き、二人顔を見合わせ「「ねー?」」と同意を求め合った。
二人で、そんな穏やかな会話をしている時である。
「あの、スイマセンが…」
そう幼い少女の声が聞こえ、後ろを振り返れば、いずみがチョコンと立っていた。
大きな目を瞬かせ「あの、…花瓶を探してるんですけど、どこら辺にあるかご存知ありませんか?」と、問い掛けてくる。
「花瓶?」
と、首を傾げれば、健司と海月も現れた。
健司の手には赤い奇麗な花が握られている。
あの花を活けたいのか。
「…うわぁあ…。 奇麗な花…。 それ、志之さんに?」
初瀬が問えば、健司が頷く。
「野生の花なんだけど、奇麗だから…。 良いですよね?」
健司の言葉に「きっと、志之さん喜びます」と水命は笑顔で告げ、「ちょっと待って下さいね?」と声を掛けて、パタパタと二階へ走っていった。
程なく、小ぶりな壺を抱えて水命が降りてくる。
「これじゃ、駄目ですか?」
そう問われ、健司がブンブンと首を振り、「ありがとうございます」と礼を言った。
その後、花を活けに行くいずみと健司、それに麦茶を運ぶ為に水命が、志之の寝所へと向かう。

初瀬は一人台所で調理を進め、野菜の皮をむき終えて、タコを捌き始める。
「蛸飯、蛸飯〜♪」
と、鼻歌を歌っていると突然、健司が、バタバタバタっと、足音を立てて台所に走り込んできて、次いで台所に飛び込んできたいずみが健司の腕をハシッと掴んだ。
「お婆ちゃんを怒鳴るって、そんな事していいと思ってるの!」
いずみが、きっぱりとした声で健司にそう叫ぶ。
健司は、首を振ると「うるさい! 何で追っかけてくるんだよ!」と、いずみに叫び返した。
「だって、あなた、あんな風に逃げ出して、それで良いと思ってるの?」
先程より幾分冷静な諭すような声で、いずみが言う。
「私も、あなたの言葉は正しいと思う。 でも、正しい言葉は、正しく伝えなきゃ、相手に届かないのよ?」
初瀬は、何事かと目を見開きながら、話を聞いていたが、とうとう、我慢ならずに、「何があったの?」と問い掛けた。
いずみがようやく此方の存在に気付いたように、パッと視線を向ける。
涙を目に一杯溜めた健司が、恥ずかしげに顔を伏せた。
気まずげに、視線を瞬かせた後、いずみが健司に「言ってもいい?」と問い掛ける。
すると健司はコクンと頷いて「初瀬さんにも聞いて貰った方が良いと思う」と答えた。


健司が、志之の寝所から駆け出してきた訳。
それは、志之が凪砂に聞かれて話し始めた、健司の両親の話が原因だった。

以下、いずみより聞いた志之の話。


志之によれば、健司の両親の名は、聡と恵子と言い、どちらも本当に優しい人だったらしい。
誰にでも分け隔てなく接し、人への親切を惜しまず、両者共に大変働き者だったそうだ。
志之と同居しながらも、志之は嫁の恵子とはとても仲良くできており、この古い家で、それでも慎ましく、絵に描いたように幸福な家庭を築いていたらしい。
しかし、健司が3歳になったばかりの、二人の婚約記念日。
共働きの二人の休日が、丁度重なったものだから、志之は自分が健司の面倒を見るから、羽根を伸ばしておいでと、無理矢理のように遊びに送り出した。
若くに結婚し、家の事や、仕事に励み、遊びらしい、遊びをしていない聡と恵子を不憫に思った志之からのささやかな贈り物だった。
恵子は何度も恐縮し、聡も健司の事を気にしながらも、やはり志之の申し出は嬉しかったのだろう。
二人は連れだって出掛けた。


そして、夕方頃、志之の家に連絡が入る。


母親が目を離した隙に道路に飛び出した、聡の運転する車の前を横切った子供を避ける為、聡は慌ててにハンドルをきって、道路脇の建物に激突し、助手席に座っていた恵子もろとも二人は死亡した。




「志之さんが、自分のせいだって言うんです」
いずみは、そう囁く。
健司が、「違うよね? 婆ちゃんのせいなんかじゃ、ないよね?」と初瀬に問うてきた。
初瀬は、苦しげに目を伏せ、どう言えば良いか分からずに口を噤む。
「婆ちゃんは、いつも俺に謝るんだ。 自分のせいで、俺を一人にしてしまうって…。 何で、そんな事言うんだろうって、俺…俺……」
そのまま俯き、言葉も尻窄みになった健司に、初瀬はそれでも「そうね。 お婆さんは何も悪くないわね」と言う事が出来なかった。


志之が悪いんじゃない。
それは分かる。
痛い程分かる、しかし……。

初瀬は、逡巡しながらも口を開いた。
「お婆ちゃんはね、悪くないって、思うよ。 私だって、それは思います。 でもね、そういう風にお婆ちゃん自身が思ってないというのは、お婆ちゃんがそれだけ、健司君の両親の事が大好きだったという証なんだよ」
初瀬の言葉に、理解出来ないと言う視線を向けてくる二人。
当然だ。
自分だって、何を言っているのかよく分からない。
だが、この二人に今「そうね、お婆ちゃんは悪くないのよ。 ちゃんと、それをお婆ちゃんにも分かって貰いましょ」と告げるのは違うような気がした。
それは途方もなく、違うような気がした。
「…難しいお話になるけど、いいかな?」
初瀬の問いに、揃って頷く二人。
初瀬は、考え、考えしながら口を開く。
「…人と、人との間には、仲良くなると絆というものが生まれるの。 例えば、それは、友達同士の絆だったり、恋人同士の絆だったり、家族の絆だったり……色々…ね? 勿論、私と健司君の間にも絆はもう出来てるし、健司君といずみちゃんの間にも、いずみちゃんと私の間にも、絆っていうのは出来てると思う。 その絆って言うのは、会う度に、心が暖かくなったり、優しい気持ちになったりして、その度に『ああ、この人と、自分の間には絆があるんだな』って確認できるけど、相手にもう一生会えなくなってしまったら、健司君の御両親みたいに、亡くなってしまわれていたら、絆ってもう消えちゃうのかな? ね? どう思う」
その問いに、フルフルと首を振る二人。
真剣な目で、見つめてくる。
「うん。 そうだね。 私も、そう信じてる。 例え、ずぅぅっっと、相手に会えなくて、一生会えなくて、それでも絆が生まれた人同士っていうのは、例えもう片方の人が、亡くなっても絆があるって、そうやって信じたいよね? それはね、志之さんも一緒なの。 志之さんも、健司君の御両親との間に、まだ、絆があるって信じたいの。 でもね、それは、凄く難しい事。 本当に難しいこと。 だから、お婆ちゃんは、自分のせいで、御両親が死んじゃったって、思うのよ」
健司が混乱した表情で「どうして?」と聞いてくる。
当然の問い掛けに初瀬は優しく答えた。
「自分が悪いって思い続ける事で、お婆ちゃんはずっと、健司君の御両親への気持ちを忘れないでいようとしてるの。 人はね、難しいんだよ。 好きだって気持ちだけでは、立っていられない事があるの。 お婆ちゃんは自分が悪いんだって思う事で、御両親と自分の間に、絆を作っているのよ。 そういうね、悲しい絆もあるの」
いずみも、健司も考え込むような目で、初瀬を見上げ、そして、ポツンと健司が呟いた。
「よく…分かんないや。 だってさ、だってさ、それでも、やっぱり、お婆ちゃんは悪くないって思うもん」
初瀬は小さく微笑み、ポンと健司の頭に手を置く。
「そうね。 よく分かんないね。 私も、志之さん悪くないって思うね」
健司が、小さく困ったように問い掛けてくる。
「俺、どうしたらいいのかな?」
初瀬は、優しく答えた。
「どうもしなくて良いよ。 お婆ちゃんが、自分が悪いと言ったらね、何も言わないであげるのが良いのよ。 『うん。 そうだね』っていうのも『そんな事無いよ』っていうのも、どちらも正解で、どちらも外れだから、健司君は、何もしなくて良いのよ。 でもね、いずみちゃんがさっき言ってたけど、志之さんに怒鳴ったってホント?」
健司が、コクンと頷く。
初瀬は腰に手を当てると「それは駄目。 絶対駄目。 謝ってきなさい」と、怖い顔を作って健司に言う。
健司は、素直に頷くといずみに「一緒に来てくれる?」と怖々問い掛けた。
「しょうがないわねぇ」
と、こまっしゃくれた仕草で頷くいずみ。
二人揃って出ていったのだが、何故かいずみだけが戻ってくる。
そしてぺこんと初瀬に頭を下げると「ありがとうございました」と告げた。
驚く初瀬。
「え? ええ?」
と戸惑えば、
「私、何を言えばいいのか分からなかったんです。 それは、健司に対してだけじゃなく、自分に対しても言葉を持たなかった…だから…」
再び、いずみは頭を下げる。
「有り難う御座いました」
そして、パッと踵を返し、パタパタと走り出ていった。
呆然とする初瀬。
「最近の小学生って……」
そう呻き、それから少し笑う。
ちゃんと、健司が志之と仲直りできたら良いなと、考えながら。




さて、それから数日後。



その日は、レッスンで夜まで埋まっており、スケジュール的には健司の家にいける状況ではなかった。
全ての予定を終え、疲れた体で帰宅し、少し眠る。
そんな初瀬の携帯が、着メロを流したのは夜の7時過ぎ頃だった。
誰だろうと思い、携帯画面を見れば羽角悠宇の名前が出ている。
今日は、悠宇は初瀬の代わりに手伝いに行っているはずで、さては向こうの家に何かあったのかと慌てて電話に出れば呑気な声で「今から、来れるか?」と聞いてきた。
脱力しながらも「えーと、大丈夫だけど、どうして?」と問い掛ける。
すると、「エマさんが、大量に花火買ってきてくれてさ、庭で花火をみんなでやるんだ。 お前、花火好きだろ? 折角だし、来いよ」と言ってくれた。
一気に気分が浮上する初瀬。
「うん。 今すぐ、行く」と、ウキウキした声で答えて、電話を切る。
慌てて着替えようとして、どうせならと、今年の夏買ったばかりの、浴衣に袖を通す事にした。



海月が、一生懸命手入れしてくれたからだろう。
庭は、雑草も目立たず、すこぶる気持ちの良い空間に変身している。
浴衣を着て現れた初瀬に、一瞬絶句した悠宇。
朝顔の柄があしらわれた、可愛らしい浴衣姿に、鼻の頭を少し掻くと「あー、うー、に、似合うんじゃねぇの?」と顔を真っ赤にして告げた。
ヒュルヒュルッと音を立てて、空で咲く、小さめの打ち上げ花火に零や、鵺が歓声をあげている。
家の奥にあったのを外に引っぱり出した、古い木の机に、切り分けられた西瓜が並んでいた。
と、言っても、物凄い勢いで売れたので、残りはあと僅かだ。
幇禍が黒髪銀メッシュの右目に眼帯スーツ姿というすこぶる格好の良い姿であるにも関わらず、鵺と一緒に、花火を振り回してはしゃいでいる。
自分よりも年上の筈なのに、まるで子供のように見えた。
いずみと、健司は何事か言い合いながら、海月が打ち上げる花火を、目を煌めかせて見上げている。
縁側には、志之を寝かせて凪砂、エマと水命にシオンと翼、そして一人の見知らぬ男性が座っていた。
小太りで、少し禿君の、柔和な優しげな雰囲気を身に纏った男性。
初瀬は、誰なのだろうか?と気になりつつも、志之と親しげに話している姿を見て、お友達なのかも知れないと考える。

悠宇と初瀬は並んでしゃがみ、手持ちの花火に日をつけると、シューと炎吐き出す姿を目を細めて楽しんだ。
「奇麗だね」
そう初瀬が呟けば「…だな」と悠宇が短く答え、それから、「……あのさ、縁側にいる優しそうなオッサンいるだろ?」と問うてくる。
初瀬は、内心気になっていたので「うん。 今日、初めてお見かけするんだけど、どなたか知ってる?」と問い掛ければ、悠宇は、「今日な凪砂さんに聞いたんだけど、あの人健司の里親候補らしい」と答えた。


里親?!


突然の台詞に目を見開く、初瀬。
「さ…とおやって……え?」
と呟けば「俺も驚いたっつうの」と、悠宇はぶっきらぼうに答える。
「ど、どういう事なの?」
健司のこれからに深く関わってくる事だけに、問いつめるような口調になってしまっている事を自覚しながら、初瀬は強く悠宇に聞いた。


「つまり、凪砂曰わく、新庄のおっさんは……って、あのおっさんの事だけどよ。 おっさんは家族になりたいんだとさ。 健司の。 そして、志之さんの…」
そう口火を切った悠宇。
手元の花火が、フッと燃え尽きた。。


「まず、始まりは、凪砂が草間に対し、健司の親族関係や、里親になってくれそうな人の調査、操作依頼を行った事だった。 健司君が、志之さんの死後誰に引き取られるかというのは、重大な問題だし、放ってはおけなかったんだろう。 後に、その依頼を幇禍が手伝ってくれるという事になり、幇禍は、有力なネットワークの持ち主と知り合いだとかで、そういうツテも行使しつつ、探してくれたのだが、やはり、健司には親戚と呼べる人はおらず、志之さん自体、複雑な事情があって、完全に身寄りのない身の上の方だったらしい。 草間の調査も暗礁に乗り上げ、さて、どうしようかと悩み始めた時に、幇禍の知り合いがある情報を彼に教えた。 どうも、健司や、志之さんの事を、知ってる人がいるらしいってな。 その情報先は、ある出版社で、その出版社に勤めている人が、自分の担当先の作家が、もしかすると、その志之さんや、健司達を知っているのではないかと、幇禍の知り合いに伝えたらしい。 幇禍は、慌てて、その作家の家、つまり新庄のオッサンの家を訪ねた。 そこで、全ての事情を説明し、里親になる人を捜している事を伝えしたところ、それだったら、是非自分がという事で、本日お越し下さったって訳だ」
初瀬は、続けて悠宇に尋ねる。
「それで、一体、その新庄さんって人と、志之さんはどういう関係なの?」
初瀬の問いに悠宇は、新しい花火に火をつけながら答える。
「新庄のオッサンは、健司のオヤジさんの学生時代の親友だったそうだ。 健司のオヤジさんは、随分と親切な好漢だったそうで、新庄さんは昔、大学に通う為に下宿していた家が火事にあってしまい、殆ど身の回りの物も持ち出せずに焼け出された時に、同じゼミだった健司のオヤジさんに助けられ、この家で卒業までの間、世話になったらしい。 その時、既に志之さんの旦那は亡くなってたが、志之さんは、男手が増えると新庄のオッサン事を歓迎し、殆ど家族同然として、三人でこの家で、二年ほどの年月を過ごしたそうだ。 新庄のオッサンは、余り家庭的に恵まれてない環境で育ったそうで、余計に、その二年は、大事な思い出となったんだろうな。 だけど、新庄のオッサンは、その二年間で、思い出以上の大事なものを見付けた」
初瀬は、言葉の続きを察し、そっと囁く。
「それが、志之さんなんだ…」
悠宇は、静かに頷いた。
「30歳近く年が離れているから、始め新庄のオッサンが、志之さんに想いの丈を告げても、取り合っては貰えなかったそうだ。 在学中に、公募の文学賞で受賞し、卒業時には、何とか食べていける位まで新庄のオッサンが、作家として独り立ちしても、志之さんは、新庄のオッサンの結婚して欲しいという申し出に、首を縦に振らなかった」
そこまで言って、初瀬が呟く。
「でも……、どうなんだろう…。 本当に嫌な相手なら、想いを告げられた時点で、この家を出ていかせるんじゃないかな?」
悠宇は少し笑って「凪砂も、同じ事言ってたぜ」と答えた。
フラフラと花火を揺らし「俺も、同じ意見。 志之さん、新庄さんの事、嫌いじゃないよ。 絶対」と断言する。
そして、話を続けた。
「新庄のオッサンは、地元に戻る前の日も、再度、志之さんに自分の気持ちを新庄のオッサンは伝えたんだが、志之さんは結局その想いを受け入れず、自分の事は、一時の気の迷いだから、忘れなさい。 もう、私に連絡を寄越してもいけない、と言って聞かせたそうだ。 新庄のオッサンは、志之さんのその強い言葉を受け入れながら、それでも、何か困った事があったら、助けが欲しい事があれば、必ず自分を呼ぶようにと伝えて、地元に戻った」

初瀬は、ぼんやり想像する。

どんな気持ちだったのだろう。
親友の、母親に恋をして、恥も外聞もなく、学生の身で求婚し、その全てを気の迷いと言われて、実家に帰る身というのは、どんな気持ちになるのだろう。
淋しいのだろうか、悲しいのだろうか、憎いのだろうか……。


それでもまだ、愛おしいのだろうか。


「結果を言えば、新庄のオッサンの想いは、一時の気の迷いなんかじゃなかった。 志之さんの事が忘れられず、他に女性と付き合っても、どうしようもなかったそうだ。 それから、20年近く、結婚する事無く、ずっと、ずっと、ずっと……。 志之さんの事を、想い続けていた。 …純愛だねぇ」
悠宇の言葉に、初瀬は20年という歳月に思いを馳せる。
今まで、自分が生きてきた年月よりも長い。
それ程の間、ずっと、ずっと、ずっと、誰かを愛し続けるという純粋性が、人の中に眠っているなんて…。
唐突なまでに、初瀬はチェロが弾きたくなった。
今なら、素晴らしい音色が奏でられそうな気がした。


そして、そっと悠宇の手を握る。
びっくりしたように、此方を見てくる悠宇。


「ずっと、好きだよ」


小さく呟いた。


20年、いや、それ以上の年月、悠宇を愛したいと願った。


そういう純粋さが自分の中にあると信じたかった。


こつんと頭を、悠宇の肩に凭れさせる。
パーンと、大きな音を立てて、海月が打ち上げた火の花が頭上に散った。




さて、花火後、全員集合の状態になっている現状を見て「銭湯行かない?」と明るい声で提案してきた。
花火の高揚も残っているのだろう。
何だか、このまま解散するのも淋しくて、ここで大人同士なら飲みに行く?となるが、未成年の多い状況で、銭湯という提案は至極素晴らしいものに思える。
「いいな、それ」
そう無口な海月が、賛同の意を表したのも効いて、志之の世話の為に残るというエマと翼を置いて、一路銭湯へ向かう事になった。
と、言っても泊まり予定の無い凪砂含むメンバー達は、皆、着替えに女性は志之の、男性は亡くなられた志之の旦那さんの浴衣を借り、タオルや石鹸なども、出して貰う。
「洗濯物、大変じゃないですか?」
と、凪砂が問えば、海月と水命が同時に首を振り、「大丈夫」と言ってくれた。
「銭湯、銭湯〜v 初体験!」
楽しげに跳ねる鵺に、「お嬢さん、ちゃんと、前見て歩かなきゃ、転びます」と心配げに、幇禍が注意を促している。
凪砂は、銭湯は初めてらしく、「どんなんでしょうね?」と笑顔で海月に問い掛けて「…そんな、大の大人にワクワクする程の所ではない」と無表情に一刀両断されていた。
しかし、そう言う海月の後ろでは、スキップしそうな勢いで「みんなで、お風呂なんて、楽しみですね!」と健司と一緒になってはしゃぐシオン(42歳)がおり、何ら説得力がない。
健司も、「銭湯、こんな大人数で行くなんて、すごい!」と満面の笑みで、いずみに「こどもね」と冷たく笑われていた。
ま、しかし、そのいずみも、どこか足取りは軽く、初瀬は、「いいなぁ。 こういうの」と感じる。
隣を歩く悠宇も嬉しげで、それが何より楽しかった。


「ここが、私のよく行く銭湯です」
そうシオンが告げたのは、古ぼけたコンクーリート作りの、いかにも銭湯っていう感じの建物で、「ゆ」と書かれたピンクと、紺色ののれんが二つの入り口にそれぞれ掛かっていた。
「じゃ、あとでね?」
鵺がそう言って、女性用のピンクののれんをくぐり掛け、「ん?」と足を止める。
そして身を屈めると「ねぇ、健ちゃんって、今小学校何年生だっけ?」と問い掛けた。
健司が、何でそんな事と首を傾げながら「えーと、三年生だけど…」と答える。
すると鵺が「じゃ、キミ女湯へGOね!」といきなり、その腕をひっ掴んだ。
「へ?」
と目を丸くする健司。
しかし、凪砂も「そうよ…ね。 小学生だし良いのよね、 ヨシ、おいで、健司君!」と言い、水命が「頑張ってるんだもん。 背中流してあげますよ」と言った。
初瀬も、苦しんでいる健司の心を少しでも軽くしてあげたくて「じゃ、私は髪洗ってあげます。 だって、考えてみれば一番の功労者だもの」と言う。
突然の展開に目を白黒させる健司を置いて、悠宇が初瀬に「おい! なんで、健司そっち行く事なってんだよ! 馬鹿っ!」と怒鳴ってきた。
幇禍も鵺に縋り付くようにして「止めて下さい〜。 小学生とはいえ、もう、男なんですっていうか、駄目です! お嬢さんの玉のお肌をそんな、異性に晒すわけにはいきません!」と喚いている。
そして、幇禍はいずみに視線を向け「やですよね? 同い年の男の子と、お風呂なんて」と言えば、いずみは「別に、健司は、同い年じゃなくて、年下だもの。 子供よ。 それにね、お兄さん達がそうやって小学生相手に取り乱してるのって、格好良くないよ」と一刀両断し、その言葉が決定打となって、健司の意志関係なく、彼は女湯へと引きずられていった。



銭湯は、程良く空いていて、女性陣+健司は気兼ねなく、湯船に浸かる事が出来そうだった。
「泡風呂がある!」
そう叫んで走り出そうとする健司を抱き締めるようにして捕まえ、凪砂が「まず、掛け湯。 それから、もう、水命さんと初瀬さんに洗って貰いなさい」と言っている。
水命と、初瀬は四つ並びで空いている洗面所の前を確保すると、健司の手を引いて腰掛けの前に連れていった。
幇禍や、悠宇はあんな事を言っていたが、やはり健司は子供で、いずみと一緒に物珍しげに銭湯の内装を見回し歩いている様は無邪気そのものだ。
ただ、何故か鵺の裸だけは、直視できないようで、耳を少し赤くして、視線を逸らしている。
だが、鵺がそんな事に気付く筈もなく、「健司! 健司、凄いよ! 向こう、なんか色の違うお風呂もあるよ!」と、腕を引っ張りながら声を掛けていた。
まず、健司を腰掛けさせ、初瀬はシャンプーを手に馴染ませると、いがぐり頭に爪を立てないようにシャカシャカと洗い始める。
髪の毛が無いからか、指先が面白いように滑り、初瀬は洗うと言うよりも、磨いているような気分になった。
「良いなぁ。 気持ちよさそう」
と羨ましそうに凪砂が言うので、「痒いとこないですかー?」と、巫山戯て初瀬は笑いながら聞く。
すると、健司は「無いけど、初瀬姉ちゃんの髪の毛があたってる背中が痒い」と訴えてきた。
初瀬が、掻いてやる前に凪砂がヒョイと手を伸ばして掻いてくれる。
水命も、タオルを泡立てて、優しく健司の背中を擦り始め、鵺が湯船に浸かりながら「…はぁ、何か、圧巻だよねぇ」と、呟いた。
言葉の意味が分からないのだろう「へ?」と問い返す凪砂。
初瀬は「圧巻って…、健司君をよってたかって苛めてるように見えるのかしら?」と不安になる。
すると鵺が、「健ちゃん〜? こぉーんな、上玉さん達に、体洗って貰うなんて、幾らつんでも出来ない経験よ? しっかり、心に刻んでおきなね!」と言った。
いずみが鵺の隣りに浸かりながら「…確かに」と頷く。
三人、何言ってんだか…なんて、笑い合って、「ほら、水流しますよ? 目を瞑って?」と、水命が優しく健司に声を掛けた。


みんなで並んで湯に浸かる。
「ふぃ〜」なんて言いながら手足を伸ばせば、程良い温度の湯が体の芯まで染み渡り、額から流れる汗を手拭いで拭いつつも凪砂が「いいですね。 夏の風呂」と呟いた。
頷き、同意を示す初瀬。
疲れが、すぅっと抜けていくようだ。
鵺は健司と並んで泳ぐように、湯船を移動しながら「ほーんと! 最高っ」と答える。
そして、凪砂の側まで近付くと、しげしげと胸元を眺め、溜息混じりに呟いた。
「…いいな。 凪砂さん、胸大きくて」
その言葉に、へ?と呟き、自分の胸を見下ろす、凪砂。
「そ…うかなぁ?」
そう言えば、力一杯頷かれ、鵺を自分の胸を見下ろした。
「私、まな板みたいじゃん? なぁんか、ヤなんだよね」と言いつつ、「ね? 健ちゃんだって、胸大きい方がいいよね?」と鵺が問うた。
健司は途端に顔を真っ赤にして「知るか! そんなのっ!」と答える。
そんなやり取りを見て、水命は俯きながら「やっぱ、大きい人がいいですかね?」と、呟いた。
初瀬も、小さくはないが、大きいとも言えないサイズで、なんだか、駄目なのかなぁという気分になってくる。
「鵺ちゃんは、まだ大きくなる可能性あるけど、私は、もう、多分無理ですよね」なんて水命が言えば、鵺が「でも、水命さんは、形奇麗だから良いよ!」と答えていた。
初瀬も「でも、鵺ちゃんのすらっとした、スレンダーな体形も、凄く格好良いと思いますよ」と、話に参加し、一頻り胸談義に花が咲く。
そんな三人を眺め凪砂がいずみと健司、交互に顔を見合わせると「分かんないよね? こんな話」と言った。
健司はコクンと頷けど、いずみがいつものこまっしゃくれた感じで「でも、凪砂さんは恵まれてますから良いけど、女性にとっては深刻な問題ですよ? まあ、ただ、胸が大きいからといって、それで寄ってくる男性は、頭が悪い連中ばかりでしょうし、そういう意味では、無意味な論議と言えるかもしれませんね」と冷静に答え、初瀬達を一瞬にして凍り付かせた。


さて、風呂上がり、ガラス張りの小さな冷蔵庫から、皆銘々に、珈琲牛乳やら、フルーツ牛乳を取り出して、番頭のお婆ちゃんに金を払い、皆で並んで飲む。
乾いた喉に冷たいフルーツ牛乳が流れ込み、初瀬は夢中になって飲み干した。
「「「「「プハー!」」」」」
皆が一斉に、そう息を吐き出し、顔を見合わせて笑い合う。
「外、男性陣待ってるかも知れないから、急ぎましょうか?」
そう初瀬は提案し、皆は、志之に貸して貰った浴衣を身に纏い始めた。
悪戦苦闘している、鵺を初瀬が手伝ってやる。
同時に、どうも巧く帯が結べない凪砂を水命が手伝っていた。
柄は少し古い物の、落ち着いた色合いの浴衣を着て、少し心が浮き立つような気分になる。
いずみは、サイズがないのと、丁度お泊まりに来ていた事もあって、自分の着替えのTシャツなどを着ていたが、浴衣が羨ましいのだろう。
頻りに、水命や、初瀬、凪砂の来ている浴衣に触れてくる。
初瀬が微笑んで、しゃがみこむといずみに「今度は、いずみちゃんも浴衣着ようね? お姉ちゃんが手伝ってあげるから」と囁いた。
「そんな、別に、良いです。 羨ましいわけでは、ありませんし」と言いつつも、少し嬉しげな表情を見せたいずみ。
鵺も、「うん。 今度は、いずみも、浴衣ね?」と勝手に決めて、その上、勝手に番頭に皆の銭湯料金を払う。
「え? いいです。 自分達で…」
そう言えども「鵺、今回、遊んでばっかで、全然手伝えてないもん。 大丈夫、パパから銭湯代をお泊り代として出しなさいねって言われて預かってるお金だもん。 気にしないで」と告げて、一足先に出ていった。
慌てて、後を追い掛ける一同。
凪砂が「んもう。 年下に奢られるなんて、不覚!」と言うので、クスリと水命が笑って「同じくです」と答えている。
健司がいずみに「気持ち良かったな」と言い、いずみが「まぁね」と答えるのを聞いて「来て良かったな」と初瀬は思いながら、外に出て案の定待っていた男性陣に「お待たせ致しました」と告げた。





それからも、初瀬は、志之や健司の世話に勤しんだ。
色んな話を健司や、志之とし、本当に家族の一員となったように働いた。
そういう日々が楽しかった。
充実していた。


志之も健司も、初瀬にとって大事な存在へとなってから暫く経ったある日。
志之が死んだ。


唐突な知らせに、体中が震えるほどの動揺を感じた。
呂律の回らない声で、悠宇に連絡を取り、落ち合うと、励まされながらふらつく足で、健司の家に辿り着く。
志之の寝所には、武彦と手伝いに来ていた者達、健司と新庄の皆が揃っていた。
誰かが呼んだらしい、医者が志之の枕元に座っている。







静かだった。
圧倒的な迄に静かだった。



死の音とは、無音なのだと初瀬は悟った。
健司が、志之の右手を握り、新庄が志之の左手を握っている。




聖家族。



聖母子と聖ヨハネを指す言葉が、何故か、頭に浮かんだ。
それ位神々しく、近寄りがたい風景だった。
志之の唇が微かに動く。
新庄が、志之の唇近くまで耳を寄せ、そしてコクリと頷くと、初瀬を手招きした。
初瀬は、這うようにして、志之の側へ行く。
新庄が、囁くように行った。
「…志之さん。 何か貴女に、仰りたい事があるそうです。 どうぞ、聞いてやって下さい」
そう言われ、震えながら、耳を志之の唇の側まで近づける。



「…あんたが、来てくれて、本当に、楽になった。 …助かったよ。 ありがとう…ね」
そう告げられ、涙の溜まった目を瞬かせながら、首を振る。
だが、何かを言おうとして、何も言えなくなる初瀬。
圧倒的な悲しみの塊が、のどに支えたように、初瀬は何も言えないまま、泣き伏せた。

唇を噛み、小さく嗚咽を漏らす。
淋しくて、悲しくて、苦しくて、どうにかなってしまいそうだった。

だが、みっともなく泣きわめく事だけは、置いていかれる健司を思うと出来なくて、初瀬は、じっと堪えた。



志之が、新庄に「…健司の事、頼みます」と告げ、健司には「…幸せに…なりな」と言うのが聞こえてきた。
初瀬は、動揺を隠せないまま、それでも、見つめなければ。
最期まで、ちゃんとみつめなければと、顔をあげ、志之の顔を見つめる。
志之の瞼がゆっくりとおり、それから、呼吸が、深く、緩やかになり始めた。
健司は、何も言わず、涙も見せず、ぐっと耐えるように志之の手を握り締め続けている。
新庄が、目を真っ赤にしながら、最期の瞬間、志之に囁いた。




「愛してます」




志之が、微かに笑って、頷いたように見えた。








誰もいない部屋で、悠宇に抱き締められながら、二人、一緒に固く抱き合いながら初瀬は泣き続ける。
辛かった。
涙を流さなかった健司を想う。
「え…偉いね…。 健司君……偉いね…。 自分が泣いたりしたら、し、志之さんが、安心できない……と、思って泣かなかったんだ……ね。 駄目だな。 私。 ほんと、駄目…」
どう嗚咽混じりに呟く初瀬を、尚一層強く抱き締め悠宇が言う。
「いいよ。 泣こう? な、今日は泣こう。 俺も、少し泣くから…」
そう言って、初瀬の肩口に顔を埋める悠宇。
じんわりと、暖かな液体で肩が濡れるのを感じ、初瀬は一層泣き声をあげた。





健司は、やはり新庄と住む事になった。
新庄は、自分からも健司からも、志之の思い出の家を取り上げる事は出来ないと、この家に移り住んでくれるそうだ。
その話を聞いて、安堵した初瀬は、同時に決心する。


この家に、これからも志之に会いに来ようと。
健司や新庄と思い出話をし続けようと。


それが、初瀬と志之の間の絆だと思うから。
ずっと、志之を忘れないでいる為に必要な事だと思うから。


「志之さん。 また来るね」
そっと、初瀬が呟けば「待ってるよ」と志之が答えてくれた気がした。



  終



□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■   登場人物(この物語に登場した人物の一覧)  ■
□■■■■■■□■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
【整理番号 / PC名 / 性別 / 年齢 / 職業】
 ※受注順に掲載させて頂きました。

【0086/ シュライン・エマ  / 女性 / 26歳 / 翻訳家&幽霊作家+草間興信所事務員】
【1847/ 雨柳・凪砂 / 女性 / 24歳 / 好事家】
【1572/ 暁・水命  / 女性 / 16歳 / 高校生兼家事手伝い】
【3604/ 諏訪・海月 / 男性 / 20歳 / ハッカーと万屋】
【3524/ 初瀬・日和 / 女性 / 16歳 / 高校生】
【3525/ 羽角・悠宇 / 男性 / 16歳 / 高校生】
【2414/ 鬼丸・鵺  / 女性 / 13歳 / 中学生】
【3342/ 魏・幇禍  / 男性 / 27歳 / 家庭教師・殺し屋】
【3356/ シオン・レ・ハイ  / 男性 / 42歳 / びんぼーにん 今日も元気?】
【2863/ 蒼王・翼  / 女性 / 16歳 / F1レーサー兼闇の狩人】
【1271/ 飛鷹・いずみ  / 女性 / 10歳 / 小学生】

□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□
■         ライター通信          ■
□■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■□

遅くなりまして、遅くなりまして、遅くなりまして、真に申し訳御座いません!
へたれ人間失格人間ライターmomiziで御座います。(切腹)
初めましての方も、そうでない方も、この遅れっぷりには、最早怒りを越えて、呆れられているのではと、怯えるばかりなのですが、全て私が悪いので、どうぞ、三発位殴ってやって下さい。
さて、えーと、毎回、毎回、ウェブゲームのお話に、是非、個別通信をやりたいと考えているのですが、毎回毎回、時間の都合により掲載できません。
ほんま、スイマセン。
なので、ご参加下さった全ての方々に「本当に有り難う御座いました。 再びお目に掛かれましたら、僥倖に思います」というお言葉を贈らさせて下さい。
あと、非人道的な位、長くなってしまった事もお詫び申し上げます。

momiziは、ウェブゲームの小説は、全て、個別視点の作品となっております。
なので、また、別PC様のお話を御覧頂ければ、違った真実が見えるように書きました。
また、お暇な時にでも、お目通し頂ければ、ライター冥利に尽きます。

ではでは、これにて。

momiziでした。